国土交通省は、公営住宅法(昭和26年法律第193号。以下「法」という。)等に基づき、公営住宅の建設等の事業を実施する地方公共団体に対して、社会資本整備総合交付金等を交付している。公営住宅は、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸することなどにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的として整備されている(以下、公営住宅を整備して管理する地方公共団体を「事業主体」という。)。そして、法によれば、国土交通大臣は、公営住宅の管理等に関し、事業主体に対して報告させ、又は、職員を指定して実地検査させることができるとされている。公営住宅の入居者は、1か月当たりの収入が公営住宅法施行令(昭和26年政令第240号)等で定める基準(以下「入居収入基準」という。)を超えないことなどの条件を具備する者でなければならないとされている。そして、同省は、高額所得者(注1)、収入超過者(注2)及び収入未申告者(注3)(以下、これらを合わせて「高額所得者等」という。)に対する明渡しの促進等の措置を適切に実施するよう事業主体に周知している。また、同省は、高額所得者等に対する明渡請求等の実施状況等について定期的に調査するとともに(以下、この調査を「実態調査」という。)、明渡請求等が十分に実施されていないと認められる事業主体に対して明渡請求等を適切に実施するよう技術的助言等を行うこととしている。
しかし、事業主体において明渡しの促進等の措置が適切に実施されていないなどの事態、収入未申告者に対する措置の実施状況を実態調査の対象から除外するなどしていて、同省における実態調査及びその結果に基づく技術的助言等が必ずしも十分なものとなっていない事態が見受けられた。
したがって、国土交通大臣に対して令和6年1月に、会計検査院法第36条の規定により、次のとおり改善の処置を要求した。
本院は、国土交通本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、国土交通省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 事業主体に対して6年4月に通知を発するとともに、同年6月に開催した事業主体の担当者を対象とする全国会議において当該通知の内容を説明することにより、明渡しの促進等の措置を適切に実施するようより一層の周知徹底を図った。また、明渡しの促進等の措置を効果的に実施するための手法について、高額所得者として認定してから明渡請求を行うまでの期間等を定めることや、他の公的資金による住宅に収入超過者が入居することができるようにあっせんする際の方針を定めることなどを示した資料を上記の通知に添付して事業主体に周知した。
イ 明渡しの促進等の措置が十分に実施されていないと認められる事業主体に対して技術的助言等が確実に行われるよう、5年度以降、収入未申告者に対する措置の実施状況を実態調査の対象に戻した。
一方、国土交通省は、5、6両年度に実施した実態調査において明渡しの促進等の措置を実施していないなどとしていた30事業主体に対して7年5月から6月までの間にヒアリングを実施しており、今後、当該ヒアリングの結果を踏まえて、技術的助言等を行う基準等を策定することとしている。そして、明渡しの促進等の措置が十分に実施されていないと認められる事業主体に対して、技術的助言等に加えて、法の規定に基づき報告させることや実地検査を行うことを検討することとしている。