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  • 令和4年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 工事

山林施設災害関連事業等の実施に当たり、概算数量で設計していた仮設工について、実際の施工数量に基づく設計変更を行っていなかったため、契約額が割高となっていたもの[中部森林管理局東信森林管理署](206)


会計名及び科目
一般会計 (組織)林野庁 (項)治山事業費
(項)山林施設災害復旧事業費
(項)山林施設災害関連事業費
部局等
中部森林管理局東信森林管理署
工事名
池ノ沢災害関連ほか1治山工事
工事の概要
山林施設災害関連事業等として、災害により渓床に堆積した不安定土砂の移動を防止することなどを目的として治山ダムを設置等するもの
契約額
128,040,000円(当初契約額124,850,000円)
請負人
青木建設工業株式会社
契約
令和2年3月 一般競争契約
しゅん功検査
令和3年10月
支払
令和2年7月、3年11月
割高となっていた契約額
12,398,241円(令和2、3両年度)

1 工事の概要

中部森林管理局東信森林管理署(以下「東信署」という。)は、令和元年東日本台風により被災した長野県上田市所在の角間山国有林に治山ダムを設置等するために、令和元年度から3年度までの間に「池ノ沢災害関連ほか1治山工事」を、一般競争契約により、青木建設工業株式会社に契約額128,040,000円で請け負わせて実施している。

本件工事は、被災した既設の治山ダムを補修するとともに、災害により渓床に堆積した不安定土砂の移動を防止することなどを目的とした治山ダム等を新たに設置するために、谷止工等及びこれに必要な仮設工を実施したものである。

このうち、仮設工は、谷止工等に必要な資材等を運搬するために、既設の烏帽子林道等(林道台帳における延長計5,437m。以下「林道区間」という。)における損壊箇所の補修等と、既設の森林作業道等から新設する治山ダム等の施工現場までの区間(延長計510m。以下「施工現場区間」という。)における新たな仮設作業道の作設(以下、これらを合わせて「仮設作業道作設等」という。)を行うなどするものである。

「発注関係事務の運用に関する指針」(平成27年公共工事の品質確保の促進に関する関係省庁連絡会議決定)によれば、災害発生後の緊急対応に当たっては、概算数量による発注を行った上で現地状況等を踏まえて契約変更を行うなど、工事の緊急度に応じた対応も可能であるとされている。

また、「森林整備保全事業に係る設計変更等ガイドラインについて」(平成28年28林整計第156号)によれば、仮設及び施工方法の一切の手段の選択を受注者の責任で行う任意仮設については、仮設及び施工方法に変更があっても、原則として設計変更の対象としないが、当初積算時の想定と現地条件が異なるなどの場合は、必要に応じて設計変更を行うこととされている。そして、「国有林野事業の工事の請負契約に係る契約書について」(平成7年7林野管第161号)によると、国有林野事業の工事を請負契約に付する場合には、国有林野事業工事請負契約約款を適用することとなっており、同約款によれば、発注者は、必要があると認めるときは、設計図書の変更内容を受注者に通知して、設計図書を変更することができ、この場合において、必要があると認めるときは請負代金額を変更しなければならないとされている。

2 検査の結果

本院は、経済性等の観点から、契約額の変更が工事の実態を踏まえて適切に行われているかなどに着眼して、本件工事を対象として、東信署において、契約書、設計図書、施工写真等の書類及び現地を確認するなどして会計実地検査を行った。

検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

東信署は、当初設計に当たり、仮設工を任意仮設とすることとし、仮設作業道作設等については、早期に施工する必要があるなどとして、概算数量により積算することとし、その数量を次のとおり計上していた。

① 林道区間における仮設作業道作設等のための切土及び盛土に係る土量(以下「切盛土量」という。)を計5,400m3、施工現場区間における切盛土量を計2,550m3、合計7,950m3とする。

② 林道区間及び施工現場区間において、土留めなどで使用する大型土のうの数量を600袋とする。

そこで、実際の仮設作業道作設等に係る施工数量について、設計図書、施工写真、現地の施工状況等を確認したところ、林道区間の損壊が想定よりも少なかったことなどから、林道区間における切盛土量は計3,761.9m3、施工現場区間における切盛土量は計2,032.1m3、合計5,794m3となっており、また、使用した大型土のうは13袋となっていて、当初積算時の概算数量よりも大幅に少なくなっていた。

そして、前記のとおり、任意仮設であっても、当初積算時の想定と現地条件が異なるなどの場合は、必要に応じて設計変更を行うこととされていることから、上記の現地における施工状況を踏まえると、設計変更をする必要があったのに、東信署は、任意仮設についてはその対象とならないと誤認していたことから、実際の施工数量に基づいた設計変更を行っていなかった。このため、切盛土量2,156m3分、大型土のう587袋分等について過大となっていた。

したがって、実際の施工数量に基づくなどして、本件工事費を修正計算すると、他の項目において過少となっていた費用を考慮しても、工事費の総額は115,641,759円となることから、本件契約額128,040,000円はこれに比べて12,398,241円割高となっていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、東信署において、当初積算時の想定と現地条件が異なるなどの場合における任意仮設に係る設計変更の必要性についての認識が欠けていたことなどによると認められる。