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  • (1) 工事の設計が適切でなかったなどのもの

根固工の設計が適切でなかったなどのもの[8府県](229)―(239)


(11件 不当と認める国庫補助金 150,036,104円)

 
部局等
補助事業者等
(事業主体)
補助事業等
年度
事業費
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金等交付額
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金等相当額
摘要
千円 千円 千円 千円
(229)
埼玉県
埼玉県
河川等災害復旧
元、2
89,250
(80,700)
53,827 30,445
(30,445)
20,307
設計が適切でなく根固ブロックが必要重量を満たしていなかったもの
(230)
本庄市
元、2
10,685
(10,685)
7,126 9,407
(9,407)
6,274
設計が適切でなく根固ブロックが必要敷設幅を満たしていなかったもの
(231)
福井県
福井県
29、30
23,727
(23,727)
15,826 21,972
(21,972)
14,655
設計が適切でなく根固工と護岸等との間の間隙に適当な間詰工を施していなかったもの
(232)
山梨県
山梨県
元、2
282,664
(282,664)
188,537 49,373
(49,373)
32,932
設計が適切でなく根固ブロックが必要重量を満たしていなかったもの
(233)
岐阜県
岐阜県
平成30、令和元
44,917
(44,917)
29,959 19,357
(19,357)
12,911
(234)
三重県
三重県
元、2
35,814
(35,814)
23,888 11,113
(11,113)
7,412
設計が適切でなく根固工と護岸等との間の間隙に適当な間詰工を施していなかったもの
(235)
京都府
京都府
元、2
41,305
(38,454)
25,649 10,780
(10,780)
7,190
設計が適切でなく根固ブロックが必要敷設幅を満たしていなかったもの
(236)
元、2
22,253
(18,631)
12,427 8,652
(8,652)
5,771
設計が適切でなく根固工と護岸等との間の間隙に適当な間詰工を施していなかったもの
(237)
福岡県
福岡県
2、3
22,434
(11,197)
7,468 4,761
(4,761)
3,175
設計及び施工が適切でなく根固工と護岸等との間の間隙に適当な間詰工を施していなかったもの
(238)
熊本県
阿蘇市
河川等災害復旧
元、2
42,956
(42,956)
28,650 41,620
(41,620)
27,759
設計が適切でなく根固工と護岸等との間の間隙に適当な間詰工を施していなかったもの
(239)
阿蘇郡南阿蘇村
元、2
33,115
(33,115)
22,087 17,460
(17,460)
11,645
(229)―(239)の計 649,124
(622,866)
415,449 224,945
(224,945)
150,036

これらの補助事業は、台風等により被災した護岸等を復旧するために、護岸工、根固工等を7府県及び3市村が実施したものである。このうち、根固工は、護岸等の基礎を保護するために、コンクリート製ブロック(以下「根固ブロック」という。)等を護岸等の前面の河床に敷設したものである。

7府県及び3市村は、根固工等の設計を「建設省河川砂防技術基準(案)同解説」(社団法人日本河川協会編。以下「技術基準」という。)等に基づき行うこととしている。そして、京都府、埼玉、山梨、岐阜、福岡各県、阿蘇市及び南阿蘇村は、本件工事の設計業務を設計コンサルタントに委託し、設計図面、設計計算書等の成果品を検査して受領した上で、この成果品に基づき施工することとしていた。

技術基準等によれば、護岸の破壊は、基礎部の洗掘を契機として生ずることが多いとされ、根固工は、その地点の流勢を減じて、更に河床を直接覆うことで急激な洗掘を緩和する目的で設置されるものとされている。そして、根固工は、流体力に耐える重量とすること、護岸の基礎前面に洗掘を生じさせない敷設量とすることなどが必要であり、根固工と護岸との間に間隙が生ずる場合には適当な間詰工を施すこととされている。

