• 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 令和8年5月|

マイナポイント事業に関する会計検査の結果について


第2 検査の結果

1 事業の実施状況、特に広報の実施状況

(1) マイナポイント事業に係る予算の執行状況

ア マイナポイント事業に係る予算の状況

元年度から5年度までのマイナポイント事業に係る予算額は2兆1422億余円であり、予算科目別に示すと、図表1-1のとおりとなっていた。

図表1-1 マイナポイント事業に係る予算科目別の予算額の状況

(単位:百万円)

所管予算科目元年度
当初予算
元年度
補正予算
2年度
当初予算
2年度
第3次
補正予算
3年度
当初予算
3年度
補正予算
5年度
当初予算
5年度
補正予算
構成比
(項)(目)
デジタル庁情報通信技術調達等適正・効率化推進費情報処理業務庁費-----3,550--3,5500.1%
総務省電子政府・電子自治体推進費職員旅費--2-----20.0%
情報処理業務庁費4,5441195,240--7,500--17,4040.8%
マイナンバーカード交付事務費補助金 (注)------2,20013,26715,4670.7%
個人番号カード利用環境整備費補助金7,385-------7,3850.3%
マイナポイント事業費補助金-2,003240,51725,00025,0001,805,906--2,098,42797.9%
11,9302,123245,76125,00025,0001,816,9562,20013,2672,142,238100.0%
うち第1弾マイナポイント事業分11,9302,123245,76125,00025,000---309,81414.4%
うち第2弾マイナポイント事業分-----1,816,9562,20013,2671,832,42385.5%
  • (注) 第2弾マイナポイント事業のポイント申込期限が令和5年度まで延長されたことに伴い、地方公共団体による5年度のマイナポイント申込支援等に要する経費として措置されたもの

このうち、構成比が最大の目である(目)マイナポイント事業費補助金の予算額は、計2兆0984億余円となっており、マイナポイント事業に係る予算額全体の97.9%を占めていた。

また、前記の予算額2兆1422億余円について、予算上は、事業区分、実施機関等の別の内訳は示されていないため、予算案の作成時に総務省及びデジタル庁が積算した金額(以下「予算積算額」という。)からその内訳をみると、図表1-2のとおりとなっていた。

図表1-2 マイナポイント事業に係る所管、事業区分、実施機関等別の予算積算額の状況

(単位:百万円)

所管事業区分元年度
当初予算
元年度
補正予算
2年度
当初予算
2年度
第3次
補正予算
3年度
当初予算
3年度
補正予算
5年度
当初予算
5年度
補正予算
構成比
実施機関等
総務省補助事業7,3852,003240,51725,00025,0001,805,9062,20013,2672,121,28099.0%
事務局4,520-19,404--17,091--41,0151.9%
決済事業者-2,003208,00025,00025,0001,779,500--2,039,50395.2%
ポイント付与補助事業--200,00025,00025,0001,772,500--2,022,50094.4%
事務経費補助事業-2,0038,000--7,000--17,0030.7%
地方公共団体2,865-13,113--9,3152,20013,26740,7611.9%
直轄事業4,5441195,243--11,050--20,9570.9%
総務省総務省4,5441195,243--7,500--17,4070.8%
デジタル庁デジタル庁-----3,550--3,5500.1%
11,9302,123245,76125,00025,0001,816,9562,20013,2672,142,238100.0%
うち第1弾マイナポイント事業分11,9302,123245,76125,00025,000---309,81414.4%
うち第2弾マイナポイント事業分-----1,816,9562,20013,2671,832,42385.5%

補助事業の予算積算額は計2兆1212億余円(マイナポイント事業に係る予算積算額全体に対する構成比99.0%)となっており、このうち、ポイント付与補助事業の予算積算額は計2兆0225億円(同94.4%)となっていた。

また、事務局が実施する業務及び事業に要する経費から、決済事業者に対してポイント付与補助金及び事務経費補助金として交付する金額を差し引いた金額(図表1-2「事務局」欄の金額。以下「事務局事務費」という。)に係る予算積算額は計410億余円となっていた(事務局事務費については後述(2)ア(ウ)参照)。

ポイント付与補助事業の予算積算額は、図表1-3のとおり、第1弾マイナポイント事業及び第2弾マイナポイント事業におけるマイナポイントの申込者数の目標値に基づき積算されていた。

図表1-3 ポイント付与補助事業における予算積算上のマイナポイントの申込者数の目標値等

施策区分予算1人当たりの金額(円)マイナポイントの申込者数の目標値(万人)予算積算額(億円)
第1弾マイナポイント事業マイナンバーカード取得2年度当初予算5,00040002000
2年度第3次補正予算5,000500250
3年度当初予算5,000500250
小計2500
第2弾マイナポイント事業施策1
(マイナンバーカード取得)
3年度補正予算5,00069503475
施策2
(マイナ保険証)
7,50095007125
施策3
(公金受取口座)
7,50095007125
小計1兆7725
2兆0225

このうち、第1弾マイナポイント事業では、政府は、2年7月末までに4000万枚のマイナンバーカードを交付することを想定していたため、総務省は、2年度当初予算において、第1弾マイナポイント事業のマイナポイントの申込者数の目標値を4000万人と設定して、これに1人当たりの金額5,000円を乗じた2000億円をポイント付与補助事業の予算額として積算していた。その後、目標値を5000万人に拡充することとされたため、同省は、拡充された1000万人に5,000円を乗じた500億円について、2年度第3次補正予算及び3年度当初予算において、それぞれ500万人分に相当する250億円をポイント付与補助事業の予算額として積算しており、第1弾マイナポイント事業におけるポイント付与補助事業の予算積算額は、これらを合わせた計2500億円となっていた。

また、第2弾マイナポイント事業では、総務省、厚生労働省及びデジタル庁は、人口の75%がマイナポイントの申込みを行うことを想定し、マイナポイントの申込者数の目標値を9500万人と設定していたため、総務省は、3年度補正予算において、施策1については9500万人から予算の作成時における第1弾マイナポイント事業の最終的な申込者数として想定した2550万人を差し引いた6950万人に5,000円を乗じた3475億円、施策2及び施策3についてはそれぞれ9500万人に7,500円を乗じた7125億円をポイント付与補助事業の予算額として積算しており、第2弾マイナポイント事業におけるポイント付与補助事業の予算積算額は、これらを合わせた計1兆7725億円となっていた。

イ マイナポイント事業に係る予算の執行状況

マイナポイント事業に係る予算額2兆1422億余円に対する元年度から5年度までの支出済額は計1兆5178億余円となっており、予算科目別に示すと、図表1-4のとおりとなっていた。

図表1-4 マイナポイント事業に係る予算科目別の支出済額の状況

(単位:百万円)

所管予算科目令和
元年度
2年度3年度4年度5年度構成比
(項)(目)
デジタル庁情報通信技術調達等適正・効率化推進費情報処理業務庁費--320923-1,2440.0%
総務省電子政府・電子自治体推進費諸謝金 注(1)--0--00.0%
職員旅費-0---00.0%
庁費 注(1)----000.0%
情報処理業務庁費2,5472,835677,465-12,9150.8%
マイナンバーカード交付事務費補助金 注(2)----11,66511,6650.7%
個人番号カード利用環境整備費補助金 注(3)7865,825---6,6120.4%
マイナポイント事業費補助金 注(3)-69,047102,303966,465347,5651,485,38197.8%
3,33477,708102,691974,855359,2311,517,820100.0%
うち第1弾マイナポイント事業分3,33477,70887,513--168,55611.1%
うち第2弾マイナポイント事業分--15,177974,855359,2311,349,26488.8%
  • 注(1) (目)諸謝金及び(目)庁費については、マイナポイント事業に係る予算としては計上されていないが、これらの(目)からマイナポイント事業に係る経費を支出したため、これに係る支出済額を記載している。
  • 注(2) (目)マイナンバーカード交付事務費補助金の金額は、マイナポイント申込支援等に要する経費として地方公共団体が実際に支払った経費等を示している。
  • 注(3) (目)個人番号カード利用環境整備費補助金の令和元年度における支出済額及び(目)マイナポイント事業費補助金の支出済額には、マイナポイント事業に係る経費と区分することができない他の事業に係る経費が一部含まれている。
  • 注(4) 総務省及びデジタル庁が、図表1-2における直轄事業に係る予算により実施したものの、マイナポイント事業分を算出することができない業務に係る経費については、図表に含めていない。

このうち、構成比が最大の目である(目)マイナポイント事業費補助金の支出済額は計1兆4853億余円となっており、マイナポイント事業に係る支出済額全体の97.8%を占めていた。

マイナポイント事業に係る支出済額はこのような状況となっていたが、この支出済額は、一部の目において、翌年度以降に返納されている場合があった。すなわち、(目)マイナポイント事業費補助金等において、事務局等は、事務局事務費並びに決済事業者へのポイント付与補助金及び事務経費補助金に必要な金額を踏まえて作成した資金計画を基に概算払により補助金の交付を受けるなどして、最終的な余剰額を翌年度以降に返納していた。

そこで、実質的な予算の執行状況を把握するため、マイナポイント事業に係る支出済額から事務局等による翌年度以降の返納額を差し引いたマイナポイント事業に係る支出額(7年9月時点。以下、支出済額から翌年度以降の返納額を差し引いた額を「支出額」という。)についてみると、元年度から5年度までで計1兆3905億余円となっており、これを所管、事業区分、実施機関等の別に区分すると、図表1-5のとおりとなっていた。

図表1-5 マイナポイント事業に係る予算の所管、事業区分、実施機関等別の支出額等の状況

(単位:百万円)

所管事業区分予算
積算額
(a)
支出額割合
(b)/(a)
注(1)
実施機関等第1弾マイナポイント事業第2弾マイナポイント事業
(b)
構成比
総務省補助事業2,121,280159,9731,216,3771,376,35198.9%64.8%
事務局 注(2)41,01529,20730,13459,3424.2%144.6%
決済事業者2,039,503119,6871,160,1571,279,84492.0%62.7%
ポイント付与補助事業2,022,500116,5831,154,8411,271,42591.4%62.8%
事務経費補助事業 注(2)17,0033,1035,3158,4180.6%49.5%
地方公共団体 注(2) 注(3)40,76111,07826,08637,1642.6%91.1%
直轄事業 注(4)20,9575,4508,71114,1611.0%67.5%
総務省総務省17,4075,4507,46712,9170.9%74.2%
デジタル庁デジタル庁3,550-1,2441,2440.0%35.0%
2,142,238165,4231,225,0891,390,513100.0%64.9%
  • 注(1) 割合の欄は予算積算額に対する支出額の割合を示したものであり、事務局事務費においては、予算積算額を超える金額について決済事業者分として積算された予算額を充てたため、割合が100%を超えている。
  • 注(2) 事務局事務費の支出額(「事務局」欄参照)、事務経費補助事業の支出額及び地方公共団体における第1弾マイナポイント事業の支出額には、マイナポイント事業に係る経費と区分することができない他の事業に係る経費が一部含まれている。
  • 注(3) 第2弾マイナポイント事業は令和4年1月から実施されたが、3年度の地方公共団体に対する補助金の交付額を第1弾マイナポイント事業分と第2弾マイナポイント事業分に区分することができないため、全額を第1弾マイナポイント事業分として整理している。
  • 注(4) 総務省及びデジタル庁が、図表1-2における直轄事業に係る予算により実施したものの、マイナポイント事業分を算出することができない業務に係る経費については、図表に含めていない。

補助事業の支出額は計1兆3763億余円(マイナポイント事業に係る支出額全体に対する構成比98.9%)となっており、このうち、ポイント付与補助事業の支出額は計1兆2714億余円(同91.4%)となっていた。

予算積算額に対する支出額の割合についてみると、マイナポイントの申込者数が目標値である9500万人に達しなかったこと(マイナポイントの申込者数については後述2(1)ア参照)などから、マイナポイント事業全体は64.9%、ポイント付与補助事業は62.8%となっていた。一方で、事務局事務費は144.6%と高くなっていたが、この理由について、総務省は、マイナポイントの申込受付期間が、第1弾マイナポイント事業、第2弾マイナポイント事業共に事業開始時に設定していた9か月間、14か月間からそれぞれ延長され、最終的に39か月間となったことに伴って(第1の2(2)イ参照)、マイナポイント申込支援用端末の設置費、システム関連費等の申込者数の状況にかかわらず発生する経常的な経費が増加したためとしている。

また、図表1-5のとおり、マイナポイント事業に係る支出額の大半を補助事業が占めていることから、補助事業の繰越額等の状況をみると、図表1-6のとおり、元年度から3年度までの各年度における予算現額に対する繰越額の割合(以下「繰越率」という。)は72.0%から89.5%まで、5年度における予算現額に対する不用額の割合(以下「不用率」という。)は48.2%といずれも高くなっていた。

図表1-6 補助事業の繰越額等の状況

(単位:百万円)

区分令和元年度2年度3年度4年度5年度
予算現額 (a)9,389273,7742,028,1461,816,049694,787
支出済額 (b)78674,873102,303966,465359,230
繰越額 (c)8,257197,2401,816,049679,319-
繰越率 (c)/(a)87.9%72.0%89.5%37.4%-
不用額 (d)=(a)-(b)-(c)3451,661109,793170,263335,556
不用率 (d)/(a)3.6%0.6%5.4%9.3%48.2%

元年度から3年度までの各年度における繰越率が高い理由について、総務省は、元年度は、第1弾マイナポイント事業の申込受付開始に向けた準備を2年度にかけて行ったため、2年度及び3年度は、ポイント申込期限が翌年度に延長されたため(図表0-5参照)などとしている。また、5年度における不用率が高い理由について、同省は、ポイント申込期限の延長等の理由により翌年度への繰越しが行われた後、最終的にマイナポイントの申込者数が目標値である9500万人に達しなかったためなどとしている。

