会計検査院は、令和6年6月10日、参議院から、国会法第105条の規定に基づき下記事項について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けた。これに対し同月11日検査官会議において、会計検査院法第30条の3の規定により検査を実施してその検査の結果を報告することを決定した。
一、会計検査及びその結果の報告を求める事項
(一) 検査の対象
デジタル庁、総務省、厚生労働省
(二) 検査の内容
マイナポイント事業に関する次の各事項
① 事業の実施状況、特に広報の実施状況
② マイナポイントの申込みの状況及びマイナンバーカードの申請の状況
③ マイナポイントの利用の状況
政府は、元年12月に「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」を閣議決定し、同年10月の消費税率引上げへの対応として実施していたキャッシュレス・消費者還元事業(注1)を2年6月末まで着実に実施した上で、東京オリンピック・パラリンピック競技大会を経た(注2)同年9月から、マイナンバーカード(後述(2)ア(ア)参照)の普及やキャッシュレス決済(注3)の拡大を図りつつ、個人消費を切れ目なく下支えすることとした。そして、消費活性化策として、総務省において、マイナンバーカードを取得した上でキャッシュレス決済を利用する者にマイナポイント(当該利用者が選択したキャッシュレス決済サービスで利用可能なポイント等)を付与する事業(以下、当該事業の準備に係る事業を含めて「第1弾マイナポイント事業」という。)を実施することとした。
また、政府は、新型コロナウイルス感染症の影響により我が国経済が厳しい状況にあることなどを踏まえ、3年11月に「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を閣議決定し、マイナンバーカードの普及を促進するとともに、消費喚起や生活の質の向上につなげるために、総務省、厚生労働省及びデジタル庁において、マイナンバーカードを活用してマイナポイントを付与する事業(以下「第2弾マイナポイント事業」といい、第1弾マイナポイント事業と合わせて「マイナポイント事業」という。)を実施することとした。第2弾マイナポイント事業では、4年1月から、第1弾マイナポイント事業と同様に、マイナンバーカードを取得した上でキャッシュレス決済を利用する者にマイナポイントを付与することとした。さらに、同年6月から、マイナンバーカードの健康保険証としての利用(後述(2)ア(イ)参照)の申込みを行った者及び公金受取口座(後述(2)ア(ウ)参照)の登録を行った者に、それぞれマイナポイントを付与することとした(マイナポイント事業の概要については後述(2)イ参照)。
マイナポイント事業におけるマイナポイント付与の概念図を示すと図表0-1のとおりである。また、マイナポイント事業に関連する主な経緯を時系列にまとめると図表0-2のとおりである。
図表0-1 マイナポイント事業におけるマイナポイント付与の概念図
| 時期 | 事柄 |
|---|---|
| 令和元年10月 | 消費税率引上げへの対応としてキャッシュレス・消費者還元事業を開始 |
| 12月 | 「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」を閣議決定し、第1弾マイナポイント事業の実施を決定 |
| 2年 6月 | キャッシュレス・消費者還元事業の終了 |
| 7月 | 第1弾マイナポイント事業におけるマイナポイントの申込受付の開始 |
| 9月 | 第1弾マイナポイント事業におけるマイナンバーカードを取得した上でキャッシュレス決済を利用する者へのマイナポイントの付与の開始 |
| 3年 11月 | 「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を閣議決定し、第2弾マイナポイント事業の実施を決定 |
| 12月 | 第1弾マイナポイント事業におけるマイナポイントの申込受付の終了 |
| 4年 1月 | 第2弾マイナポイント事業におけるマイナンバーカードを取得した上でキャッシュレス決済を利用する者へのマイナポイントの付与の開始 |
| 6月 | 第2弾マイナポイント事業におけるマイナンバーカードの健康保険証としての利用申込みを行った者及び公金受取口座の登録を行った者へのマイナポイントの付与の開始 |
| 5年 9月 | 第2弾マイナポイント事業におけるマイナポイントの申込受付の終了 |
