• 令和6年度
  • 第3章 個別の検査結果
  • 第2節 団体別の検査結果
  • 第14 独立行政法人中小企業基盤整備機構
  • 令和5年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

サービス等生産性向上IT導入支援事業の実施状況について


(令和5年度決算検査報告2か所参照 リンク1 2

1 本院が要求した適宜の処置並びに要求した改善の処置及び表示した意見

独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下「機構」という。)は、国から交付された運営費交付金等によりサービス等生産性向上IT導入支援事業(以下「IT導入支援事業」という。)を実施している。IT導入支援事業は、その管理、運営等の業務(以下「事務局業務」という。)を行う補助事業者が法人内に設置する事務局を通じて、生産性向上に資するITツールを導入する中小企業・小規模事業者等(以下「事業主体」という。)に対して、これに要する経費の一部を補助するサービス等生産性向上IT導入支援事業費補助金(以下「IT導入補助金」という。)を交付するものである。そして、一般社団法人サービスデザイン推進協議会(以下「サ推協」という。)は令和5年7月以前に交付申請を行った事業主体に対する事務局業務を、凸版印刷株式会社(5年10月1日以降はTOPPAN株式会社。以下「TOPPAN」という。)は同年8月以降に交付申請を行った事業主体に対する事務局業務を、それぞれ補助事業者として担っている。

交付規程等によれば、事務局は、ソフトウェア等をITツールとして、これを取り扱うメーカー、ベンダー等を事業主体の支援を行う責務を担うIT導入支援事業者として、それぞれ審査(以下「登録審査」という。)して登録することとされている。また、ITツールの販売金額に占める事業主体の自己負担額を減額若しくは無償とするような販売方法又は一部の利害関係者に不当な利益が配賦されるような行為(以下、これらの行為等を「実質的還元」という。)があった場合、ITツールを導入日から1年未満で利用しなくなった場合等には、事業主体に対して、交付決定の全部又は一部を取り消すことができることとされている。そして、IT導入支援事業者等において不適当な行為が行われるなどの疑義が生じ、その調査等を行った結果、IT導入支援事業者として不適格と判断した場合には、同事業者の登録を取り消し、不正の内容について公表することができるなどとされている。さらに、機構及び事務局は、IT導入支援事業の適切な遂行を確保するために必要があると判断した場合には、事業主体及びIT導入支援事業者に対して事業に関する報告を求め、又は事業所等に立ち入り、若しくは関係者に質問するなどの調査(以下「立入調査」という。)を行うことができることなどとされている。

また、事業主体において、ITツールの導入日から1年以上経過後、処分制限期間内に、取得価格の単価が50万円以上のITツールのうち事業主体において減価償却資産として取り扱っているもの(以下「処分制限ITツール」という。)を解約した場合には、取得財産の残存簿価相当額に補助率を乗じて得た金額を事務局に納付(以下「残存簿価分納付」という。)すること、ITツールを一部でも解約した場合には事務局に対して辞退届を提出することとされている。さらに、事業主体は、交付申請及び事業実施効果報告(以下「効果報告」という。)に当たり、生産性向上に係る情報(以下「生産性関連情報」という。)により算出された労働生産性を報告することなどとされている。

しかし、ITツールの導入に際して実質的還元等による不正が多数行われているなど適正でない事態、サ推協における各種審査、不正に関与しているIT導入支援事業者に対する立入調査及び登録取消し、不正を行った事業主体に対する交付決定の取消しなどが適切に行われておらず、注意喚起を含む不正防止策が十分に講じられていない事態、サ推協において交付規程に基づく交付決定の取消し、残存簿価分納付及び効果報告の要否判定を適切に行うために必要なITツールの解約状況を正確に把握できていないなどの事態、及び事業主体において生産性関連情報等や労働生産性が適切に報告されておらず、サ推協において生産性関連情報等の確認が十分に行われていないことにより、IT導入支援事業の効果を正確に把握できていない事態が見受けられた。

したがって、中小企業庁長官及び独立行政法人中小企業基盤整備機構理事長に対して6年10月に、次のとおり是正の処置を要求し並びに改善の処置を要求し及び意見を表示した。

ア 機構において、サ推協に対して、実質的還元等による不正を行っていた30事業主体から過大に交付されたIT導入補助金を速やかに返還させる手続を行わせること、また、実質的還元と同様の資金の流れなどが見受けられた67事業主体についての更なる調査等を行わせて、不正が判明した場合には速やかに補助金返還等の措置等及び不正に関与したIT導入支援事業者の登録取消し、公表等を行わせること(会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求したもの)

イ 機構において、サ推協及びTOPPANに対して、アの30事業主体に係る実質的還元による不正に関与したIT導入支援事業者15者が支援した事業主体(アの処置の対象となる事業主体を除く。)や不正の疑義のあるIT導入支援事業者等を中心に実質的還元等による同種の不正な事態の有無について調査等を行わせて、不正が判明した場合には速やかに補助金返還等の措置等及び不正に関与したIT導入支援事業者等の登録取消し、公表等を行わせること、また、サ推協及びTOPPANと共に、事業主体における実質的還元を始めとする不正な事態について、事業主体等に対する注意喚起の方法を見直すとともに、今後、登録審査、交付申請に係る審査(以下「採択審査」という。)、事業実績報告に係る検査(以下「確定検査」という。)、立入調査、不正の認定、補助金返還、不正に関与したIT導入支援事業者等の登録取消し、公表等が厳正かつ適時適切に行われるよう具体的な基準、実施方法等を検討して指針等を整備すること(同法第36条の規定により改善の処置を要求したもの)

