(1件 不当と認める国庫補助金 25,056,554円)
部局等
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補助事業者等
(事業主体)
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補助事業等
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年度
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事業費
国庫補助対象事業費
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左に対する国庫補助金等交付額
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不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
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不当と認める国庫補助金等相当額
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(244) | 広島県 |
呉市 |
河川等災害復旧 |
元、2 |
53,350 (51,536) |
39,630 | 32,584 (32,584) |
25,056 |
この補助事業は、呉市安浦町女子畑(おなごばた)地内において、平成30年7月豪雨により被災した二級河川高野川に架かる女垣内(めんごうち)1号線1号橋等を復旧するために、下部構造として直接基礎の逆T式橋台2基(以下、右岸側の橋台を「A1橋台」、左岸側の橋台を「A2橋台」という。)の築造、上部構造としてプレストレストコンクリート桁(以下「PC桁」という。)の製作、架設等を呉市が実施したものである。
同市は、本件橋りょうの設計を「道路橋示方書・同解説」(平成29年版。社団法人日本道路協会編。以下「示方書」という。)等に基づいて行うこととしており、示方書によれば、橋台に設置される支承部は、上部構造から伝達される荷重を確実に下部構造に伝達する性能を確保することとされていて、その設計に当たっては、レベル1地震動(注1)及びレベル2地震動(注1)による影響を考慮することとされている。
また、示方書によれば、地震時に支承部が破壊されたとしても上部構造が容易に落下しないように、落橋防止システムにより適切な対策を講ずることとされており、橋軸方向に対する対策は、桁かかり長(注2)を確保することなどにより行うこととされている。そして、桁かかり長については、支承部が破壊したときに、上部構造が下部構造の頂部から逸脱して落下するのを防止するために必要な長さ(以下、この必要な長さを「必要桁かかり長」という。)を算出し、必要桁かかり長以上の長さを確保することとされている。
同市は、本件工事の設計業務を設計コンサルタントに委託し、設計図面、設計計算書等の成果品を検査して受領していた。そして、同市は、この成果品に基づき、A1橋台及びA2橋台のそれぞれの支承部は、橋座部に垂直に埋め込まれた水平力を受けるためのアンカーバー(長さ0.58m、径28mm)計5本等を設置すれば、所要の安全度が確保されるとして、これにより施工していた。
しかし、同市は、本件橋りょうの設計に当たり、示方書によれば、直接基礎の橋台の安定に関する照査ではレベル1地震動時における検討を行って所要の性能を満足していればレベル2地震動時も所要の性能を満足しているとみなしてよいとされていることから、誤って、支承部の設計についてもレベル1地震動時における照査のみを行うことにより所要の安全度が確保されるとして、レベル2地震動時における照査を行っていなかった。そこで、本件橋りょうの支承部について、レベル2地震動時における照査を行ったところ、A1橋台のアンカーバーに生ずる曲げ引張応力度(注3)は、532.2N/mm2となり、曲げ引張応力度の制限値(注3)305.0N/mm2を大幅に上回っていて、設計計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
また、同市は、本件橋りょうについて、必要桁かかり長を確保するなどの落橋防止システムの検討は必要ないと誤認して、この検討を行っていなかった。そこで、示方書に基づいて、必要桁かかり長を算出すると74.6㎝となり、施工された本件橋りょうの現況の桁かかり長はA1橋台では52.5㎝から54.0㎝まで、A2橋台では55.5㎝となっていることから、必要桁かかり長に比べて長さが不足しており、落橋防止システムの性能が確保されていない状況となっていた(参考図参照)。
したがって、本件橋りょうは、支承部及び橋台の設計が適切でなかったため、上部構造の所要の安全度が確保されていない状態となっていて、橋台及びこれに架設されたPC桁等(工事費相当額32,584,333円)は、工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額25,056,554円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市において、示方書についての理解が十分でなかったこと、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのにこれに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図)
橋りょう概念図