マイナポイント事業においては、(1)のとおりマイナンバーカードの普及を図ることとなっている。そして、第2弾マイナポイント事業では、これに加えて、マイナンバーカードの健康保険証としての利用申込み及び公金受取口座の登録の促進も図ることとなっており、マイナンバーカードの健康保険証としての利用申込み及び公金受取口座の登録に係るマイナポイントの付与を受けるに当たっては、マイナンバーカードの取得が前提となっている。
これらに係る制度の概要については次のとおりとなっている。
マイナンバー制度は、国民の利便性の向上と行政の効率化を併せて進め、より公平・公正な社会を実現するためのデジタル社会における社会基盤である。同制度においては、社会保障制度、税制、災害対策その他の行政分野で効率的に情報を管理し、複数の機関が保有する個人の情報が同一人の情報であることを確認するために個人番号(以下「マイナンバー」という。)が活用されている。マイナンバーは、住民票コードを変換して得られる12桁の番号であり、住民票を持つ日本国内の全住民に対して指定され、通知されている。
マイナンバーカードは、券面に氏名、住所、生年月日、性別、マイナンバー、顔写真等が記載されたICチップ付きのカードであり、住民からの申請に基づき、地方公共団体情報システム機構(以下「J-LIS」という。)が作成して、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が交付しているものである。マイナンバーカードのICチップには、氏名、住所、生年月日、性別、マイナンバー、顔写真及び住民票コードのほか、署名用電子証明書(注4)と利用者証明用電子証明書(注5)の2種類の電子証明書が記録されている。マイナンバーカードは、本人確認書類及びマイナンバーを証明する書類として利用できるだけではなく、記録された電子証明書等により、コンビニエンスストア等での各種証明書の取得、国税電子申告・納税システム(e-Tax)での確定申告、マイナポータル(注6)での各種行政手続、民間事業者での各種サービスにおいて活用されるなどしている。
マイナンバー及びマイナンバーカードに関して必要な事項は「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(平成25年法律第27号。以下「マイナンバー法」という。)等に定められている。マイナンバーカードの発行、交付及び管理に関することについては総務省が、利用に関することについてはデジタル庁が、それぞれ所管している。また、マイナンバーカードの発行等に関する情報については、J-LISが運用する個人番号カード管理システムにより管理されている。
健康保険証の資格確認の仕組みとして、3年10月からオンライン資格確認が本格運用されている。オンライン資格確認は、社会保険診療報酬支払基金及び国民健康保険中央会が共同で運用するオンライン資格確認等システムにおいて、国民健康保険、健康保険等の各保険者が登録及び更新する被保険者の資格情報等を一元的に管理し、保険医療機関等からのオンラインでの資格照会等に対応する仕組みである。
オンライン資格確認等システムでは、マイナンバーカードを健康保険証として利用することが可能となっていて、マイナンバーカードを保有する被保険者が利用申込みを行い、その登録が完了すると、マイナンバーカードに記録されている利用者証明用電子証明書の発行番号がオンライン資格確認等システムにおいて管理されている個人単位被保険者番号に紐付けられる。これにより、保険医療機関等においてマイナンバーカードによる本人認証が可能となり、オンライン資格確認が行えるようになる(以下、健康保険証としての利用登録が行われたマイナンバーカードを「マイナ保険証」という。)。なお、マイナ保険証による資格確認において使用されているのは利用者証明用電子証明書の発行番号であり、マイナンバー自体は使用されていない。
マイナ保険証に関する制度については、厚生労働省が所管しており、マイナ保険証の利用登録は2年7月から、マイナ保険証の本格的な利用は3年10月から、それぞれ開始されている。
また、オンライン資格確認においては、マイナ保険証によるほか、マイナ保険証の利用登録を行っていない者等に交付される資格確認書に記載された記号番号等を入力するなどの方法で資格確認を行うことも可能となっている(注7)。
公金受取口座登録制度は、「公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律」(令和3年法律第38号。以下「公金受取口座登録法」という。)等に基づき、行政機関等が行う公的給付の支給等に係る金銭の授受に利用することができる預貯金口座を、公金受取口座としてマイナンバーとともに国にあらかじめ登録しておくことができる制度である。
