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自立支援給付の訓練等給付費に係る国の負担が不当と認められるもの[2府県、3市](203)


会計名及び科目
一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)障害保健福祉費
部局等
2府県、3市
国の負担の根拠
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)
実施主体
市21、町1、計22事業主体
事業者
5事業者
過大に支払われた訓練等給付費に係る障害福祉サービスの種類
就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型
過大に支払われた訓練等給付費の件数
913件(平成29年度、令和元年度~3年度)
過大に支払われた訓練等給付費の額
43,087,580円(平成29年度、令和元年度~3年度)
不当と認める国の負担額
21,543,789円(平成29年度、令和元年度~3年度)

1 自立支援給付の概要

(1) 自立支援給付

自立支援給付は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(平成17年法律第123号。以下「法」という。)に基づき、障害者及び障害児が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行うものである。

(2) 障害福祉サービス

自立支援給付のうち、障害福祉サービスに係る給付費の支給には、訓練等給付費及び介護給付費(以下、これらを合わせて「訓練等給付費等」という。)がある。訓練等給付費の支給の対象には就労移行支援(注1)、就労継続支援A型(注2)、就労継続支援B型(注3)等がある。

そして、障害者及び障害児が障害福祉サービスを受けようとする場合の手続は、次のとおりとなっている。

① 障害者又は障害児の保護者は、居住地等の市町村から訓練等給付費等を支給する旨の決定を受ける。

② 支給決定を受けた障害者又は障害児の保護者(以下、これらを合わせて「支給決定障害者等」という。)は、支給決定の有効期間内に都道府県知事又は政令指定都市若しくは中核市等の長(以下「都道府県知事等」という。)の指定を受けた指定障害福祉サービス事業者等(以下「事業者」という。)の事業所において、障害福祉サービスを受ける。

また、都道府県知事等は、自立支援給付に関して必要があると認めるときは、事業者に対する指導等を行うことができることとなっている。

(注1)
就労移行支援  就労を希望する原則として65歳未満の障害者であって、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる者に対して行う生産活動、職場体験その他の活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、求職活動に関する支援、その適性に応じた職場の開拓、就職後における職場への定着のために必要な相談その他の必要な支援
(注2)
就労継続支援A型  通常の事業所に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が可能である障害者に対して行う雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援
(注3)
就労継続支援B型  通常の事業所に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が困難である障害者に対して行う就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援

(3) 障害福祉サービスに要した費用の額の算定

事業者が障害福祉サービスを提供して請求することができる費用の額は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成18年厚生労働省告示第523号。以下「算定基準」という。)等に基づき、障害福祉サービスの種類ごとに定められた基本報酬の単位数に各種加算の単位数を合算し、これに単価(10円から11.60円)を乗じて算定することとなっている。

そして、就労移行支援及び就労継続支援B型に要する費用の額は、算定基準等に基づき、事業者が過度に利用者を受け入れることを未然に防止して、適正な障害福祉サービスの提供を確保するために、事業所の利用定員が12人以上であって、直近の過去3月間の利用者の延べ数が、利用定員に開所日数を乗じて得た数に100分の125を乗じて得た数(以下「受入可能人数」という。)を超える場合等には、定員超過利用減算として、各種加算がなされる前の基本報酬の単位数に100分の70を乗じて得た単位数等を基に算定することとなっている。

また、就労移行支援及び就労継続支援A型に要する費用の額は、算定基準等に基づき、事業所において、配置すべき人員の欠如を未然に防止して、適正な障害福祉サービスの提供を確保するために、所定の要件を満たしたサービス管理責任者を配置していない場合には、配置しなくなった月の翌々月から配置することになった月まで、サービス管理責任者欠如減算として、各種加算がなされる前の基本報酬の単位数に、当該減算が適用される月から5月未満の月については100分の70を、5月以上の月については100分の50を乗じて得た単位数等を基に算定することなどとなっている。

