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(17) 生活扶助費等負担金等が過大に交付されていたもの[21都府県](135)―(183)


49件 不当と認める国庫補助金 400,904,071円

生活扶助費等負担金、医療扶助費等負担金及び介護扶助費等負担金(以下、これらを合わせて「負担金」という。)は、生活保護法(昭和25年法律第144号)等に基づき、都道府県、市(特別区を含む。)又は福祉事務所を設置する町村(以下、これらを合わせて「事業主体」という。)が、生活に困窮する者に対して、最低限度の生活を保障するために、その困窮の程度に応じて必要な保護に要する費用(以下「保護費」という。)等を支弁する場合に、その一部を国が負担するものである。保護は、原則として世帯を単位としてその要否及び程度を定めることとなっている。そして、保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産や能力その他あらゆるものを活用することを要件としており、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)、国民年金法(昭和34年法律第141号)等の生活保護法以外の他の法律又は制度による保障、援助等を受けることができる者等については極力その利用に努めさせることとなっている。

また、事業主体は、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず保護を受けた者から事業主体の定める額を返還させたり、不実の申請等により保護を受けるなどした者からその費用の額の全部又は一部を徴収したりすることができることなどとなっている(以下、これらの返還させ、又は徴収する金銭を「返還金等」という。)。

生活扶助等に係る保護費は、原則として保護を受ける世帯(以下「被保護世帯」という。)を単位として、保護を必要とする状態にある者の年齢、世帯構成、所在地域等の別により算定される基準生活費に、健康状態等による個人又は世帯の特別の需要のある者に対する各種加算の額を加えるなどして算定される最低生活費から、当該世帯における就労収入、年金の受給額等を基に収入として認定される額を控除するなどして決定されることとなっている。また、各種加算のうち障害者加算は、国民年金法施行令(昭和34年政令第184号)に定める障害等級の1級の障害を有する者等を対象として、障害を有することによって生ずる特別な需要に対応するもので、障害の区分等に対応した加算額が認定されることとなっている。

負担金のうち保護費に係る交付額は、「生活保護費等の国庫負担について」(平成26年厚生労働省発社援0324第2号)等に基づき、次のとおり算定することとなっている。

負担金のうち保護費に係る交付額 算定式 画像

この費用の額及び返還金等の調定額は、それぞれ次のとおり算定することとなっている。

ア 費用の額は、次の①及び②の合計額とする。

① 生活扶助等に係る保護費の額

② 被保護者が医療機関で診察、治療等の診療を受けるなどの場合の費用について、その範囲内で決定された医療扶助及び介護扶助に係る保護費の額

イ 返還金等の調定額は、事業主体が被保護者等からの返還金等を地方自治法(昭和22年法律第67号)に基づき調定した額とする。

本院が、29都道府県の208事業主体において会計実地検査を行うとともに、12都府県の27事業主体(注)から関係書類の提出を受けるなどして検査したところ、21都府県の49事業主体において、生活扶助等に係る保護費の額の算出に当たり、被保護世帯の世帯主等に年金受給権が発生していたにもかかわらず裁定請求手続が行われていなかったことから、当該世帯主等が年金を受給しておらず年金が収入として認定されていなかったり、誤って障害者加算の対象となる障害を有しない者に障害者加算を認定したりなどしていた。このため、負担金計400,904,071円が過大に交付されていて不当と認められる。

(注)
12都府県の27事業主体のうち8都府県の14事業主体は、会計実地検査を行った29都道府県の208事業主体のうち8都府県の14事業主体と重複している。

このような事態が生じていたのは、49事業主体において、保護費の支給決定に当たり、被保護者の年金受給権に係る調査及び裁定請求手続に係る指導が十分でなかったり、障害者加算の対象とすべき障害の認定に係る確認が十分でなかったりなどしたこと、厚生労働省及び20都府県において、適正な生活保護の実施に関する指導が十分でなかったことによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

沖縄県那覇市は、世帯Aの保護を平成29年12月に開始しており、同月から令和3年11月までの保護費の支給に当たり、世帯主Bからの収入はないとの届出に基づき、保護費の額を決定していた。

しかし、世帯主Bには平成28年4月に年金受給権が発生していたにもかかわらず、同市による調査が十分でなく、裁定請求手続が行われていなかったことから、世帯主Bは年金を受給していなかった。そして、本院の検査を踏まえて、同市が裁定請求手続に係る指導を行った結果、世帯主Bは計8,037,463円の年金を遡及して受給した。

したがって、同市がこの額を収入として認定していれば、当該収入分の保護費計8,037,463円は支給の必要がなく、同額が過大に支給されており、これに係る負担金計6,028,097円が過大に交付されていた。

