• 令和6年度
  • 第3章 個別の検査結果
  • 第1節 省庁別の検査結果
  • 第6 厚生労働省
  • 不当事項
  • 保険料

労働保険の保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの[23労働局](76)


会計名及び科目
労働保険特別会計(徴収勘定) (款)保険収入 (項)保険料収入
部局等
23労働局
保険料納付義務者
徴収不足があった事業主数 326事業主
徴収過大があった事業主数 47事業主
徴収過不足額
徴収不足額 140,217,504円(令和3年度~6年度)
徴収過大額 17,479,310円(令和3年度~6年度)

1 保険料の概要

(1) 労働保険

労働保険は、労働者災害補償保険(以下「労災保険」という。)及び雇用保険を総称するものである。このうち、①労災保険は、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)等に基づき、労働者の業務上の事由又は通勤による負傷、疾病等に対する療養補償給付等を行う保険である。また、②雇用保険は、雇用保険法(昭和49年法律第116号)等に基づき、労働者の失業等に対する失業等給付、雇用安定事業等を行う保険である。

(2) 保険料の徴収

政府は、「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」(昭和44年法律第84号。以下「徴収法」という。)等に基づき、労働保険の事業に要する費用に充てるため、保険料を徴収することとなっている。そして、保険料は、①労災保険分については事業主が負担して、②雇用保険分については、失業等給付等に充てる部分を労働者と事業主とが折半して負担し、雇用安定事業等に充てる部分を事業主が負担して、①と②のいずれも事業主が納付することとなっている。

保険料の納付は、原則として次のとおり行われることとなっている。

ア 事業主は、毎年度の6月1日から40日以内に、都道府県労働局(以下「労働局」という。)に対して、その年度の労働者に支払う賃金総額の見込額に保険料率(注1)を乗じて算定した概算保険料を申告して、納付する。

イ 事業主は、次の年度の6月1日から40日以内に、労働局に対して、前年度に実際に支払った賃金総額に基づいて算定した確定保険料申告書を提出する。

ウ 労働局は、この申告書の記載内容を審査して、その結果に基づき保険料の過不足分が精算される。

そして、労働局は、必要に応じて、事業主に徴収法に基づく実地調査を行うなどして、保険料の算定等について調査確認や指導を行っている。

この労働保険の保険料の令和6年度の収納済額は4兆1892億余円に上っている。

(注1)
保険料率  労災保険率と雇用保険率に分かれており、それぞれ次のとおりである。

① 労災保険率は、労災保険の適用を受ける全ての事業の過去3年間の業務災害及び通勤災害に係る災害率等を考慮して事業の種類ごとに定められており、令和3年度から6年度までは最低1000分の2.5から最高1000分の88までとなっている。

② 雇用保険率は、失業等給付、雇用安定事業等に要する費用を考慮して定められており、3年度は1000分の9(ただし、農林、水産等の事業は1000分の11、建設の事業(土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体又はその準備の事業をいう。以下同じ。)は1000分の12)、4年度は、4年4月1日から9月30日までの期間が1000分の9.5(ただし、農林、水産等の事業は1000分の11.5、建設の事業は1000分の12.5)、同年10月1日から5年3月31日までの期間が1000分の13.5(ただし、農林、水産等の事業は1000分の15.5、建設の事業は1000分の16.5)、5年度及び6年度は、1000分の15.5(ただし、農林、水産等の事業は1000分の17.5、建設の事業は1000分の18.5)となっている。

(3) 労災保険及び雇用保険の適用対象

労災保険は、原則として、労働者を使用する事業に適用されることとなっており、これらの事業に使用される全ての労働者が保険給付の対象となる。

また、雇用保険は、1週間の所定労働時間が20時間未満である者、継続して31日以上雇用されることが見込まれない者等には適用されないこととなっているため、これらの者を被保険者としない取扱いとなっている。したがって、常時雇用される一般労働者のほか、いわゆるパートタイム労働者等の短時間就労者のうち、1週間の所定労働時間が20時間以上で継続して31日以上雇用されることが見込まれることなどの要件を満たす者が被保険者となる。

(4) 一括有期事業の概要等

労災保険の適用を受ける事業のうち、建設の事業や立木の伐採の事業のように、事業の期間が予定される事業(以下「有期事業」という。)については、原則として、一つの工事現場等を一つの事業単位とすることとなっている。

ただし、徴収法等によれば、事務の簡素化を図ることを目的として、二つ以上の有期事業について、一定の要件に該当する場合については、それぞれの有期事業を一括して一つの事業とみなすこととされている(以下、一つの事業とみなされる有期事業を「一括有期事業」という。一括有期事業の概要等及び後述2(2)イの事態については、後掲「労働者災害補償保険の保険料について、一括有期事業等に係る保険料の適切な算定等に関して事業主等に周知徹底するなどするよう是正改善の処置を求め、及び算定基礎調査の対象とする事業主の選定方法として確定保険料等のデータを突合するなどの方法をマニュアル等で示すなどの体制整備を図るよう意見を表示したもの」参照)。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、合規性等の観点から、事業主の雇用する労働者の保険加入が適正になされているか、確定保険料申告書が適切に作成されているかなどに着眼して、全国47労働局のうち14労働局(注2)管内の364事業主を選定するとともに、47労働局管内で一括有期事業に係る労災保険分の保険料の申告が適切に行われていないおそれがあるなどの1,089事業主を選定して、計1,396事業主(純計)に係る3年度から6年度までの間における各労働局の保険料の徴収の適否について検査した。