(2) マイナポイント事業の実施状況

マイナポイント事業においては、第1の2(2)ウのとおり、事務局は補助事業者としてポイント付与補助事業等を、決済事業者は間接補助事業者としてマイナポイントを付与するなどの事業を、地方公共団体は補助事業者としてマイナポイント利用環境整備事業等を、総務省及びデジタル庁は広報等の事業を、それぞれ実施している。

これらの実施機関は、マイナポイント事業を補助事業又は直轄事業として実施しており、これに係る国の支出額は1兆3905億余円(図表1-5参照)となっていた。

このうち、ポイント付与補助事業は、国の支出額1兆2714億余円で実施されており、これは上記国の支出額1兆3905億余円の大半を占めていた。

上記国の支出額1兆2714億余円で事務局が実施したポイント付与補助事業について、事務局が決済事業者に対して交付したポイント付与補助金の交付額(返納等を除いた額をいう。以下同じ。)を事業及び施策別にみると、図表1-7のとおりとなっていた。

図表1-7 事務局が実施したポイント付与補助事業に係るポイント付与補助金の交付額の内訳

(単位:千円)

区分ポイント付与補助金の交付額
第1弾マイナポイント事業116,583,881
第2弾マイナポイント事業1,154,841,869
施策1(マイナンバーカード取得)199,844,169
施策2(マイナ保険証)501,146,860
施策3(公金受取口座)453,850,840
1,271,425,751

また、実施機関は、ポイント付与補助事業以外に各種業務及び事業を実施しており、これに係る国の支出額は1190億余円(前記の1兆3905億余円とポイント付与補助事業に係る前記の1兆2714億余円との開差額)となっていた。

上記国の支出額1190億余円で実施機関が実施したポイント付与補助事業以外の業務及び事業に係る経費について、実施機関別、事業別及び経費の使途別にみると、図表1-8のとおりとなっていた。

図表1-8 ポイント付与補助事業以外の業務及び事業に係る経費の内訳

(単位:千円)

実施機関及び事業申込支援費 注(1)コールセンター費システム関連費広報に要する経費その他 注(2)
事務局
 注(3)
第1弾マイナポイント事業9,654,0654,253,2732,045,6027,673,3305,581,71629,207,988
第2弾マイナポイント事業11,376,3824,061,4124,853,3002,101,1297,742,28030,134,505
継続事業-6,991356,5931,051,260565,0101,979,856
PJ分11,376,3824,054,4204,496,7061,049,8687,177,27028,154,649
決済事業者
 注(3)
第1弾マイナポイント事業-385,5081,883,471670,706163,7273,103,413
第2弾マイナポイント事業-642,7293,252,2421,015,859404,5195,315,351
地方公共団体 注(3)34,997,459--2,088,07278,93637,164,468
総務省 注(4)-96,5994,027,9537,615,8951,176,86112,917,310
デジタル庁 注(4)--1,244,226--1,244,226
56,027,9079,439,52417,306,79721,164,99415,148,041119,087,265
  • 注(1) 「申込支援費」は、事務局においてはマイナポイント申込支援用端末を全国に設置するなどのマイナポイント申込支援業務に要する経費、地方公共団体においてはマイナンバーカードを取得した者に対してマイナポイント申込支援等を行う事業に要する経費である。
  • 注(2) 「その他」の主なものとして、事務局においては決済事業者からの申請に関する審査に要する経費、決済事業者においては事務に要する経費、地方公共団体においてはキャッシュレス決済サービスの利用店舗の募集に要する経費、総務省においてはJPQRの調査研究に要する経費がある。
  • 注(3) 事務局、決済事業者及び地方公共団体における経費には、マイナポイント事業に係る経費と区分することができない他の事業に係る経費が一部含まれている。
  • 注(4) 総務省及びデジタル庁が、図表1-2における直轄事業に係る予算により実施したものの、マイナポイント事業分を算出することができない業務に係る経費については、図表に含めていない。

さらに、実施機関別にマイナポイント事業の実施状況をみたところ、次のとおりとなっていた。

ア 事務局による業務及び事業の実施状況
(ア) 事務局の選定の状況

総務省は、マイナポイント事業の実施に当たり、元年12月に第1弾マイナポイント事業について、3年12月に第2弾マイナポイント事業について、それぞれ「マイナポイント事業等を行う者に対する補助事業の募集についての説明書」(以下「第1弾募集要領」という。)、「マイナポイント第2弾を行う者に対する補助事業の募集についての説明書」(以下「第2弾募集要領」という。)を定め、事業の目的、事業内容、事業期間、審査の実施方法等を明示して、決済事業者の募集、審査等を行う事務局として補助事業者を公募していた。補助事業における公募に関する省内の統一的なルールは設けられていなかったことから、総務省は、第1弾マイナポイント事業では経済産業省が実施した「キャッシュレス・消費者還元事業」に係る補助事業者募集要領を、また、第2弾マイナポイント事業では経済産業省が設置した「調達等の在り方に関する検討会」が3年1月に取りまとめた報告書(以下「検討会報告書」という。)を参考にして、それぞれ公募を行ったとしている。

そこで、公募の実施状況について確認したところ、総務省は、競争性等が確保されるようにするため、可能な限り、公募前に複数の事業者から事業について意見を聴取したなどとしている。また、公募における受付期間及び審査基準については、「キャッシュレス・消費者還元事業」に係る補助事業者募集要領及び検討会報告書を踏まえて定めたとしている。これらのことから、総務省は、公募において、複数の事業者の応募を妨げるような条件とはなっていなかったとしている。

公募の結果、第1弾マイナポイント事業にはSII1者が、第2弾マイナポイント事業にはPJ1者が、それぞれ応募し、学識経験等を有する外部有識者5名で構成された委員会による審査の結果を踏まえて、第1弾マイナポイント事業の事務局としてSIIが、第2弾マイナポイント事業の事務局としてPJが、それぞれ採択された(補助事業者の公募手続に係る概要については別図表1-1参照)。

(イ) 事務局による業務及び事業の概要

事務局が国からマイナポイント事業費補助金等の交付を受けて実施した主な業務及び事業は、①補助金の交付事業、②事業に参画する決済事業者の募集、登録及び申請の審査業務、③マイナポイント申込支援用端末を全国に設置するなどの申込者に対する申込支援業務、④問合せに対応するコールセンター運営業務、⑤決済事業者との手続に要するシステム構築業務、⑥新聞、テレビ等の複数のメディアを活用するなどした広報業務となっていた。これらの業務及び事業について、その内容等を整理すると、図表1-9のとおりとなる。

図表1-9 事務局が実施した主な業務及び事業の内容等

図表1-9 事務局が実施した主な業務及び事業の内容等画像

事務局が実施した主な業務及び事業のうち①補助金の交付事業についてみると、第1弾マイナポイント事業では、SIIが1488億余円の補助を受けて103決済事業者に対してポイント付与補助金及び事務経費補助金を1196億余円交付した。また、第2弾マイナポイント事業のうち、継続事業では、SIIが99億余円の補助を受けて92決済事業者に対してポイント付与補助金及び事務経費補助金を79億余円交付した。継続事業終了後の第2弾マイナポイント事業では、PJが1兆1803億余円の補助を受けて108決済事業者に対してポイント付与補助金及び事務経費補助金を1兆1521億余円交付した。

また、事務局が実施した主な業務及び事業の②から⑥までについてみると、SII及びPJは、決済事業者の募集、登録及び申請の審査業務、マイナポイント申込支援業務等を実施しており、これに係る事務局事務費は、第1弾マイナポイント事業では292億余円、第2弾マイナポイント事業のうち、継続事業では19億余円(SIIの事務局事務費計311億余円)、継続事業終了後の第2弾マイナポイント事業では281億余円(PJの事務局事務費同額)となっていた(事務局が補助金の交付を受けて実施したマイナポイント事業に係る経費の内訳については図表1-10参照)。

図表1-10 事務局が補助金の交付を受けて実施したマイナポイント事業に係る経費の内訳

(単位:千円)

経費の種類等第1弾マイナポイント事業第2弾マイナポイント事業
継続事業PJ分
決済事業者数(間接補助事業者数)
103決済事業者117決済事業者92決済事業者108決済事業者
決済事業者に対して交付した補助金119,687,2951,160,157,2217,998,4161,152,158,804
ポイント付与補助金116,583,8811,154,841,8697,845,3691,146,996,499
事務経費補助金3,103,4135,315,351153,0475,162,304
事務局事務費29,207,98830,134,5051,979,85628,154,649
148,895,2831,190,291,7269,978,2731,180,313,453
(ウ) 事務局事務費

事務局事務費(図表1-10参照)について、事務局が総務省に提出した実績報告書を基に費目等をSII及びPJについてそれぞれ整理したところ、図表1-11のとおり、事務局の人件費のほか、旅費、借料及び賃料、消耗品費等の費目の支払がなされていた。

このうち、業務の一部を委託、請負等により外部の事業者に実施させていた経費(以下「外注経費」という。)についてみたところ、SII及びPJでそれぞれ308億余円及び266億余円、事務局事務費に占める外注経費の割合(以下「外注経費率」という。)はそれぞれ99.0%及び94.5%となっていた。

図表1-11 事務局事務費の支払内訳

SII (第1弾マイナポイント事業及び継続事業)(単位:千円)

費目主な内容金額(a)
うち外注経費 (b)
人件費SII人件費79,908-
旅費SII旅費0-
借料及び賃料オフィス賃借料114,869-
消耗品費文具等購入費429-
広報費広告媒体費6,427,2706,427,270
委託費事業設計運用、システム運用費、申込支援費、広報企画業務、審査業務24,498,99124,455,306
印刷製本費コピー機使用料4,365-
その他諸経費郵送料62,008-
31,187,84430,882,577
外注経費率 (b)/(a)99.0%

PJ (第2弾マイナポイント事業(継続事業を除く。))(単位:千円)

費目主な内容金額(a)
うち外注経費 (b)
人件費派遣人件費321,262-
謝金外部審査委員謝金473-
備品費PC関連費183,693-
借料及び賃料申込支援費5,102,3764,885,184
消耗品費文具等購入費503-
広報費ホームページ制作・運用費1,049,8681,049,868
申込支援費 注(2)1,173,8001,173,800
委託費事業設計運用、審査業務13,049,51312,380,040
外注費システム開発費2,747,9202,747,728
印刷製本費コピー機使用料7,125-
その他諸経費システム運用費、申込支援費4,518,1114,393,415
28,154,64926,630,037
外注経費率 (b)/(a)94.5%
  • 注(1) 実績報告書における費目の区分は事務局の裁量に委ねられているため、SII及びPJにおいて同じ内容の支払であっても、費目が同一でないものがある。
  • 注(2) PJは、申込支援費の一部を広報費に含めている。
(エ) 事務局による業務及び事業の実施体制

第1弾マイナポイント事業及び継続事業の事務局における業務及び事業の実施体制は図表1-12のとおりとなっており、SIIは、高度で専門的な知識を有した人員の確保、実施体制の確実な構築等のために、業務の一部を外注する必要があったとしている。

SIIは、業務及び事業の統括、予算の統括等を実施しており、事業全体管理・設計、審査項目設計、広報の企画業務、媒体枠を調達する業務等を電通に外注していて、電通への外注に係る経費は189億余円、事務局事務費に占める割合は60.7%となっていた。

また、電通がSIIから受託した業務のうち外注が前提となる媒体枠を調達する業務を除く業務の実施状況をみたところ、電通はその一部を21者に外注しており、電通からの外注に係る経費は計116億余円、事務局事務費に占める割合は37.3%となっていた。

図表1-12 SIIによる第1弾マイナポイント事業及び継続事業の実施体制

図表1-12 SIIによる第1弾マイナポイント事業及び継続事業の実施体制画像

第2弾マイナポイント事業の事務局における業務及び事業の実施体制は図表1-13のとおりとなっており、PJは、外部の専門性の高い知見を持った人材を確保することで第1弾マイナポイント事業からの短期間で確実な事業移管等を担保するなどのために、業務の一部を外注する必要があったとしている。

また、総務省は、第2弾募集要領において事業費に対する委託費総額の割合が50%を超える場合は業務を委託する理由が分かる資料の提出を求めており、PJが総務省に提出した資料では、国による大型事業の実行に必要な専門性を有する外部の企業及びリソースをあらかじめ構成して実施するなどのために、事務局業務統括サポート、政策効果の調査、データ分析等を外注する必要があるとされていた。

PJは、業務及び事業の統括、予算の統括等を実施しており、業務の進捗管理等を行う事務局業務統括サポート、アンケート等による政策効果の調査、マイナポイントの申込者数の予測に関するデータ分析等を外注していて、事務局事務費281億余円のうち、外注経費は計266億余円、外注経費率は94.5%となっていた。

図表1-13 PJによる第2弾マイナポイント事業の実施体制

図表1-13 PJによる第2弾マイナポイント事業の実施体制画像

SII及びPJは、多くの業務を外注して事務局業務を実施しているが、外注の階層については、SIIは最大4次請となっていて、SIIでは、事務局業務における多くの委託先の管理を電通に行わせ、電通から更に業務が外注されている構造となっていた。また、PJは最大3次請となっていて、PJの方がその階層は浅くなっており、その理由について、総務省は、第2弾募集要領において、検討会報告書を参考に、事業全体の企画及び立案並びに根幹に関わる執行管理を委託することはできないことを明記したことなどから、PJでは事務局業務における委託先の管理については外注しなかったなどのためとしている。

(オ) 事務局による外注先との契約方式等

総務省は、交付要綱において、補助事業者は、補助事業を遂行するために、売買、請負その他の契約をする場合は、一般の競争に付さなければならず、補助事業の運営上、一般の競争に付することが困難又は不適当である場合は、指名競争に付し、又は随意契約をすることができるとしている。そこで、SIIが締結した外注経費に係る契約42件の契約方式を確認したところ、随意契約は24件となっていた。また、PJが締結した外注経費に係る契約46件の契約方式を同様に確認したところ、随意契約は44件となっていた(別図表1-2参照)。

