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  • 令和4年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第13 独立行政法人中小企業基盤整備機構|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(2) 中小企業生産性革命推進事業のうちコロナ特別対応型の小規模事業者持続化補助金事業において事務局に概算払された事業費について、補助金の支払が終了していて使用見込みのない額を返還させるよう改善させたもの


科目
(一般勘定)前払金
部局等
独立行政法人中小企業基盤整備機構本部
小規模事業者持続化補助金事業の概要
中小企業、小規模事業者等の販路開拓、設備投資、ITツールの導入等の支援を行う中小企業生産性革命推進事業のうち、生産性向上に資する経営計画を作成して販路開拓等に取り組む小規模事業者等に対して、これに要する経費の一部を補助するもの
独立行政法人中小企業基盤整備機構が全国商工会連合会(事務局)に概算払した事業費の額
151億円(令和3年度末)
上記のうち小規模事業者等に対する支払が終了していて使用見込みのない事業費の額
5億8226万円

1 持続化補助事業等の概要

(1) 生産性革命事業の概要

独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下「機構」という。)は、第4期中期計画(平成31年4月から令和6年3月まで)等に基づき、中小企業、小規模事業者等の販路開拓、設備投資、ITツールの導入等の支援を行う中小企業生産性革命推進事業(以下「生産性革命事業」という。)を実施している。生産性革命事業は、小規模事業者持続化補助金事業(以下「持続化補助事業」という。)のほか、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業、サービス等生産性向上IT導入支援事業等の各事業で構成されている。

そして、機構は、第4期中期計画において、令和元年度一般会計補正予算を始めとする累次の補正予算に基づいて国から交付された運営費交付金を使用して上記の各事業を実施することとしており、補正予算ごとに運営費交付金の使途を限定している。このうち、令和2年度一般会計補正予算(第1号)及び令和2年度一般会計補正予算(第2号)により追加的に交付された運営費交付金(以下「コロナ運営費交付金」という。)については、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」(令和2年4月閣議決定)等に基づいて補正予算に計上されたものであることを踏まえて、生産性革命事業における各事業において従前から実施している事業と区別して、新型コロナウイルス感染症が事業環境に与える特徴的な影響を乗り越えるための事業(以下「特別枠の事業」という。)のために使用することとしている。

(2) 持続化補助事業の概要

機構が生産性革命事業の一つとして実施している持続化補助事業は、生産性向上に資する経営計画を作成して販路開拓等に取り組む小規模事業者等に対して、これに要する経費の一部を補助するために、小規模事業者持続化補助金(以下「持続化補助金」という。)を交付するものである。そして、持続化補助事業は、令和元年度一般会計補正予算等に基づいて国から交付された運営費交付金を使用して実施する一般型の事業(以下「持続化補助事業(一般型)」という。)、コロナ運営費交付金を使用して実施するコロナ特別対応型の事業(以下「持続化補助事業(コロナ型)」という。)等に区分されている。このうち、持続化補助事業(コロナ型)は、持続化補助事業(一般型)の創設後、持続化補助事業における特別枠の事業として2年4月に新たに創設されたものであり、持続化補助事業(一般型)と比べて補助上限額等を引き上げたものとなっている。

機構は、持続化補助事業(一般型)の実施に当たり、2年1月に、事業の管理、運営等を行う事務局を公募し、同年3月に全国商工会連合会(以下「全国連」という。)を商工会地区(主として町村の区域)における事務局として選定している。そして、機構は、全国連に対して、持続化補助事業の実施に必要な事業費(小規模事業者等に対して持続化補助金を交付するための原資として事務局に支払われる資金をいう。以下同じ。)及び事務費(事務局が持続化補助事業の管理、運営等を行うための人件費等の経費をいう。以下同じ。)を補助金として交付した上で、全国連から小規模事業者等に対して持続化補助金を交付する間接補助の方法を採用している。

一方、機構は、持続化補助事業(コロナ型)については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けている小規模事業者等が十分に事業の実施期間を確保できるよう、迅速な体制の整備と速やかな業務の実施を図る必要があるとして、商工会地区における事務局に係る業務を持続化補助事業(一般型)の事務局となっている全国連に委託するとともに、小規模事業者等に対する持続化補助金の交付を機構自らが行う直接補助の方法を採用している。そして、機構は、同年4月に全国連との間で随意契約により、持続化補助事業(コロナ型)における事務局に係る業務(以下「委託業務」という。)に関する委託契約を締結していて、当該契約には、小規模事業者等に対する持続化補助金の支払業務が含まれている。