検査に当たっては、上記14労働局管内の364事業主について、14労働局において事業主から提出された確定保険料申告書等の書類により会計実地検査を行い、適正でないと思われる事態があった場合には、更に当該労働局に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

また、47労働局管内で一括有期事業に係る労災保険分の保険料の申告が適切に行われていないおそれがあるなどの1,089事業主について、47労働局のうち18労働局(注3)において会計実地検査を行うとともに、47労働局から、一括有期事業に係る労災保険分の保険料の徴収に係る調書の提出を受けて、その内容を確認するなどの方法により検査した。

(注2)
14労働局  岩手、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨、愛知、滋賀、京都、大阪、奈良、岡山、福岡、宮崎各労働局
(注3)
18労働局  青森、岩手、福島、栃木、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨、愛知、滋賀、京都、大阪、奈良、岡山、愛媛、福岡、宮崎各労働局

(2) 検査の結果

検査の結果、次のア及びイのとおり、前記1,396事業主のうち、23労働局管内の326事業主(注4)について徴収額が140,217,504円不足しており、また、14労働局管内の47事業主について徴収額が17,479,310円過大になっていて、不当と認められる。

ア 事業主が、雇用保険の加入要件を満たす短時間就労者を加入させておらず、その賃金を雇用保険分の保険料の算定の際に賃金総額に含めるべきところ、これを含めていないなどしている事態、及び雇用保険の加入要件を満たしていない短時間就労者の賃金を雇用保険分の保険料の算定の際に賃金総額から除くべきところ、これを含めるなどしている事態が見受けられた。このため、14労働局管内の202事業主について徴収額が98,970,965円不足しており、また、13労働局管内の39事業主について徴収額が16,671,937円過大となっていた。

イ 事業主が、概算保険料を納付した年度内に終了した一括有期事業に該当する工事の全部又は一部を一括有期事業報告書に記載しておらず、これらの工事の請負金額を含めることなく賃金総額を算定して、この額に基づき労災保険分の保険料を算定するなどしている事態、及び労災保険率の適用を誤るなどしている事態が見受けられた。このため、23労働局管内の130事業主について徴収額が41,246,539円不足しており、また、7労働局管内の8事業主について徴収額が807,373円過大となっていた。

(注4)
事業主の重複があるため、徴収額が不足していた事業主数326について、ア及びイの事業主数202と130とを合計しても一致しない。

このような事態が生じていたのは、事業主が確定保険料申告書、一括有期事業報告書等を提出するに当たり、制度を十分に理解していなかったことや計算誤りをしたことにより、保険料算定の基礎となる賃金総額、請負金額等の記載が事実と相違するなどしていたのに、23労働局においてこれに対する調査確認及び指導が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

大阪労働局は、警備業を営む事業主Aから、令和5年度の労働保険の保険料について、雇用保険の被保険者28人に対して支払った賃金総額は56,438千円、その雇用保険分の保険料は874,789円であるとした確定保険料申告書の提出を受けて、これに基づき、当該保険料を徴収していた。

しかし、事業主Aは、雇用保険の加入要件を満たす短時間就労者81人を同保険に加入させておらず、これらの者に対して支払った賃金189,584千円を確定保険料申告書に記載する賃金総額に含めるべきところ、これを含めていなかった。このため、雇用保険分の保険料2,938,552円が徴収不足となっていた。

なお、これらの徴収不足額及び徴収過大額については、本院の指摘により、全て徴収決定又は還付決定の処置が執られた。

これらの徴収不足額及び徴収過大額を労働局ごとに示すと次のとおりである。

労働局名
本院の調査に係る事業主数
徴収不足があった事業主数
徴収過大があった事業主数
徴収不足額
徴収過大額(△)
     
千円
青森
15
6
1,437
岩手
36
11
5
2,753
△998
宮城
32
8
1,567
茨城
27
7
1,944
埼玉
48
24
4
15,738
△1,231
千葉
63
29
2
13,052
△364
東京
85
40
6
28,487
△8,186
神奈川
63
28
3
9,557
△176
富山
22
2
992
山梨
24
8
1,002
岐阜
32
4
2,472
愛知
52
17
3
5,016
△734
滋賀
38
13
4
3,017
△2,845
京都
84
18
1
8,990
△40
大阪
80
38
4
21,143
△1,276
奈良
30
13
1
5,963
△225
岡山
45
12
4
3,942
△159
広島
30
8
1
934
△20
愛媛
11
3
536
福岡
56
19
3
7,148
△144
宮崎
39
9
6
2,331
△1,074
鹿児島
30
5
603
沖縄
24
4
1,583
966
326
47
140,217
△17,479