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  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

(3) 高額所得者等に対する明渡しの促進等の措置を適切に実施するようより一層の周知徹底を図るとともに、明渡しの促進等の措置が十分に実施されていないと認められる事業主体に対して、技術的助言等に加えて、公営住宅法の規定に基づき事業主体から報告させることや実地検査を行うことについて検討するなどするよう改善の処置を要求したもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)国土交通本省 (項)社会資本総合整備事業費 等
部局等
国土交通本省
補助の根拠
公営住宅法(昭和26年法律第193号)等
補助事業者
(事業主体)
道、府2、県10、市223、町273、村33、計542事業主体
補助事業等
公営住宅整備
事業の概要
住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸することなどを目的として公営住宅を整備するもの
検査の対象とした高額所得者等が入居している住戸
高額所得者2,109戸(令和2年度末)
連続収入超過者22,690戸(令和2年度末)
収入未申告者5,026戸(令和2年度末)
上記に係る事業費相当額(当該住戸の現在価格に相当する額)
2033億6493万余円(整備年度:昭和29年度~令和3年度)
上記に対する交付金等相当額
1026億6858万円(背景金額)

【改善の処置を要求したものの全文】

公営住宅における高額所得者等に対する明渡しの促進等の措置の実施について

(令和6年1月17日付け 国土交通大臣宛て)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。

1 公営住宅における高額所得者等の概要等

(1) 公営住宅の概要

貴省は、住宅施策の一環として、公営住宅法(昭和26年法律第193号。以下「法」という。)等に基づき、公営住宅の建設等の事業を実施する地方公共団体に対して、社会資本整備総合交付金等(以下「交付金等」という。)を交付している。

公営住宅は、国及び地方公共団体が協力して、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸することなどにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的として整備されており、地方公共団体が管理する公営住宅は令和3年度末において約213万戸に上っている(以下、公営住宅を整備して管理する地方公共団体を「事業主体」という。)。

そして、法によれば、国は、必要があると認めるときは、事業主体に対して、公営住宅の供給に関し、財政上及び技術上の援助を与えなければならないとされているほか、国土交通大臣は、公営住宅の管理等に関し、事業主体に対して報告させ、又は、職員を指定して実地検査させることができるとされている。

(2) 公営住宅の入居者資格、家賃等の概要

ア 公営住宅の入居者資格及び家賃

公営住宅の入居者は、法及び公営住宅法施行令(昭和26年政令第240号。以下「政令」という。)において、1か月当たりの収入(注1)が政令等で定める基準(注2)(以下「入居収入基準」という。)を超えないことなどの条件を具備する者でなければならないとされている。

また、法等によれば、公営住宅の毎月の家賃は、毎年度、入居者からの収入の申告に基づき、当該入居者の収入及び当該公営住宅の立地条件、規模、建設時からの経過年数等に応じ、かつ、政令等の規定に基づき算定した近傍同種の住宅の家賃(以下「政令家賃」という。)以下で、事業主体が定めることとされている(以下、この家賃を「応能応益家賃」という。)。

(注1)
1か月当たりの収入  入居者及びその同居者の過去1年間における所得税法(昭和40年法律第33号)の例に準じて算出した所得金額の合計から一定の控除をした額を12で除した額
(注2)
政令等で定める基準  世帯所得、民間賃貸住宅の家賃水準等に係る統計データに基づき、収入分位25%(全国の2人以上世帯を収入の低い順に並べ、収入の低い方から4分の1番目に該当する収入に相当する分位)に相当する収入として政令で定められた額(15万8000円)を参酌して、事業主体が条例で定めた額等

イ 入居後に入居収入基準を超える収入がある入居者の取扱い

法等によれば、入居後に収入が増加して入居収入基準を超える収入がある入居者については、法において本来の施策の対象となっている入居収入基準以下の入居者とは異なる取扱いをすることとされている。