随意契約とした理由について、SII及びPJは、専門性が高く代替が困難な外注先であったこと及び知見を持った人材を公募から事業開始までの短期間に確保する必要があったため一般の競争に付することが困難であったことによるとしている。

イ 決済事業者による事業の実施状況

決済事業者は、事務局から、ポイント付与補助金の交付を受けて申込者に対してマイナポイントの付与を行っており、また、事務経費補助金の交付を受けてコールセンターの運営、マイナポイントの付与に対応するためのシステム開発・運用、マイナポイント事業の広報等を行っていた。決済事業者がこれらの補助金の交付を受けて実施した事業に係る経費の状況をみると、図表1-14のとおりとなっていて、第1弾マイナポイント事業では計1196億余円、第2弾マイナポイント事業では計1兆1601億余円となっていた。

また、これらの補助金のうち、ポイント付与補助金が、第1弾マイナポイント事業では1165億余円、第2弾マイナポイント事業では1兆1548億余円となっていて、補助金の交付額の大半を占めていた。事務経費補助金は、第1弾マイナポイント事業では31億余円、第2弾マイナポイント事業では53億余円となっていた。事務経費補助金について、事務局交付規程に基づく人件費、事業経費、システム開発・運用費及び広報費の区分別の経費の内訳をみると、システム開発・運用費が、第1弾マイナポイント事業では18億余円、第2弾マイナポイント事業では32億余円と最も大きくなっていて、次いで、広報費が、第1弾マイナポイント事業では6億余円、第2弾マイナポイント事業では10億余円となっていた(広報の実施状況については後述(3)、マイナポイントの付与状況については後述2(1)エ参照)。

図表1-14 決済事業者が補助金の交付を受けて実施した事業に係る経費の状況

(単位:千円)

補助の種類等第1弾マイナポイント事業第2弾マイナポイント事業
継続事業PJ分
ポイント付与補助金116,583,8811,154,841,8697,845,3691,146,996,499
事務経費補助金3,103,4135,315,351153,0475,162,304
人件費33,37840,82788939,938
事業経費515,8571,006,42164,931941,489
システム開発・運用費1,883,4713,252,24287,1633,165,078
広報費670,7061,015,859621,015,797
119,687,2951,160,157,2217,998,4161,152,158,804
ウ 地方公共団体による事業の実施状況

地方公共団体は、総務省から、元年度及び2年度は個人番号カード利用環境整備費補助金、2年度から4年度まではマイナポイント事業費補助金、5年度はマイナンバーカード交付事務費補助金の交付をそれぞれ受けて、マイナポイント利用環境整備事業等を実施していた。

マイナポイント利用環境整備事業等に係る補助金は、図表1-15のとおり、計1,413団体に計371億余円が交付されていた。地方公共団体がこれらの補助金の交付を受けて実施した事業について、補助対象経費別の補助金相当額によりその実施状況をみると、マイナポイント申込支援等に要する経費が計1,391団体で計349億余円と大半を占めており、特に第2弾マイナポイント事業が実施された4年度及び5年度において増加していた。また、利用店舗募集に要する経費が計153団体で計0.7億余円、広報等に要する経費が計775団体で計20億余円となっていた。

図表1-15 マイナポイント利用環境整備事業等に係る補助対象経費別の補助金相当額の状況

補助金年度区分マイナポイント申込支援等に要する経費利用店舗募集に要する経費
注(2)
広報等に要する経費
注(2)
その他
注(5)
団体数金額
(千円)
団体数金額
(千円)
団体数金額
(千円)
団体数金額
(千円)
団体数金額
(千円)
個人番号カード利用環境整備費補助金
注(1)
令和元
2
第1弾
マイナポイント事業
426728,0876718,843309292,822152,8634791,042,616
マイナポイント事業費補助金
注(1)
注(3)
27594,317,58110442,494460605,9658224,966,042
37184,668,122118,852288392,6567525,069,631
41,20613,620,67185,362551796,6281,23714,422,662
マイナンバーカード交付事務費補助金
注(4)
5第2弾
マイナポイント事業
1,18911,662,997125201,19211,663,517
計 注(5)1,39134,997,45915375,5537752,088,072273,3831,41337,164,468
  • 注(1) 個人番号カード利用環境整備費補助金及びマイナポイント事業費補助金について、地方公共団体は、各補助対象経費の別に区分して実績報告を行っているが、補助金額については、各補助対象経費の別には区分されずに交付されるため、各補助対象経費に係る補助金相当額は、補助金額を各補助対象経費の金額割合で案分して算出している。
  • 注(2) 利用店舗募集に要する経費及び広報等に要する経費のうち、令和5年度分については、補助金交付申請に当たって、両補助対象経費をマイナポイント申込支援等に要する経費に含めて申請することとなっていることから、マイナポイント申込支援等に要する経費の内数になっている。
  • 注(3) 第2弾マイナポイント事業は令和4年1月から実施されたが、3年度の補助金の交付額を第1弾マイナポイント事業分と第2弾マイナポイント事業分に区分することができないため、全額を第1弾マイナポイント事業分として整理している。
  • 注(4) マイナンバーカード交付事務費補助金の金額は、マイナポイント申込支援等に要する経費として地方公共団体が実際に支払った額を示している。
  • 注(5) 団体数の計は純計である。
エ 直轄事業の実施状況

総務省及びデジタル庁は、直轄事業として、図表1-16のとおり、広報、マイキープラットフォームの改修等の業務を実施しており、これらに対する支出額は元年度から5年度までに計141億余円となっていて、第1弾マイナポイント事業では計54億余円、第2弾マイナポイント事業では計87億余円となっていた。

図表1-16 総務省及びデジタル庁が直轄事業として実施した業務の支出額の状況

(単位:千円)

実施機関業務内容支出額
第1弾マイナポイント事業第2弾マイナポイント事業
総務省広報149,1357,466,7607,615,895
総務省及びデジタル庁マイキープラットフォームの改修4,027,9531,122,2855,150,238
総務省JPQRの調査研究1,175,830-1,175,830
総務省及びデジタル庁口座情報登録・連携システムの改修等97,370122,202219,572
5,450,2888,711,24814,161,537
  • (注) 総務省及びデジタル庁が、図表1-2における直轄事業に係る予算により実施したものの、マイナポイント事業分を算出することができない業務に係る経費については、図表に含めていない。

直轄事業の支出額は広報が最も大きく(広報の実施状況については後述(3)参照)、広報の次に支出額が大きかったマイキープラットフォームの改修は、総務省及びデジタル庁が、マイナポイントの申込時における、マイキープラットフォームの共通機能としての本人確認の仕組み及びマイナポイント事業固有機能としての要件確認の仕組みを構築することを目的として実施したものである(別図表0-1参照)。

また、JPQRの調査研究は、総務省が、モバイル決済モデル推進事業としてJPQRに係る環境構築及びモデル実証を元年度から3年度まで実施した後、マイナポイント事業において、モデル実証で検証した店舗へのJPQR導入を広く展開するために必要な調査、全国の店舗で導入できる環境の構築等を実施したものである。同省は、JPQR導入店舗の増加は、マイナポイント事業の目的の一つであるキャッシュレス決済の利用拡大に資するものであるため、マイナポイント事業においてこれらの調査等を実施したとしている。

(3) 広報の実施状況

ア 広報の実施状況の概要

マイナポイント事業では、消費の活性化、キャッシュレス決済の利用拡大、マイナンバーカードの普及等の目的を達成するために様々な広報が実施されていた。

マイナポイント事業に係る広報には、全国的に実施される広報(以下「全国広報」という。)と、特定の目的のために実施される広報(以下「特定目的広報」という。)がある。全国広報は、マイナンバーカードの申請方法、マイナポイントの申込方法等を周知するなどの目的で、総務省及び事務局において新聞、テレビ、ラジオ、デジタルメディア等(注19)、複数の媒体を活用するなどして大規模な広報を展開するものである。また、特定目的広報は、マイナンバーカードの申請及びマイナポイントの申込みに係る支援を受けられることを周知するなどの目的で、地方公共団体において住民向けに広報を展開するもの、又は自社のキャッシュレス決済サービスへの登録によりマイナポイントの付与を受けられることを周知するなどの目的で、決済事業者において広報を展開するものである。

全国広報及び特定目的広報の主な実施期間は、図表1-17のとおりとなっていた(地方公共団体及び決済事業者の特定目的広報の媒体別実施状況については別図表1-3参照)。

(注19)
デジタルメディア  インターネット上にテキスト、画像及び動画の形式で表示され、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(以下「SNS」という。)、動画共有サイト等で掲載される媒体を指す。

図表1-17 全国広報及び特定目的広報の主な実施期間

図表1-17 全国広報及び特定目的広報の主な実施期間画像

全国広報のうち、2年1月から4年5月までの間にSIIが実施した広報(以下「SII広報」という。)及び4年4月から5年3月までの間に総務省が実施した広報(以下「総務省第2弾広報」という。)については、特に大規模な広報が展開されていた(SII広報及び総務省第2弾広報の実施状況については後述参照)。このほか、同省は、元年度に第1弾マイナポイント事業の開始について、5年度に第2弾マイナポイント事業の最終的なポイント申込期限について、それぞれ広報を実施していた(以下、同省が実施した元年度及び5年度の広報を「総務省広報」という。)。また、PJは、第2弾マイナポイント事業の国民向けのホームページ制作、運用等を広報として実施していた(以下、PJが実施した広報を「PJ広報」という。総務省広報及びPJ広報の実施状況については別図表1-4参照)。

上記のうち、SII広報は補助事業として、総務省第2弾広報は総務省による直轄事業として、それぞれ実施されていた。同省は、SII広報については、複数の民間事業者を集めて補助事業を実施するSIIに広報も実施させることによって、民間事業者の知見に基づく柔軟な事業運営が可能である一方、総務省第2弾広報については、第2弾マイナポイント事業における施策2及び施策3の追加に伴い、関係省庁との調整・連携を行いながら効果的に広報に取り組む必要があることから、同省が直轄事業として広報を実施したとしている。

広報の全体像を経費の流れに基づき整理すると、図表1-18のとおりとなる。

図表1-18 経費の流れに基づく広報の全体像

図表1-18 経費の流れに基づく広報の全体像画像

広報に要した経費は、実施機関別にみると、図表1-19のとおり、SII広報87億余円(広報に要した経費全体に占める割合41.2%)、総務省第2弾広報及び総務省広報計76億余円(同35.9%)、地方公共団体による広報20億余円(同9.8%)、決済事業者による広報16億余円(同7.9%)、PJ広報10億余円(同4.9%)、計211億余円となっていた。

図表1-19 広報に要した経費の状況(実施機関別)

図表1-19 広報に要した経費の状況(実施機関別)画像

このうち、広報に要した経費全体の過半を占めるSII広報及び総務省第2弾広報の実施状況については、次のとおりとなっていた。

イ SII広報及び総務省第2弾広報の実施状況
(ア) 広報の実施体制等

SII広報及び総務省第2弾広報では、広報戦略の企画立案、広告素材の制作等を行う企画業務と、企画業務で制作した広告素材を掲載、放送するなどのために新聞、テレビ等の媒体枠を調達する業務(以下「媒体調達業務」という。)が実施されていた。SII広報及び総務省第2弾広報の実施に要した経費を企画業務と媒体調達業務の別に示すと図表1-20のとおりとなっていた。

図表1-20 SII広報及び総務省第2弾広報における業務別の経費

(単位:千円)

業務区分SII広報
(令和2年1月~4年5月)
総務省第2弾広報
(4年4月~5年3月)
企画業務2,297,3191,332,911
媒体調達業務6,427,2706,132,930
8,724,5907,465,842

SII広報のうち企画業務について、SIIは、電通と随意契約を締結して外注しており、また、媒体調達業務については、7回にわたり、電通から見積りを徴した上で随意契約により外注していた。

SIIは、両業務において電通を外注先として選定した理由について、企画業務においては、専門性が高く代替が困難であることなどのため、媒体調達業務においては、企画業務で立案される広報戦略に基づき媒体枠を調達する必要があり、企画業務を受注した電通に実施させることが妥当であるためとしている。

また、総務省第2弾広報のうち企画業務について、総務省は、第2弾マイナポイント事業実施期間を通じた広報戦略について優れた企画案を選ぶ必要があるとして企画競争を実施し、評価点が最も高かった電通に外注しており、媒体調達業務については、一般競争入札で落札した電通に外注していた。

このように、マイナポイント事業実施期間中に行われた特に大規模な広報であるSII広報及び総務省第2弾広報は、いずれも電通が実施していた。そして、電通は、SII広報及び総務省第2弾広報を実施するに当たり、企画業務及び媒体調達業務を更に他の事業者に外注するなどしていた。このうち、企画業務を外注した理由について、電通は、マイナポイント事業は大規模であり、実施する業務が多岐にわたること、広告素材の制作等は、映像制作、データ加工等の作業分野ごとに専門的な分業体制となっていることなどによるとしている。また、電通は、広報に関する業務を外注して実施することは、マイナポイント事業に限らず一般的であるとしている。企画業務の実施に当たり、電通からの外注の状況について確認したところ、SII広報では、元年度で計12者、2年度で計22者、3年度で計8者、総務省第2弾広報では計144者に外注されていた(SII広報及び総務省第2弾広報の企画業務に係る実施体制については別図表1-5参照)。

電通及び事業者がどのような役割となっていたかについて確認したところ、電通は、広告素材の制作等に係る企画の主導的な役割を担っており、事業者の業務の進捗管理、総務省等の関係者との連絡調整等の企画業務の全体統括を含めた広報戦略の企画立案等を行い、広告素材の制作等は事業者に外注して実施させていた。

