排水施設の設計が適切でなかったもの［中国地方整備局］(248)

この交付金事業は、重要港湾である福山港において、雨水等を十分排水できず降雨時に冠水するなどして車両の通行に支障が生じていた臨港道路の排水施設の改修等を広島県が実施したものである。

本件排水施設は、路面の雨水等を排水する側溝、雨水等を海に流下させる排水管、側溝と排水管とを接続する取付管等から構成されている（参考図1参照）。

そして、本件工事は、側溝(延長計737.7m)についてはL型側溝から可変勾配側溝(プレキャスト鉄筋コンクリート製、内空断面の幅300㎜、高さ300㎜～1,300㎜)への取替え、流末に最も近い排水管(延長18.0m。以下「流末部排水管」という。)については遠心力鉄筋コンクリート管(内径250㎜)から台付鉄筋コンクリート管(内径600㎜)への取替え、取付管(延長計55.6m)については遠心力鉄筋コンクリート管(内径250㎜)への取替えなどを行うものである。

同県は、排水施設の設計を「道路土工要綱」(社団法人日本道路協会編。以下「要綱」という。)等に基づいて行うこととしている。そして、本件工事の設計業務を設計コンサルタントに委託し、設計図面、設計計算書等の成果品を検査して受領した上で、この成果品に基づき施工することとしていた。

要綱によれば、排水施設は、道路の種類、沿道の状況等を十分考慮して、その排水能力を設定しなければならないこととされており、このうち、路面に降った雨水等を排除する路面排水工は、雨水等を側溝から流末まで流下させるものであり、適切な流下能力を有する排水工を設計することとされている。そして、国土交通省は、臨港道路の工事において排水のために必要がある場合は、雨水等の流入部から流末まで(路面排水工であれば側溝等から流末の排水管まで)の全ての区間について十分な流下能力を有する必要があるとしている。

同県は、本件排水施設の区域における降雨量として1時間当たり90㎜に相当する降雨を想定して、本件排水施設に流入する雨水等の流入量を、側溝においては側溝の区間ごとに検討して、最大の区間で0.064m²/s、流末部排水管においては0.280m²/sと算定していた。そして、前記のとおり側溝及び流末部排水管を取り替えることとすれば、それらの流下能力が、側溝においては側溝の区間ごとに検討して、上記雨水等の流入量が最大の区間で0.086m²/s、流末部排水管においては0.290m²/sとなることから、本件排水施設は、雨水等の流入量に対して十分な流下能力を有するとしていた。

しかし、同県は、雨水等を流末部排水管に流下させる排水管(以下「中間部排水管」という。)については、既存の中間部排水管をそのまま利用することとしていて、流下能力に係る照査を行っていなかった。

そこで、中間部排水管の流下能力に係る照査を行ったところ、本件工事において改修した流末部排水管に接続する中間部排水管については、雨水等の流入量が0.140m²/sであるのに対して、流下能力は0.024m²/sとなっていて、流下能力が雨水等の流入量を大幅に下回っており、本件排水施設は、中間部排水管が所要の流下能力を有していなかった(参考図2参照)。このため、中間部排水管に雨水等を流下させる設計となっている側溝及び取付管は、雨水等を十分排水することができない状況となっていた。

したがって、本件排水施設のうち、上記に係る側溝延長計209.9m、取付管延長計21.8m等(これらに係る工事費相当額9,062,904円)は、雨水等を所要の流下能力を有していない中間部排水管に流入させることとした設計が適切でなかったため、雨水等を十分排水できない状態となっていて、工事の目的を達しておらず、これらに係る交付金相当額3,020,957円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同県において、排水施設の設計に当たり、雨水等の流入部から流末までの全ての区間において十分な流下能力を有する必要があることについての理解が十分でなかったこと、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのにこれに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。