農林水産省は、令和3、4両年度に、「新市場開拓に向けた水田リノベーション事業」のうち実需者ニーズ対応低コスト生産等支援事業(以下「低コスト生産等支援事業」という。)を実施する都道府県農業再生協議会に対して、農林水産物・食品輸出促進対策事業費補助金を交付している。「新市場開拓に向けた水田リノベーション事業実施要綱」等によれば、低コスト生産等支援事業は、水田農業を新たな需要拡大が期待される作物の生産等を行う農業へと刷新すべく、実需者ニーズに応えるための低コスト生産等の取組を支援するなどのものとされている。また、低コスト生産等支援事業において、助成対象とする作物は水田において主食用水稲を作付けせずに、基幹作として作付けされる、新市場開拓向けなどの麦、大豆及び高収益作物、子実用とうもろこし(以下、これらを合わせて「対象畑作物」という。)等とされている。そして、実需者ニーズに応えるための低コスト生産等に取り組む農業者(以下「助成対象者」という。)は対象畑作物ごとに助成対象とする低コスト生産等の取組(以下「対象取組」という。)を三つ以上行うこととされている。同省が作成した「新市場開拓に向けた水田リノベーション事業に係るQ&A」によると、地域農業再生協議会(以下「地域協議会」という。)は、助成対象者の対象取組の実施状況等について確認することとなっていて、確認に当たっては、作業日誌等の根拠書類を確認することや、現場で取組の実施状況等を確認することが想定されるなどとなっている。同省は、5年度から、低コスト生産等支援事業の後継事業として、畑作物産地形成促進事業を実施しており、経営所得安定対策等実施要綱によれば、実需者ニーズに応じるための低コスト生産等の取組を支援することとされている。そして、助成の基本的枠組みや実施手続等について低コスト生産等支援事業とおおむね同様となっている。
しかし、助成対象者が実施した対象取組には、多くの地域協議会が必要な品質や収量を得るために通常行うべき基本的な作業の内容等(以下「基本的内容等」という。)と認識している取組内容等が含まれていて、対象取組が低コスト生産等に対する効果を必ずしも十分に期待できるものとはなっておらず、支援が低コスト生産等のために効率的に行われていない事態、及び地域協議会において対象取組の実施状況等を確認するために必要な根拠書類(以下「実績確認書類」という。)の種類や、実績確認書類、現場等で確認をすべき事項を具体的に定めていなかったことなどから、対象取組の実施状況等が適切に確認されていない事態が見受けられた。
したがって、農林水産大臣に対して6年10月に、次のとおり意見を表示し及び改善の処置を要求した。
ア 対象取組について、低コスト生産等に対する効果が十分に期待できる内容等を検討すること(会計検査院法第36条の規定により意見を表示したもの)
イ 対象取組の実施状況等を適切に確認できるよう、実績確認書類の種類や、実績確認書類、現場等で確認をすべき事項を具体的に定めて、地域協議会等に周知すること(同法第36条の規定により改善の処置を要求したもの)
本院は、農林水産本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、農林水産省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 対象取組について低コスト生産等に対する効果が十分に期待できる内容等を検討し、その結果を踏まえて、6年12月に経営所得安定対策等実施要綱を改正するとともに、「畑作物産地形成促進事業に係るQ&A」を改訂して、多くの地域協議会が基本的内容等と認識している取組内容を対象取組から除くなどした。
イ 対象取組の実施状況等を適切に確認できるよう、6年12月に実績確認書類の種類や、実績確認書類、現場等で確認をすべき事項を具体的に定めて、7年2月までに「畑作物産地形成促進事業に係るQ&A」等により地域協議会等に周知した。