(イ) 企画業務の実施内容

SII広報及び総務省第2弾広報における企画業務では、①広報戦略立案等業務、②広告素材制作等業務、③PR業務及び④調査業務が実施されていた。企画業務の流れをみると、まず、電通が、広報戦略立案等業務(①)において、広報の内容、実施する時期等の広報戦略の企画立案を行っていた。電通が企画立案を行い、SII又は総務省が決定した広報戦略に基づき、広告素材制作等業務(②)において各媒体用の広告素材が制作され、PR業務(③)において、マイナポイント事業に係る正確な認識を促すことを目的としたイベント等が実施されていた。また、実際に展開された広報の内容がメディアの報道及びSNSの投稿においてどのように取り上げられているかなどについて、調査業務(④)が実施されていた。電通は、調査業務の結果から明らかになったマイナポイント事業の課題等に対して広報で対応できる事項についての対処方針を検討し、広報戦略の企画立案を改めて行っていた。これら①から④までの企画業務の実施内容を整理すると、図表1-21のとおりとなる(企画業務に要した経費の内訳については別図表1-5参照)。

図表1-21 企画業務の実施内容

図表1-21 企画業務の実施内容画像

広報戦略立案等業務(図表1-21①)については、企画業務の全体を統括し、集中的に広報を実施する期間(以下「集中実施期間」という。)を含めた広報の実施時期等の広報戦略の企画立案を行うなどのものとなっていた(広報戦略の決定の経緯については後述(エ)参照)。

広告素材制作等業務(図表1-21②)については、新聞広告、テレビCM等の広告素材の制作を外注して実施するなどのものとなっており、当該業務で制作された広告素材が、媒体調達業務で調達された各媒体で掲載されるなどしていた(制作された広告素材の媒体別投下量等の状況については後述(ウ)参照)。

調査業務(図表1-21④)については、図表1-22のとおり、おおむね、メディアの報道及びSNSの投稿内容、マイナポイント事業に係る認知度、広報の対象者等について把握するものとなっていた。

図表1-22 調査業務(図表1-21④)の実施状況

区分メディア及びSNS調査アンケート調査 注(1) 注(2)
調査を実施した広報SII広報及び総務省第2弾広報総務省第2弾広報
主な調査目的メディアの報道及びSNSの投稿内容の把握マイナポイント事業に係る認知度、広報の対象者等の把握
調査概要対象:メディア、SNS
頻度:おおむね毎日
対象:マイナンバーカード未取得者
頻度:おおむね一月に1度
主な調査項目・企画業務及び媒体調達業務の全体進捗
・メディアの報道、SNSの投稿内容等の動向
・マイナポイントの制度に係る認知度
・マイナンバーカードの未取得理由
・マイナンバーカードの取得の障壁要因
総務省への提出頻度:2週に1度又は一月に1度頻度:おおむね一月に1度
  • 注(1) 総務省第2弾広報のアンケート調査の概要については別図表1-6参照
  • 注(2) このほかに、SII広報において、広報戦略の内容を検討するため、電通が独自にアンケート調査を1回実施している。

電通は、マイナンバーカードの交付枚数及びマイナポイントの申込者数の推移を踏まえつつ、調査業務(図表1-21④)により把握したマイナポイント事業に関する多岐にわたる課題等に対して、広報で対応できる事項についての対処方針を検討し、広報戦略立案等業務(図表1-21①)に反映するなどしていた。例えば、マイナポイントの申込手続の理解不足、マイナンバーカードの安全性に対する不安感等が課題等として明らかになったことを受けて、マイナポイントの申込手続を可視化したコンテンツを発信すること、マイナンバーカードの安全性について記載を加えた広告素材を制作することなどについての対処方針が検討されていた(調査業務(図表1-21④)の概要等については別図表1-7参照)。なお、調査業務においては、広報に要した経費に対してどれだけの効果が得られたかの検証は行われていなかったが、総務省は、調査業務の中でマイナポイント事業に係る認知度の向上等の広報の効果についての検証も行われているとしている。

(ウ) 媒体調達業務における媒体の種類、媒体別投下量の推移等

SII広報及び総務省第2弾広報における媒体調達業務では、広告素材制作等業務で制作された広告素材を掲載し、放送するなどのために、新聞、テレビ、ラジオ、デジタルメディア等の複数の種類の媒体について媒体枠を調達していた。媒体調達業務において調達した媒体別の広報の主な対象等は、図表1-23のとおりとなっていた。

図表1-23 媒体調達業務において調達した媒体別の広報の主な対象等

媒体広報の主な対象広報の方法
新聞高齢者層新聞広告の掲載
テレビ幅広い層テレビCMの放送
ラジオ自動車を利用する層等ラジオCMの放送
デジタルメディア等テレビを頻繁に視聴しないなどの層インターネット上でのバナー広告の掲載、駅、公共交通機関等でのディスプレイを用いた広告の掲載等

媒体別の広報の実施状況をみたところ、新聞、テレビ、ラジオ、デジタルメディア等のうち、SII広報ではラジオによる広報は実施されていなかった。また、媒体調達業務に要した経費を月別に整理し、金額ベースで媒体別投下量の推移をみたところ、図表1-24のとおり、第1弾マイナポイント事業におけるマイナポイント付与開始に向けた2年8月及び9月、第2弾マイナポイント事業の開始に伴う施策2及び施策3の申込受付開始に向けた4年3月並びに第2弾マイナポイント事業のカード申請期限の5年2月において、他の時期と比較して特に増加していた(媒体別投下量の詳細については別図表1-8参照)。

図表1-24 広報の媒体別投下量の推移(金額ベース)

図表1-24 広報の媒体別投下量の推移(金額ベース)画像

また、媒体調達業務における外注先の事業者(以下「媒体者」という。)についてみると、SII広報、総務省第2弾広報共にテレビによる広報が多数の媒体者を用いて行われていた。そして、SII広報及び総務省第2弾広報の全実施期間における1者当たりの媒体別投下量(金額ベース)の平均については、デジタルメディアが最も高く9908万余円、ラジオが最も低く145万余円となっていた。直轄事業として実施されていた総務省第2弾広報に係る媒体別投下量について媒体者ごとの状況をみたところ、1者当たりの媒体別投下量(金額ベース)の平均は、新聞においては、全国紙の方が地方紙等よりも高くなっており、テレビにおいては、全国的な放送系列の中心となるテレビ局の方がそれ以外のテレビ局よりも高くなっていた。ラジオにおいては、他の媒体と比較して投下量は小さいものの、媒体者間に大きな差異はなかった。また、デジタルメディアにおいては、1媒体者への投下量が投下量全体の5割近くとなっていた(媒体別の媒体者数、1者当たりの媒体別投下量等の詳細については別図表1-9参照)。

(エ) 企画業務における広報戦略、媒体調達業務における媒体の種類、媒体別投下量等の決定の経緯

(ウ)のとおり、媒体別の広報の実施状況等をみたところ、特定の時期に投下量が特に増加しているなどの状況が見受けられた。このため、広報戦略の企画立案、その実施のための媒体の種類、媒体別投下量等が、それぞれどのような経緯で決定されたかをSII広報及び総務省第2弾広報の別に確認したところ、次のとおりとなっていた。

a SII広報

SII広報の広報戦略は、電通により企画立案が行われ、第1弾募集要領に定められているマイナンバーカードの取得に係る周知等といった総務省の広報における方針を基に、同省、SII及び電通が参加する広報戦略の企画立案等に関するワーキンググループ(以下「広報WG」という。)等においてその内容が検討されて、SIIが決定していた。

決定された広報戦略がどのような内容となっていたかについて、広報WGの資料等により確認したところ、第1弾マイナポイント事業に係るマイナポイントの申込受付開始、第2弾マイナポイント事業の開始等の時期といった事業の進捗を踏まえるなどして設定した期間ごとに、重点的に周知する広報の内容及び集中実施期間を設定するなどしていた(図表1-25参照)。

図表1-25 SII広報の実施期間等

図表1-25 SII広報の実施期間等画像

一方、媒体の種類、媒体別投下量等については、電通が行ったシミュレーションを基に、広報WG、同省との個別の協議等において検討され、SIIが決定したとしていた。しかし、SIIが媒体の種類、媒体別投下量等をどのように検討して決定したかについては、その経緯が分かる資料は保存されておらず、これらの妥当性を確認できる状況とはなっていなかった。

b 総務省第2弾広報

総務省第2弾広報の広報戦略は、電通により企画立案が行われ、仕様書に定められているマイナンバーカードの取得、マイナンバーカードの安全性等について周知する方針を基に、総務省との協議を踏まえてその内容が検討されて、同省が決定していた。

決定された広報戦略がどのような内容となっていたかについて、電通が作成した提案書等により確認したところ、施策2及び施策3の申込受付開始、カード申請期限等の時期といった事業の進捗を踏まえるなどして設定した期間ごとに、重点的に周知する広報の内容及び集中実施期間を設定するなどしていた(図表1-26参照)。

図表1-26 総務省第2弾広報の実施期間等

図表1-26 総務省第2弾広報の実施期間等画像

一方、媒体の種類、媒体別投下量等については、同省は、仕様書の作成に当たり、必要とされる媒体の種類、媒体別投下量等を決定するために、電通を含めた専門性を有する複数の事業者に対して意見を聴取したとしていた。しかし、聴取した意見の内容及び意見を踏まえてどのように検討して決定したかについては、その経緯が分かる資料は保存されておらず、これらの妥当性を確認できる状況とはなっていなかった。

a及びbについて、広報の実施には専門的知見が求められることから、SII又は総務省のみでマイナポイント事業の目的、規模等に合った適切な媒体の種類、媒体別投下量等を決定することは困難であり、専門性を有する事業者の知見を活用することは、広報戦略の実施に当たって必要であったと考えられる。また、マイナポイント事業においては大規模な広報が展開され、多額の国費が投じられていたことから、広報戦略の実施の妥当性について十分に説明できるようにすることは重要であり、媒体の種類、媒体別投下量等を決定した経緯が分かる資料は、広報戦略の実施の妥当性の事後的な検証に資するものであったと考えられる。

したがって、総務省は、今後、大規模な広報を実施する場合には、媒体の種類、媒体別投下量等を決定した経緯が分かる資料について、事後的な検証のために、補助事業においては補助事業者に適切に保存させ、直轄事業においては同省が適切に保存して、広報戦略の実施の妥当性を十分に説明できるようにする必要がある。

2 マイナポイントの申込みの状況及びマイナンバーカードの申請の状況

(1) マイナポイントの申込みの状況

ア マイナポイントの申込者数の推移

マイナポイントの申込者数の目標値は、1(1)アのとおり、予算の積算に当たり、第1弾マイナポイント事業においては5000万人と設定され、第2弾マイナポイント事業においては、施策1について第1弾マイナポイント事業における申込者数も含めて9500万人に引き上げられる(以下、第1弾マイナポイント事業と第2弾マイナポイント事業の施策1とを合わせて「施策1等」という。)とともに、施策2及び施策3についてそれぞれ9500万人と設定されていた。マイナポイントの申込状況については、デジタル庁が運用しているマイキープラットフォームにおいて管理されているため、同庁からデータの提供を受けて、目標値に対して申込者数がどのように推移したか、また、目標値及び人口に対する申込者数の割合(注20)がどのように推移したかについてみたところ、図表2-1のとおりとなっていた。

(注20)
人口に対する割合を算出する際は、分子となるデータの取得時点が属する年の1月1日現在の住民基本台帳に基づく人口を使用している。以下同じ。

図表2-1 マイナポイントの累計申込者数等の推移

図表2-1 マイナポイントの累計申込者数等の推移画像

第1弾マイナポイント事業におけるマイナポイントの申込受付が開始された2年7月以降、申込者数は緩やかな伸びとなっており、第1弾マイナポイント事業が終了した3年12月末時点における申込者数は2533万余人(目標値5000万人に対する申込者数の割合50.6%)となっていた。その後、4年6月30日から施策2及び施策3の申込受付が開始されると、申込者数は急激に伸び、マイナポイント事業終了後の5年10月(注21)末時点における最終的な申込者数は、施策1等の申込者数が7556万余人(目標値9500万人に対する申込者数の割合79.5%)、施策2の申込者数が6818万余人(同71.7%)、施策3の申込者数が6174万余人(同64.9%)となっていたが、それぞれの目標値である9500万人には達していない状況となっていた。また、人口に対する申込者数の割合についてみると、第1弾マイナポイント事業が終了した3年12月末時点においては20.0%、マイナポイント事業終了後においては、施策1等は60.2%、施策2は54.3%、施策3は49.2%となっていた(申込者数の推移の詳細については別図表2-1参照)。

(注21)
第2弾マイナポイント事業のポイント申込期限は令和5年9月30日までとなっており、同日に申し込んだ者のうちその処理が10月1日にまたがった者については10月1日の申込みとして扱われることなどになっているため、マイナポイント事業終了後の最終的な申込者数には同年10月の申込者数が含まれている。

各月におけるマイナポイントの申込者数をみると、図表2-2のとおりとなっていた。

図表2-2 マイナポイントの各月における申込者数の推移

図表2-2 マイナポイントの各月における申込者数の推移画像

①から⑦までの各時点において、それぞれ前後の時期と比較して申込みが集中しており、特に③の第2弾マイナポイント事業の施策2及び施策3の申込受付開始、④、⑤及び⑥のカード申請期限並びに⑥及び⑦のポイント申込期限において申込みが集中している状況が見受けられた。

なお、4年7月以降しばらくの間、施策1等の申込者数と施策2及び施策3の申込者数との間にかい離が見受けられたが、これは施策2及び施策3の申込受付開始時点においては、既に施策1等に申し込んでいた者による施策2及び施策3の申込みが多かったことによるものと考えられる。

