国立研究開発法人建築研究所(以下「研究所」という。)は、令和5年度に、5年6月20日から6年3月22日までを工期として、研究所の建築材料実験棟及び建築部材実験棟(以下「両実験棟」という。)に設置されている電気設備、空調設備等の改修工事(以下「本件工事」という。)を、一般競争入札により株式会社飯塚工務店(以下「会社」という。)に契約金額353,397,000円で請け負わせて実施している。
本件工事のうち両実験棟の電気設備の改修工事は、空調設備の更新に伴い必要な電力量が増加するため、電力を供給する受変電設備の改修等を行うものであり、建築部材実験棟内の受変電設備にある動力盤に設置されている200kVA対応の変圧器を300kVA対応の変圧器に更新するとともに、両実験棟内の空調設備と電気設備をつなぐために必要な電線(3,687m)及びケーブル(100m)を更新するなどの工事である。
国立研究開発法人建築研究所会計規程(平成27年4月1日規程第31号。以下「会計規程」という。)等によれば、研究所は、請負契約に係る給付の完了を確認するために必要な検査(以下「完了検査」という。)をすることとされている。
そして、完了検査を命ぜられた者(以下「検査職員」という。)は、完了検査が終了したときは、検査調書を作成することとされており、研究所は、契約の相手方から支払請求を受けたときは、あらかじめ完了検査に合格していることを確認した上で支払うこととされている。
研究所は、国立研究開発法人建築研究所施設整備費補助金交付要綱(平成27年国官会第128号国土交通省大臣官房長通知。以下「交付要綱」という。)に基づき、3年度に国土交通本省から交付決定を受けた国立研究開発法人建築研究所施設整備費補助金(以下「整備費補助金」という。)を本件工事の財源としている。そして、国土交通省は、本件工事に係る整備費補助金の予算について、4年度に明許繰越し(注1)を行った後、本件工事に係る入札が不調となったことから5年度に事故繰越し(注2)を行っている。
交付要綱によれば、研究所は、補助事業を完了したときは、実績報告書を国土交通省に提出することとされており、同省は、実績報告書等の審査を行って、交付すべき整備費補助金の額を確定することとされている。そして、研究所は、補助事業が予定の期間内に完了することができないと見込まれる場合、速やかに国土交通省の指示を受けなければならないこととされている。
また、国土交通省は、当該年度に措置された整備費補助金の予算が翌年度以降に繰り越された場合に補助することができるのは、繰り越された年度までに完了している工事に係る費用であるとしている。
本院は、合規性等の観点から、本件工事に係る支払は会計規程等に基づき適正に行われているかなどに着眼して、研究所において、契約書、仕様書、検査調書、整備費補助金に係る実績報告書等の関係書類を確認するとともに、現地の状況を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
本件工事について、検査職員は、6年3月29日に完了したとする検査調書を作成し、研究所はこれに基づき、同年4月9日までに会社に対して契約金額全額を支払っていた。
しかし、300kVA対応の変圧器については、本件工事の工期の最終日である6年3月22日から約10か月が経過した7年1月の会計実地検査時点においても、動力盤に設置されることなく建築部材実験棟内に保管されており、動力盤には200kVA対応の変圧器が設置されたままとなっていた。そして、研究所においては、変圧器が更新されていないため、建築部材実験棟の更新後の空調設備を使用して実施する予定であった実験が実施できない状況となっていた。
また、電線(3,687m)及びケーブル(100m)については、両実験棟内において実際に更新が行われたのは、契約金額全額が支払われた後の6年4月22日となっていた。
そこで、本件工事の完了検査の実施状況等を確認したところ、本件工事を担当していた研究所の情報・技術課は、遅くとも6年2月末時点で、変圧器の更新による他の電気設備への影響を確認する必要が生ずるなどして、本件工事が工期内に完了できなくなったことを把握していた。しかし、本件工事に係る整備費補助金の予算は、明許繰越しを行った後に事故繰越しを行っていて、更に繰越しを行うことができないことから、整備費補助金の交付を受けられなくなると考え、本件工事が完了していないのに、会社に対して工事が完了した旨の報告(以下「完了報告」という。)を提出するように求めて、同年3月22日に完了報告の提出を受けていた。そして、同課の責任者でもある検査職員は、完了報告に基づいて完了検査を行い、同月29日に、本件工事が完了したとする虚偽の検査調書を作成して、研究所は、検査調書に基づき、同年4月9日までに契約金額全額を会社に支払っていた。
このように、300kVA対応の変圧器を設置していないなどしていて、本件工事が完了していないのに、会社に完了報告を提出させて、本件工事が完了したとする虚偽の検査調書を検査職員が作成して、これに基づき契約金額全額を会社に支払っていたことは、会計規程等に違反していて著しく適正を欠いており、本件工事に係る支払額353,397,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、研究所において、適正な会計経理を行うことの必要性についての認識が著しく欠けていたこと、職員に対する教育及び指導が十分でなかったことなどによると認められる。
(本件の事態については、前掲国土交通省の項「0328工事が完了していないのに完了したとして補助金の交付を受けていたもの」参照)