外務省及び独立行政法人国際協力機構(以下「機構」という。)は、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の下、平和で安定し、繁栄した国際社会の形成に一層積極的に貢献することなどを目的として、開発途上地域の政府等に対して政府開発援助を実施している。
しかし、有償の資金供与による協力によるメコン地域通信基幹ネットワーク整備事業(カンボジア王国)において、整備した光ケーブル等を利用した固定電話サービスの利用率が低調となっていること、無償の資金供与による協力(以下「無償資金協力」という。)による西部地域小水力発電所改善計画(ネパール)において、改修した小水力発電所2か所(以下「両発電所」という。)の運転実績が目標値に達しておらず基幹送配電網への同期等も行われていないこと、草の根・人間の安全保障無償資金協力(以下「草の根無償」という。)によるキゴマ州キゴマ県ミャタゾ・ニャルバンダ中学校女子寮建設計画及びタンガ州ハンデニ県ミシマ中学校学生寮建設計画(タンザニア連合共和国)において、女子寮等が完成していないこと、草の根無償によるンクワンクワヌア地区保健センター建設計画(ガーナ共和国)において、保健センターが完成していないことなどにより、事業の目的が十分に達成されていない状況となっていて援助の効果が十分に発現していない事態、及び草の根無償によるザブハン県バヤンハイルハン郡病院改修計画等39事業(モンゴル国)において、贈与額の一部が事業完了後も長期間滞留していた事態が見受けられた。
したがって、外務大臣及び独立行政法人国際協力機構理事長に対して令和6年10月に、会計検査院法第36条の規定により、次のとおり意見を表示した。
ア カンボジア王国のメコン地域通信基幹ネットワーク整備事業については、機構において、事業実施機関に対して、同国内における通信需要の変化等を踏まえて、低調となっている光ケーブル等の活用を検討するよう働きかけるとともに、当該事業における事態を踏まえて、今後、技術の進展等の早い分野で事業の遅延等が生ずる場合、事業実施期間中において当該事業が置かれている状況を確認して、事業実施上の条件の見直しなどの対応を検討すること
イ ネパールの西部地域小水力発電所改善計画については、機構において、事業実施機関に対して、両発電所を有効に活用できるよう基幹送配電系統への同期工事を着実に行うよう働きかけるとともに、当該計画における事態を踏まえて、今後、無償資金協力で基幹送配電系統に接続されていない地域における小水力発電所の改修等を実施するに当たり、基幹送配電系統の拡大の状況を把握した場合、必要な対応を迅速に執ることができるよう、事業実施前や事業実施期間中のみならず、事業期間終了後に問題が確認された場合においても事業に影響を与える周辺事情の変化等の把握に努めること
ウ タンザニア連合共和国のキゴマ州キゴマ県ミャタゾ・ニャルバンダ中学校女子寮建設計画及びタンガ州ハンデニ県ミシマ中学校学生寮建設計画については、外務省において、両事業が進捗するよう事業実施機関等のみならず中央政府機関に対しても草の根無償の重要性の理解を求めることや状況改善に向けた協力を要請することなどを含め引き続き働きかけを行うこと、当該計画における事態を踏まえて、今後、草の根無償を実施するに当たり、学生寮の建設において両事業のような長期間進捗が見られない場合、在外公館に対して事業進捗に向けた取組等をより一層行うよう指導すること
エ ガーナ共和国のンクワンクワヌア地区保健センター建設計画については、外務省において、事業実施機関等に対して、速やかに工事を再開するなどして施設を完成させるよう働きかけるなどすること、当該計画における事態を踏まえて、今後、草の根無償を実施するに当たり、保健センター等の建設工事を実施する際に、贈与資金の範囲内では工事が完了できない状況を認識した場合、事業実施機関等に対して資金計画等を速やかに見直させるなどの働きかけを行うこと