(ア) 高額所得者

事業主体は、公営住宅に引き続き5年以上入居していて、1か月当たりの収入が最近2年間連続して政令で定める基準(注3)(以下「高額収入基準」という。)を超える高額の収入のある入居者(以下「高額所得者」という。)に対し、期限を定めて、当該公営住宅の明渡しを請求することができるとされている。貴省は、高額所得者が公営住宅に入居し続けることは、低額所得者から入居の機会を奪うことになり、法の目的に反することから、入居者又は同居者が病気にかかっているなどの明渡しを猶予すべき特別の事情がある場合を除き、高額所得者に対して明渡請求を行うことが必要であるとしている。

そして、高額所得者の毎月の家賃は、公営住宅に入居していない者との公平性を確保するために、政令家賃とすることとされている。

(注3)
政令で定める基準  世帯所得、民間賃貸住宅の家賃水準等に係る統計データに基づき、収入分位60%(全国の2人以上世帯を収入の低い順に並べ、収入の低い方から10分の6番目に該当する収入に相当する分位)に相当する収入として政令で定められた額(31万3000円)等
(イ) 収入超過者

公営住宅に引き続き3年以上入居していて、入居収入基準を超える収入がある入居者のうち高額所得者以外の者(以下「収入超過者」という。)は、公営住宅を明け渡すように努めなければならないとされている。

そして、収入超過者の毎月の家賃は、明渡しの自主的な履行を促進するとともに、公営住宅に入居していない者との公平性を確保するために、政令家賃以下で、収入超過の程度及び収入超過者となってからの経過期間に応じて応能応益家賃に所定の加算をした家賃(以下「加算家賃」という。)とすることとされている。

このほか、事業主体は、必要があると認めるときは、高額所得者及び収入超過者が他の適当な住宅に入居することができるようにあっせんするなどして、これらの者の公営住宅の明渡しを容易にするように努めなければならないとされている。

ウ 収入の申告がない入居者

法等によれば、事業主体は、入居者から収入の申告がない場合には、当該入居者に対して収入の申告を請求することができるとされており、請求を行ったにもかかわらず、これに応じなかった入居者(以下「収入未申告者」といい、高額所得者、収入超過者及び収入未申告者を合わせて「高額所得者等」という。)等について、必要があると認めるときは、課税台帳の閲覧等により当該入居者の収入状況を調査することができるとされている(以下、この調査を「収入調査」という。)。そして、事業主体は、入居者から収入の申告がない場合でも、収入調査の結果、高額所得者又は収入超過者の要件を満たす収入がある者については、収入を適切に申告した者との公平を欠くことのないよう、収入調査の結果に基づき高額所得者又は収入超過者として認定することができることとなっている。

また、法等によれば、収入未申告者の毎月の家賃は、政令家賃とすることとされており、低廉な家賃により公営住宅に居住するには収入を申告することが必要となっている。

(3) 事業主体に対する周知等

貴省は、本院が平成14年度決算検査報告において特に掲記を要すると認めた事項として「公営住宅における収入超過者、高額所得者等に対する措置の実施について」を掲記したことを踏まえて、平成16年6月に通知を発している。この通知により、貴省は、①高額所得者及び収入超過者に対する認定及びその旨の文書による通知、②高額所得者及び収入超過者に対する面談、他の公的資金による住宅等のあっせん、③高額所得者に対する明渡しに係る要領(以下「高額所得者明渡要領」という。)の策定、④高額所得者に対する明渡請求、⑤収入未申告者に対する収入調査、当該収入調査実施後の高額所得者又は収入超過者としての認定、⑥高額所得者等に係る政令家賃、加算家賃等の徴収等の措置(以下、①から⑥までの措置を合わせて「明渡しの促進等の措置」という。)を適切に実施するよう事業主体に周知している。

また、本院は、22年10月に、国土交通大臣に対して「公営住宅における高額所得者等に対する明渡しの促進等の措置の実施について」として、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。貴省は、本院指摘の趣旨に沿い、22年12月に事業主体に対して通知を発し、明渡しの促進等の措置を適切に実施して、公営住宅の管理を適正に行うよう周知徹底を図っている(以下、貴省が16年6月及び22年12月に発した通知を合わせて「22年通知等」という。)。また、貴省は、高額所得者等に対する明渡請求等の実施状況等について定期的に調査するとともに(以下、この調査を「実態調査」という。)、明渡請求等が十分に実施されていないと認められる事業主体に対して明渡請求等を適切に実施するよう技術的助言等を行うこととした。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