また、5年6月から同年8月までにかけて、申込者数の大幅な落ち込みが見受けられたが、この時期は、国がマイナンバーの紐付け誤り事案(注22)があったことを公表するなどしていた時期であった。マイナンバーの紐付け誤り事案は、マイナポイント事業に直接関係するものではないが、マイナポイント事業の実施期間中に発生したマイナンバー制度に関する不適切な事案であったことから、国民に対してマイナンバーカードを取得することに不安を生じさせるなどして、マイナポイントの申込みに影響を与えた可能性があると思料される。

(注22)
マイナンバーの紐付け誤り事案  令和5年5月に国により公表された健康保険、共済年金等に係る各制度固有の番号とマイナンバーとの紐付けに誤りが生じていた事案。マイナンバー制度においては、情報連携等を行えるようにするために、各制度において管理されている制度固有の番号とマイナンバーとの紐付けが行われているが、これらの紐付けに誤りがあったもの。これを受けて、国は同年6月にマイナンバー情報総点検本部を設置して、各制度におけるマイナンバーの紐付けが正確に行われているかについて総点検を開始した。「マイナンバー制度及びマイナンバーカードに関する政策パッケージ」(令和5年8月マイナンバー情報総点検本部会議資料)によれば、各制度における自分の情報が誤って他人のマイナンバーに紐付けられている場合、各制度の事務に支障が生じ、マイナポータルで自己情報を確認しようとする際に、自分の情報ではなく、当該制度に関する他人の情報が閲覧可能となり、情報の漏えいにつながるおそれがあるとされている。総点検の結果は、随時公表され、6年1月の最終的な取りまとめ結果においては、8,395件の紐付け誤りが確認されたことが公表された。国はこれらの事案の発生原因を踏まえた再発防止対策を講じている。
イ マイナポイントの年代等別の申込状況

事務局は、マイナポイント事業の効果を検証することを目的として、効果測定調査を複数回実施しており、その調査結果を総務省に報告している(効果測定調査の概要については別図表2-2参照)。効果測定調査においては、マイキープラットフォームでは把握できない年代別及び地域区分別のマイナポイントの申込状況の調査が行われている。効果測定調査の結果によると(注23)、施策1等の年代別の申込状況については、図表2-3のとおり、年齢が上がるほど申込者の割合が高くなっており、施策2及び施策3についても同様となっていた。また、施策1等の地域区分別の申込状況については、地域区分による差はほとんど見受けられず(別図表2-3参照)、施策2及び施策3についても同様となっていた。

(注23)
マイナポイントの申込状況を管理しているマイキープラットフォームでは、申込者の個人情報を保有しておらず、年代別及び地域区分別の申込状況を把握することができないため、効果測定調査の結果により申込状況を把握することとした。

図表2-3 マイナポイントの年代別の申込状況(施策1等)

図表2-3 マイナポイントの年代別の申込状況(施策1等)画像

ウ マイナポイントの決済事業者等別の申込状況

マイナポイント事業においては、第1弾マイナポイント事業と第2弾マイナポイント事業とを合わせて128決済事業者が参画しているが、マイナポイント事業終了時点における施策1等の申込者数(注24)について決済事業者別にみたところ、図表2-4のとおり、申込者数の多かった上位の10決済事業者で計6373万余人となっており、施策1等の申込者数7556万余人の8割強を占める状況となっていた。

また、マイナポイント事業において、申込者が選択できるキャッシュレス決済サービスのキャッシュレス決済区分は、電子マネー、QRコード決済、クレジットカード、プリペイドカード及びデビットカードに大別されているが、施策1等の申込者数についてキャッシュレス決済区分別にみたところ、図表2-4のとおり、QRコード決済及び電子マネーがそれぞれ4割強を占める状況となっていた。

(注24)
施策2及び施策3は、施策1等の申込みを行わなければ申し込むことができないため、施策1等の申込者数は施策2及び施策3の申込者数を包含している。

図表2-4 マイナポイントの決済事業者等別の申込状況(施策1等)

図表2-4 マイナポイントの決済事業者等別の申込状況(施策1等)画像

エ マイナポイントの付与状況

申込者に対するマイナポイントの付与状況について、付与したマイナポイントのポイント数に1ポイント当たりの単価を乗じた額(以下「マイナポイント付与額」という。)をみたところ、図表2-5のとおり、申込者に対して計1兆2966億余円相当のマイナポイントが付与されていた。

図表2-5 施策別のマイナポイントの付与状況

(単位:万円)

施策区分マイナポイント付与額
第1弾マイナポイント事業第2弾マイナポイント事業
施策1等(マイナンバーカード取得)1201億84222035億55103237億3932
施策2(マイナ保険証)5105億55525105億5552
施策3(公金受取口座)4623億31294623億3129
1201億84221兆1764億41931兆2966億2615

施策2及び施策3については、申込者に対してそれぞれ7,500円相当のマイナポイントが付与される一方で、施策1等については、5,000円相当を上限に、前払等に係る金額の25%のマイナポイントが付与されることとなっている。施策1等のマイナポイント付与額は計3237億余円相当、申込者数は7556万余人であったことから、1人当たりのマイナポイント付与額は4,284円相当となり、上限額に対するマイナポイント付与額の割合は85.6%となっていた。

オ 不適切なマイナポイント付与事案への対応状況
(ア) マイナポイントの複数回申込事案

マイナポイントは、マイナンバーカードの利用者証明用電子証明書を利用して申込みを行うが、電子証明書が更新された場合にも、新旧の電子証明書を紐付け、同一人物であることを確認しているため、複数回の申込みは行うことができないこととなっている。しかし、市町村において、電子証明書の失効処理を行う際に、失効申請に基づく失効として処理すべきところ、新旧の電子証明書の紐付けが行われない職権による失効として処理するなどして、法律で想定されていない場面での電子証明書の失効処理を行ったため、新たな電子証明書が発行されても新旧の電子証明書の紐付けが行われず、複数回の申込みが行われた事案が510件発生した。このうち352件については上限額を超えるマイナポイントが付与されており、超過分のマイナポイントは計約156万円相当分となっていた。

総務省は、4年7月から同年9月までにかけてこのようなマイナポイントの複数回申込事案が発生したことを公表し、超過分のマイナポイントについては、決済事業者を通じて超過分のマイナポイントの付与を受けた者に連絡を取り精算を行うこととした。また、電子証明書の失効に係る事務を適切に行うよう市町村に対して周知した。さらに、上記のような失効処理を行った場合でも新旧の電子証明書の紐付けが行われるよう、J-LISにおいてシステムの改修が行われた。なお、352件のうち21件に係る93,768円相当分については、8年3月末現在、複数回申し込んだ者の連絡先が不明で精算処理を行うことができず、ポイントが付与されたままの状態となっていた。

(イ) マイナポイントの誤紐付け事案

第1弾マイナポイント事業における申込みの際の本人認証は、ログイン時と申込完了前の2回行う仕様になっていたが、認証回数が多すぎるとの批判を踏まえ、第2弾マイナポイント事業ではログイン時の1回のみ行う仕様に変更された。しかし、仕様変更後、地方公共団体のマイナポイント申込支援の窓口において、本人認証を行いログインした申込者が、申込手続を中断し、ログアウトせずに帰宅するなどしてしまった後、当該申込者がログインした状態のまま次の申込者が申込手続を行った結果、手続を中断した申込者に付与されるべきマイナポイントが次に手続を行った申込者に対して付与されるなどの事案が202件発生した。

総務省は、このようなマイナポイントの誤紐付け事案が発生したことを5年5月から6年3月までにかけて公表するとともに、地方公共団体に対して、マイナポイント申込支援の適切な実施について周知した。また、デジタル庁においては、申込みの際の本人認証を2回にするよう、仕様の変更を行った。なお、発生が確認された202件のうち195件については、手続を中断した申込者等が改めてマイナポイントを申し込めるよう救済措置が執られたが、残りの7件については、当該者からの申出がなく、連絡先も分からないため、8年3月末現在、当該者に対する救済措置を執ることができないままの状況となっていた。

(2) マイナンバーカード等の申請等の状況

第1の2(1)のとおり、マイナポイント事業においては、マイナンバーカードの普及を図ることとなっており、第1の2(2)アのとおり、第2弾マイナポイント事業では、これに加えて、マイナンバーカードの健康保険証としての利用申込み及び公金受取口座の登録の促進も図ることとなっている。そこで、マイナポイント事業の実施前後におけるマイナンバーカードの有効申請件数(注25)、マイナ保険証の有効登録件数(注26)及び公金受取口座の登録件数の状況についてみると、図表2-6のとおりとなっており、それぞれ6000万件以上増加していた。

(注25)
有効申請件数  マイナンバーカードの発行申請件数のうち書類に不備があった件数及び申請を取りやめた件数を除いた有効性を持つ申請の件数
(注26)
有効登録件数  マイナ保険証の利用登録件数から死亡等による登録の削除分を差し引いた有効な登録件数

図表2-6 マイナポイント事業の実施前後におけるマイナンバーカードの有効申請件数、マイナ保険証の有効登録件数及び公金受取口座の登録件数の状況

区分実施前実施後増加した
件数
(万件)
(b)-(a)
時点件数
(万件)
(a)
人口に対する
左の件数の
割合
時点件数
(万件)
(b)
人口に対する
左の件数の
割合
マイナンバーカードの有効申請件数第1弾マイナポイント事業の申込受付開始前
(令和2年6月末時点)
252819.8%第1弾マイナポイント事業のカード申請期限
(3年4月末時点)
493138.9%2402
第2弾マイナポイント事業のカード申請期限
(5年2月末時点)
929874.1%6769
マイナ保険証の有効登録件数第2弾マイナポイント事業の施策2及び施策3の申込受付開始前
(4年5月末時点)
8806.9%第2弾マイナポイント事業のポイント申込期限
(5年9月末時点)
705156.2%6170
公金受取口座の登録件数1561.2%625349.8%6097

マイナンバーカードの申請、交付及び保有の状況、マイナ保険証の利用登録の状況並びに公金受取口座の登録の状況について、それぞれ更に分析した結果は次のとおりである。

ア マイナンバーカードの申請、交付及び保有の状況
(ア) マイナンバーカードの有効申請件数等の推移

総務省からデータ(注27)の提供を受けて、マイナポイント事業の実施前後においてマイナンバーカードの有効申請件数、交付枚数、保有枚数(注28)等がどのように推移したかについてみたところ、図表2-7のような状況となっていた(マイナンバーカードの有効申請件数等の推移の詳細については別図表2-4参照)。

(注27)
総務省は、マイナンバーカードについて、交付開始時の平成28年1月から交付枚数を、同年10月から有効申請件数を、令和4年7月から保有枚数を、それぞれ月末時点において集計している。
(注28)
保有枚数  マイナンバーカードの交付枚数から死亡、有効期限切れなどにより廃止されたカードの枚数を除いた現に保有されているマイナンバーカードの枚数

図表2-7 マイナンバーカードの累計有効申請件数等の推移

図表2-7 マイナンバーカードの累計有効申請件数等の推移画像

第1弾マイナポイント事業の申込受付開始前の2年6月末時点におけるマイナンバーカードの有効申請件数は2528万余件(人口に対する有効申請件数の割合19.8%)となっていた。2年7月から申込受付が開始され、カード申請期限である3年4月末時点における有効申請件数は、2402万余件増えて4931万余件(同38.9%)となっていた。さらに、4年1月から第2弾マイナポイント事業の申込受付が開始され、カード申請期限である5年2月末時点における有効申請件数は、4367万余件増えて9298万余件(同74.1%)となっていた。この結果、第1弾マイナポイント事業の申込受付開始から第2弾マイナポイント事業のカード申請期限までにおけるマイナンバーカードの有効申請件数は、計6769万余件の増加となっていた。マイナンバーカードを取得した理由については、効果測定調査の結果によると、「本人確認書類として使えるから」(48.0%)(注29)、「マイナポイントの獲得に必要だったから」(41.2%)、「住民票の写しなどがコンビニエンスストアで取得できるから」(24.0%)などとなっていた(理由の詳細については別図表2-5参照)。

マイナンバーカードの保有枚数をみると、第2弾マイナポイント事業終了時の5年9月末時点における保有枚数は9091万余枚(人口に対する保有枚数の割合72.4%)となっていた。なお、保有枚数はマイナポイント事業終了後においても伸びており、7年12月末時点においては1億0064万余枚(同80.9%)となっていた。

元年11月から5年12月までの各月におけるマイナンバーカードの有効申請件数及び交付枚数をみたところ、図表2-8のとおり、カード申請期限が設定されていた①から④までの各時点においてマイナンバーカードの申請が集中していることから、マイナポイント事業の実施がマイナンバーカードの申請の誘因となっていたと思料される。

(注29)
効果測定調査の結果に係る括弧書きの割合は、令和6年3月に実施された第7回効果測定調査の集計結果である。複数回答が可能な設問であるため、割合を合計しても100%にならない。以下、2(2)及び2(3)において同じ。

図表2-8 マイナンバーカードの各月における有効申請件数等の推移

図表2-8 マイナンバーカードの各月における有効申請件数等の推移画像

なお、交付枚数については、有効申請件数ほど特定の月には集中しておらず、申請が集中した月の翌月以降数か月にわたり増加が見受けられた。この状況は、マイナンバーカードの申請が集中したことにより、J-LISにおけるマイナンバーカードの発行が追い付かなかったことに加え、市町村におけるマイナンバーカードの交付準備に時間を要するなどしたため、通常よりも交付が遅くなったことによるものと考えられる。

