【意見を表示し及び改善の処置を要求したものの全文】
新市場開拓に向けた水田リノベーション事業等の実施について
(令和6年10月28日付け 農林水産大臣宛て)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示し及び改善の処置を要求する。
記
貴省は、食料・農業・農村基本計画(令和2年3月策定。以下「基本計画」という。)に基づき、麦、大豆、野菜等の生産について、食料自給率の向上に向けた課題と重点的に取り組むべき事項等に対応するための各種の施策を実施している。
基本計画によれば、輸入品に代替する需要が見込まれる小麦、堅調に需要が増加している大豆、加工・業務用需要に対応した野菜等の高収益作物について、国内外の需要の変化に的確に対応した生産・供給を計画的に進めるために、生産コストの削減等を進める必要があるとされている。
ア 新市場開拓に向けた水田リノベーション事業の概要
貴省は、令和3、4両年度に、「新市場開拓に向けた水田リノベーション事業」のうち実需者ニーズ対応低コスト生産等支援事業(以下「低コスト生産等支援事業」という。)を実施する都道府県農業再生協議会(注1)に対して、農林水産物・食品輸出促進対策事業費補助金を交付している。
「新市場開拓に向けた水田リノベーション事業実施要綱」(令和3年2政統第1912号農林水産事務次官依命通知。以下「水田リノベ要綱」という。)等によれば、低コスト生産等支援事業は、次のとおりとされている。
(ア) 水田農業を新たな需要拡大が期待される作物の生産等を行う農業へと刷新すべく、実需者ニーズに応えるための低コスト生産等の取組を支援する。
(イ) 水田リノベーション産地・実需協働プラン(注2)に基づき、地域農業再生協議会(注1)(以下「地域協議会」という。)が実需者ニーズに応えるための低コスト生産等に取り組む農業者(以下「助成対象者」という。)に対して助成を行うために必要な経費について、都道府県農業再生協議会が地域協議会に助成する。
また、貴省は、低コスト生産等支援事業における低コスト生産は基本計画における生産コストの削減と同義であるとしている。
イ 助成対象となる低コスト生産等の取組等
水田リノベ要綱等によれば、低コスト生産等支援事業において、助成対象とする作物は水田において主食用水稲を作付けせずに、基幹作として作付けされる、新市場開拓向けなどの麦、大豆及び高収益作物、子実用とうもろこし(以下、これらを合わせて「対象畑作物」という。)等とされている。また、助成額は低コスト生産等に取り組んだ面積(以下「取組面積」という。)に応じたものとなっており、対象畑作物の助成単価は取組面積10a当たり40,000円とされている。そして、低コスト生産等支援事業において、助成対象とする低コスト生産等の取組(以下「対象取組」という。)は表1のとおりとされており、助成対象者は対象畑作物ごとに対象取組を三つ以上行うこととされている。
表1 低コスト生産等支援事業の対象取組
対象畑作物 | 麦 | 大豆 | 高収益作物 | 子実用とうもろこし |
---|---|---|---|---|
対象取組 |
①融雪促進 ②新たに導入した品種に応じた栽培管理 ③ふく土・踏圧 ④難防除雑草対策 ⑤生育予測システムを活用した開花期・収穫期予測 ⑥効率的・効果的な施肥 ⑦重要病害虫の防除 ⑧排水対策管理 ⑨農業機械の共同利用 ⑩スマート農業機器の活用 |
①大豆300A技術 ②難防除雑草対策 ③土壌診断等を踏まえた施肥・土づくり ④新品種の導入 ⑤効率的な施肥 ⑥均平作業(傾斜均平) ⑦摘心栽培 ⑧畝間冠水 ⑨団地化の推進 ⑩化学肥料の使用量削減 ⑪化学農薬の使用量削減 ⑫排水対策 ⑬農業機械の共同利用 ⑭スマート農業機器の活用 |
①生物農薬の導入 ②農薬によらない病害虫対策 ③農薬によらない土壌消毒 ④農薬のドリフト対策 ⑤化学肥料の使用量削減 ⑥化学農薬の使用量削減 ⑦土壌診断等を踏まえた施肥・土づくり ⑧新品種の導入 ⑨排水対策 ⑩農業機械の共同利用 ⑪スマート農業機器の活用 |
①排水対策 ②均平作業(傾斜均平) ③堆肥の利用 ④効果的な施肥 ⑤農薬によらない病害虫対策 ⑥生物農薬の活用 ⑦難防除雑草対策 ⑧化学肥料の使用量削減 ⑨化学農薬の使用量削減 ⑩土壌診断等を踏まえた施肥・土づくり ⑪カビ毒の低減 ⑫農業機械の共同利用 ⑬スマート農業機器の活用 |
ウ 低コスト生産等支援事業の実施手続等