(4) 訓練等給付費等

市町村は、法に基づき、支給決定障害者等が事業者から障害福祉サービスの提供を受けたときは、事業者の請求に基づき、これに係る訓練等給付費等を事業者に支払うことなどとなっており、訓練等給付費等は、障害福祉サービスに要した費用の額から当該支給決定障害者等の家計の負担能力その他の事情をしんしゃくして政令で定める負担の上限額等を控除して得た額となっている。

そして、国は、障害福祉サービスに要した費用について市町村が支弁した訓練等給付費等の100分の50を負担している。

2 検査の結果

本院は、合規性等の観点から、訓練等給付費等の算定が適正に行われているかに着眼して、23都道府県及び33市(10政令指定都市、23中核市)において、障害福祉サービスを提供する事業所を設置する339事業者に対する訓練等給付費等の支払について会計実地検査を行うとともに、2府県(注4)及び3市(注5)(1政令指定都市、2中核市)については、障害福祉サービスを提供する事業所を設置する5事業者に対する訓練等給付費等の支払について、訓練等給付費等の請求に係る関係資料の提出を受けるなどして検査した。そして、訓練等給付費等の支払について疑義のある事態が見受けられた場合には、更に都道府県等に事態の詳細な報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(注4)
2府県は、会計実地検査を行った23都道府県のうち2府県と重複している。
(注5)
3市のうち2市は、会計実地検査を行った33市のうち2市と重複している。

検査したところ、2府県及び3市(1政令指定都市、2中核市)に所在する5事業者は、就労移行支援及び就労継続支援B型に係る訓練等給付費の算定に当たり、直近の過去3月間の利用者の延べ数が受入可能人数を超えていたのに、定員超過利用減算として各種加算がなされる前の基本報酬の単位数に100分の70を乗ずることなく算定していたほか、就労移行支援及び就労継続支援A型に係る訓練等給付費の算定に当たり、サービス管理責任者として配置された者が所定の要件を満たしていなかったのに、サービス管理責任者欠如減算として各種加算がなされる前の基本報酬の単位数に100分の70又は100分の50を乗ずることなく算定するなどしていた。

このため、913件の請求に対して、平成29年度、令和元年度から3年度までの間に22市町が支払った訓練等給付費が計43,087,580円過大となっていて、これに対する国の負担額21,543,789円は負担の必要がなかったものであり、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、事業者において算定基準等を十分に理解していなかったことにもよるが、2府県及び3市(1政令指定都市、2中核市)において事業者に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

新潟県に所在する事業者Aは、就労移行支援に係る訓練等給付費の算定に当たり、令和2年2月から3年2月までの間の各月において、直近の過去3月間の利用者の延べ数が受入可能人数を超えていたのに、定員超過利用減算として各種加算がなされる前の基本報酬の単位数に100分の70を乗ずることなく算定していた。

このため、185件の請求に対して、元、2両年度に8市が支払った訓練等給付費が計12,890,482円過大となっていて、これに対する国の負担額6,445,241円は負担の必要がなかった。

以上を事業者の所在する府県等別に示すと、次のとおりである。

府県等名
実施主体
(事業者数)
年度
過大に支払われた訓練等給付費の件数
過大に支払われた訓練等給付費
不当と認める国の負担額
摘要
千円 千円
新潟県
8市(1)
元、2
185 12,890 6,445
就労移行支援
新潟市
2市(1)
平成29、令和元、2
350 12,768 6,384
就労継続支援B型
豊橋市
2市(1)
 元
157 5,406 2,703
京都府
6市町(1)
元、2
83 2,541 1,270
吹田市
6市(1)
2、3
138 9,479 4,739
就労移行支援、就労継続支援A型
22市町(5)
平成29、令和元~3
913 43,087 21,543
  • (注) 計欄の実施主体数は、府県等の間で実施主体が重複することがあるため、各府県等の実施主体数を合計したものとは一致しない。