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  • (2) 補助の対象とならないもの

既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業において、補助対象事業費に対象とならない経費を含めていたもの[観光庁](249)―(254)


(6件 不当と認める国庫補助金  28,301,000円)

 
部局等
補助事業者等
間接補助事業者等
(事業主体)
補助事業等
年度
事業費
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金等交付額
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金等相当額
摘要
千円 千円 千円 千円
(249)
観光庁
株式会社東急エージェンシー
株式会社トライアングル
既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業
(交通関係事業)
3 137,860
(125,328)
112,449 22,055
(20,050)
10,000
補助の対象とならない建物の取得費を含めていたもの
(250)
パシフィックコンサルタンツ株式会社
既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業
(実証実験事業)
3 14,300
(13,000)
13,000 6,876
(6,251)
6,251
補助の対象とならない事業主体の正社員の人件費等を含めていたもの
(251)
株式会社ワールド・ヘリテイジ
既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業
(宿泊施設の高付加価値化改修事業)
3 81,630
(74,209)
37,104 12,697
(11,543)
5,772
補助の対象とならない可搬性のある設備の購入及び設置に係る経費等を含めていたもの
(252)
飛騨川温泉土地株式会社
3 43,945
(39,200)
19,600 7,283
(6,621)
3,311
(253)
有限会社桃源
3 49,700
(45,181)
20,000 9,650
(8,773)
1,796
補助の対象とならない可搬性のある設備の購入及び設置に係る経費を含めていたもの
(254)
株式会社山水館欣龍
3 30,814
(28,013)
14,006 2,576
(2,342)
1,171
(249)―(254)の計 358,251
(324,932)
216,159 61,139
(55,581)
28,301

これらの補助事業は、新型コロナウイルス感染症の影響により危機的状況にある観光拠点が面的に再生できるような取組を短期集中で強力に支援することで、その影響を乗り越え、地域全体の魅力及び収益力の向上を図ることを目的とした既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業(以下「推進事業」という。)のうち、交通関係事業(交通事業者と観光事業者等が連携して行う地域の誘客促進及び高付加価値化を目的とした取組をいう。以下同じ。)を1事業主体が、実証実験事業(地域が課題と考える点を解決する方法として立案した各種実証実験等をいう。以下同じ。)を1事業主体が、宿泊施設の高付加価値化改修事業を4事業主体が、それぞれ実施したものである。

観光庁は、公募により選定した補助事業者である株式会社東急エージェンシー(以下「事務局」という。)に補助金を交付し、推進事業を実施する事業主体から提出された交付申請書、完了実績報告書等の審査等の事務を行わせ、事務局は、推進事業の実施に要した経費の一部又は全部について事業主体に補助金を交付している。

観光庁と調整した上で事務局が令和3年6月に制定した「令和2年度第3次補正予算 訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業費補助金 既存観光拠点再生・高付加価値化推進事業『自治体・DMO型』交付申請の手引き」等によれば、推進事業の補助対象事業費は次のとおりとされている。

① 交通関係事業のうち、バス乗り場の利便性向上に資する経費及びフェリーターミナルの受入環境向上に資する経費(以下「バス乗り場及びフェリーターミナルに係る経費」という。)については、案内表示の掲示に係る経費、トイレや休憩スペースの改修費等とされており、建物の取得費等は補助対象外とされている。

② 実証実験事業については、事業主体が契約を締結して他の事業者にイベント開催や調査等を発注する際の委託費等とされており、事業主体の経常的な経費である正社員の人件費等は補助対象外とされている。

③ 宿泊施設の高付加価値化改修事業については、単なる老朽修繕ではない、滞在環境等の上質化や新たなサービスの提供等、宿泊施設の付加価値向上に資する改修に係る工事費、設計費等とされており、可搬性のある設備の購入及び設置に係る経費、消防法(昭和23年法律第186号)等の法令等において設置が義務化されている設備等の導入に係る工事費等は補助対象外とされている。

しかし、補助対象事業費の算定に当たり、1事業主体は交通関係事業において、バス乗り場及びフェリーターミナルに係る経費に建物の取得費を含めていた。また、1事業主体は実証実験事業において、事業主体の正社員の人件費等を含めていた。さらに、4事業主体は宿泊施設の高付加価値化改修事業において、テーブルや椅子等の可搬性のある設備の購入及び設置に係る経費や、消防法等において設置が義務化されている設備の導入に係る工事費等を含めていた。

したがって、補助の対象とならない経費を控除して適正な補助対象事業費を算定すると、計269,351,522円となることから、本件補助対象事業費計324,932,842円は、これに比べて55,581,320円過大となっており、これに係る国庫補助金交付額計28,301,000円が過大に交付されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、6事業主体において補助対象事業費についての理解が十分でなかったこと、事務局において完了実績報告書等の審査が十分でなかったこと、観光庁において事務局に対する指導監督が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

株式会社トライアングルは、令和3年度に、交通関係事業として、神奈川県横須賀市の浦賀レンガドックと千代ヶ崎砲台を巡るバスツアーや浦賀港を周遊するクルーズツアー等を事業費137,860,800円(補助対象事業費125,328,000円)で実施したとすると完了実績報告書等を事務局に対して提出していた。そして、事務局は、完了実績報告書等の審査を行い、完了実績報告書等に記載された補助対象事業費に基づくなどして、同社に対して補助金112,449,000円(国庫補助金相当額同額)を交付していた。

しかし、建物の取得費は補助の対象とならないのに、同社は、補助対象事業費に、浦賀レンガドック付近に設置した発券所及び待合所として使用する建物の取得費20,050,000円を含めていた。

したがって、上記の発券所及び待合所として使用する建物の取得費を補助対象事業費から除いて適正な補助対象事業費を算定すると105,278,000円となることから、本件補助対象事業費125,328,000円は、これに比べて20,050,000円過大となっており、これに係る国庫補助金相当額10,000,000円が過大に交付されていた。