また、マイナポイント事業実施期間中においてマイナンバーカードの取得は大幅に進んだ一方で、5年1月1日時点の人口である1億2541万余人に対して、第2弾マイナポイント事業のカード申請期限である同年2月末時点における有効申請件数は9298万余件となっていたことから、単純計算による差分の3242万余人は、マイナポイント事業の実施によっても、マイナンバーカードの取得に至らなかったことになる。マイナンバーカードを取得していない理由については、効果測定調査の結果によると、「個人情報の漏えいが心配だから」(50.2%)、「取得する必要性が感じられないから」(44.5%)、「国に個人情報を把握されるのが怖いから」(38.3%)などとなっていた(理由の詳細については別図表2-6参照)。

一方で、カード申請期限である5年2月末時点における有効申請件数は9298万余件となっていたのに対して、施策1等に係る最終的なマイナポイントの申込者数は7556万余人となっていたことから、単純計算による差分の1742万余人は、マイナポイントの申込みが可能であったにもかかわらず、マイナポイントを申し込んでいなかったことになる。マイナンバーカードの保有者がマイナポイントを申し込んでいない理由については、効果測定調査の結果によると、「手続が面倒だったから」(28.6%)、「マイナポイントの申込方法が分からなかったから」(13.5%)、「個人情報の漏えいが心配だったから」(13.3%)などとなっていた(理由の詳細については別図表2-7参照)。

(イ) マイナンバーカードの年代等別の交付状況

マイナンバーカードの年代別の交付状況を、第1弾マイナポイント事業の申込受付開始前の2年6月、第1弾マイナポイント事業終了後の4年1月及び第2弾マイナポイント事業終了時の5年9月の各時点においてみたところ、図表2-9のとおりとなっていた。第2弾マイナポイント事業終了時の5年9月末時点において、人口に対する交付枚数の割合(以下「交付率」という。)は、10代未満を除き、いずれの年代においても70%台から80%台までとなっており、広い世代においてマイナンバーカードが交付されている状況となっていた。

図表2-9 マイナンバーカードの年代別の交付状況

年代令和2年6月1日時点4年1月1日時点5年9月末時点
年初人口
(万人)
交付枚数(万枚)交付率年初人口
(万人)
交付枚数(万枚)交付率年初人口
(万人)
交付枚数(万枚)交付率
10代未満1005525.1%95827728.9%93361866.3%
10代1135857.5%110637133.5%109985077.4%
20代128720215.6%126850639.9%127599177.7%
30代146823816.2%140661243.5%1381104475.6%
40代187527314.5%179672340.2%1747128473.5%
50代164429317.8%172474343.1%1769136977.4%
60代159936422.8%151472748.0%1490120781.0%
70代159139624.9%162875646.4%1627133381.9%
80代以上110622920.7%118746939.5%121692976.3%
1億2713213516.7%1億2592518741.1%1億2541963176.7%
  • (注) 「年初人口」欄には、各時点が属する年の1月1日現在の住民基本台帳に基づく人口を記載している。

マイナンバーカードの年代別の交付状況と同様に、地方公共団体の種類(政令指定都市、特別区、市及び町村の区分)別の交付状況を、2年6月、4年1月及び5年9月の各時点においてみたところ、5年9月末時点における交付率は、いずれの区分においても70%台となっており、区分による交付状況の違いはほとんど見受けられない状況となっていた。また、市町村の高齢化率区分別及び過疎地域区分別の交付状況についてみたところ、地方公共団体の種類別と同様に、区分による交付状況の違いはほとんど見受けられない状況となっていた(別図表2-8別図表2-9及び別図表2-10参照)。

イ マイナ保険証の利用登録の状況

厚生労働省からデータ(注30)の提供を受けて、第2弾マイナポイント事業の実施前後においてマイナ保険証の有効登録件数等がどのように推移したかについてみたところ、図表2-10のような状況となっていた(有効登録件数等の推移の詳細については別図表2-11参照)。

(注30)
厚生労働省は、令和3年4月からマイナ保険証の有効登録件数を集計している。

図表2-10 マイナ保険証の累計有効登録件数等の推移

図表2-10 マイナ保険証の累計有効登録件数等の推移画像

マイナ保険証の利用登録は2年7月から開始されているが、第2弾マイナポイント事業の施策2の申込受付開始前である4年5月末時点における有効登録件数は880万余件(人口に対する有効登録件数の割合6.9%)となっていた。4年6月30日から第2弾マイナポイント事業の施策2の申込受付が開始され、第2弾マイナポイント事業終了時の5年9月末時点における有効登録件数は、6170万余件増えて7051万余件(同56.2%、マイナンバーカードの保有枚数に対する有効登録件数の割合77.5%)となっていた。なお、第2弾マイナポイント事業終了後においてもマイナ保険証の有効登録件数は伸びており、7年12月末時点の有効登録件数は9041万余件(同72.7%、同89.8%)となっていた。

4年3月から5年12月までの各月におけるマイナ保険証の有効登録件数と施策2の申込者数との関係をみたところ、図表2-11のとおりとなっていた。

図表2-11 マイナ保険証の各月における有効登録件数等の推移

図表2-11 マイナ保険証の各月における有効登録件数等の推移画像

全体としては、マイナ保険証の有効登録件数と施策2の申込者数がほぼ連動するような推移となっていた状況等をみると、第2弾マイナポイント事業の実施がマイナ保険証の利用登録の誘因となっていたと思料される。

また、第2弾マイナポイント事業実施期間中においてマイナ保険証の利用登録は大幅に進んだ一方で、5年1月1日時点の人口である1億2541万余人に対して、第2弾マイナポイント事業が終了した同年9月末における有効登録件数は7051万余件となっていたことから、単純計算による差分の5490万余人は、第2弾マイナポイント事業の実施によっても、マイナ保険証の利用登録に至らなかったことになる。効果測定調査では、マイナ保険証の利用登録を行っていない理由について調査を行っていないが、施策2の申込みを行っていない理由については調査を行っているため、参考として、その調査結果をみたところ、「個人情報の漏えいが心配だったから」(24.3%)、「手続を忘れていたから」(15.2%)、「国に健康情報、病歴等を把握されるのが怖いから」(14.6%)などとなっていた(理由の詳細については別図表2-12参照)。

効果測定調査では、施策2の申込みを行っていない理由のほか、第2弾マイナポイント事業の実施期間中における施策2に係る年代別の認知率及び申込意向の状況等についての調査も実施されていた。総務省は、これらの調査結果の報告を受けていたものの、同省が事業を総括するために把握しておくべき情報であるとして、施策2を所管する厚生労働省とこれらの調査結果を共有していなかった(認知率及び申込意向の調査結果については別図表2-13及び別図表2-14参照)。また、後述のとおり、施策3についても同様の状況となっていた。

ウ 公金受取口座の登録の状況

デジタル庁からデータの提供を受けて、第2弾マイナポイント事業の実施前後において公金受取口座の登録件数等がどのように推移したかについてみたところ、図表2-12のような状況となっていた(登録件数等の推移の詳細については別図表2-15参照)。

図表2-12 公金受取口座の累計登録件数等の推移

図表2-12 公金受取口座の累計登録件数等の推移画像

公金受取口座の登録は4年3月から開始されているが、第2弾マイナポイント事業の施策3の申込受付開始前である同年5月末時点における登録件数は156万余件(人口に対する登録件数の割合1.2%)となっていた。同年6月30日から第2弾マイナポイント事業の施策3の申込受付が開始され、第2弾マイナポイント事業終了時の5年9月末時点における登録件数は、6097万余件増えて6253万余件(同49.8%、マイナンバーカードの保有枚数に対する登録件数の割合68.7%)となっていた。なお、7年12月末時点の公金受取口座の登録件数は6337万余件(同50.9%、同62.9%)となっており、第2弾マイナポイント事業終了時からの登録件数の伸びは83万余件にとどまっていた。

4年3月から5年12月までの各月における公金受取口座の登録件数と施策3の申込者数との関係をみたところ、図表2-13のとおりとなっていた。

図表2-13 公金受取口座の各月における登録件数等の推移

図表2-13 公金受取口座の各月における登録件数等の推移画像

全体としては、公金受取口座の登録件数と施策3の申込者数がほぼ連動するような推移となっていた状況等をみると、第2弾マイナポイント事業の実施が公金受取口座の登録の誘因となっていたと思料される。

また、第2弾マイナポイント事業の実施期間中において、公金受取口座の登録は大幅に進んだ一方で、5年1月1日時点の人口である1億2541万余人に対して、第2弾マイナポイント事業終了時の同年9月末時点における登録件数は6253万余件となっていたことから、単純計算による差分の6287万余人は、第2弾マイナポイント事業の実施によっても、公金受取口座の登録に至らなかったことになる。効果測定調査では、公金受取口座の登録を行っていない理由について調査を行っていないが、施策3の申込みを行っていない理由については調査を行っているため、参考として、その調査結果をみたところ、「個人情報の漏えいが心配だったから」(32.0%)、「手続を忘れていたから」(13.0%)、「買い物履歴等の決済情報が民間企業や国に把握されてしまいそうだったから」(12.1%)などとなっていた(理由の詳細については別図表2-16参照)。

イの施策2における状況と同様に、効果測定調査では、施策3に係る年代別の認知率及び申込意向の状況等についての調査も実施されていたが、総務省は、施策3を所管するデジタル庁とこれらの調査結果を共有していなかった(認知率及び申込意向の調査結果については別図表2-17及び別図表2-18参照)。

(3) マイナンバーカード等の利用等の状況

第2弾マイナポイント事業終了時の5年9月末時点において、マイナンバーカードについては国民の7割以上に保有され、マイナ保険証については国民の5割以上に利用登録され、また、公金受取口座については国民の約5割に登録される状況となった。

マイナポイント事業は、マイナンバーカードの普及並びにマイナ保険証の利用申込み及び公金受取口座の登録の促進によるデジタル社会の実現等を目的としている。この目的のために、元年度から5年度までの間に1兆3905億余円を投じてマイナポイント事業が実施され、マイナンバーカード、マイナ保険証及び公金受取口座について普及の水準の引上げが図られた。このような状況を踏まえると、デジタル社会の実現に向けて、マイナポイント事業の実施後も引き続き、これらの利用の促進が図られることが重要であると考えられる。

そこで、マイナポイント事業の実施後において、マイナンバーカード、マイナ保険証及び公金受取口座がどのように利用されているか、また、これらの普及の水準が維持されているかについてそれぞれ確認したところ、次のような状況となっていた。

ア マイナンバーカードの利用等の状況
(ア) マイナンバーカードの利用の状況

デジタル社会形成基本法(令和3年法律第35号)によれば、政府は、デジタル社会の形成に関する重点計画を作成し、デジタル社会の形成のために政府が迅速かつ重点的に実施すべき施策に関する基本的な方針等について定めることとされている。マイナポイント事業の終了後の6年6月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(以下「6年重点計画」という。)においては、スマートフォンから様々な行政手続ができる「オンライン市役所サービス」の徹底、マイナンバーカードを日常生活の様々な局面で利用できるようにする「市民カード化」の推進、マイナンバーカードが持つ本人確認機能の民間ビジネスにおける利用の普及等、マイナンバーカードの利活用の推進に係る取組が示されている。また、7年6月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(以下「7年重点計画」という。)においても、「オンライン市役所サービス」構想の推進、「市民カード化」構想の推進、民間ビジネスにおける利用の普及等、マイナンバーカードの利活用の推進に係る取組が示されている。

デジタル庁は、マイナンバーカードの主な用途を利用シーン別に分類して公表しており、7年7月末時点における主な用途は、マイナ保険証のほか、コンビニエンスストア等での証明書の交付、マイナポータルを活用した各種の手続及び情報の確認、マイナンバーカードの運転免許証利用(マイナ免許証)、緊急搬送時における救急隊による受診歴等の情報の把握等となっていた。同庁は、これらのうち、コンビニエンスストア等での証明書の交付及びマイナポータルでの引っ越し手続に係る利用実績について公表している(マイナンバーカードの主な用途と利用実績については別図表2-19参照)。

また、上記のマイナポータルを活用した手続等を行うに当たっては、マイナンバーカードを利用してマイナポータルにログインする必要がある。そこで、同庁が公表しているマイナポータルの利用登録者数及びログイン数について、第1弾マイナポイント事業におけるマイナポイントの申込受付が開始された2年7月以降の推移をみたところ、図表2-14のとおり、利用登録者数については、同月末時点の176万余人から第2弾マイナポイント事業の施策2及び施策3の申込受付が開始された4年6月末時点において1290万余人に増加し、その後、第2弾マイナポイント事業が終了した5年9月末時点において6959万余人に大きく増加していた。また、マイナポイント事業終了後も増加を続け、7年7月末時点において7958万余人(同時点におけるマイナンバーカードの保有者9852万余人の80.7%)となっていた。

マイナポータルのログイン数について月別にみると、第2弾マイナポイント事業の施策2及び施策3の申込受付が開始された4年6月とその翌月の7月に増加した後、特定の月の実績が多くなっていた。デジタル庁によると、確定申告及び引っ越し手続が多数行われる2月から3月までの期間並びにポイント申込期限の5年9月については、特に多くなっているとしている。

図表2-14 マイナポータルの利用登録者数及びログイン数の推移

図表2-14 マイナポータルの利用登録者数及びログイン数の推移画像

(イ) マイナンバーカードの廃止の状況

取得されたマイナンバーカードは、マイナ保険証を含む様々な用途に利用されている一方で、有効期間が満了したとき、国外に転出したとき、死亡したとき、マイナンバーカードの返納があったときなどに失効し、廃止されることとなっている。

マイナンバーカードの交付が開始された平成28年1月から令和7年7月までの間において、マイナンバーカードの廃止枚数は1623万余枚となっていた。国は、5年5月に、マイナンバーの紐付け誤り事案があったことを公表したが((1)ア参照)、この影響により、マイナンバーカードを保有することに国民が不安を感じるなどして、本人の希望による自主的なマイナンバーカードの返納(以下「自主返納」という。)が増加した可能性があると思料される。