公営住宅については、近年、厳しい経済状況等を背景として、真に住宅に困窮する低額所得者に対して的確に提供することが一層求められている。

そこで、本院は、合規性、有効性等の観点から、22年通知等に基づくなどして明渡しの促進等の措置は適切に実施されているか、貴省における実態調査及びその結果に基づく技術的助言等は十分なものとなっているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、2年度末に13道府県(注4)及び13道府県内の529市町村の計542事業主体が管理している公営住宅であって、法等で定められている耐用年限を経過していない公営住宅の住戸のうち、次の①から③までの住戸、計465事業主体の計29,825戸(事業費相当額(当該住戸の現在価格に相当する額)計2033億6493万余円、交付金等相当額計1026億6858万余円、当該住戸に係る公営住宅の整備年度は昭和29年度から令和3年度まで)を対象とした。

① 高額所得者が入居している311事業主体の2,109戸

② 3年以上連続して収入超過者に該当している者(以下「連続収入超過者」という。)が入居している455事業主体の22,690戸

③ 収入未申告者が入居している157事業主体の5,026戸

そして、貴省本省及び上記542事業主体のうち154事業主体において、家賃決定書等の関係書類を確認するとともに、3、4両年度中における明渡しの促進等の措置の実施状況等について聴取するなどして会計実地検査を行った。また、上記の542事業主体から、明渡しの促進等の措置の実施状況等に係る調書等の提出を受けてその内容を確認するなどして検査した。

(注4)
13道府県  北海道、京都、大阪両府、青森、栃木、埼玉、福井、静岡、三重、滋賀、和歌山、鳥取、熊本各県

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 明渡しの促進等の措置の実施状況

ア 高額所得者に対する措置

(ア) 明渡請求等の実施状況

前記311事業主体の高額所得者2,109戸に対する明渡請求等の実施状況について確認したところ、①5事業主体の10戸については、事業主体が、高額所得者として認定する旨を文書で通知していなかった。また、②125事業主体の477戸については、事業主体が、上記の通知はしているものの、明渡しを猶予すべき特別の事情の有無を確認しておらず、③72事業主体の237戸については、事業主体が、面談等により明渡しを猶予すべき特別の事情がないことを把握しているのに明渡請求を行っていなかった。

このように、計198事業主体(①から③までの事業主体には重複しているものがある。)は、高額所得者計724戸について、入居者の自主的な退去に委ねるなどしていて、明渡請求等を適切に実施していなかった。そして、上記の高額所得者724戸が高額所得者に連続して該当している年数は、平均で4.3年となっていて、中には10年以上にわたって連続して該当している高額所得者が41戸見受けられた。

(イ) 特別の事情の把握方法

前記311事業主体の高額所得者2,109戸のうち、事業主体が、明渡しを猶予すべき特別の事情の有無を確認した結果、特別の事情があるとしていたのは、69事業主体の478戸となっていた。そして、これらの者について、事業主体が特別の事情の有無をどのような方法で把握したか確認したところ、38事業主体の361戸については、高額所得者から特別の事情の具体的な内容が記載された書類等の提出を受けていたが、36事業主体の117戸については、事業主体の担当者等が高額所得者から口頭のみで確認するなどしていて、上記のような書類等の提出を受けていなかった。

しかし、特別の事情があると判断した際のその具体的な内容を、翌年度以降に特別の事情の有無を判断する際等に確実に参照して検証するなどのためには、高額所得者からその具体的な内容が記載された書類等の提出を受けることが効果的であると考えられる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

熊本県上益城郡益城町は、公営住宅に令和2年度末に入居していた高額所得者4戸について、いずれの高額所得者も退去する予定であることを確認できたとし、これを特別の事情があるものとして、明渡請求を実施していなかった。