公金受取口座が登録されることにより、公的給付の支給等を行う行政機関等は、マイナンバー制度における情報連携(注8)により当該公金受取口座に関する情報の提供を求めることができるようになるため、緊急時の給付金のほか、年金、児童手当、所得税の還付金等、幅広い給付金等の申請手続等において、当該手続の申請者による口座情報の記載、通帳の写しなどの添付等が不要となり、公的給付の支給等を迅速かつ確実に行うことができるようになる。
公金受取口座登録制度については、デジタル庁が所管しており、公金受取口座の登録(注9)は4年3月から開始され、公金受取口座の情報に係る情報連携の利用は同年10月から順次開始されている。また、公金受取口座は、同庁が運用する口座情報登録・連携システムにより管理されている。
マイナポイント事業は、第1弾マイナポイント事業と第2弾マイナポイント事業とで、事業の目的、事業の内容等が異なり、マイナポイントの申込受付期間もそれぞれ複数回にわたり延長されるなどしている。マイナポイント事業の概要を整理して示すと、図表0-3のとおりである。
| 区分 | 第1弾マイナポイント事業 | 第2弾マイナポイント事業 | |
|---|---|---|---|
| 事業の実施を決定した経済対策の名称 | 「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」 (令和元年12月閣議決定) | 「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」 (令和3年11月閣議決定) | |
| 事業実施年度 | 令和元年度(準備に係る事業の分)、2年度及び3年度 | 3年度、4年度及び5年度 | |
| 事業の目的 | ・消費活性化(消費税率引上げに伴う経済対策) ・キャッシュレス決済の利用拡大 ・マイナンバーカードの普及 | ・消費喚起(コロナ禍における経済対策) ・キャッシュレス決済の利用拡大 ・マイナンバーカードの普及並びにマイナ保険証の利用申込み及び公金受取口座の登録の促進によるデジタル社会の実現 | |
| 事業の内容 | マイナンバーカードを取得した上でマイナポイントの申込みを行う申込者に前払等に係る金額の25%、最大5,000円相当のマイナポイントを付与 | 施策1:マイナンバーカードを取得した上でマイナポイントの申込みを行う申込者に前払等に係る金額の25%、最大5,000円相当のマイナポイントを付与 施策2:申込者がマイナ保険証の利用申込みを行った場合に7,500円相当のマイナポイントを付与 施策3:申込者が公金受取口座の登録を行った場合に7,500円相当のマイナポイントを付与 | |
| 申込受付期間 | 2年7月から3年12月までの18か月間 (当初は2年7月から3年3月までの9か月間) | 4年1月から5年9月までの21か月間 (当初は4年1月から5年2月までの14か月間) | |
| 付与開始時期 | 2年9月 | 施策1:4年1月 施策2及び施策3:4年6月30日 | |
| カード申請期限 | 3年4月末(当初は設定なし) | 5年2月末(当初は4年9月末) | |
| ポイント申込期限 | 3年12月末(当初は3年3月末) | 5年9月末(当初は5年2月末) | |
| 実施機関ごとの事業の概要 | 補助事業 | 総務省:事務局及び地方公共団体に対する個人番号カード利用環境整備費補助金及びマイナポイント事業費補助金の交付 事務局:ポイント付与補助事業、事務経費補助事業、広報等の実施 地方公共団体:マイナポイント利用環境整備事業の実施 決済事業者:マイナポイントの付与等 | 総務省:事務局及び地方公共団体に対するマイナポイント事業費補助金の交付等 事務局:ポイント付与補助事業、事務経費補助事業等の実施 地方公共団体:マイナポイント利用環境整備事業等の実施 決済事業者:マイナポイントの付与等 |
| 直轄事業 | 総務省:システム改修等 | 総務省:広報 デジタル庁:システム改修 | |
| 事務局 | 一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII) | 一般社団法人キャッシュレス推進協議会(PJ) | |
| 決済事業者及び登録サービス | 103決済事業者の登録サービス計123件 | 117決済事業者の登録サービス計141件 | |
| 128決済事業者の登録サービス計154件(純計) | |||
| 事業を所管する省庁 | 総務省 | 総務省:事業全般、事業の事務費及び施策1に係ること 厚生労働省:施策2に係ること デジタル庁:マイナポイントの申込みに関連するシステムの改修等システム全般及び施策3に係ること | |
| 予算額 | 3098億余円(元年度から3年度まで) | 1兆8324億余円(3年度及び5年度) | |
