本院は、国際機関、国際的な活動を行っている非国家間機関等(以下、これらを合わせて「国際機関等」という。)に対する拠出金の拠出及び出資金の出資(拠出金には分担金を含む。また、以下、拠出金及び出資金を合わせて「拠出金等」といい、拠出及び出資を合わせて「拠出等」という。)の状況について、有効性、透明性の確保(注1)、国民への説明責任の向上(注1)等の観点から、①拠出等の全体額や主な拠出等の状況はどのようになっているか、②任意拠出金に係る拠出した資金に余剰が生じていないかなどの確認を適時適切に行っているか、③任意拠出金の拠出の対象となった事業等の終了後、事業等に使用されなかった資金についての処理を適時適切に行っているか、④拠出金等に係る情報は適切に開示されているかなどに着眼して検査した。
検査の状況の主な内容は次のとおりである。
平成30年度から令和5年度までの国際機関等に対する拠出等の全体額をみるために、拠出金等722件について、歳出予算による拠出等に係る決算額並びに拠出国債及び出資国債(注2)の発行額(以下、これらを合わせて「拠出額」という。)の合計額を集計したところ、5兆0237億余円となっていた。また、各年度の拠出額をみたところ、平成30、令和元両年度は5600億円前後であったが、2年度以降は7000億円を超え、5年度は1兆5000億円を超える規模となっていた。
平成30年度から令和3年度までの間に拠出した任意拠出金426件のうち、382件は拠出してから事業等が終了するまでの間(以下「拠出後」という。)に国際機関等から会計報告を定期的に受領していたが、10府省庁等(注3)の44件については会計報告を定期的に受領していなかった。そして、44件のうち7府省庁等(注4)の27件については、国際機関等との合意の内容を定めた文書(以下「合意書」という。)に会計報告の提出に関する規定が定められていなかった(注5)。
会計報告を定期的に受領していた任意拠出金382件のうち、13府省庁等(注6)の58件については、会計報告を確認することなどにより繰越額を定期的に把握していなかった。
また、繰越額を定期的に把握していた任意拠出金324件のうち、8府省庁等(注7)の43件は、繰越額のうち事業等に使用する予定がある資金以外の資金(以下「余剰資金」という。)の有無等を確認しなかったとしていた。
平成30年度から令和3年度までの間に拠出した任意拠出金426件のうち、元年度から5年度までの間に追加拠出が行われていたのは384件であり、このうち計123件を所管する15府省庁等(注8)は、余剰資金が生じているかを把握しておらず、追加拠出に当たり、拠出額が国際機関等において事業等を実施するために必要な資金の規模を超えていないことなどについての確認が十分でなかったおそれがあると認められた。
一方、余剰資金の有無等を確認したとしていた任意拠出金215件のうち、3府省庁等(注9)の任意拠出金4件については、国際機関等への問合せや、繰越額の使用予定が明記された関係資料等により確認するのではなく、事業報告に記載された事業成果に関する情報等により余剰資金がないと判断したなどとしていて、余剰資金の有無等の確認方法が適切ではなかったと認められた。
任意拠出金2件については、新型コロナウイルスの感染拡大等の影響により、事業の実施期間が延長され、又は拠出の対象となった事業の内容が一部変更されるなどしていたが、これらの任意拠出金を所管する外務省は、繰越額を定期的に把握しておらず、余剰資金が生じているかを把握していなかった。そのため、事業等の進捗の遅れや計画の変更等に伴う資金需要の変化を捉えて、国際機関等に余剰資金が滞留しないよう適時適切に働きかけを行うことができる状況となっていなかった。
平成30年度から令和4年度までの間に事業等の終了予定時期が到来し、終了予定時期から1年以上が経過した任意拠出金171件のうち、3府省庁等(注10)の3件については、事業等の終了後に、事業等に使用されることなく余った資金(以下「残余金」という。)の発生状況を把握していなかった。
そして、5年度末時点で、残余金のうち我が国の拠出の割合等に応じた返納を要する額(以下「要返納額」という。)が我が国に返納済みとなっていた39件について、事業等の終了時期から要返納額が返納されるまでに要した期間をみたところ、3年超を要したものも5件見受けられた。
また、返納の手続中となっていた22件について、事業等の終了時期からの期間をみたところ、5年度末時点で、事業等の終了時期から3年を超えているものが8件見受けられた。
