(2件 不当と認める国庫補助金 31,697,162円)
部局等
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補助事業者等
(事業主体)
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補助事業等
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年度
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事業費
国庫補助対象事業費
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左に対する国庫補助金等交付額
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不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
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不当と認める国庫補助金等相当額
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(240) | 青森県 |
青森県 |
防災・安全交付金 (その他総合的な治水) |
平成28~令和3 |
119,014 (107,113) |
53,556 | 29,597 (26,637) |
13,318 |
(241) | 福島県 |
福島県 |
社会資本整備総合交付金 (急傾斜地崩壊対策) |
平成30、令和元 |
50,176 (47,667) |
23,833 | 38,691 (36,756) |
18,378 |
(240)(241)の計 | 169,191 (154,781) |
77,390 | 68,288 (63,394) |
31,697 |
これらの交付金事業は、急傾斜地で発生する崩壊土砂から人家等を保全するために、2県が三戸郡田子町大字田子地内及びいわき市仁井田(にいだ)町寺前地内において、擁壁工、落石防護柵工等を実施したものである。
このうち、擁壁工は、急傾斜地からの崩壊土砂を待ち受けて捕捉するための擁壁(以下「待受式擁壁」という。)を築造するものである(参考図1参照)。
2県は、本件待受式擁壁の設計を「道路土工 擁壁工指針」(社団法人日本道路協会編。以下「指針」という。)等に基づいて行うこととしている。そして、本件工事の設計業務を設計コンサルタントに委託し、設計図面、設計計算書等の成果品を検査して受領した上で、この成果品に基づき施工することとしていた。
指針等によれば、待受式擁壁の設計に当たっては、待受式擁壁に作用する力を考慮して、滑動、転倒等に対する安定性の検討を行い、所定の安全率を確保するなどしなければならないとされており、待受式擁壁に作用する力は、自重、裏込め土圧等の通常の荷重に加えて、崩壊土砂による衝撃力(以下「衝撃力」という。)等を考慮することとされている。このうち、衝撃力については、崩壊土砂の先頭部が擁壁に作用するものとして、急傾斜地の高さ、崩壊土砂の移動時における高さ(以下「移動高」という。)などを基にするなどして算定することとされ、急傾斜地の高さは斜面全体の高さとすることとされている。また、衝撃力が擁壁に作用する位置は、擁壁背面の裏込め土の地表面の高さに移動高の2分の1を加えた高さとされており、衝撃力の作用位置の高さが高いほど擁壁を転倒させようとする力は大きくなる(参考図1参照)。
また、指針等によれば、滑動に対する安定性の検討に用いる滑動に対する抵抗力(以下「抵抗力」という。)は、擁壁底面と地盤との間の付着力に荷重の偏心を考慮した擁壁底面の有効載荷幅を乗ずるなどして算出することとされている(参考図2参照)。
しかし、青森県は、待受式擁壁の設計に当たり、衝撃力の算定において、急傾斜地の高さについて、誤って斜面全体の高さから擁壁背後の斜面に設置された法枠の高さを控除した高さとするとともに、滑動及び転倒に対する安定計算の際に、衝撃力の算定では移動高を1.0mと設定していたのに、誤って0.5mとするなどしていたため、衝撃力作用時において待受式擁壁に作用する力を過小に算定していた。また、福島県は、待受式擁壁の設計に当たり、抵抗力の算定において、付着力に乗ずる擁壁底面の幅については有効載荷幅を用いる必要があるのに、擁壁底面幅をそのまま用いるなどしていたため過大に算定するとともに、図面作成の際に、誤って擁壁背面の裏込め土の高さを、転倒に対する安定計算の設定条件の高さより高く図示していて、これにより施工していたことから、衝撃力の作用位置が安定計算における位置より高くなっているなどしていた。
そこで、本件待受式擁壁について、現地の状況を踏まえて、指針等に基づき、改めて安定計算を行ったところ、いずれも衝撃力作用時において、滑動に対する安定については安全率が許容値を大幅に下回り、転倒に対する安定については擁壁に作用する衝撃力等による水平荷重及び擁壁の自重等による鉛直荷重の合力の作用位置(以下「合力の作用位置」という。)が転倒に対して安全であるとされる範囲を大幅に逸脱するなどしていた。
したがって、本件待受式擁壁(工事費相当額計68,288,633円、交付対象事業費計63,394,329円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態となっており、これらに係る交付金相当額計31,697,162円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、2県において、指針等についての理解が十分でなかったこと、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのにこれに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
福島県は、いわき市仁井田町寺前地内において、平成30、令和元両年度に、急傾斜地で発生する崩壊土砂から人家等を保全するために、待受式擁壁(延長計72.2m、高さ3.0m、3.4m及び3.5m、擁壁底面幅2.50m、2.70m及び2.75m)の築造等を実施していた。
同県は、本件待受式擁壁の滑動に対する安定計算に当たり、高さ3.0mの待受式擁壁(延長18.7m)における抵抗力について、付着力に擁壁底面幅ではなく荷重の偏心を考慮した擁壁底面の有効載荷幅を乗ずるなどして算定する必要があったのに、擁壁底面幅である2.50mを乗ずるなどして算定していた(参考図2参照)。また、本件待受式擁壁の転倒に対する安定計算に当たり、衝撃力の作用位置については、移動高を1.0mと設定して、裏込め土の地表面の高さ0.6mに移動高1.0mの2分の1である0.5mを加えて、擁壁底面から1.1mの位置としていたが、図面作成の際に、誤って擁壁底面から1.1mの高さまでを裏込め土とすることとして、これにより施工していたことから、実際の衝撃力の作用位置は擁壁底面から1.6mの位置となっていた。
そこで、高さ3.0mの待受式擁壁について、現地の状況を踏まえて、指針等に基づき改めて安定計算を行ったところ、衝撃力作用時において、滑動に対する安定については安全率が0.513となり許容値である1.000を大幅に下回り、転倒に対する安定については合力の作用位置が擁壁底面(幅2.50m)中央の位置より擁壁前面側に1.334mの位置となり転倒に対して安全であるとされる範囲0.833mを大幅に逸脱していた(参考図3参照)。
また、高さ3.4m及び高さ3.5mの待受式擁壁(延長計53.5m)についても、同様の事態が見受けられた。
したがって、本件待受式擁壁(工事費相当額38,691,207円、交付対象事業費36,756,646円、交付金相当額18,378,323円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態となっていた。
(参考図1)
待受式擁壁の概念図
(参考図2)
有効載荷幅の概念図
(参考図3)
適切な安定計算による待受式擁壁の概念図(高さ3.0mの待受式擁壁)