本院は、中小企業者(注1)又は小規模事業者(注2)(以下、これらを「中小企業者等」といい、株式会社商工組合中央金庫(以下「商工中金」という。)等の危機対応業務に係る貸付け及び信用保証においては中小企業等協同組合等を含む。以下同じ。)に対する新型コロナ特別貸付等(注3)に係る貸付債権等及び新型コロナ関連保証(注4)に係る保証債務等の状況について、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、
① 株式会社日本政策金融公庫(以下「日本公庫」という。)等が中小企業者等に対して実施した新型コロナ特別貸付等の貸付債権等はどのような状況となっているか、特に、令和4年度決算検査報告に掲記した令和4年度末時点における貸付債権等の状況からどのように変化しているか
② 各都道府県等に設立された信用保証協会(注5)(以下「協会」という。)が中小企業者等に対して実施した新型コロナ関連保証の保証債務等はどのような状況となっているか、また、新型コロナ関連保証等の実施に係る国の財政援助額の使用状況等はどのようになっているか
などに着眼して検査した。
検査の状況の主な内容は次のとおりである。
新型コロナ特別貸付等に係る貸付債権の5年度末までの貸付実績の累計は、全体で1,276,196件20兆6397億余円となっていた。また、同年度末時点の貸付残高は、全体で968,707件12兆4014億余円と、上記貸付実績の75.9%(件数比)及び60.0%(金額比)となっていた。
5年度末までに返済された新型コロナ特別貸付等は計8兆0892億余円となっており、このうち、完済された新型コロナ特別貸付等は、計292,604件5兆5651億余円(中小企業事業の金額については、完済となっていない貸付けに係る返済額を含む。)となっていた。
借換えによる完済の状況をみると、国民生活事業では、新たな貸付けを行うことにより既往の貸付残高の全てを決済したものが118,198件(完済されたものの44.2%)1兆1726億余円(同43.3%)となるなどしていた。
元金返済の状況をみると、いずれの貸付けも、件数及び金額の両方において、元金返済中及び据置期間中の貸付債権が全体の9割程度を占めていた。そして、元金返済中の新型コロナ特別貸付等に係る貸付債権は計750,250件8兆5356億余円、据置期間中の新型コロナ特別貸付等に係る貸付債権は計112,122件2兆5824億余円となっていた。また、貸付条件の変更(返済期間や据置期間の延長や、月々の返済額の減額により、貸付条件を緩和すること。以下「条件変更」という。)中の貸付債権並びに元利金支払の延滞及び事業者の破綻(以下「延滞等」という。)に至った貸付債権は、いずれも1割未満であったが、3年度末以降の各年度末の金額は、いずれの貸付けにおいてもそれぞれ前年度末から大幅に増加していた。
新型コロナ特別貸付等に係る償却の件数及び金額は、いずれの貸付けにおいても年々増加しており、5年度末までに償却した新型コロナ特別貸付等に係る貸付債権は、計14,885件1490億余円となっていた。また、国民生活事業について、2年度から5年度までの間に償却された新型コロナ特別貸付に係る貸付債権の償却事由をみたところ、いずれの年度においても「破産等」と「生活困窮」で9割超を占めていた。
5年度末における新型コロナ特別貸付等に係るリスク管理債権(注6)の額は、全体では1兆1965億余円となっていた。このうち「破産更生債権及びこれらに準ずる債権」は計221億余円、「危険債権」は計3900億余円、「要管理債権」は計7842億余円となっていた。また、5年度末における新型コロナ特別貸付に係る部分直接償却実施額は、計2178億余円となっていた。
5年度末における貸倒引当金の計上額は、国民生活事業4135億余円、中小企業事業6660億余円、商工中金1945億余円、計1兆2740億余円(うち新型コロナ特別貸付等分計3427億余円)となっていた。
5年度末までの新型コロナ関連保証の保証承諾の累計は、2,028,360件38兆2664億余円となっていた。また、同年度末時点の保証債務残高は、1,357,803件19兆4960億余円と、上記保証承諾実績の累計の66.9%(件数比)及び50.9%(金額比)となっていた。