水田リノベ要綱等によれば、助成対象者は、低コスト生産等支援事業の助成の申請に当たり、実施する対象取組、取組面積等を記載した低コスト生産等に係る取組計画書(以下「取組計画書」という。)を地域協議会に提出することとされている。
そして、助成対象者は、取組計画書に基づく対象取組の実施状況等について、取組計画実施状況報告書(以下「取組報告書」という。)を作成し、地域協議会に報告することとされている。また、貴省が作成した「新市場開拓に向けた水田リノベーション事業に係るQ&A」によると、地域協議会は、助成対象者の対象取組の実施状況等について確認することとなっていて、確認に当たっては、作業日誌、写真、取組に用いた資材の購入伝票等の根拠書類を確認することや、現場で作付けや取組の実施状況等を確認することが想定されるなどとなっている。
貴省は、5年度から、低コスト生産等支援事業の後継事業として、助成対象者に対して水田活用直接支払交付金を交付する畑作物産地形成促進事業(以下「畑作物促進事業」という。)を実施している。
経営所得安定対策等実施要綱(平成23年22経営第7133号農林水産事務次官依命通知)によれば、畑作物促進事業は、畑作物の導入・定着により、水田農業を需要拡大が期待される畑作物を生産する農業へと転換すべく、実需者ニーズに応じるための低コスト生産等の取組を支援することとされている。そして、低コスト生産等支援事業の対象畑作物及び対象取組は、引き続き畑作物促進事業においても助成の対象となっていて、対象取組を三つ以上行うことなどの助成の基本的枠組みや実施手続等についても低コスト生産等支援事業とおおむね同様となっている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、合規性、効率性等の観点から、低コスト生産等支援事業における支援が助成対象者の低コスト生産等のために効率的に行われているか、助成対象者の対象取組の実施状況等についての確認は適切に実施されているかなどに着眼して、16道府県農業再生協議会(注3)管内の174地域協議会が3、4両年度に実施した低コスト生産等支援事業において助成対象者延べ12,389者に対して交付された助成額計273億6940万余円(国庫補助金相当額同額)を対象として検査を実施した。検査に当たっては、貴省本省、16道府県農業再生協議会及び77地域協議会において、取組計画書、取組報告書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、77地域協議会を含む174地域協議会から低コスト生産等支援事業の実施状況等についての調書等の提出を受けて、その内容を確認するなどして検査した。
(検査の結果)
検査したところ、上記174地域協議会の助成対象者延べ12,389者における対象畑作物は、麦が5,974者、大豆が4,412者、高収益作物が1,823者、子実用とうもろこしが180者となっていた。そして、これらの助成対象者が実施したとしている対象取組についてみたところ、次のような事態が見受けられた。
低コスト生産等支援事業は、助成対象者の低コスト生産等の取組を支援するものであることから、対象取組は、助成対象者の低コスト生産等に対する効果が十分に期待できるものとなっていることが重要である。そこで、どのような取組を対象取組として設定したかについて確認したところ、貴省は、日常的に業務を行う中で有していた知見を基本に、都道府県が公表している各農産物の栽培指針等を参照するなどして、低コスト生産等に資すると考えられるものを対象取組として設定したとしているが、各対象取組が具体的にどのように低コスト生産等に資するかなどについては明確にしていなかった。これについて、貴省は、低コスト生産等については、対象取組の効果は様々であり、個々の助成対象者における対象取組を実施した場合及び実施しなかった場合それぞれの生産コストの把握が困難であることなどから、対象畑作物の生産コスト等において対象取組が占める寄与度を特定することなどが困難であるためとしている。
そして、助成対象者が助成の申請に当たり作成した取組計画書をみたところ、助成対象者は実施しようとする対象取組を表1に掲げられているものの中から選択するなどしていて、どのように対象取組を実施して低コスト生産等を図るかなどは把握できないものとなっていた。また、取組報告書についても、低コスト生産等が図られたかを直接把握する項目は示されておらず、助成対象者によってどのように対象取組が実施されて低コスト生産等が図られたのかなどは把握できないものとなっていた。