そこで、自主返納の状況についてみたところ、マイナンバーカードの廃止理由は、「有効期限切れ」「国外転出」「死亡」「本人希望・その他」等の分類により整理されており、上記廃止枚数のうち、自主返納が含まれる「本人希望・その他」として分類された廃止枚数は93万余枚となっていた。この中には自主返納のほか、転居を重ねたことによりマイナンバーカードの住所を追記する欄の余白がなくなり再発行するために返納したものなどの件数も含まれており、総務省は自主返納に該当する廃止枚数について把握していない。

なお、同省は、「本人希望・その他」として分類された5年6月分の廃止枚数のうち自主返納に該当するものがどの程度あったかについて、同年7月に調査を行っており、12地方公共団体からの回答を得ている。当該調査の結果によれば、「本人希望・その他」として分類された247件のうち97件が自主返納に該当するものとなっていた。

同省が分類ごとの廃止枚数を月別等で把握するようになった5年1月11日から7年7月までの間における「本人希望・その他」として分類された廃止枚数の推移をみたところ、図表2-15のような状況となっていた。

図表2-15 「本人希望・その他」として分類された廃止枚数の推移

図表2-15 「本人希望・その他」として分類された廃止枚数の推移画像

5年1月から同年6月までの間は月単位で枚数が把握されていないため、他の月と単純に比較することはできないが、同年5月頃から同年8月までにかけて、廃止枚数が多くなっていた。この時期は、国がマイナンバーの紐付け誤り事案があったことを公表するなどしていた時期であったため、それらの影響により自主返納が発生していた可能性があると思料される。

また、事務局は、6年3月に実施した効果測定調査において、マイナンバーカードの返納状況についても調査を行っており、調査対象者35,640人のうち85人(0.2%)が返納したと回答している。返納理由については、効果測定調査の結果によると、「マイナンバーカードのセキュリティに不信感があるから」(33.1%)、「政府に対して不信感があるから」(29.4%)、「マイナンバー制度に不信感があるから」(28.3%)などとなっていた(返納理由の詳細については別図表2-20参照)。

イ マイナ保険証の利用等の状況
(ア) マイナ保険証の利用の状況

マイナンバーカードと健康保険証との一体化について、6年重点計画においては、引き続き、マイナ保険証の利用促進に積極的に取り組むとともに、マイナ保険証への移行に際しては、デジタルとアナログの併用期間を設けることで、全ての者が安心して確実に保険診療を受けられる環境整備に取り組んでいくこととされている。また、7年重点計画においては、マイナ保険証への切替え、利用促進等を行うとともに、マイナ保険証の利用登録をしていない者には申請によらず資格確認書を交付し、要配慮者(注31)にはマイナ保険証の利用登録をした場合でも資格確認書の申請も働きかけるなど、全ての者が安心して保険診療を受けられるよう環境整備に取り組むこととされている。

(注31)
要配慮者  マイナ保険証を既に保有しているがその利用が難しい高齢者、障害者等

マイナ保険証の利用実績について、厚生労働省が公表している月次の利用件数等によると、第2弾マイナポイント事業の施策2の申込受付が開始された4年6月から7年7月までの間のマイナ保険証の利用件数は、図表2-16のとおり、4年6月末時点において25万余件、第2弾マイナポイント事業が終了した5年9月末時点において736万余件となっており、7年7月末時点において7809万余件まで増加していた。

また、マイナ保険証の利用率(注32)は、4年6月末時点において0.5%、5年9月末時点において4.5%となっており、7年7月末時点において31.4%まで増加していた。利用率の推移をみると、5年4月に増加した以降同年12月までは微減となっていて、6年1月以降は増加していた。なお、厚生労働省は、マイナンバーカードの取得及びマイナ保険証の利用登録が任意であることを踏まえて、利用率の目標値を設定していないとしている。

(注32)
マイナ保険証の利用率  オンライン資格確認の利用件数(従来の健康保険証の利用件数(資格確認書の利用件数を含む。)及びマイナ保険証の利用件数の合計)に占めるマイナ保険証の利用件数の割合

図表2-16 オンライン資格確認の利用件数、マイナ保険証の利用件数及び利用率の推移

図表2-16 オンライン資格確認の利用件数、マイナ保険証の利用件数及び利用率の推移画像

厚生労働省は、マイナ保険証の利用率の増減の要因として、5年4月から保険医療機関及び保険薬局のオンライン資格確認の導入が原則として義務化されることを踏まえ、同年3月にオンライン資格確認の運用を開始した保険医療機関及び保険薬局が増加したことにより同年4月の利用件数が急増したこと、同年5月以降の減少については、同月に公表されたマイナンバーの紐付け誤り事案((1)ア参照)により、国民に不安を与えたのではないかと推察されることなどを挙げている。また、6年1月以降の増加傾向の要因として、同省は、上記の事案を受けて、登録データの点検を行い、全てのデータの確認が完了したことにより国民の不安が緩和されたことに加え、マイナ保険証の利用促進の取組を行ったことなどを挙げている。そして、同年12月に増加している要因として、同省は、同月に従来の健康保険証が新たに発行されなくなったことにより、受診者の意識や行動が変化したのではないかと推察されることなどを挙げている。

(イ) マイナ保険証の利用登録解除申請の状況

マイナ保険証は、オンライン資格確認等システムの仕様上、一度利用登録を行うと解除ができない仕組みとなっていたが、システム改修により、6年10月28日以降、マイナ保険証の利用登録者が保険者に対して解除申請を行うことでマイナ保険証の利用登録を解除することができるようになり、マイナ保険証の利用登録が解除された場合には保険者から資格確認書が交付されることとなった。

そこで、6年10月28日から7年7月までの間における利用登録解除申請件数の推移をみたところ、図表2-17のとおり、6年11月以降は毎月1万件を超える利用登録解除申請が行われており、その申請件数は7年7月時点において計15万余件となっていた。

図表2-17 マイナ保険証の利用登録解除申請件数の推移

図表2-17 マイナ保険証の利用登録解除申請件数の推移画像

厚生労働省は、利用登録解除申請件数が相当数となったことを踏まえ、一部の保険者に対して利用登録者が利用登録の解除を申請した理由等について聴取を行ったところ、「個人情報の漏えいが心配だから」「マイナ保険証を利用する必要性やメリットが感じられないから」「紛失時の懸念があり持ち歩きたくないから」「紙の資格確認書を持っていたいから」などの理由が挙げられたとしている。

ウ 公金受取口座の利用等の状況
(ア) 公金受取口座の利用の状況

公金受取口座について、6年重点計画においては、その登録・利用を推進し、給付事務の効率化を図ることとされている。また、7年重点計画においては、公金受取口座の登録・利用を引き続き推進し、給付事務の更なる効率化を図ることとされている。

公金受取口座を登録した者から給付金等の申請を受けた行政機関等は、申請者の公金受取口座の情報を確認する際に、登録された公金受取口座の情報を保有するデジタル庁から情報連携により当該申請者の公金受取口座の情報を取得している。そのため、同庁は、行政機関等が情報連携において照会を行った件数を公金受取口座の利用実績として取り扱っている。

そこで、同庁から、各月の照会件数の提供を受けて確認したところ、公金受取口座の情報に係る情報連携が開始された4年10月から7年7月までの間に、計2980万余件の照会が行われていた。

照会件数の推移を月別にみると、図表2-18のとおり、特定の月の照会件数が多くなっており、5年2月及び3月は、所得税等の還付に当たっての照会件数が最も多く、マイナポイント事業終了後の6、7両年も同様の状況となっていた。また、特に照会件数が多かった6年6月、7月及び7年7月は、特定公的給付(注33)の支給に当たっての照会件数が最も多くなっていた。4年10月から7年7月までの間の市町村による特定公的給付の支給に当たっての照会件数は2066万余件となっていて、上記2980万余件の69.3%を占めていた。

(注33)
特定公的給付  公金受取口座登録法に基づき、個別の法律の規定によらない公的給付のうち、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある災害若しくは感染症が発生した場合に支給されるもの又は経済事情の急激な変動による影響を緩和するために支給されるものとして内閣総理大臣が指定するもの。特定公的給付として指定されたものには「令和六年度出産・子育て応援給付金」「令和六年度物価高騰対策給付金(第二号)」等がある。

図表2-18 公金受取口座の情報に係る情報連携における照会件数の推移

図表2-18 公金受取口座の情報に係る情報連携における照会件数の推移画像

(イ) 公金受取口座の登録抹消の状況

デジタル庁は、公金受取口座として登録された預貯金口座が解約等により利用できなくなったことを把握した場合又は公金受取口座の登録者が死亡したことを把握した場合に、それらに係る公金受取口座の登録を抹消しているが、このほか、公金受取口座の登録者においても、マイナポータルから公金受取口座の登録を自ら抹消することができる。

公金受取口座の登録抹消後に再登録が行われている場合もあるため、登録抹消された件数の全てが登録抹消されたままの状態を表しているわけではないが、再登録が行われず、登録抹消されたままとなっている状態のものも一定程度あると考えられる。

公金受取口座の登録が開始された4年3月から7年7月までの間における公金受取口座の登録者による登録抹消件数の推移をみたところ、図表2-19のような状況となっており、登録抹消件数は、単純合計すると7年7月時点において計28万余件(注34)となっていた。また、同じ期間において公金受取口座の各月における登録件数の推移をみたところ、図表2-20のような状況となっていた。

(注34)
公金受取口座の登録は、任意に行うことができる制度であるため、同一人物が登録抹消と再登録を繰り返し行うことが可能となっている。

図表2-19 公金受取口座の登録者による登録抹消件数の推移

図表2-19 公金受取口座の登録者による登録抹消件数の推移画像

図表2-20 公金受取口座の各月における登録件数の推移

図表2-20 公金受取口座の各月における登録件数の推移画像

登録抹消件数と登録件数とでは件数の規模は異なるものの、5年6月については、登録件数が少なく、登録抹消件数が多くなっていた。この時期は、国がマイナンバーの紐付け誤り事案があったことを公表するなどしていた時期であった((1)ア参照)。デジタル庁は、登録者がマイナポータルから登録抹消を行う際に理由の入力は求めていないため、登録抹消の理由を把握していないとしているが、登録抹消の要因の一つとして、マイナンバーの紐付け誤り事案が影響したことも考えられる。

このように、マイナポイント事業の実施後におけるマイナンバーカード、マイナ保険証及び公金受取口座の利用等の状況についてみたところ、利用実績が増加している状況及び特定の時期の利用実績が多くなっている状況が見受けられた。一方、自主返納が発生していた可能性があると思料される状況並びにマイナ保険証の利用登録解除申請及び公金受取口座の登録者による登録抹消が行われている状況も見受けられた。

マイナポイント事業は、マイナンバーカードの普及並びにマイナ保険証の利用申込み及び公金受取口座の登録の促進によるデジタル社会の実現等の目的のために、多額の国費を投じて実施され、マイナンバーカード、マイナ保険証及び公金受取口座について普及の水準の引上げが図られた。これを踏まえると、マイナンバーカードの発行、交付及び管理に関することを所管する総務省、マイナ保険証の制度を所管する厚生労働省並びにマイナンバーカードの利用に関すること及び公金受取口座登録制度を所管するデジタル庁において、デジタル社会の実現に向けて、マイナポイント事業の実施後も引き続きこれらの普及の水準の維持及び利用の一層の促進のための取組が求められる。

したがって、総務省、厚生労働省及びデジタル庁は、マイナポイント事業が多額の国費を投じて実施されたものであることを踏まえて、マイナンバーカード、マイナ保険証及び公金受取口座について、利用等の状況を適時適切に把握して、一層の利活用を図るための方策を検討する必要がある。

3 マイナポイントの利用の状況

(1) 総務省等におけるマイナポイントの利用の把握状況

マイナポイント事業の目的である①消費の活性化、②キャッシュレス決済の利用拡大、③マイナンバーカードの普及並びにマイナ保険証の利用申込み及び公金受取口座の登録の促進によるデジタル社会の実現のうち、①消費の活性化について、マイナポイントの利用との関係を確認したところ、総務省は、申込者がマイナポイントの付与を受けるための前払等を行うことに加えて、付与されたマイナポイントを利用することも消費の活性化として想定していた。

そこで、付与されたマイナポイントの利用の状況について、実施要領等を定めている総務省及び事務局においてどのように把握されているのか確認したところ、事務局において決済事業者ごとのマイナポイント付与額が把握されている一方、同省及び事務局において決済事業者ごとの利用されたポイント数等のマイナポイントの利用実績は把握されていなかった。また、第2弾マイナポイント事業の施策2に係ることを所管する厚生労働省及び施策3に係ることを所管するデジタル庁においても、マイナポイントの利用実績は把握されていなかった。

総務省は、決済事業者ごとのマイナポイントの利用実績を把握していなかった理由について、利用の状況を把握するためには、各決済事業者に対し、マイナポイントの利用実績を他のポイントと区分して管理させることとなり、そのために既存システムの大規模な改修が必要になるなどの場合があることから、決済事業者の参画が困難になるとして、第1弾マイナポイント事業と第2弾マイナポイント事業を通じて、マイナポイントの利用実績を他のポイントと区分して管理することを求めていなかったためとしている。

