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(11) 後期高齢者医療制度の財政調整交付金が過大に交付されていたもの[埼玉県](107)


1件 不当と認める国庫補助金 19,375,000円

後期高齢者医療制度は、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)に基づき、都道府県の区域ごとに当該区域の全ての市町村(特別区を含む。以下同じ。)が加入して設ける後期高齢者医療広域連合(以下「広域連合」という。)が、当該区域内に住所を有する後期高齢者(75歳以上の者又は65歳以上75歳未満の者で一定の障害の状態にある者をいう。)を被保険者として、その疾病、負傷又は死亡に関して、療養の給付、葬祭費の支給等を行うものである。

後期高齢者医療制度については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、同法に基づき、広域連合に対して財政調整交付金が交付されている。財政調整交付金は、後期高齢者医療の財政を調整するために交付されるもので、普通調整交付金と特別調整交付金がある。このうち特別調整交付金は、広域連合について特別の事情がある場合に、その事情を考慮して交付されるもので、高齢者保健事業と介護予防等との一体的な実施を効果的かつ効率的に進めるために、広域連合が広域連合を組織する市町村に対して、同法の規定により高齢者保健事業の一部の実施を委託した場合に交付されるもの(以下「一体的実施特別交付金」という。)などがある。

「令和3年度特別調整交付金交付基準(算定省令第6条第9号関係)」等によると、広域連合が市町村に対して高齢者保健事業の一部の実施を委託して、その実施に必要な費用を委託事業費として支払った場合、国は、当該委託事業費の一部について、広域連合に対して一体的実施特別交付金を交付することとなっている。

そして、一体的実施特別交付金の交付額は、市町村ごとに企画、調整等の業務等に従事する医療専門職の配置に必要な人件費等を合算するなどした額(以下「対象経費」という。)を算定し、対象経費に3分の2を乗じて得た額とすることとなっている。

本院が、令和2、3両年度に交付された財政調整交付金について、10都府県(注)の10広域連合において会計実地検査を行ったところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。

(注)
10都府県  東京都、大阪府、埼玉、神奈川、石川、静岡、三重、愛媛、福岡、宮崎各県
 
部局等
補助事業者
(事業主体)
交付金の種類
年度
交付金交付額
左のうち不当と認める額
          千円 千円
(107)
埼玉県
埼玉県後期高齢者医療広域連合
特別調整交付金(一体的実施特別交付金)
2、3 261,454 19,375

埼玉県後期高齢者医療広域連合(以下「埼玉県広域連合」という。)は、市町における医療専門職の配置に必要な人件費(以下「医療専門職の人件費」という。)等の額を合算するなどして令和2、3両年度の一体的実施特別交付金の対象経費を算定し、埼玉県に事業実績報告書を提出して、これにより一体的実施特別交付金計261,454,000円の交付を受けていた。

しかし、埼玉県広域連合は、医療専門職の人件費に係る消費税相当額について、市町に対して支払う委託事業費の算定に当たっては、市町が負担していないことから、これを含めずに算定していたのに、一体的実施特別交付金の対象経費の算定に当たっては、これを含めて算定していた。このように、市町に対して委託事業費として支払っていない医療専門職の人件費に係る消費税相当額は、一体的実施特別交付金の対象経費とは認められない。

したがって、市町に対して支払っていない医療専門職の人件費に係る消費税相当額を対象経費から除いて、適正な一体的実施特別交付金の対象経費を算定し、これに基づくなどして一体的実施特別交付金の交付額を算定すると計242,079,000円となることから、計19,375,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、埼玉県広域連合において財政調整交付金の交付額の算定に当たり制度の理解が十分でなかったこと、埼玉県において事業実績報告書の審査が十分でなかったことなどによると認められる。