以上を部局等別・事業主体別に示すと、次のとおりである。

 
部局等
補助事業者
(事業主体)
年度
国庫負担対象事業費
左に対する国庫負担金交付額
不当と認める国庫負担対象事業費
不当と認める国庫負担金交付額
摘要
        千円 千円 千円 千円  
(135)
岩手県
盛岡市
平成30~令和4
293,782 220,337 22,018 16,513
障害者加算の認定を誤っていたもの
(136)
花巻市
平成29~令和4
43,688 32,766 4,408 3,306
(137)
一関市
平成29~令和4
21,972 16,479 2,256 1,692
(138)
奥州市
平成29~令和3
35,484 26,613 2,019 1,514
(139)
栃木県
佐野市
平成30~令和3
19,663 14,747 2,016 1,512
障害者加算の認定を誤っていたものなど
(140)
小山市
平成29~令和5
40,689 30,516 3,342 2,507
(141)
群馬県
前橋市
平成28~令和4
39,030 29,273 14,475 10,856
年金受給権の調査が十分でなかったもの
(142)
千葉県
千葉市
平成28~令和4
76,969 57,726 20,189 15,142
(143)
船橋市
平成28~令和4
43,322 32,491 13,957 10,468
年金受給権の調査が十分でなかったものなど
(144)
東京都
新宿区
平成27~令和3
41,204 30,903 14,582 10,936
年金受給権の調査が十分でなかったものなど
(145)
文京区
平成29~令和4
22,803 17,102 8,451 6,338
年金受給権の調査が十分でなかったもの
(146)
江東区
平成29~令和4
35,903 26,927 9,613 7,210
年金受給権の調査が十分でなかったものなど
(147)
品川区
平成27~令和2
27,878 20,908 2,771 2,078
年金収入を認定していなかったものなど
(148)
世田谷区
平成28~令和4
362,864 272,148 76,500 57,375
年金受給権の調査が十分でなかったものなど
(149)
中野区
平成29~令和3
23,717 17,788 3,068 2,301
障害者加算の認定を誤っていたものなど
(150)
北区
平成29~令和4
69,080 51,810 11,179 8,384
年金受給権の調査が十分でなかったものなど
(151)
荒川区
平成28~令和4
139,163 104,372 28,817 21,613
(152)
足立区
平成28~令和4
157,945 118,459 45,262 33,946
年金受給権の調査が十分でなかったもの
(153)
葛飾区
平成27~令和4
50,961 38,221 9,086 6,815
年金受給権の調査が十分でなかったものなど
(154)
立川市
平成29~令和4
14,448 10,836 5,497 4,123
(155)
町田市
平成28~令和3
185,151 138,863 20,020 15,015
(156)
新潟県
長岡市
元~3
7,936 5,952 2,016 1,512
(157)
村上市
平成28~令和4
58,961 44,220 5,276 3,957
(158)
富山県
氷見市
平成26~令和3
39,135 29,351 3,306 2,479
返還決定額を誤っていたものなど
(159)
石川県
金沢市
平成29~令和4
30,293 22,720 10,585 7,939
年金受給権の調査が十分でなかったもの
(160)
岐阜県
岐阜市
平成28~令和3
14,073 10,555 8,294 6,220
(161)
三重県
松阪市
平成29~令和3
40,735 30,551 5,066 3,800
年金受給権の調査が十分でなかったものなど
(162)
京都府
京都市
平成29~令和3
26,751 20,063 3,730 2,797
年金受給権の調査が十分でなかったもの
(163)
大阪府
八尾市
平成28~令和3
59,986 44,989 3,206 2,405
手当収入を認定していなかったもの
(164)
奈良県
奈良県
平成27~令和3
80,079 60,059 5,224 3,918
障害者加算の認定を誤っていたもの
(165)
奈良市
平成28~令和4
288,515 216,386 52,142 39,107
年金受給権の調査が十分でなかったものなど
(166)
桜井市
平成29~令和4
43,099 32,324 12,849 9,637
年金受給権の調査が十分でなかったもの
(167)
島根県
松江市
平成28~令和3
45,661 34,246 6,473 4,854
手当収入を認定していなかったものなど
(168)
岡山県
岡山市
平成28~令和3
34,331 25,748 2,025 1,519
障害者加算の認定を誤っていたものなど
(169)
倉敷市
平成28~令和4
93,536 70,152 9,474 7,105
(170)
広島県
呉市
平成29~令和3
12,630 9,472 1,949 1,461
年金収入を認定していなかったものなど
(171)
福岡県
福岡県
平成28~令和3
90,682 68,011 5,922 4,442
手当収入を認定していなかったものなど
(172)
福岡市
平成28~令和3
27,659 20,744 2,411 1,808
障害者加算の認定を誤っていたものなど
(173)
久留米市
元~3
24,644 18,483 1,717 1,288
障害者加算の認定を誤っていたもの
(174)
飯塚市
平成28~令和3
16,696 12,522 1,576 1,182
障害者加算の認定を誤っていたものなど
(175)
佐賀県
唐津市
平成28~令和4
12,079 9,059 6,521 4,890
年金受給権の調査が十分でなかったもの
(176)
大分県
大分市
平成28~令和3
69,827 52,370 7,398 5,549
障害者加算の認定を誤っていたものなど
(177)
中津市
平成28~令和3
13,713 10,285 1,452 1,089
障害者加算の認定を誤っていたもの
(178)
鹿児島県
鹿児島市
平成29~令和4
9,119 6,839 1,734 1,300
返還決定額を誤っていたものなど
(179)
沖縄県
沖縄県
平成30~令和4
26,306 19,729 6,224 4,668
年金受給権の調査が十分でなかったもの
(180)
那覇市
平成28~令和4
118,875 89,156 19,155 14,366
年金受給権の調査が十分でなかったものなど
(181)
宜野湾市
平成28~令和4
60,724 45,543 12,018 9,014
(182)
浦添市
平成28~令和4
41,525 31,144 10,265 7,699
年金受給権の調査が十分でなかったもの
(183)
うるま市
平成28~令和4
65,751 49,313 6,977 5,233
(135)―(183)の計 3,199,063 2,399,297 534,538 400,904