5年度末までの新型コロナ関連保証に係る保証債務の償還状況(債務保証の対象となる貸付金の元金の返済に伴う保証債務の償還状況)をみると、5年度末までに17兆8222億余円の保証債務が償還されており、このうち全額が償還されたものが624,276件12兆3380億余円(償還額の69.2%)となっていた。そして、完済日と同日に新規の新型コロナ関連保証が付された融資(以下「新型コロナ関連保証付融資」という。)等が貸し付けられたものを借換えとみなして集計すると、358,701件(全額償還されたものの57.4%)7兆1899億余円(同58.2%)となった。
5年度末時点における新型コロナ関連保証付融資の元金返済の状況をみると、元金返済中の件数及び金額は1,076,444件13兆2596億余円、据置期間中の件数及び金額は212,274件5兆0475億余円となっていて、件数及び金額の両方において、元金返済中及び据置期間中が全体の9割超を占めていた。また、条件変更中の件数及び金額は1割未満であったが、2年度末以降、それぞれ前年度末から大幅に増加しており、5年度末時点では1兆1888億余円となっていた。
5年度までの新型コロナ関連保証の代位弁済(注7)額は年々増加しており、5年度までの累計では35,110件4848億余円となっていた。
代位弁済額の増加に伴い、日本公庫から協会への保険金支払額は年々増加しており、5年度までの保険金支払の累計は31,982件3669億余円、同年度までの協会負担分の累計額は1178億余円となっていた。
代位弁済額の増加に伴い、求償権の発生額及び求償権残高は年々増加しており、5年度までの発生額は4848億余円、回収額は239億余円、5年度末時点における求償権残高は4564億余円となっていた。
5年度までの求償権の管理事務停止の実績は、2,759件279億余円となっていた。また、4、5両年度の求償権整理の実績は、359件38億3731万余円となっていた。さらに、3年度から5年度までの求償権放棄等の実績は、求償権放棄が32件5億0595万余円、不等価譲渡が45件1億3034万余円、資本的劣後債権への転換が10件2億6934万余円となっていた。
新型コロナ関連保証に係る市区町村長認定(注8)の手続において、申請書類の簡素化を認めることとしていた状況を踏まえて、新型コロナ関連保証の対象となった中小企業者等の申請時における売上げの状況を事後的に確認した。具体的には、客観的に確認可能な最近1か月間の売上高等減少率(最近1か月間の売上高等が前年同月の売上高等に比して減少した割合をいう。)について、決算後の確定申告書類に記載された売上高を基に算定した場合に、認定基準を上回っているかを機械的に確認した。その結果、協会が保管していた確定申告書類の記載内容を基に算定した最近1か月間の売上高等減少率が認定基準を下回っていた事態が865件中142件(保証承諾金額計73億7000万円、保証料補助(注9)金相当額計4億4787万余円)見受けられた。
なお、当該142件は、協会が保管していた確定申告書類を用いて事後的に機械的な方法により確認した結果、認定基準を下回っていたものであり、そのことから、直ちに市区町村長認定が誤っていたことになるものではない。
協会が行っている中小企業者等に対する経営支援(経営の改善に係る助言等の支援をいう。)の支援先の件数は3年度以降増加しており、4、5両年度には新型コロナウイルス感染症拡大前の元年度を上回る状況となっていた。
日本公庫の信用保険等業務勘定の財務基盤強化のために措置された出資金について、日本公庫の信用保険等業務勘定においては国から出資された額の全額を資本準備金として計上していることから、資本準備金の状況等をみると、新型コロナ関連保証等に係る保険の事故率は1.07%、保険収支は累計で黒字となっており、5年度末時点の資本準備金残高が5兆2841億余円と元年度末時点の2兆0522億余円から増加した状況となっている。