しかし、同町は、特別の事情の有無を高額所得者から口頭で確認したのみで、特別の事情の具体的な内容が記載された書類等の提出を受けていなかった。

そこで、前記の4戸について、3、4両年度中の退去の実績を確認したところ、4年度末までに退去したのは1戸のみで、残りの3戸は退去していなかった。そして、退去しなかった3戸は、2年度末時点で、既に8年、3年又は2年連続して高額所得者に該当していたが、同町は、特別の事情の有無を高額所得者から口頭で確認したのみだったため、いつ頃までに退去する予定であったのかなどの具体的な内容を、翌年度以降に特別の事情の有無を判断する際等に確実に参照して検証することができない状況となっていた。

(ウ) 高額所得者明渡要領の策定及びその内容

貴省は、22年通知等により、事業主体に対して、高額所得者明渡要領の策定等を適切に実施するよう周知徹底を図っている。そこで、各事業主体における高額所得者明渡要領の策定状況について確認したところ、高額所得者が入居する公営住宅を管理している前記311事業主体のうち81事業主体は高額所得者明渡要領を策定していたが、残りの230事業主体は策定していなかった。

また、81事業主体が策定している高額所得者明渡要領の内容についてみたところ、31事業主体は、高額所得者明渡要領において、明渡請求を実施する具体的な時期(スケジュール、期限等)を定めていたが、残りの50事業主体は定めていなかった。

そして、①高額所得者明渡要領において明渡請求を実施する具体的な時期を定めている事業主体、②高額所得者明渡要領を策定しているが、明渡請求を実施する具体的な時期を定めていない事業主体、③高額所得者明渡要領を策定していない事業主体のうち、高額所得者に対して明渡請求を実施した事業主体の割合についてみると、のとおり、①が最も高くなっていた。

このように、高額所得者明渡要領を策定して明渡請求を実施する具体的な時期を定めることが、明渡請求を確実に実施するために効果的であると思料された。

表 明渡請求を実施した事業主体の割合

(単位:事業主体、%)
高額所得者明渡要領の策定及びその内容 事業主体数
(A)
明渡請求を実施した事業主体数
(B)
割合
(B/A)
①高額所得者明渡要領において明渡請求を実施する具体的な時期を定めているもの
31 20 64.5
②高額所得者明渡要領を策定しているが、明渡請求を実施する具体的な時期を定めていないもの
50 14 28.0
③高額所得者明渡要領を策定していないもの
230 29 12.6
311 63 20.2

前記について、高額所得者明渡要領において明渡請求を実施する具体的な時期を定めている参考事例を示すと次のとおりである。

参考事例

静岡県は、高額所得者明渡要領において、毎年、高額所得者に該当する入居者に対して、高額所得者として認定する旨を文書で通知する際に、「県営住宅明渡計画書」の様式を送付し、明渡しの予定又は明渡しを猶予すべき特別の事情の具体的な内容を当該様式に記載させて、3月20日までに提出させることとしている。そして、これに加えて面談を行うなどして、特別の事情の有無を確認した上で、3月28日までに、明渡請求を行うこととしている。

このほか、同県は、収入超過者のうち、新たに1か月当たりの収入が高額収入基準を超えることになった入居者に対して、2年連続して高額収入基準を超える収入があった場合には、高額所得者に該当して明渡しの義務が生ずる旨をあらかじめ通知して、退去について真剣に検討するように促している。

同県は、令和2年度に新たに高額所得者に該当することになった24戸について、特別の事情がないことを把握した上で、3年3月に明渡請求を行い、明渡請求を受けた後に収入が減少することになるなどした5戸を除く19戸は、4年8月までに全て退去していた。

イ 収入超過者に対する措置

前記455事業主体の連続収入超過者22,690戸のうち409事業主体の15,227戸については、事業主体が、収入超過者については明渡しの努力義務が課せられているに過ぎず面談やあっせんを行う必要性は低いと考えるなどして、面談やあっせんを行っていなかった。そして、上記15,227戸の中には、10年以上にわたって連続して収入超過者に該当している者が1,675戸見受けられた。