上記のうち、流体力に耐えるために必要となる根固ブロック1個当たりの重量(以下「必要重量」という。)については、設計流速、水や根固ブロックの密度等から算出することとされている。また、洗掘を生じさせない敷設量とするために必要となる根固ブロックの敷設幅(以下「必要敷設幅」という。)については、根固ブロック1列分又は2.0m程度以上の平坦幅に、護岸の基礎前面で河床が低下した場合に、根固ブロック敷設高から低下した河床部分に向けて生ずる斜面の長さ(勾配を30度と見込むため河床が低下した場合の深さの2倍となる。)に相当する幅を加えた幅を確保することとされている。

また、福岡県の工事請負契約書によれば、請負人は、工事の施工に当たり、工事現場の形状等設計図書に示された施工条件と実際の工事現場が一致しない場合は、その旨を直ちに同県の監督職員に通知し、確認を請求しなければならないこととされている。

しかし、根固工の設計において、埼玉、岐阜両県は、技術基準等で定められた根固ブロックの密度とは異なる値を用いて必要重量を算出し、山梨県は、既設の根固ブロックが必要重量を満たしているか確認せずに再利用していた。また、京都府及び本庄市は、根固ブロック等の敷設高を変更した際に、必要敷設幅を算定することなく、変更前と同じ敷設幅としていた。さらに、根固工と護岸等との間に間隙が生ずる場合には適当な間詰工を施す必要があるのに、京都府、三重県、阿蘇市及び南阿蘇村は間詰工を施すこととしておらず、福井県は間詰工の材料についての検討を行うことなく、間詰工としては適当でない現地で発生した粒径の小さな土砂を用いてその間隙を埋め戻すこととしていた。

また、福岡県は、根固ブロックを護岸の基礎に接するよう敷設することとしていたが、委託した設計業務の成果品である図面の間で整合しない部分があり、実際には根固ブロックを図面どおりに敷設することができない状況となっていた。これに対して、請負人は、このような状況となっていることについて監督職員に確認することなく施工し、根固ブロックを護岸の基礎前面から離れた位置に敷設していたため、根固工と護岸の基礎との間に間隙が生じていた。そして、このような場合には、当該間隙に適当な間詰工を施す必要があるのに、間詰工を施していなかった。

このため、本件根固工は、敷設された根固ブロックが必要重量や必要敷設幅を満たしていなかったことや、適当な間詰工を施していなかったことから、河床の洗掘が進行すると護岸等に損傷が生ずるおそれがある状況となっていた(参考図参照)。

したがって、本件根固工は、設計又は設計及び施工が適切でなかったため、護岸等の基礎を洗掘から保護できない構造となっていて、本件護岸工、根固工等は、工事の目的を達しておらず、これらに係る国庫補助金相当額計150,036,104円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、京都府、埼玉、岐阜、福岡各県、阿蘇市及び南阿蘇村において委託した設計業務の成果品に誤りや整合しない部分があったのにこれに対する検査が十分でなかったこと、京都府、山梨県及び本庄市において必要重量又は必要敷設幅を満たしているかどうかを確認することの必要性に係る認識が欠けていたこと、三重県において適当な間詰工を施すことに対する認識が欠けていたこと、福井県において適当な間詰工を施すことに対する理解が十分でなかったこと、福岡県において請負人が図面の間で整合しない部分について同県に確認しなかったため、技術基準に適合しない施工となっていたのに、これに対する監督及び検査が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例1

山梨県は、韮崎市清哲町青木地内の一級河川釜無川において、令和元、2両年度に、令和元年東日本台風により被災した護岸等を復旧するために、釜無川の右岸に、法覆護岸工、根固工(被災前から設置されていた既設根固ブロックのうち再利用するもの85個、延長170.0m)等を実施している。

同県は、根固工の設計に当たり、技術基準等における算定式を用いて必要重量を算出していた。そして、設計業務の過程で抽出した既設根固ブロックの寸法に基づき推測したブロックの重量が必要重量を上回ることから、既設根固ブロックを再利用することとしていた。

