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  • 令和4年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • (2) 補助金により造成した基金の使用が適切でなかったもの

被災事業者自立支援事業費補助金により造成した基金を用いて実施した事業において、購入した設備を補助の目的外に使用していたり、対象とならない経費を補助対象事業費に含めていたりしていたもの[経済産業本省](225)


(1件 不当と認める国庫補助金 15,823,460円)

 
部局等
補助事業者
(所在地)
間接補助事業者
(所在地)
補助事業
年度
事業費
補助対象事業費
左に対する国庫補助金交付額
不当と認める補助対象事業費
不当と認める国庫補助金相当額
千円 千円 千円 千円
(225)
経済産業本省
福島県
有限会社横山物産
(福島県双葉郡浪江町)
〈事業主体〉
被災事業者自立支援
平成28、令和2
54,680
(53,370)
40,027 21,098 15,823

この補助事業は、被災地域における働く場の創出等のまち機能の早期回復に向けて、原子力災害によって被災した中小・小規模事業者(以下「原子力被災事業者」という。)の事業・生業の再建等を支援することを目的として、福島県(以下、補助事業者としての福島県を「県」という。)が、経済産業省から被災事業者自立支援事業費補助金の交付を受けて、福島県原子力災害被災事業者事業再開等支援基金(以下「基金」という。)を造成したものである(基金造成額156億円)。県は、被災事業者自立支援事業費補助金(事業再開・帰還促進基金)交付要綱(20160304財地第1号)等に基づき、原子力災害により甚大な被害を受けた12市町村(注)において事業再開等計画(以下「計画」という。)に基づき事業再開や新規投資、販路開拓等の事業展開投資(以下「事業再開等」という。)を行う原子力被災事業者等に対して、施設・設備の整備等に係る経費の一部を補助するために、造成した基金を取り崩して「福島県原子力被災事業者事業再開等支援補助金」(以下「基金補助金」という。)を交付している(以下、基金補助金の交付を受けて原子力被災事業者が実施する事業を「基金補助事業」といい、基金補助事業を実施する原子力被災事業者を「基金補助事業者」という。)。

(注)
12市町村  田村、南相馬両市、伊達郡川俣、双葉郡広野、楢葉、富岡、大熊、双葉、浪江各町、双葉郡川内、葛尾、相馬郡飯舘各村

県は、福島県原子力被災事業者事業再開等支援補助金交付要綱(平成28年4月施行。以下「要綱」という。)において、基金補助金の交付対象者は、原子力災害時に12市町村内の事業所で事業を行っていた原子力被災事業者であって、12市町村内において事業再開等を行う者等としている。

そして、経済産業省は、事業主体が12市町村内で事業再開等を行うために基金補助事業により購入した車両を12市町村外に所在する事業所において管理又は使用する場合には、当該車両は基金補助事業の目的を達成するための事業の用に供されることにならないため、補助の対象とはならないとしている。

また、要綱等によれば、基金補助事業により取得した財産等のうち、取得価格等が50万円以上の機械、器具、備品等は基金補助金の交付の目的に反して使用等してはならない財産(以下「処分制限財産」という。)とされており、基金補助事業者は、処分制限財産を、知事が定めた処分制限期間内に基金補助金の交付の目的に反して使用等するときは、あらかじめ知事の承認を受けなければならないこととされている。そして、基金補助事業者が処分制限財産を基金補助金の交付の目的に反して使用等する場合は、残存簿価相当額に補助率を乗じて得た額を基金に納付することになっている。

事業主体は、平成28年度に、12市町村内である南相馬市に新設した営業所(以下「南相馬営業所」という。)において、雇用拡大による故郷再生に寄与するために中間貯蔵施設への運搬に対応する車両の増車等を行うとする計画に基づき事業再開等を行うとして、県から基金補助金の交付決定を受けていた。そして、28年10月及び12月に南相馬営業所を使用の本拠とする10tダンプトラック2台等を導入する基金補助事業を事業費計26,780,000円(基金補助対象事業費計26,553,000円)で実施したとする実績報告書を29年1月に県に提出して、基金補助金19,914,000円(国庫補助金相当額同額)の交付を受けていた。また、事業主体は、令和2年度に、南相馬営業所において、雇用拡大に寄与するために配送業務拡大等に伴う大型車両の増車等を行うとする計画に基づき事業再開等を行うとして、県から基金補助金の交付決定を受けていた。そして、南相馬営業所に13t大型トラック等を購入して事業の用に供する基金補助事業を事業費計27,900,000円(基金補助対象事業費計26,817,800円)で実施したとする実績報告書を3年4月に県に提出して、基金補助金20,113,000円(国庫補助金相当額同額)の交付を受けていた。

しかし、事業主体は、平成28年度に導入した10tダンプトラック2台について、令和2年10月まで又は12月までのいずれも4年の処分制限期間内であったにもかかわらず、前記の承認を受けずに、平成31年1月に12市町村外の営業所である福島市の営業所(以下「福島営業所」という。)に使用の本拠を変更して、基金補助金の交付の目的に反して使用していた。また、事業主体は、令和2年度に購入した13t大型トラックについて、購入当初から12市町村外の福島営業所において使用していて、南相馬営業所において事業再開等を行うための事業に供しておらず、その購入に係る経費については補助の対象とならないのに、これを補助対象経費に含めていた。

したがって、平成31年1月以降、基金補助金の交付の目的に反して使用されていた10tダンプトラック2台の同月末時点の残存簿価相当額4,880,799円に係る取り崩された基金3,660,460円(国庫補助金相当額同額)及び補助の対象とはならない13t大型トラックを購入して事業の用に供するための基金補助対象事業費16,217,800円に係る取り崩された基金12,163,000円(国庫補助金相当額同額)、計15,823,460円の使用が適切でなく、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、事業主体において基金補助事業の適正な執行に対する認識が欠けていたこと、県において事業主体に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。