また、法等によれば、収入超過者の毎月の家賃は、明渡しの自主的な履行を促進するなどのために、加算家賃とすることとされているのに、15事業主体の55戸については、事業主体が加算家賃を課していなかった。

ウ 収入未申告者に対する措置

前記157事業主体の収入未申告者5,026戸のうち57事業主体の379戸については、事業主体が、収入未申告者には高額所得者と同様に政令家賃を課していることから収入調査を行う必要がないと考えるなどして、収入調査を行っていなかった。そして、本院の検査を受けて、事業主体が、これらの者の1か月当たりの収入を確認したところ、25事業主体の87戸については、1か月当たりの収入が高額収入基準又は入居収入基準を超えていて、高額所得者又は収入超過者に該当していた。

また、23事業主体の144戸については、収入調査の結果、高額所得者又は収入超過者に該当することが判明しているのに、事業主体が高額所得者又は収入超過者として認定していなかった。

そして、事業主体が収入調査を行っていなかった87戸及び事業主体が高額所得者又は収入超過者として認定していなかった144戸については、高額所得者又は収入超過者に該当しているのに、高額所得者又は収入超過者に対して行われるべき措置が実施されていなかった。

このほか、法等によれば、収入未申告者の毎月の家賃は政令家賃とすることとされており、低廉な家賃により公営住宅に居住するためには収入を申告することが必要となっているのに、23事業主体の256戸については、事業主体が政令家賃ではなく応能応益家賃を課していた。

(2) 貴省における実態調査及び技術的助言等の実施状況

前記のとおり、貴省は、平成22年10月の本院の意見表示を受けて、毎年度、実態調査を行うとともに、明渡請求等が十分に実施されていないと認められる事業主体に対して明渡請求等を適切に実施するよう技術的助言等を行うこととしていた。

しかし、貴省は、23年6月及び24年6月に計4事業主体に対して技術的助言等を行っていたものの、それ以降は技術的助言等を行っていなかった。また、貴省は、令和元年度の実態調査を公営住宅に関する他の調査と一体的に実施することとした際に、収入未申告者に対する措置の実施状況を実態調査の対象から除外しており、それ以降把握していなかった。

(1)のとおり、依然として多数の事業主体において明渡しの促進等の措置が適切に実施されていない状況であることを踏まえると、貴省における実態調査及びその結果に基づく技術的助言等は、必ずしも十分なものとなっていないと認められる。

(改善を必要とする事態)

事業主体において明渡しの促進等の措置が適切に実施されていないなどの事態、貴省における実態調査及びその結果に基づく技術的助言等が必ずしも十分なものとなっていない事態は適切ではなく、改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。

ア 事業主体において、明渡しの促進等の措置を実施することの重要性についていまだに理解が十分でないこと。また、貴省において、事業主体に対して、高額所得者に係る明渡しを猶予すべき特別の事情があることを把握する際に、高額所得者からその具体的な内容が記載された書類等の提出を受け、又は高額所得者明渡要領に明渡請求を実施する具体的な時期を定めるといったような、明渡しの促進等の措置を効果的に実施するための手法について周知していないこと

イ 貴省において、実態調査やその結果に基づく技術的助言等を行うことの重要性に対する理解が十分でないこと

3 本院が要求する改善の処置

公営住宅については、今後も、住宅に困窮する低額所得者の居住の安定を確保するために重要な役割を担っていくものと考えられる。

ついては、貴省において、真に住宅に困窮する低額所得者に対してより的確に公営住宅が供給されるよう、次のとおり改善の処置を要求する。

ア 事業主体に対して、明渡しの促進等の措置を適切に実施するようより一層の周知徹底を図ること。また、明渡しの促進等の措置を効果的に実施するための手法についても併せて周知すること

イ 明渡しの促進等の措置が十分に実施されていないと認められる事業主体に対して技術的助言等が確実に行われるよう、収入未申告者に対する措置の実施状況を実態調査の対象に戻すこと。また、技術的助言等を行う基準等について改めて検討することとし、その際には、技術的助言等に加えて、法の規定に基づき事業主体から報告させることや実地検査を行うことについて検討すること