しかし、委託した設計業務の成果品には、既設根固ブロックを再利用する際に、経年劣化等により欠損等しているものが含まれている可能性があることなどから、必要重量を満たしているかどうかを確認する必要があるとされていたのに、同県は、本件工事の特記仕様書において、必要重量を満たしているかどうかを確認することについて明示しておらず、当該確認を行っていなかった。

このため、本件工事に使用した既設根固ブロック85個は、必要重量を満たしているか不明なまま再利用されていた。

そこで、当該既設根固ブロックの欠損等の状況を確認して、これに基づき既設根固ブロックの重量を算出したところ、本件工事に使用した既設根固ブロック85個のうち64個は必要重量を満たしていなかった。

したがって、本件根固工のうち上記の既設根固ブロック64個は、設計が適切でなかったため、法覆護岸の基礎を洗掘から保護できない構造となっていて、本件法覆護岸工延長69.0m、根固工延長128.0m等(工事費相当額計49,373,677円、国庫補助金相当額計32,932,241円)は工事の目的を達していなかった。

事例2

京都府は、南丹市園部町埴生地内の一級河川本梅川において、令和元、2両年度に、平成30年台風第7号及び平成30年7月豪雨により被災した護岸等を復旧するために、法覆護岸工、根固工(延長33.0m)等を実施している。

同府は、根固工の設計に当たり、技術基準等における算定式を用いて、根固ブロックの敷設幅について、必要敷設幅を3.0mと算出し、幅1.5mの根固ブロックを2列で敷設することとしていた。

その後、同府は、本件工事を実施するに当たり、現地の状況を再確認するなどして、根固ブロックを敷設する箇所の河床の高さを上記の設計よりも高い位置に変更し、根固ブロックの敷設高を高い位置となった河床の高さに合わせることとする設計変更を行い、これにより施工していた。

しかし、技術基準等によれば、根固工の必要敷設幅は、根固ブロックの敷設高から河床が低下した場合の河床までの深さに基づき算定することとされており、根固ブロックの敷設高を高い位置に変更したことにより当該深さが増加するのに、同府は、設計を変更する際、これを考慮した必要敷設幅の算定を行っていなかった。

そこで、変更後の敷設高に基づき改めて本件根固ブロックの必要敷設幅を算定すると4.77mとなることから、同府が敷設した3.0mの敷設幅は、これに対して1.77m不足していた。

したがって、本件根固工は、設計が適切でなかったため、法覆護岸の基礎を洗掘から保護できない構造となっていて、本件法覆護岸工、根固工等(工事費相当額10,780,043円、国庫補助金相当額7,190,288円)は工事の目的を達していなかった。

事例3

阿蘇市は、阿蘇市波野大字波野地内の市道鳥越遊雀線において、令和元、2両年度に、元年7月の大雨により被災した普通河川横堀川の護岸を兼用する擁壁等を復旧するために、大型ブロック積工、根固工(延長15.6m)等を実施している。

同市は、根固工の設計を技術基準等に基づいて行うこととしており、これによれば、根固工と護岸との間に間隙が生ずる場合には、適当な間詰工を施すこととされている。そして、本件根固工は、根固ブロックを大型ブロック積護岸前面に接する位置に敷設することとして設計し、これにより施工することとしていた。

しかし、本件根固工の場合、大型ブロック積護岸の表面には傾斜がついているため、根固工と大型ブロック積護岸との間に間隙(最大で幅29㎝)が生ずることとなるのに、同市は、間詰工の必要性について検討することなく、間詰工を施すこととしていなかった。

したがって、本件根固工は、設計が適切でなかったため、大型ブロック積護岸の基礎を洗掘から保護できない構造となっていて、本件大型ブロック積工、根固工等(工事費相当額41,620,639円、国庫補助金相当額27,759,656円)は工事の目的を達していなかった。

(参考図)

根固工の概念図

根固工の概念図 画像