上記のとおり、助成対象者における対象取組の実施による低コスト生産等に対する効果が把握できないなどの状況となっている一方で、助成対象者が対象畑作物を生産し、出荷するために行う農作業には、必要な品質や収量を得るために通常行うべき基本的な作業(以下、基本的な作業の内容等を「基本的内容等」という。)もあり、基本的内容等を対象取組として支援した場合、低コスト生産等に対する効果は必ずしも十分に期待できるものとはならないと思料される。そこで、助成対象者の取組実績を基に、地域における対象畑作物の生産の実態等を踏まえて、表1に掲げる各対象取組を更に詳細な取組内容等に分類した上で、174地域協議会のうち、各対象取組を実施した助成対象者がいる地域協議会に対して、基本的内容等と認識しているものを聴取したところ、表2のとおりとなっていて、前記の助成対象者延べ12,389者のうち、171地域協議会の延べ11,857者が実施した対象取組には、多くの地域協議会が基本的内容等と認識している取組内容等が含まれていた。したがって、各対象取組が具体的にどのように低コスト生産等に資するかなどについて明確となっていないことなども踏まえると、実需者ニーズに応えるための低コスト生産等の取組を効率的に支援するために、これらの取組内容等を対象取組として設定することについて改めて検討する必要があると思料された。
そして、上記の助成対象者延べ11,857者について、多くの地域協議会が基本的内容等と認識している取組内容等を対象取組から除くと、実施した対象取組が二つ以下となり、要件を満たさず、支援が低コスト生産等のために効率的に行われていない助成対象者は、168地域協議会における延べ11,565者(助成額計256億2747万余円、国庫補助金相当額同額)となる。
表2 地域協議会の多くが基本的内容等と認識している取組内容等の状況
対象畑作物
(取組を実施した助成対象者がいる地域協議会数) |
対象取組 | 取組内容等 |
聴取した地域協議会数
|
基本的内容等と認識している地域協議会数
|
基本的内容等と認識している地域協議会の割合
|
基本的内容等と認識している取組内容等の対象取組を実施したとしている助成対象者数
|
|
---|---|---|---|---|---|---|---|
(A) | (B) | (B)/(A) | |||||
麦
(96) |
②新たに導入した品種に応じた栽培管理
|
新たな品種に応じた施肥
|
助成対象年度より前の年度に当該品種を作付けている場合
|
8 | 7 | 87.5% | 7 |
新たな品種に応じた防除
|
助成対象年度に初めて当該品種を作付けた場合
|
11 | 9 | 81.8% | |||
助成対象年度より前の年度に当該品種を作付けている場合
|
7 | 6 | 85.7% | ||||
③ふく土・踏圧
|
カルチ・テーラーによるふく土 | 30 | 27 | 90.0% | 1,798 | ||
カルチ・テーラーによる踏圧 | 53 | 47 | 88.6% | ||||
④難防除雑草対策
|
薬剤によるスズメノテッポウ、ネズミムギ、カラスムギ等の防除
|
通常の雑草防除と合わせて難防除雑草を防除する場合
|
68 | 64 | 94.1% | 3,669 | |
難防除雑草として例示されている以外の雑草の防除 | 10 | 10 | 100% | ||||
⑦重要病害虫の防除
|
赤カビ病、うどんこ病、赤さび病及び縞萎縮病の防除
|
通常の病害虫防除と合わせて重要病害虫を防除する場合
|
74 | 71 | 95.9% | 5,111 | |
重要病害虫に特化して防除する場合
|
42 | 37 | 88.0% | ||||
重要病害虫として例示されている以外の病害虫の防除 | 15 | 14 | 93.3% | ||||
⑧排水対策管理
|
額縁明渠の点検・修繕 | 68 | 65 | 95.5% | 1,617 | ||
その他の排水設備等の点検・修繕 | 36 | 36 | 100.0% | ||||
⑨農業機械の共同利用
|
農業機械の共同利用等 | 助成対象年度より前の年度から共同利用等を行っている場合 | 52 | 47 | 90.3% | 334 | |
⑩スマート農業機器の活用
|