商工会地区における持続化補助事業に係る資金等の流れを示すとのとおりである。

図 商工会地区における持続化補助事業に係る資金等の流れ

図 商工会地区における持続化補助事業に係る資金等の流れ画像

また、持続化補助事業(コロナ型)において、小規模事業者等が実施する事業の公募は同年4月から12月にかけて計5回実施され、第5回公募で採択された小規模事業者等が実施する事業の実施期限は3年10月末までとなっている。

(3) 持続化補助事業(コロナ型)における機構と全国連との委託契約の概要

持続化補助事業(コロナ型)における機構と全国連との委託業務に関する委託契約書によれば、事務費については、全国連の請求に基づき機構が概算払できることとされており、委託業務の終了後、概算払額が確定額を超える場合には、指定する期日までにその超過分を返還しなければならないこととされている。また、小規模事業者等に対する持続化補助金の支払業務の実施に当たり必要となる事業費については、事務費の場合に準じて、全国連に概算払できることとされていて、機構は、全国連に対して、2年6月から3年11月にかけて事業費計151億円を概算払している。そして、機構は、事業費の概算払額が小規模事業者等に対する持続化補助金の確定額を超えた場合については、事務費と同様にその精算を委託業務の終了後に行うとしている。

また、上記の委託契約書によれば、全国連は、毎会計年度終了後に、委託業務の実施内容等を記載した実施報告書を機構に提出することとされている。

そして、機構と全国連との委託業務に関する委託契約の契約期間は、当初、令和2年度一般会計補正予算(第1号)の成立日である2年4月30日から4年2月28日までとされていたが、小規模事業者等に対する持続化補助金の交付が終了した後においても、機構が実施する小規模事業者等の取得財産に係る処分承認申請等の関係手続等の対応への協力等を行わせる必要があるとして、機構と全国連との間で変更契約を締結した上で6年3月31日まで延長されている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、効率性、有効性等の観点から、持続化補助事業(コロナ型)において、小規模事業者等が実施する事業の終了に伴い、機構から全国連に支払われている事業費が生産性革命事業における各事業の特別枠の事業に活用できるよう遅滞なく機構に返還されているかなどに着眼して、事業費の概算払額151億円を対象として、機構及び全国連において、関係資料を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、機構の3年度末時点における全国連に対する事業費の概算払額は、前記のとおり151億円となっていた。また、全国連は、機構に提出した実施報告書の中で、事業費について、当該年度に実際に要した額(以下「実績額」という。)を機構に報告しており、これによると、3年度末時点における事業費の実績額は、計145億1773万余円となっていた。そして、全国連から小規模事業者等に対する持続化補助金の支払は4年3月までに全て終了していたことから、上記事業費の概算払額151億円と実績額145億1773万余円との差額である5億8226万余円については、同年4月以降、使用見込みのないものとなっていた(参照)。

表 全国連における持続化補助事業(コロナ型)の事業費の実績額等(単位:千円)

機構から全国連に対する事業費の概算払額(令和3年度末時点) 全国連における事業費の実績額(3年度末時点) 4年4月以降使用見込みのない事業費
(a) (b) (a-b)
15,100,000 14,517,733 582,266

しかし、機構は、事業費の精算については、事務費と合わせて6年3月31日までの委託業務の終了後に行うとしていたことから、上記の5億8226万余円については、4年4月以降、全国連において引き続き保有されたままとなっており、生産性革命事業における各事業の特別枠の事業に活用できない状況となっていた。

このように、同月以降、使用見込みがないにもかかわらず、持続化補助事業(コロナ型)の事業費5億8226万余円が全国連に滞留している事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、機構において、持続化補助事業(コロナ型)における全国連から小規模事業者等に対する持続化補助金の支払が終了していたにもかかわらず、全国連に滞留している使用見込みのない事業費を機構へ速やかに返還させて生産性革命事業における各事業の特別枠の事業で活用を図ることについての検討が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、機構は、5年5月に、前記の使用見込みのない事業費について全国連から返還させる処置を講じた。