オ モンゴル国のザブハン県バヤンハイルハン郡病院改修計画等39事業については、外務省において、当該計画における事態を踏まえて、今後、草の根無償を実施するに当たり、供与済み未使用資金の返納手続の作業期限の目安をガイドライン等に定めて在外公館に周知徹底するとともに、草の根無償の各事業における供与済み未使用資金の返納手続の進捗状況等を適切に確認できるような体制を整備すること
本院は、外務本省及び機構本部において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、外務省及び機構は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア カンボジア王国のメコン地域通信基幹ネットワーク整備事業については、機構において、事業実施機関等に対して、低調となっている光ケーブル等の活用を検討するよう働きかけを行った。その結果、7年2月に当該光ケーブルの伝送容量の向上のための費用が組み込まれた事業実施機関の予算計画がカンボジア王国政府の監督官庁に承認された。また、機構は、同年4月に関係部署に対して通知を発して、今後、技術の進展等の早い分野で事業の遅延等が生ずる場合、事業実施期間中において当該事業が置かれている状況を確認して、事業実施上の条件の見直しなどの対応を検討することとした。
イ ネパールの西部地域小水力発電所改善計画については、機構において、事業実施機関等に対して、両発電所を有効に活用できるよう基幹送配電系統への同期工事を着実に行うよう働きかけを行った。その結果、7年9月に、基幹送配電系統への同期工事が完了した。また、機構は、同年4月に関係部署に対して通知を発して、今後、無償資金協力で基幹送配電系統に接続されていない地域における小水力発電所の改修等を実施するに当たり、基幹送配電系統の拡大の状況を把握した場合、必要な対応を迅速に執ることができるよう、事業実施前や事業実施期間中のみならず、事業期間終了後に問題が確認された場合においても事業に影響を与える周辺事情の変化等の把握に努めることとした。
ウ タンザニア連合共和国のキゴマ州キゴマ県ミャタゾ・ニャルバンダ中学校女子寮建設計画及びタンガ州ハンデニ県ミシマ中学校学生寮建設計画については、外務省において、事業実施機関、中央政府機関等に対して、両事業が進捗するよう草の根無償の重要性の理解を求めることや状況改善に向けた協力を要請することなどを含め引き続き働きかけを行った。その結果、7年6月に3校のうちミャタゾ中学校の女子寮が完成した。また、外務省は、同月に在外公館に対して通知を発して、今後、草の根無償を実施するに当たり、学生寮の建設において両事業のような長期間進捗が見られない場合、事業進捗に向けた取組等をより一層行うよう指導した。
エ ガーナ共和国のンクワンクワヌア地区保健センター建設計画については、外務省において、事業実施機関等に対して、速やかに工事を再開するなどして施設を完成させるよう働きかけを行った。その結果、保健センター施設の完成に向けた工事は、7年8月までに再開されていた。また、外務省は、同年6月に在外公館に対して通知を発して、今後、草の根無償を実施するに当たり、保健センター等の建設工事を実施する際に、贈与資金の範囲内では工事が完了できない状況を認識した場合、事業実施機関等に対して資金計画等を速やかに見直させるなどの働きかけを行うこととした。
オ モンゴル国のザブハン県バヤンハイルハン郡病院改修計画等39事業については、外務省において、6年度末に、草の根無償の各事業における供与済み未使用資金の返納手続の進捗状況等を毎年度、在外公館から外務本省へ報告させ、確認できる体制を整備するとともに、7年7月に「草の根・人間の安全保障無償資金協力ガイドライン」を改訂し、供与済み未使用資金の返納手続の作業期限の目安を事業完了から6か月以内と定めて、同月に在外公館に対して通知を発して周知徹底した。
一方、外務省は、ウの3校のうち進捗していないニャルバンダ中学校の女子寮建設及びミシマ中学校の学生寮建設について、事業実施機関、中央政府機関等に対して、事業が進捗するよう引き続き働きかけを行うこととしている。