ドローンや収量コンバイン等の活用 | 助成対象年度より前の年度から活用を行っている場合 | 58 | 49 | 84.4% | 86 | |
大豆 (94) |
②難防除雑草対策
|
薬剤による帰化アサガオ類、アレチウリ等の防除
|
通常の雑草防除と合わせて難防除雑草を防除する場合
|
75 | 72 | 96.0% | 2,565 |
難防除雑草に特化して防除する場合
|
33 | 27 | 81.8% | ||||
難防除雑草として例示されている以外の雑草の防除 | 13 | 11 | 84.6% | ||||
③土壌診断等を踏まえた施肥・土づくり
|
土壌診断等に基づく施肥 | 62 | 51 | 82.2% | 1,245 | ||
⑨団地化の推進
|
団地化の実施 | 22 | 20 | 90.9% | 671 | ||
⑫排水対策
|
額縁明渠 | 53 | 50 | 94.3% | 3,081 | ||
心土破砕 | 62 | 55 | 88.7% | ||||
⑬農業機械の共同利用
|
農業機械の共同利用等 | 助成対象年度より前の年度から共同利用等を行っている場合 | 60 | 55 | 91.6% | 1,073 | |
高収益作物
(116) |
③農薬によらない土壌消毒
|
太陽熱土壌消毒 | 13 | 11 | 84.6% | 38 | |
⑦土壌診断等を踏まえた施肥・土づくり
|
土壌診断等に基づく施肥 | 87 | 74 | 85.0% | 971 | ||
土壌診断等に基づく有機質資材や土壌改良資材の施用 | 60 | 50 | 83.3% | ||||
⑨排水対策
|
額縁明渠 | 68 | 63 | 92.6% | 1,340 | ||
心土破砕 | 58 | 48 | 82.7% | ||||
⑩農業機械の共同利用
|
農業機械の共同利用等
|
助成対象年度より前の年度から共同利用等を行っている場合
|
43 | 36 | 83.7% | 245 | |
子実用とうもろこし
(31) |
①排水対策
|
額縁明渠 | 9 | 8 | 88.8% | 156 | |
心土破砕 | 24 | 23 | 95.8% | ||||
④効果的な施肥
|
適切な追肥の実施 | 17 | 17 | 100.0% | 89 | ||
⑦難防除雑草対策
|
薬剤によるイチビ、アレチウリ、ワルナスビ、帰化アサガオ類等の防除
|
通常の雑草防除と合わせて難防除雑草を防除する場合
|
17 | 17 | 100.0% | 68 | |
難防除雑草として例示されている以外の雑草の防除 | 1 | 1 | 100.0% | ||||
⑩土壌診断等を踏まえた施肥・土づくり
|
土壌診断等に基づく施肥 | 14 | 13 | 92.8% | 50 | ||
土壌診断等に基づく有機質資材や土壌改良資材の施用 | 12 | 12 | 100.0% | ||||
⑫農業機械の共同利用
|
農業機械の共同利用等
|
助成対象年度より前の年度から共同利用等を行っている場合
|
7 | 6 | 85.7% | 25 | |
⑬スマート農業機器の活用
|
ドローンや収量コンバイン等の活用
|
助成対象年度より前の年度から活用を行っている場合
|
12 | 11 | 91.6% | 1 |
地域協議会は、助成対象者の対象取組の実施状況等について、現場や根拠書類を確認することが想定されるなどとされているが、水田リノベ要綱等において、確認をすべき書類、事項等について具体的には定められていない。
一方、低コスト生産等支援事業は、実際に対象取組を実施した取組面積に応じて助成を行うものであり、地域協議会は対象取組の実施状況等について、現場や取組報告書等において、その根拠となる、対象取組を実施した日付、農地、取組面積、取組に用いた資材の使用量等を確認する必要がある。
そこで、174地域協議会における対象取組の実施状況等の確認状況についてみたところ、全ての地域協議会において、助成対象者から作業日誌、取組に用いた資材の購入伝票、写真等のうち、いずれかの根拠書類の提出を受けるなどしていた。