5年度末時点のそれぞれの補助金の執行状況をみると、経営安定基金(損失補償)(連合会が国から交付を受けた補助金を基に造成した経営安定関連保証等特別基金のうち、損失補償を行うための基金をいう。)のうち、新型コロナ関連保証等に係る分については、損失補償233億余円(基金造成額に対する執行額の割合3.6%)となっていた。また、民間ゼロゼロ融資(注10)に係る保証料補助については1兆1554億余円が、経営安定基金(保証料補助)(経営安定関連保証等特別基金のうち、伴走支援型特別保証制度等に係る保証料補助を行うための基金をいう。)については2377億余円(同30.2%)が、新型コロナウイルス感染症基金(民間ゼロゼロ融資に係る特別利子補給を行うために、独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下「中小機構」という。)が国から交付を受けた補助金を基に造成した基金をいう。)については7080億余円(同46.8%)が、それぞれ交付されるなどしていた。そして、5年度末時点の国庫への返納状況をみると、民間ゼロゼロ融資に係る保証料補助は966億余円、新型コロナウイルス感染症基金は6824億円となっていた。また、6年9月に公表された基金シート(注11)によれば、中小企業庁は、新型コロナ関連資金繰り支援の大部分を6年6月末をもって終了したことを踏まえ、6年度に基金規模の見直しを行い、新型コロナ関連資金繰り支援に要する費用の今後の使用見込みを精査し、経営安定関連保証等特別基金総額1兆2657億余円(5年度末残高)のうち7656億円について、6年度中に国庫返納する予定とされており、新型コロナウイルス感染症基金のうち563億余円についても6年度中に国庫返納する予定とされている。
日本公庫、商工中金、協会等は、新型コロナ特別貸付等、新型コロナ関連保証等の業務を実施している。そして、新型コロナ特別貸付等及び新型コロナ関連保証付融資については、返済開始時期を迎えるものが集中する時期を経過し、その元利金の返済が本格化するなどしている一方で、中小企業者等については借入金の残高や新型コロナウイルス関連の倒産件数が増加するなどしている。
ついては、検査で明らかになった状況を踏まえて、中小企業庁並びに日本公庫、商工中金、連合会及び中小機構は、次の点に留意するなどして資金繰り支援等を適切に実施していく必要がある。
ア 日本公庫及び商工中金において、新型コロナ特別貸付等については、5年度末時点においても多額の貸付残高がある中で、条件変更中の貸付債権、延滞等に至った貸付債権及び償却した貸付債権が令和4年度決算検査報告に掲記した4年度末時点における貸付債権の状況と比較しても増加し、また、新型コロナ特別貸付等の借換えが相当数生じていると思料されるなどしている状況を踏まえて、新型コロナ特別貸付等及びその借換後の貸付債権について、引き続き、債務者の状況把握等を適切に実施するなど、信用リスク管理等を適切に行うとともに、これまでと同様に、貸付債権の状況等に応じて適切に貸倒引当金を算定し、計上すること
イ 中小企業庁において、新型コロナ関連保証について、5年度末時点において多額の保証債務残高がある中で、条件変更中の金額、代位弁済額、求償権の発生額及び求償権残高が増加しているなどの状況を踏まえて、引き続き、各協会が保証債務及びその借換後の保証債務の管理並びに求償権を取得した後の求償権の管理等を適切に実施していくとともに、保証の対象となる中小企業者等に対して的確な経営支援を実施していくよう、適切な指導、助言等を行っていくこと
ウ 中小企業庁において、関係機関と連携するなどして、最近1か月間の売上高等減少率が認定基準を下回っていた事態について、市区町村長認定の事務を担当した各地方公共団体等を通じて当該事態に係る中小企業者等の売上高等の状況を確認するなどした上で必要な対応を執るとともに、その結果を踏まえて、今後の非常時における経営安定関連保証等の市区町村長認定が必要となる保証の発動等に備えて、新型コロナ関連保証に係る市区町村の認定事務を検証するなどして、非常時の経営安定関連保証等に係る事務における認定基準等の確認が適切に行われるようその在り方を検討すること
エ 日本公庫において、新型コロナ関連保証付融資の元利金の返済が本格化していることから、今後、保険事故が増加することによって事故率が上昇し、保険収支が悪化することにより、資本準備金を取り崩すことになる可能性があるため、新型コロナ関連保証等に係る保険収支が日本公庫の信用保険等業務勘定の財務状況に与える影響に留意しながら、リスク管理を含む新型コロナ関連保証等に係る保険の適切な業務運営に努めること
オ 連合会及び中小機構において、新型コロナ関連保証等に係る基金を管理する法人として、基金規模の妥当性を不断に検討するとともに、基金の規模が過大であると認められる場合には国庫への返納を適時適切に行うこと
本院としては、中小企業者等に対する新型コロナ特別貸付等に係る貸付債権等及び新型コロナ関連保証に係る保証債務等の状況について、引き続き注視していくこととする。