ウ 機構において、サ推協及びTOPPANと共に、交付規程等に基づく交付決定の取消しや残存簿価分納付等が適切に行われるよう、ITツールの解約状況を正確に把握する仕組みを整備し、また、TOPPANと共に、今後の残存簿価分納付の要否の判定が区々とならないよう、処分制限ITツールの取扱いを見直すこと(同法第36条の規定により改善の処置を要求したもの)

エ 機構において、IT導入支援事業の効果を正確に把握できるよう、効果報告の方法の見直しを行い、サ推協及びTOPPANによる生産性関連情報等や労働生産性の確認体制を整備すること(同法第36条の規定により意見を表示したもの)

オ 中小企業庁において、アからエまでの見直しの措置が確実に行われるよう、機構、サ推協及びTOPPANに対して指導、助言等を行うこと(同法第36条の規定により意見を表示したもの)

2 当局が講じた処置

本院は、中小企業庁、機構本部、サ推協及びTOPPANにおいて、その後の処置状況について会計実地検査を行った。

検査の結果、中小企業庁及び機構は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。

ア 機構は、サ推協に対して、実質的還元等による不正を行っていた30事業主体が実施した41事業について、6年10月までに、過大に交付されたIT導入補助金を返還させる手続を行わせた。また、実質的還元と同様の資金の流れなどが見受けられた67事業主体が実施した88事業についての更なる調査等を行わせた結果、サ推協は、7年5月までに、46事業主体が実施した66事業についてIT導入補助金を返還させる手続を行うとともに、不正に関与したことが新たに判明したIT導入支援事業者5者の登録取消し及び公表を行った。

イ 機構は、サ推協及びTOPPANに対して、実質的還元等による同種の不正な事態の有無について調査等を行い、不正が判明した場合には速やかに補助金返還等の措置等及び不正に関与したIT導入支援事業者等の登録取消し、公表等を行うよう指示した。そして、サ推協及びTOPPANは、不正に申請等を行うなどして交付を受けた場合のIT導入補助金の自主返還をウェブサイト上で呼びかけるとともに、6年度までにIT導入補助金の交付を受けた全ての事業主体を対象として補助事業の実施に係る不適切な行為の有無に関する調査を行い、また、不正の疑義のある事業主体及びIT導入支援事業者を対象に立入調査を行うなどして、7年5月までに、290事業(アの処置の対象となる事業を除く。)についてIT導入補助金を返還させる手続を行うとともに、同年6月までに、不正に関与したIT導入支援事業者8者(アの処置の対象となるIT導入支援事業者5者を除く。)の登録取消し及び公表を行った。

さらに、機構及びTOPPANは、実質的還元等の不正を防止するための対策として、同年4月までに、ウェブサイト及び公募要領において、実質的還元等の不正について具体例を追加するなどして事業主体等に対する注意喚起の方法を見直した。また、機構及びTOPPANは、審査等を厳正かつ適時適切に行うために、同年6月までに、登録審査の際に、IT導入支援事業者に対して、ITツールの販売実績一覧、機能及び性能に係る詳細説明資料、役務費用についての価格説明資料、ITツールのデモ機等の提出等を求めるとともに、採択審査及び確定検査の際に、事業主体に対して決算書等の追加資料やソフトウェアの導入に係る設定、コンサルティング等の役務に関する実施内容の説明資料等の提出等を求めることなどができるよう、公募要領等を見直した上で審査基準等を整備した。そして、機構、サ推協及びTOPPANは、同年5月までに、立入調査の対象の選定、不正の有無の確認方法、不正の認定、補助金返還、不正に関与したIT導入支援事業者の登録取消し、公表等を厳正かつ適時適切に行うことができるようマニュアル等を整備した。

ウ 機構、サ推協及びTOPPANは、7年6月までに、事業主体がITツールを解約等した場合の報告義務及び手続について、インターネット上の申請用サイト等に説明動画を掲載するなどして周知した上で、効果報告の際等に、全ての事業主体に対して定期的にITツールの継続利用の確認を行うこととするなど、ITツールの解約状況を正確に把握する仕組みを整備した。また、機構及びTOPPANは、6年11月までに、処分制限ITツールに係る残存簿価分納付の要否の判定について、ITツールの販売形態及びカテゴリーに基づいて統一的に判定するように取扱いを見直した。

エ 機構、サ推協及びTOPPANは、7年5月までに、事業主体等に対して、効果報告の方法、注意点等を記載した「事業実施効果報告の手引き」を改訂するなどして生産性関連情報等や労働生産性の適切な報告方法を周知した上で、誤りが疑われる場合等には事業主体に決算書等の根拠資料の提出を求めて確認することとするなど、効果報告の方法の見直しを行い、サ推協及びTOPPANによる生産性関連情報等や労働生産性の確認体制を整備した。

オ 中小企業庁は、機構に対して、サ推協及びTOPPANへの指導及び監督が適切に行われるよう指導及び助言を行うとともに、機構と連携し、サ推協及びTOPPANと定期的に実施しているミーティング等において、アからエまでの見直しの措置の進捗について報告を受けるなどした上で、サ推協及びTOPPANに対して指導及び助言を行った。