国土交通省は、緊急輸送道路については、道路の耐震性が確保されているとともに、地震時においてネットワークとして機能することが重要であるとしており、県庁所在地等の都市間や、空港等の災害発生以降に活動拠点となる施設等(以下「防災拠点」といい、緊急物資等の輸送を確保するために必要な複数の防災拠点の中から特に重要な防災拠点として定めたものを「重要な防災拠点」という。)間をつなぎ、代替性(迂回路や他の交通機関)等の確保に努めることなどとしている(以下、重要な防災拠点間をつなぐ路線を「重要防災路線」という。)。また、同省は、緊急輸送道路にある橋りょう(以下「緊急道路橋」という。)の耐震補強を実施するに当たり、平成7年兵庫県南部地震と同程度の地震動に対しても落橋等の甚大な被害を防止する耐震性能(以下「落橋等防止性能」という。)の確保を最優先する取組を実施してきた。そして、落橋等防止性能が確保された緊急道路橋については、同地震と同程度の地震動に対しても当該橋りょうの損傷を軽微にとどめて速やかに緊急物資等の輸送路等としての機能を回復することができる耐震性能(以下「機能回復性能」という。)を確保するために耐震補強を進めている(以下、落橋等防止性能又は機能回復性能を確保するに至っておらず、必要な耐震対策が完了していない緊急道路橋を「要対策橋りょう」という。)。また、国土交通省防災業務計画によれば、災害発生以降における応急工事に関する事項として、応急用資機材を確保するとともに、それらの輸送経路を定めること、地方公共団体が自ら管理する施設等について迅速な応急復旧(注)を実施することなどとされている。
しかし、事業主体等において、優先して耐震補強を実施する要対策橋りょうの選定に当たり地震時に緊急輸送道路のネットワークとしての機能に及ぼす影響を十分に考慮していない事態、及び要対策橋りょうが地震時に被災した場合の迅速な応急復旧を実施するための体制が十分なものとなっていない事態が見受けられた。
したがって、国土交通大臣に対して令和6年10月に、会計検査院法第36条の規定により次のとおり意見を表示した。
ア 優先して耐震補強を実施する要対策橋りょうの選定に当たり、まずは落橋等防止性能が確保されていない橋りょうを最優先すること、次に重要な防災拠点を事業主体が定めること並びに重要防災路線及びこのうち迂回路がない路線にある要対策橋りょうを優先することの重要性を事業主体に対して十分に説明すること。また、これらを考慮した優先して耐震補強を実施する要対策橋りょうの選定に係る優先順位等の決定方針を作成して、これを地方整備局等に周知徹底するとともに、地方整備局等を通じて地方公共団体に対しても同様に助言等することにより、事業主体において効率的に耐震補強を実施できるよう検討を促すこと
イ 要対策橋りょうの位置、応急用資材の保管場所の位置等の地震時に必要となる重要な情報に基づき、これらを網羅的に把握するための地図等を作成することなどについて、具体的に示すことにより、地震時に被災した緊急道路橋の迅速な応急復旧や代替路の設定等を実施できるよう、地方整備局等に周知徹底するとともに、地方整備局等を通じて地方公共団体に対しても同様に助言等すること
本院は、国土交通本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、国土交通省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 落橋等防止性能が確保されていない橋りょうを最優先すること、次に重要な防災拠点を事業主体が定めて重要防災路線及びこのうち迂回路がない路線にある要対策橋りょうを優先することなどを明確に示した耐震補強を実施する要対策橋りょうの選定に係る優先順位等の決定方針を作成した。そして、6年10月に地方整備局等に対して、事務連絡により、決定方針の内容やその重要性を説明し、決定方針に従って効率的に耐震補強を実施するよう周知徹底するとともに、地方整備局等を通じるなどして地方公共団体に対しても同様に助言等した。さらに、7年3月及び5月に、都道府県に設置されている緊急輸送道路ネットワーク協議会等において、事業主体に対して決定方針の内容やその重要性を説明した。
また、同年3月に地方整備局等に対して事務連絡を発して、事業主体が決定方針を踏まえて重要防災路線等の整備方針を検討するよう促すとともに、緊急輸送道路ネットワーク協議会等を毎年度開催して、その検討結果を報告するよう求めるなどした。
イ 地震時に被災した緊急道路橋の迅速な応急復旧や代替路の設定等を実施できるよう、6年10月に地方整備局等に対して事務連絡を発して、要対策橋りょうの位置、応急用資材の保管場所の位置等の情報を網羅的に把握するための地図等を作成するよう周知徹底するとともに、地方整備局等を通じるなどして地方公共団体に対しても同様に助言等した。