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  • 令和5年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第1 内閣府(内閣府本府)|
  • 不当事項|
  • 補助金|
  • (3) 補助金の交付額の算定が適切でなかったもの

子ども・子育て支援交付金(延長保育事業に係る分)を過大に交付していたもの[奈良県](14)


(1件 不当と認める国庫補助金 5,418,000円)

延長保育事業は、子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)等に基づき、市町村(特別区を含む。以下同じ。)及び一部事務組合(以下、これらを合わせて「市町村等」という。)が実施主体となり、就労形態の多様化等に伴う延長保育の需要に対応するために、都道府県及び市町村等以外の者が設置する保育所や認定こども園等(以下、これらを合わせて「民間保育所等」という。)において、市町村から保育認定を受けた児童について、通常の利用日及び利用時間帯以外の利用日及び利用時間帯において引き続き保育を受けた際に、当該児童の保護者が支払うべき費用の全部又は一部の助成を行うことにより、必要な保育を確保する事業である。

そして、国は、市町村に対して子ども・子育て支援交付金(延長保育事業に係る分)(以下「交付金」という。)を交付して、延長保育事業に要する費用の一部を補助している。

 「延長保育事業の実施について」(平成27年雇児発0717第10号。以下「実施要綱」という。)等によれば、延長保育事業は、1時間延長、2時間延長等の延長時間に応じた区分ごとに基準額が定められている。具体的には、延長時間の区分ごとに実施要件として1日当たり平均対象児童数(以下「平均対象児童数」という。)の下限が定められており、民間保育所等が設定した開所時間を超えて1時間以上の延長保育を実施する場合の平均対象児童数の下限は6人、同様に2時間以上の延長保育を実施する場合は3人などとされている。そして、平均対象児童数の算出は、各延長時間の区分ごとに行うこととされ、各週において利用児童数が最も多い日の当該児童数を平均するなどの方法(以下「所定の方法」という。)を用いることとされている。また、延長時間区分は、各区分の延長時間及び平均対象児童数の要件を満たした上で最も長い区分を適用することなどとされている。

また、「子ども・子育て支援交付金の交付について」(平成28年府子本第474号内閣総理大臣通知)等によれば、交付金の交付額は、次のとおり算定することとされている。

① 1時間延長、2時間延長等の延長時間の区分等により定められた基準額と対象経費の実支出額を比較して少ない方の額と、総事業費から寄附金その他の収入額を控除した額とを比較して、少ない方の額を選定する。

② ①により選定された額を基本額とし、これに国の負担割合3分の1を乗ずるなどして得た額を交付金の交付額とする。

本院が、4県の6市町において会計実地検査を行ったところ、1町において、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

 
部局等
交付金事業者
(事業主体)
交付金事業
年度
事業費
左に対する交付金交付額
不当と認める事業費
不当と認める交付金相当額
          千円 千円 千円 千円
(14)
奈良県
北葛城郡王寺町
子ども・子育て支援交付金(延長保育)
平成29~令和3
37,214 12,403 16,254 5,418

王寺町は、平成29年度から令和3年度までに、2か所の民間保育所等において延長保育事業を実施したとして、延長保育事業に係る基本額を計37,214,000円として奈良県に事業実績報告書を提出して、これにより交付金計12,403,000円の交付を受けていた。

しかし、同町は、交付金の交付額の算定に当たり、2か所の民間保育所等における平均対象児童数について、誤って、所定の方法ではなく、年間の延べ利用児童数を用いて算出するなどして適用する延長時間区分を当てはめていた。そして、平均対象児童数を、所定の方法により改めて算出したところ、適用される延長時間区分が変わることになり、基本額が過大に算定される結果となっていた。

したがって、所定の方法を用いて算出した平均対象児童数により適用される延長時間区分を当てはめて、平成29年度から令和3年度までの適正な基本額を算定すると計20,960,000円となることから、前記の基本額37,214,000円との差額16,254,000円が過大になっており、これに係る交付金5,418,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同町において実施要綱等の理解が十分でなかったこと、奈良県において事業実績報告書の審査が十分でなかったことなどによると認められる。