| 計2兆1422億余円 | |||
第1弾マイナポイント事業は、図表0-3のとおり、①消費活性化(消費税率引上げに伴う経済対策)、②キャッシュレス決済の利用拡大及び③マイナンバーカードの普及を目的としている。事業を所管する省庁は、総務省となっており、事業の内容については、マイナンバーカードを取得した上でマイナポイントの申込みを行う申込者が、利用するキャッシュレス決済サービスを選択し、残高へのチャージのための前払を行った場合又は物品等の購入を行った場合(以下、この前払と物品等の購入を合わせて「前払等」という。)に、キャッシュレス決済サービスを提供する事業者(以下「決済事業者」という。)から申込者に対して、前払等に係る金額の25%、最大5,000円相当のマイナポイントが付与されることとなっている。
第2弾マイナポイント事業は、図表0-3のとおり、①消費喚起(コロナ禍における経済対策)(以下、第1弾マイナポイント事業の①消費活性化(消費税率引上げに伴う経済対策)と合わせて「消費の活性化」という。)、②キャッシュレス決済の利用拡大及び③マイナンバーカードの普及並びにマイナ保険証の利用申込み及び公金受取口座の登録の促進によるデジタル社会の実現を目的としている。事業の内容としては、図表0-3のとおり、施策1、施策2及び施策3があり、事業を所管する省庁は、施策1に係ることについては総務省、施策2に係ることについては厚生労働省、施策3に係ることについてはデジタル庁となっている。施策1では、第1弾マイナポイント事業と同様に、申込者に対して、前払等に係る金額の25%、最大5,000円相当のマイナポイントが付与され、施策2では、申込者がマイナ保険証の利用申込みを行った場合に7,500円相当のマイナポイントが付与され(注10)、施策3では、申込者が公金受取口座の登録を行った場合に7,500円相当のマイナポイントが付与されることとなっている。したがって、申込者が施策1から施策3までの申込みを全て行った場合、最大20,000円相当のマイナポイントが付与されることとなる。
マイナポイント事業において、マイナポイントの付与を受けるためには申込手続が必要であり、この申込手続及びマイナポイントの付与までの流れは図表0-4のとおりとなっている。
まず、申込者は、マイナポイント事業において設定されたマイナンバーカードの申請期限(以下「カード申請期限」という。)までにマイナンバーカードの交付を申請し、交付を受ける。次に、別途設定されたマイナポイントの申込期限(以下「ポイント申込期限」という。)までに、マイナポイントアプリ(注11)等からキャッシュレス決済サービスを選択して、マイナポイントの申込みを行う。申込みはデジタル庁が運用するマイキープラットフォーム(注12)において受け付けられ、マイナポイントの付与に係る要件確認が行われた後、決済事業者は、マイキープラットフォームから提供された情報に基づき、申込者に対してマイナポイントの付与を行う(マイナポイントの付与に係る申込手続における要件確認等の仕組みについては別図表0-1参照)。
マイナポイント事業においては、図表0-5のとおりカード申請期限及びポイント申込期限が設定されている。第1弾マイナポイント事業においては、当初は、カード申請期限については設けられておらず、ポイント申込期限は3年3月末とされていた。その後、カード申請期限が設けられるとともに、カード申請期限及びポイント申込期限が延長され、最終的には3年4月末及び同年12月末とされた。第2弾マイナポイント事業においては、当初は、これらの期限は4年9月末及び5年2月末とされていたが、数回にわたり延長され、最終的には5年2月末及び同年9月末とされた。この結果、マイナポイントの申込受付期間は、第1弾マイナポイント事業の18か月間と第2弾マイナポイント事業の21か月間とを合わせて、最終的には計39か月間となった。
| 区分 | カード 申請期限 | ポイント 申込期限 | 申込受付期間 | 延長理由 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1弾マイナポイント事業 | 当初の期限 | - | 令和3年3月末 | 2年7月~3年3月 (9か月間) | |
| 1回目の延長後の期限 | 3年3月末 | 3年9月末 | 2年7月~3年9月 (15か月間) | 2年度末にかけて再配布されるQRコード付き交付申請書により、マイナンバーカードの申請件数の増加が見込まれるなどのため | |
| 2回目の延長後の期限 | 3年4月末 | 3年9月末 | 2年7月~3年9月 (15か月間) | 3年3月末頃にQRコード付き交付申請書を受領した場合においても、余裕をもってマイナンバーカードを申請することができるようにするなどのため | |