平成30年度から令和5年度までの間には拠出等が行われていないものの、平成29年度以前に拠出が行われていて拠出の対象となった事業等の終了後の手続が令和5年度末時点において完了していないことを確認できた任意拠出金(以下「長期未完了任意拠出金」という。)28件のうち1件については、事業等が休止中となっていたが、当該任意拠出金を所管する財務省は、事業等の実施状況及び資金の状況を適切に把握していなかった。
外務省は、毎年度、18府省庁等(注11)に対して拠出等の状況についての報告(以下「実績報告」という。)の作成を依頼し、府省庁等から提出された実績報告を取りまとめて「国際機関への拠出金・出資金等に関する報告書」(以下「拠出金等報告書」という。)及び外交青書(以下、拠出金等報告書及び外交青書を合わせて「拠出金等報告書等」という。)として公表するなどしている。
平成30年度から令和3年度までの間に拠出等を行った拠出金等(義務的拠出金214件、任意拠出金424件及び出資金6件)のうち、9府省庁等(注12)が拠出した義務的拠出金10件(注13)(拠出額計41億1682万余円)及び任意拠出金48件(拠出額計1595億2082万余円)については、実績報告に記載されておらず、これらの拠出金に関する情報が拠出金等報告書等に含まれていなかった。
元年度から5年度までの拠出について外交青書には、義務的拠出金、任意拠出金及び出資金の合計額のほか、外務省が拠出した義務的拠出金のうち、拠出した額が多い上位50国際機関等について、国際機関等名と当該国際機関等に拠出した額等が記載されているものの、それ以外の義務的拠出金については、拠出の個別的な情報は記載されていなかった。
拠出前に合意していた使途から使途が変更されたことが公表されていない任意拠出金が見受けられた。
また、残余金が生じていたイヤーマーク拠出金(注14)75件のうち2府省庁等(注15)の2件については、各府省庁等と国際機関等との協議に基づき、拠出前に合意した使途とは別の使途に残余金を振り替えていた。そして、2府省庁等は、拠出前に合意した使途とは別の使途に残余金を振り替えたことについて公表していなかった。
国際機関等が直面する諸課題が多様化し、国際社会の協調がかつてないほど重要になっている状況において、我が国は国際機関等と協調してこれらの課題の解決に向けて取り組んでいる。そして、我が国の国際機関等に対する拠出等は多様かつ多額なものとなっており、国民の理解を得ていくことがより重要となっている。
ついては、本院の検査で明らかになった状況を踏まえて、各府省庁等は、次の点に留意するなどして、任意拠出金に係る資金の管理、拠出金等に係る情報開示等に取り組む必要がある。
ア 任意拠出金の拠出前に会計報告の提出を拠出の条件とする合意を行うことにより、拠出後に国際機関等から会計報告を定期的に受領するとともに、会計報告等により繰越額を定期的に把握した上で、余剰資金の有無等を国際機関等に問い合わせるなどして、拠出した資金の状況等を適時適切に把握すること。特に、国際機関等において追加の資金需要が生じた場合や、拠出の対象となった事業等に進捗の遅れや計画の変更等が生じているような場合には、余剰資金の有無等の確認を確実に行い、国際機関等における資金需要の変化を捉えて、国際機関等に余剰資金が滞留しないよう適時適切に働きかけを行うことができるようにすること
イ 任意拠出金の拠出の対象となった事業等の終了後、適時適切に残余金の発生状況を把握して、残余金が生じている場合には、合意書に定められた残余金の取扱いに関する規定に基づくなどして、国際機関等との間で協議を行い、要返納額の返納等の残余金の処理が速やかに行われるよう努めること
ウ 任意拠出金の拠出の対象となった事業等が長期にわたり休止して、国際機関等に余剰資金が滞留することのないよう、必要に応じて国際機関等に問い合わせるなどして、事業等の実施状況、資金の状況等を適時適切に把握すること
エ 拠出金等に係る情報開示が確実に行われるようにするとともに、義務的拠出金の基本的な情報についての開示の在り方について検討を行い、より一層の情報開示を行うこと。また、拠出後に使途を変更した任意拠出金や、近年は追加拠出が行われていないものの事業等の実施期間が長期にわたっている任意拠出金等に関する情報について公表する方法を検討すること
本院としては、国際機関等に対する拠出等の状況について、引き続き注視していくこととする。