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  • 令和4年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 環境省|
  • 不当事項|
  • 補助金|
  • (4) 工事の設計が適切でなかったもの

太陽光発電設備の規模が合理的かつ妥当なものとなっていなかったもの[環境本省](270)


(1件 不当と認める国庫補助金 2,700,000円)

 
部局等
補助事業者等
間接補助事業者等
(事業主体)
補助事業等
年度
事業費
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金等交付額
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金等相当額
千円 千円 千円 千円
(270)
環境本省
公益財団法人日本環境協会
大十株式会社
二酸化炭素排出抑制対策
29 28,000
(27,540)
6,210 12,072
(11,967)
2,700

この補助事業は、再生可能エネルギーの自立的普及の促進のための再生可能エネルギー設備を導入する事業(以下「導入事業」という。)として、大十株式会社(以下「会社」という。)が姫路新物流センターとして新設する倉庫(以下「新倉庫」という。)において、太陽光発電設備を設置する工事を事業費28,000,000円(補助対象事業費27,540,000円、補助金交付額6,210,000円、国庫補助金相当額同額)で実施したものである。

環境省は、導入事業の実施に当たり、事業主体から提出された交付申請書等の審査、交付の決定、補助金の交付等の事務を公募により選定した者に行わせており、平成29年度については、公益財団法人日本環境協会(以下「協会」という。)が選定されている。そして、会社は、本件補助事業について、協会に実績報告書を提出して、協会から補助金の交付を受けていた。

環境省の承認を得て協会が定めた「平成29年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(再生可能エネルギー電気・熱自立的普及促進事業)交付規程」等によれば、交付申請書に添付する実施計画書の様式において、設備の導入については、設備等の規模が合理的かつ妥当であることを明確に記載することなどとされている。また、同交付規程等によれば、事業主体が中小企業の場合、太陽光発電設備の導入事業の補助金額は、事業を行うために必要な設備費、工事費等の補助対象事業費に補助率3分の1を乗じて得た額と太陽電池出力に90,000円/kWを乗じて得た額とのいずれか少ない額とされている。そして、この太陽電池出力は、太陽電池モジュール(注1)のJIS等に基づく公称最大出力(以下「公称最大出力」という。)の合計値とパワーコンディショナ(注2)(以下「パワコン」という。)の定格出力の合計値との低い方の値で、kW単位の小数点以下を切り捨てた値とされている。

(注1)
太陽電池モジュール  太陽の光エネルギーを電気エネルギーへ変換する太陽光発電設備を構成する一つの部材で、パネル状になっている。
(注2)
パワーコンディショナ  太陽電池モジュールにより発電された直流電力を当該施設で使用可能な交流電力に変換するなどの装置

会社は、太陽光発電設備の設計に当たり、新倉庫において、24時間操業を前提として1年間に使用することが想定される電力量(以下「想定使用電力量」という。)について、会社が所有する24時間操業の既存の倉庫における1年間の使用電力の実績量288,886kWhに、既存の倉庫の施設面積に対する新倉庫の施設面積の割合を乗ずるなどして101,110.1kWhと算定していた。そして、太陽光発電設備の導入に係る費用と発電量の増加による便益により費用対効果を考慮した上で、この想定使用電力量101,110.1kWhを確保できる発電量となるよう、パワコンの定格出力の合計値を69.3kW(パワコン(9.9kW/台)を7台)、公称最大出力の合計値を100.1kW(太陽電池モジュール(0.275kW/枚)を364枚)と算定するなどして、これにより太陽電池出力が69kWの規模の太陽光発電設備を設置していた。

しかし、この太陽光発電設備は、蓄電池設備が併設されていないため、余剰電力を充電して夜間等に使用することはできず、昼間に発電された電力が、その時点で稼働する設備の消費電力を賄うためにのみ使用できる設計となっていた。そのため、太陽光発電設備の規模については、新倉庫において太陽光発電により消費電力を賄うこととしていた昼間に稼働する全ての設備を使用するために必要な電力(以下「必要電力」という。)を確保できるものとなっていれば足り、これが合理的かつ妥当な規模であると認められる。

そこで、新倉庫で使用されるフォークリフト充電設備、空調機等の消費電力等を基に必要電力を算定したところ、計30.1kWとなり、この必要電力を確保するためには、パワコンの定格出力の合計値を39.6kW(パワコン(9.9kW/台)を4台)、公称最大出力の合計値を46.2kW(太陽電池モジュール(0.275kW/枚)を168枚)として、太陽電池出力を39kWとすれば足りることになる。

したがって、太陽光発電設備を上記の規模として事業費を算定すると15,927,246円(補助対象事業費15,572,106円)となり、補助対象事業費に補助率3分の1を乗じた5,190,702円と、修正後の太陽電池出力39kWに90,000円/kWを乗じた3,510,000円を比較すると、適正な補助金交付額は3,510,000円(国庫補助金相当額同額)となることから、前記の補助金交付額6,210,000円との差額2,700,000円(国庫補助金相当額同額)が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、会社において蓄電池設備を併設しない太陽光発電設備の設計に当たり、必要電力に基づいて規模を検討することの必要性に対する理解が十分でなかったこと、協会において交付申請書等の審査が十分でなかったこと、環境本省において協会に対する指導監督が十分でなかったことなどによると認められる。