農林水産省は、鳥獣被害防止総合対策交付金交付等要綱等(以下「要綱等」という。)に基づき、事業主体に対して鳥獣被害防止総合対策交付金を交付している。要綱等によれば、鳥獣被害防止総合支援事業等については、計画期間の開始前年度等における対象鳥獣ごとの被害面積、被害金額等の実績値(以下「基準値」という。)等を踏まえた軽減目標(計画期間の最終年度(以下「目標年度」という。)における対象鳥獣ごとの被害面積、被害金額等の目標値)を記入した被害防止計画を市町村が作成することが要件とされており、この軽減目標を事業の目標とすることなどとされている。また、事業主体は、軽減目標の達成状況について、目標年度の翌年度に自ら評価を行い、都道府県知事に報告すること、当該達成状況が低調な場合(基準値、目標値及び目標年度の実績値から算出した達成率が70%未満の場合)には、改善計画を作成することなどとされている。
しかし、被害面積について被害割合(注)等を考慮せずに実被害面積より大きく算出していたこと、被害金額について実被害量を用いずに実被害金額より少なく算出していたことなどにより軽減目標の達成状況が適切に把握されていない事態、及び各市町村の区域内において、その被害金額が被害金額全体の2割以上を占めるシカ又はイノシシ(以下「大きな被害を及ぼしている鳥獣」という。)について、対象鳥獣ごとにみると軽減目標の達成状況が低調なものがあるにもかかわらず、全ての対象鳥獣に係る各数値をそれぞれ合計して算出した達成率(以下「合算達成率」という。)が70%以上であることなどを理由として改善計画の作成及び次期被害防止計画(以下「次期計画」という。)における取組の強化のいずれも行われていない事態が見受けられた。
したがって、農林水産大臣に対して令和6年10月に、会計検査院法第36条の規定により次のとおり改善の処置を要求した。
ア 事業主体及び市町村に対して実被害面積及び実被害金額の調査及び算出の方法を分かりやすく示すとともに、事業主体、市町村及び都道府県に対して当該調査及び算出が適切なものとなっているか十分に確認するよう指導すること
イ 事業主体及び市町村に対して、合算達成率が70%未満の場合のほか、大きな被害を及ぼしている鳥獣について、対象鳥獣ごとにみると達成率が70%未満の場合には、改善計画の作成又は次期計画における取組の強化を行うよう周知すること
本院は、農林水産本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、農林水産省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 7年4月に「野生鳥獣による農作物の被害状況調査要領」を改正するなどして、被害面積及び被害金額は実被害面積及び実被害金額を用いて算出することを明確にし、これらの算出が適切なものとなっているかを確認するためのチェックリストを同要領に追加することなどにより、事業主体及び市町村に対して実被害面積及び実被害金額の調査及び算出の方法を分かりやすく示すとともに、地方農政局等を通じて事業主体、市町村及び都道府県に対して当該調査及び算出が適切なものとなっているか十分に確認するよう指導した。
イ 7年4月に鳥獣被害防止総合対策交付金実施要領を改正するなどして、合算達成率が70%未満の場合のほか、大きな被害を及ぼしている鳥獣について、対象鳥獣ごとの達成率が70%未満の場合には、改善計画の作成又は次期計画における取組の強化を行うよう地方農政局等を通じて事業主体及び市町村に対して周知した。