(1件 不当と認める国庫補助金 5,841,786円)
部局等
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補助事業者等
(事業主体)
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補助事業等
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年度
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事業費
国庫補助対象事業費
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左に対する国庫補助金等交付額
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不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
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不当と認める国庫補助金等相当額
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(245) | 鳥取県 |
西伯郡大山町 |
河川等災害復旧 |
平成30、令和元 |
19,775 (16,238) |
10,831 | 8,758 (8,758) |
5,841 |
この補助事業は、大山町豊成地内の準用河川大谷川において、平成30年台風第24号により被災した護岸を復旧するために、法覆護岸工、水路工等を大山町が実施したものである。
同町は、本件水路工の設計を「土地改良事業計画設計基準・設計「水路工」」(農林水産省農村振興局制定。以下「設計基準」という。)等に基づいて行っている。設計基準によれば、水路の安定を図るために、水路背面の地下水位による水路の浮上に対する検討として、水路の自重と、土圧により水路背面に作用する摩擦力とを合わせた下向きの鉛直力を、周辺の地下水による上向きの鉛直力である浮力で除した値が、当該水路の目的、規模等を考慮して定めた安全率(1.1~1.2)以上となることを確認することとされている。また、水路周辺の地形等を考慮し、必要に応じて水路内を空虚とした条件下での豪雨による水位急上昇を考慮する必要があるとされている。
同町は、当初、本件水路工を、現場打ちコンクリート水路を築造することにより実施することとし、本件水路を築造する箇所の周辺に湧き水等が発生していないことから地下水位は低いと判断して、当該水路の浮上に対する検討を省略しても安全であるとしていた。
そして、同町は、本件工事の契約後に、請負人から施工性等を考慮して現場打ちコンクリート水路からプレキャスト鉄筋コンクリート製のU型水路(高さ0.935m、内空断面の幅1.5m~1.6m、底版の厚さ0.075m、延長29.0m。以下「U型水路」という。)に変更したい旨の施工承諾願の提出を受けたが、当初設計における現場打ちコンクリート水路と同様に、浮上に対する検討を省略しても安全であるとして、当該検討を行わずに承諾し、これにより施工していた(参考図1参照)。
しかし、水路周辺の現地の状況について確認したところ、復旧した水路の上流部に流入する河川がないため平常時においても水路内の水位は低く、また、水路の下流端に落差工があることなどにより、豪雨時や豪雨後においても水路内は水が流れやすいことから、水路内の水位は低下しやすい状況となっていた。一方、水路背面については、降雨により地中に浸透した地下水を排出するための水抜工が水路に施工されていないことなどにより、水が滞留し地下水位が上昇しやすい状況となっていた。また、現場打ちコンクリート水路からU型水路に変更したことにより自重が軽くなっているため、水路がより浮上しやすい状況となっていた。これらのことから、本件U型水路については、設計基準に基づき、水路内を空虚とした上で、地中に浸透した地下水の水位を考慮して浮上に対する検討を行う必要があった(参考図2参照)。
そこで、本件U型水路について、前記の台風による豪雨により天端を超える高さまで河川の水位が上昇したことを踏まえて、地中に浸透した地下水の水位をU型水路の底版から側壁の天端までの高さである1.01mとし、また、水路内を空虚とするなどして浮上に対する検討を行ったところ、安全率は0.68となり、必要とされる安全率1.1を大幅に下回っていた。
したがって、本件U型水路は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状況となっており、U型水路及びU型水路上部の法覆護岸(工事費相当額8,758,300円)は、工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額5,841,786円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同町において、設計基準に対する理解が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図1)
当局の安定計算による水路の概念図
(参考図2)
適切な安定計算による水路の概念図