| 3回目の延長後の期限 | 3年4月末 | 3年12月末 | 2年7月~3年12月 (18か月間) | 3年4月末にマイナンバーカードを申請した場合においても、確実にマイナポイントを申し込めるようにするなどのため | |
| 第2弾マイナポイント事業 | 当初の期限 | 4年9月末 | 5年2月末 | 4年1月~5年2月 (14か月間) | |
| 1回目の延長後の期限 | 4年12月末 | 5年2月末 | 4年1月~5年2月 (14か月間) | 政府及び地方公共団体によるマイナンバーカードの更なる利活用拡大及び申請促進に向けた取組が進められている中、これらの取組と連携して、更なるマイナンバーカードの申請件数の増加を図るため | |
| 2回目の延長後の期限 | 5年2月末 | 5年5月末 | 4年1月~5年5月 (17か月間) | 新型コロナウイルスの感染者数が全国的に増加傾向にある中、窓口の混雑緩和を図り、安心してマイナンバーカードを申請することができるようにするとともに、適切にマイナポイントを申し込めるようにするなどのため | |
| 3回目の延長後の期限 | 5年2月末 | 5年9月末 | 4年1月~5年9月 (21か月間) | 5年2月末にマイナンバーカードの申請件数が急増したことにより、通常よりもマイナンバーカードの交付に時間を要する見込みとなったことなどから、それらの期間を考慮し、安心してマイナポイントを申し込めるようにするため | |
マイナポイント事業は、補助事業及び直轄事業により実施されている。
総務省は、マイナポイント事業のうち申込者に対するマイナポイントの付与等を補助事業により実施することとし、個人番号カード利用環境整備費補助金交付要綱(令和元年総行情第9号)及びマイナポイント事業費補助金交付要綱(令和2年総行情第14号。以下、これらを合わせて「交付要綱」という。)を定めて、マイナポイントを付与する決済事業者に対する経費の補助等を行う事務局に対して、また、マイナポイント事業の実施に向けた環境整備を行う地方公共団体に対して、個人番号カード利用環境整備費補助金及びマイナポイント事業費補助金をそれぞれ交付するなどしている。補助事業の予算は、事務の効率性を踏まえ、第1弾マイナポイント事業の制度設計を行った総務省に計上されており、同省が執行している。
また、総務省はマイナポイント事業の広報、システム改修等を、デジタル庁はシステム改修を、それぞれ直轄事業により実施している(注13)。直轄事業の予算は、同省及び同庁に計上されており、同省及び同庁が執行している。
マイナポイント事業における補助事業及び直轄事業の全体像を示すと、図表0-6のとおりとなっており、これらの事業を実施しているのは、総務省、デジタル庁、事務局、決済事業者及び地方公共団体(以下、これらを「実施機関」という。)となっている。
図表0-6 マイナポイント事業における補助事業及び直轄事業の全体像
実施機関ごとの事業の概要については次のとおりとなっている。
総務省は、第1弾マイナポイント事業の実施に当たり、補助事業者から決済事業者に対して補助金を交付する間接補助の方法を採用することとし、元年12月に補助金の交付等の事務を行う補助事業者を公募した。また、第2弾マイナポイント事業の実施に当たっても間接補助の方法によることとし、3年12月に補助事業者を改めて公募した。
第1弾マイナポイント事業の事務局として選定された一般社団法人環境共創イニシアチブ(以下「SII」という。)及び第2弾マイナポイント事業の事務局として選定された一般社団法人キャッシュレス推進協議会(以下「PJ」という。)は、次のaからdまでの業務及び間接補助金を交付する事業を、総務省が定めたマイナポイント事業費補助金(マイナポイント事業)実施要領(令和2年総行情第50号)、マイナポイント事業費補助金(マイナポイント第2弾)実施要領(令和4年総行情第14号。以下、これらを合わせて「実施要領」という。)等に基づき実施している。
a 間接補助事業者となる決済事業者の募集・審査・登録に係る業務
b マイナポイント事業費補助金(マイナポイント付与補助事業)交付規程を定め、当該交付規程に基づき、マイナポイントの付与の原資となる補助金(以下「ポイント付与補助金」という。)をaの決済事業者に対して交付する事業(以下「ポイント付与補助事業」という。)
c マイナポイント事業費補助金(事務経費補助事業)交付規程(以下、マイナポイント事業費補助金(マイナポイント付与補助事業)交付規程と合わせて「事務局交付規程」という。)を定め、当該交付規程に基づき、マイナポイントの付与に要する事務経費に係る補助金(以下「事務経費補助金」という。)をaの決済事業者に対して交付する事業(以下「事務経費補助事業」という。)