しかし、130地域協議会において、対象取組の実施状況等を確認するために必要な根拠書類(以下「実績確認書類」という。)の種類や、実績確認書類、現場等で確認をすべき事項を具体的に定めていなかったことなどから、助成対象者延べ7,351者については、助成対象者から提出された実績確認書類等においては対象取組を実施した日付、農地、取組面積、取組に用いた資材の使用量等が特定できておらず、また、現場においては対象取組の実施状況等を確認していなかったため、実施状況等が明確に確認できない対象取組が見受けられた。そして、これら7,351者について、実績確認書類等においては実施状況等が明確に確認できない対象取組があるにもかかわらず、130地域協議会は、取組面積全てに対して対象取組が実施されたとしていた。
助成対象者延べ7,351者について、実施したとされている対象取組から実施状況等が明確に確認できないものを除くと、対象取組が二つ以下となり、要件を満たさなくなる助成対象者は、130地域協議会における延べ7,328者(助成額計140億2010万余円、国庫補助金相当額同額)となる。
上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
大仙市農業再生協議会(秋田県大仙市所在)の助成対象者Aは、令和4年度に、麦について、取組計画書に基づき、効率的・効果的な施肥、重要病害虫の防除及び農業機械の共同利用の三つの対象取組を行ったとして、取組報告書と合わせて実績確認書類として、作業日誌、機械装置等の共同利用に関する協定書等を同協議会に提出していた。そして、同協議会は、当該実績確認書類等を確認し、三つの対象取組が報告された取組面積273a全てにおいて実施されたとして、助成額1,092,000円(国庫補助金相当額同額)を交付していた。
しかし、助成対象者Aから農業機械の共同利用の実績確認書類として提出された機械装置等の共同利用に関する協定書を確認したところ、4年産の麦について、協定の対象者、協定年月等のみの記載にとどまっており、当該協定書では、共同利用する農業機械や当該農業機械を使用する作業を確認することができず、作業日誌においても、いつ、どの作業に対して農業機械の共同利用がされたのかを明確に把握することができなかった。また、残りの二つの対象取組についても、作業日誌において、どの農地において作業を行ったか明確に確認できるものとなっていなかった。
(1)及び(2)の事態について、重複分を除くと、172地域協議会における延べ12,179者(助成額計268億3151万余円、国庫補助金相当額同額)となる。
(改善を必要とする事態)
対象取組が低コスト生産等に対する効果を必ずしも十分に期待できるものとはなっておらず、支援が低コスト生産等のために効率的に行われていない事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。また、対象取組の実施状況等が適切に確認されていない事態は適切ではなく、改善を図る要があると認められる。
(発生原因)
このような事態が生じているのは、地域協議会、助成対象者等において、低コスト生産等支援事業の趣旨や制度についての理解が十分でなかったことにもよるが、貴省において次のことなどによると認められる。
ア 対象取組について、低コスト生産等に対する効果が十分に期待できる取組への支援とすることの重要性についての理解が十分でなく、対象取組の内容等についての検討が十分でないこと
イ 対象取組の実施状況等について、実績確認書類の種類や、実績確認書類、現場等で確認をすべき事項を具体的に定めることの重要性についての理解が十分でないこと
貴省は、3、4両年度の低コスト生産等支援事業に引き続き、5年度以降も畑作物促進事業を実施して、農業者における麦、大豆、高収益作物及び子実用とうもろこしの低コスト生産等の取組を支援していくこととしている。そして、畑作物促進事業では、低コスト生産等支援事業の対象畑作物及び対象取組は引き続き助成の対象となっていて、対象取組を三つ以上行うことなどの助成の基本的枠組みや実施手続等についても低コスト生産等支援事業とおおむね同様となっている。
ついては、貴省において、低コスト生産等支援事業における事態を踏まえて、畑作物促進事業について、農業者における低コスト生産等の取組に対する支援が効率的かつ適切に実施されるよう、次のとおり意見を表示し及び改善の処置を要求する。
ア 対象取組について、低コスト生産等に対する効果が十分に期待できる内容等を検討すること(会計検査院法第36条の規定により意見を表示するもの)
イ 対象取組の実施状況等を適切に確認できるよう、実績確認書類の種類や、実績確認書類、現場等で確認をすべき事項を具体的に定めて、地域協議会等に周知すること(同法第36条の規定により改善の処置を要求するもの)