d aからcまでに付随する業務
dの業務では、マイナポイントの申込支援(マイナポイント申込支援用端末を全国に設置するなどの業務)、コールセンターの設置、システムの構築及び運用、事業の広報、事業の効果検証等の業務を実施することとなっている。このうち事業の効果検証では、マイナポイント事業の効果測定に係る調査(以下「効果測定調査」という。)を実施することとなっている。
なお、第1弾マイナポイント事業から切れ目なく第2弾マイナポイント事業を開始するため、PJが第2弾マイナポイント事業を開始するまでの期間(4年1月から同年3月まで)については、総務省からの依頼に基づき、SIIが継続して第2弾マイナポイント事業を実施している(以下、このSIIが継続して実施している第2弾マイナポイント事業を「継続事業」という。)。
決済事業者は、間接補助事業者として、申込者に対してマイナポイントを付与する事業を実施し、また、マイナポイントの付与に関して、コールセンターの設置、システム改修、事業の広報等を必要に応じて実施している。
決済事業者は、申込者が選択することができるキャッシュレス決済サービスの情報と付与するポイントの情報を組み合わせて、あらかじめ事務局に登録することとなっている(以下、キャッシュレス決済サービスの情報と付与するポイントの情報を組み合わせて事務局に登録したものを「登録サービス」という。)。また、複数のキャッシュレス決済サービスを提供しているなどの決済事業者においては、キャッシュレス決済サービスの情報と付与するポイントの情報の組合せを複数登録することも可能となっている。
決済事業者及び登録サービスは、第1弾マイナポイント事業では103決済事業者の登録サービス計123件、第2弾マイナポイント事業では117決済事業者の登録サービス計141件となっており、両事業の重複を除いたマイナポイント事業全体としての純計では、計128決済事業者の登録サービス計154件となっている(決済事業者及び登録サービスの詳細については別図表0-2参照)。
総務省は、マイナポイント事業の実施に当たり、デジタル機器等に不慣れな者に対する申込支援が必要であり、地方公共団体におけるマイナンバーカードの交付と一連の流れでマイナポイントの申込支援を行うことが効果的であるなどとして、地方公共団体に対してマイナポイントの申込支援等に対する協力を求めていた。
これを受けて、地方公共団体は、マイナポイント事業の実施に向けた環境整備として、マイナンバーカードを取得した者に対して庁舎等に設置したマイナポイント申込支援窓口でマイナポイントの申込支援等を行う事業、キャッシュレス決済サービスの利用店舗を募集する事業、マイナポイント事業の広報等を実施する事業(以下、これらを合わせて「マイナポイント利用環境整備事業」という。)等を必要に応じて実施している。
総務省は、事務局及び地方公共団体に対する補助を行っているほか、直轄事業として、第1弾マイナポイント事業においては、マイキープラットフォームの改修、JPQR(注14)に係る調査研究等の業務を実施しており、第2弾マイナポイント事業においては、広報の業務を実施している。また、デジタル庁は、第2弾マイナポイント事業において、マイキープラットフォーム等の改修業務を実施している。
マイナポイント事業においては、新聞、テレビ等の複数の媒体による大規模な広報が展開されており、第1弾マイナポイント事業では、SIIが株式会社電通(以下「電通」という。)に外注するなどして、第2弾マイナポイント事業では、総務省が直轄事業として電通に外注するなどして、それぞれ広報を実施している。
これらのほか、地方公共団体及び決済事業者においても、地域住民、キャッシュレス決済サービスの利用者等に向けた広報を実施している。
総務省から事務局及び地方公共団体に対して交付されるマイナポイント事業費補助金等(図表0-6の①及び②)並びに事務局から決済事業者に対して交付されるポイント付与補助金等(図表0-6の③)の概要を整理して示すと、図表0-7のとおりである(総務省から事務局に交付されるマイナポイント事業費補助金及びポイント付与補助金の交付に係る主な手続の流れについては別図表0-3参照)。
| 交付元及び交付先 | ①総務省から事務局に交付 | ②総務省から地方公共団体に交付 | ③事務局から決済事業者に交付 |
|---|---|---|---|
| 補助金名 | ・個人番号カード利用環境整備費補助金 ・マイナポイント事業費補助金 | ・個人番号カード利用環境整備費補助金 ・マイナポイント事業費補助金等 | ・ポイント付与補助金 ・事務経費補助金 |
| 交付の根拠規程 | 交付要綱 | 交付要綱等 | 事務局交付規程 |
| 補助対象経費 | ・第1弾マイナポイント事業のうち準備に係る事業の実施に要する経費(個人番号カード利用環境整備費補助金) ・決済事業者の募集・審査・登録に係る業務、ポイント付与補助事業、事務経費補助事業及びこれらに付随する業務の実施に要する経費(マイナポイント事業費補助金) | ・マイナポイントの申込支援等に要する経費 ・利用店舗募集に要する経費 ・広報等に要する経費 | ・マイナポイントの付与の原資(ポイント付与補助金) ・マイナポイントの付与に要する事務経費(事務経費補助金) |
| 交付額 | 事務局が実施する業務及び事業に要する経費の額 | マイナポイント利用環境整備事業等の実施に要する経費の実支出額と人口規模等に応じて設定された基準額とを比較して少ない方の額 | ・原則として、マイナポイント付与額からマイナポイント付与額に失効率を乗じて得られる失効額を控除した額(ポイント付与補助金) ・各決済事業者におけるマイナポイントの申込者数、キャッシュレス決済サービスの年間取扱高等に応じて設定された上限額の範囲内におけるマイナポイントの付与に要する事務経費の額(事務経費補助金) |
第1弾マイナポイント事業は、総務省が所管しており、その予算は、同省に計上され、同省が執行している。
第2弾マイナポイント事業は、総務省、厚生労働省及びデジタル庁が所管しており、事業全般、事業の事務費及び施策1に係ることについては総務省、施策2に係ることについては厚生労働省、マイナポイントの申込みに関連するシステムの改修等システム全般及び施策3に係ることについてはデジタル庁がそれぞれ所管している。そして、ウのとおり、その予算については、システム改修のためにデジタル庁に計上された一部の予算を除き、第1弾マイナポイント事業の制度設計を行った総務省に計上され、同省が執行している。
第1弾マイナポイント事業の予算は、令和元年度一般会計予算、令和元年度一般会計補正予算(第1号)、令和2年度一般会計予算、令和2年度一般会計補正予算(第3号)及び令和3年度一般会計予算(以下、それぞれ「元年度当初予算」「元年度補正予算」「2年度当初予算」「2年度第3次補正予算」「3年度当初予算」という。)に計3098億余円、第2弾マイナポイント事業の予算は、令和3年度一般会計補正予算(第1号)、令和5年度一般会計予算及び令和5年度一般会計補正予算(第1号)(以下、それぞれ「3年度補正予算」「5年度当初予算」「5年度補正予算」という。)に計1兆8324億余円が計上されており、マイナポイント事業の予算額はこれらを合わせた計2兆1422億余円となっている。
会計検査院は、前記要請のマイナポイント事業に関する各事項について、合規性、経済性、効率性、有効性、透明性の確保(注15)及び国民への説明責任の向上等の観点から、次の点に着眼して検査した。
ア 事業の実施状況、特に広報の実施状況
(ア) マイナポイント事業に係る予算の執行状況はどのようになっているか。
(イ) マイナポイント事業の実施状況はどのようになっているか。また、業務の外注等に当たり、競争性等が確保されているか。
(ウ) 広報の実施状況はどのようになっているか。
イ マイナポイントの申込みの状況及びマイナンバーカードの申請の状況
(ア) マイナポイントの申込みの状況はどのようになっているか。
(イ) マイナンバーカードの申請、マイナ保険証の利用登録及び公金受取口座の登録の状況はどのようになっているか。
(ウ) マイナポイント事業の実施後におけるマイナンバーカード、マイナ保険証及び公金受取口座の利用等の状況はどのようになっているか。
ウ マイナポイントの利用の状況
(ア) マイナポイントの利用の状況はどのようになっているか。
(イ) マイナポイント事業の効果の検証に係る取組の状況はどのようになっているか。
検査に当たっては、元年度から5年度までの間に実施されたマイナポイント事業を対象として、デジタル庁、総務省、厚生労働省、補助事業者であるSII、PJ及び41地方公共団体(4府県(注16)及び同府県の37市町村)、間接補助事業者である24決済事業者並びに国の役務の請負人である電通において、294人日を要して会計実地検査を行った。また、ポイント付与補助金の交付を受けた127決済事業者のうち、交付額が多額となっているなどの44決済事業者からマイナポイントの利用の状況、広報の実施状況等に係る調書の提出を、広報等に要する経費に係るマイナポイント事業費補助金の交付額が多額となっているなどの65地方公共団体(11府県(注17)及び13道府県(注18)の54市町)から広報の実施状況に係る調書の提出をそれぞれ受けて、その内容を確認するなどして検査した。
このほか、公表されている資料等により把握した内容を基に調査分析を行った。