(2) 決済事業者において管理されているマイナポイントの利用実績等の状況

ア 決済事業者におけるマイナポイントの利用実績の管理状況

総務省が各決済事業者に対してマイナポイントの利用実績を他のポイントと区分して管理することを求めていない中で、決済事業者においてマイナポイントの利用実績がどのように管理されているのか、マイナポイントの利用実績を把握可能な登録サービスがどの程度あるのかについて、ポイント付与補助金が交付された127決済事業者(補助金交付額1兆2714億余円)の登録サービス152件から、1登録サービス当たりの補助金相当額が多額となっているなどしている40決済事業者の登録サービス46件(注35)(補助金相当額計1兆2098億余円(127決済事業者に対する補助金交付額の95.1%)。以下、この46件を「46登録サービス」という。)の状況を確認した。その結果、図表3-1のとおり、12件(補助金相当額計3199億余円)では、マイナポイントの利用実績が他のポイントと区分して管理されていて、マイナポイントの利用実績が把握できる状況(注36)となっていた。
また、残りの34件(同計8898億余円)では、マイナポイントの利用実績が他のポイントと一体的に管理されていて、マイナポイントの利用実績は把握できないものの、マイナポイントを含むポイント全体の利用実績は把握できる状況(注37)となっていた。

図表3-1 40決済事業者の46登録サービスに係るマイナポイントの利用実績の管理状況

区分決済事業者数(注)登録サービス数左の登録サービスに係る補助金相当額の合計
(事業者)割合(件)割合(千円)割合
マイナポイントの利用実績が他のポイントと区別して管理されていた登録サービス1230.0%1226.0%319,991,56226.4%
マイナポイントの利用実績が他のポイントと一体的に管理されていた登録サービス2972.5%3473.9%889,878,22373.5%
40100.0%46100.0%1,209,869,786100.0%
  • (注) 決済事業者数の計欄の事業者数及び割合の数値は、1決済事業者の重複分を除いた数値である。

総務省がマイナポイントの利用実績を他のポイントと区分して管理することを求めていない中で、前記の12件に係る決済事業者がマイナポイントの利用実績を区分して管理していたのは、既存システムにおいて大規模な改修を行うことなくポイント別に利用実績を管理できるようになっているなどの状況の下で、マイナポイント事業に係る決算状況の把握、マイナポイントの利用の状況の説明を求められた場合への備えなどのためとなっていた。

(注35)
登録サービス152件を展開エリア別に①全国、②複数の都道府県、③1都道府県に分類し、①と②については補助金相当額が多額となっているなどしている登録サービスを、③については地域で利用可能な登録サービスに着目して、地方公共団体、地域の商工会等が運営しているものであって、かつ、補助金相当額が多額となっているなどしている登録サービスをそれぞれ選定した。
(注36)
決済事業者において、登録サービスごとに、付与したマイナポイントのうちの利用されたマイナポイントのポイント数を月次又は日次で集計するなどして利用実績が算出できる状況を指す。
(注37)
決済事業者において、マイナポイントを含むポイント全体について、付与したポイントのうちの利用されたポイントのポイント数を月次又は日次で集計して利用実績が算出できる状況を指す。
イ 決済事業者において管理されているマイナポイントの利用額等の状況

決済事業者におけるマイナポイントの利用実績の管理状況を踏まえて、46登録サービスを対象として、利用されたマイナポイントのポイント数等について決済事業者から回答を受け、これらを集計することなどにより、利用されたマイナポイントの金額(以下「マイナポイント利用額」という。)を算出するとともに、実施要領等に定めるマイナポイントの要件を踏まえ、マイナポイントの利用方法、利用可能な地域等及びマイナポイントの有効期限に着目してマイナポイントの利用の状況について分析したところ、次のような状況となっていた。

(ア) マイナポイント利用額等の状況

マイナポイントの利用実績が把握できた12件について、登録サービスごとに、マイナポイント利用額を集計したところ、マイナポイント付与額計3211億余円に対して、マイナポイント利用額は計3033億余円となっていた。

また、マイナポイントの利用実績は把握できないものの、マイナポイントを含むポイント全体の利用実績が把握できた34件については、付与されたマイナポイントが他のポイントと一体となって利用されると仮定して、ポイント全体の利用実績を基にマイナポイント利用額を試算(注38)したところ、マイナポイント付与額計9126億余円に対して、マイナポイント利用額は計8589億余円となっていた。

(注38)
マイナポイントの付与が開始された時点から付与されたマイナポイントが全て失効する時点(最長で令和7年3月に設定)までの期間における、マイナポイントを含むポイント全体の利用数、失効数等の比率を基に、付与されたマイナポイントのポイント数を案分して利用されたマイナポイントのポイント数を算出した。

これらをまとめると図表3-2のとおりとなり、46登録サービスに係るマイナポイント付与額計1兆2338億余円に対して、マイナポイント利用額は計1兆1623億余円となっていた。

マイナポイント付与額に占めるマイナポイント利用額の割合(以下「マイナポイント利用率」という。)について試算したところ、46登録サービスに係るマイナポイント利用率は94.2%となっていた。

図表3-2 46登録サービスに係るマイナポイント利用額等の状況(試算)

区分登録サービス数
(件)
左の登録サービスに係るマイナポイント付与額の合計左の登録サービスに係るマイナポイント利用額の合計(注)左の登録サービスに係るマイナポイント利用率
(b)/(a)
マイナポイント利用率別の登録サービス数
(a)
(千円)
割合(b)
(千円)
割合(件)
50%以上
60%未満
60%以上
70%未満
70%以上
80%未満
80%以上
90%未満
90%以上
マイナポイントの利用の状況の確認対象とした登録サービス(46登録サービス)461,233,815,520100.0%1,162,374,980100.0%94.2%12439
マイナポイントの利用実績が把握できた登録サービス12321,198,06226.0%303,395,45326.1%94.4%12
ポイント全体の利用実績が把握できた登録サービス34912,617,45873.9%858,979,52673.8%94.1%12427
  • (注) 「左の登録サービスに係るマイナポイント利用額の合計」欄について、「マイナポイントの利用実績が把握できた登録サービス」の計数は集計値、「ポイント全体の利用実績が把握できた登録サービス」の計数は試算値である。

46登録サービスについてみると、39件でマイナポイント利用率が90%以上となっており、マイナポイントの利用実績が把握できた12件についてはいずれも90%以上となっていた。なお、ポイント全体の利用実績が把握できた34件のうちの3件については、マイナポイント利用率が70%未満となっており、当該登録サービスは失効率が他の登録サービスと比較して高いなどの特徴があった。

(イ) 利用方法別のマイナポイント利用額等の状況

実施要領等において、マイナポイントは、マイナポイント事業の対象となるキャッシュレス決済サービスと併せて又は単独で、幅広く物品等の購入の決済時に電子的に日本円で換算可能な利用ができることが要件として定められており、申込者がマイナポイントを幅広く利用できるよう配慮されている。そして、その利用方法として、決済事業者の登録サービスごとに、店舗等での決済に利用する、ICカードの残高にチャージする、商品等に交換するなどの様々な方法が設定されている。

そこで、46登録サービスにおける付与されたマイナポイントの利用方法についてみたところ、46登録サービスの決済事業者から回答を受けたマイナポイントの利用方法は、主に「店舗等での決済」「ICカードへのチャージ」「商品等との交換」及び「請求金額との相殺」の4種類(注39)となっていた。

利用方法別にマイナポイントがどの程度利用されたのかについて、46登録サービスの状況をみたところ、図表3-3のとおり、マイナポイントの利用方法が単一の登録サービスが31件、複数設定されている登録サービスが15件となっていた。上記31件の利用方法は「店舗等での決済」「ICカードへのチャージ」及び「商品等との交換」の3種類となっていて、このうちの「店舗等での決済」に係る登録サービス26件に係るマイナポイント利用額は計1664億余円(マイナポイント利用率98.5%)、「ICカードへのチャージ」に係る登録サービス4件に係るマイナポイント利用額は計3024億余円(同93.2%)等となっていた。

(注39)
「店舗等での決済」とは付与されたマイナポイントを店舗等で商品を購入する際に使用する方法、「ICカードへのチャージ」とは付与されたマイナポイントを申込者においてICカードの残高にチャージする方法、「商品等との交換」とは付与されたマイナポイントを決済行為を経ずに商品、他社のポイント等との交換に使用する方法、「請求金額との相殺」とは付与されたマイナポイントをクレジットカード等の利用請求額との相殺に使用する方法である。

図表3-3 46登録サービスに係る利用方法別のマイナポイント利用額等の状況

区分登録
サービス数
左の登録サービスに係る
マイナポイント付与額の合計
(a)
左の登録サービスに係る
マイナポイント利用額の合計
(b)
左の登録サービスに
係るマイナポイント
利用率
(件)(千円)割合(千円)割合(b)/(a)
利用方法が単一の登録サービス店舗等での決済26168,879,08213.6%166,471,35914.3%98.5%
ICカードへのチャージ4324,345,07726.2%302,421,48426.0%93.2%
商品等との交換12,109,2000.1%1,943,6200.1%92.1%
小計31495,333,36040.1%470,836,46440.5%95.0%
利用方法が複数設定されている登録サービス(注)15738,482,16059.8%691,538,51559.4%93.6%
461,233,815,520100.0%1,162,374,980100.0%94.2%
  • (注) 利用方法が複数設定されている登録サービスについて、利用方法は主に「店舗等での決済」「ICカードへのチャージ」「商品等との交換」及び「請求金額との相殺」の4種類であることが把握できたものの、マイナポイント付与額を利用方法別に集計できないことなどから、まとめて集計している。
(ウ) 利用可能地域等ごとのマイナポイント利用額等の状況

実施要領等において、マイナポイントは、全国的又は地域的に幅広く利用可能なものであることが要件として定められている。総務省は、マイナポイントが利用可能なキャッシュレス決済サービスについて、全国展開のスーパーマーケット及びコンビニエンスストアに加え、地域密着型のスーパーマーケット等で利用できるキャッシュレス決済サービス及び地方公共団体等により発行された地域通貨を挙げており、マイナポイントが利用できる地域や店舗が登録サービスごとに異なっているなどしている。

そこで、マイナポイントの利用可能地域等ごとにマイナポイントがどの程度利用されたのかについて、46登録サービスの状況をみたところ、図表3-4のとおり、全国で利用可能な登録サービス24件に係るマイナポイント利用額は計1兆0425億余円(マイナポイント利用率93.7%)となっていた。また、一部の都道府県で利用可能な登録サービス22件に係るマイナポイント利用額は計1198億余円(同98.6%)となっていて、22件のうち地域通貨6件に係るマイナポイント利用額は計7億余円(同98.4%)となっていた。

図表3-4 46登録サービスに係る利用可能地域等ごとのマイナポイント利用額等の状況

利用可能地域等登録
サービス数
(件)
左の登録サービスに係る
マイナポイント付与額の合計
(a)
左の登録サービスに係る
マイナポイント利用額の合計
(b)
左の登録サービスに係るマイナポイント利用率
(b)/(a)
(千円)割合(千円)割合
全国で利用可能241,112,309,41190.1%1,042,542,41889.6%93.7%
一部の都道府県で利用可能(注)22121,506,1099.8%119,832,56110.3%98.6%
スーパーマーケット979,221,7706.4%78,291,6676.7%98.8%
ドラッグストア412,213,1370.9%12,067,4091.0%98.8%
地域通貨6761,7620.0%749,7940.0%98.4%
461,233,815,520100.0%1,162,374,980100.0%94.2%
  • (注) 「一部の都道府県で利用可能」に係る登録サービス22件については、そのうちの主なものとして、「スーパーマーケット」には、特定のスーパーマーケットで利用可能な登録サービスを、「ドラッグストア」には、特定のドラッグストアで利用可能な登録サービスを、「地域通貨」には、決済事業者が地方公共団体、地域の商工会等であり、特定の地域の店舗等で利用可能な登録サービスを、それぞれ集計している。
(エ) 有効期限の設定状況別のマイナポイント利用額等の状況

実施要領等において、マイナポイントは付与されてから失効するまで少なくとも3か月以上の期間が設定されていることが要件として定められていることから、全ての登録サービスについて、マイナポイントの有効期限の設定状況をみたところ、有効期限が設定されている場合はいずれも3か月以上となっており、有効期限が設定されていないものも一部見受けられた。

そこで、有効期限の設定の有無によりマイナポイント利用率に差異が生じていないかについて、46登録サービスの状況をみたところ、有効期限が設定されている登録サービス34件に係るマイナポイント利用率は93.1%、有効期限が設定されていない12件に係るマイナポイント利用率は94.9%となっていて、有効期限が設定されている登録サービスと設定されていない登録サービスでマイナポイント利用率に大きな差異はなかった(別図表3参照)。

(3) マイナポイント事業の効果の検証に係る取組状況

ア 総務省等による行政事業レビューの取組の状況

総務省は、元年度から6年度までの行政事業レビューシートにおいて、マイナポイント事業に係る予算の執行状況、成果目標の設定状況、成果目標の達成状況等について公表している。このうち、施策2及び施策3に係る成果目標の設定及び達成状況については、厚生労働省又はデジタル庁に確認し、これらの内容を取りまとめて公表している。

6年度の行政事業レビューシートにおける成果目標について、マイナポイント事業の目的と対応する成果目標が設定されているか確認したところ、図表3-5のとおり、短期アウトカムに係る成果目標として、「マイナンバーカードの普及」「国民がマイナンバーカードの健康保険証としての利用申込みを行う」及び「口座登録数の増大」が設定されていた。そして、これら三つの成果目標のそれぞれについて、長期アウトカムに係る成果目標として、(1)のマイナポイント事業の目的の③に対応する「デジタル社会の実現」が設定されていた。

また、成果目標の達成状況については、短期アウトカムに係る成果目標の達成率が、それぞれ75.1%、56.9%、65.8%とされていた。これらの達成率について、総務省、厚生労働省及びデジタル庁は、いずれも効果が一定程度達成されたと評価していた(マイナンバーカード等の申請等の状況については2(2)参照)。

図表3-5 令和6年度行政事業レビューシートにおける成果目標の設定等の状況

短期アウトカム長期アウトカム
成果目標及び成果指標達成状況成果目標及び成果指標達成状況
成果
目標
マイナンバーカードの普及目標年度:2022年度
目標値 :125,416,877件
成果実績:94,169,998件
達成率 :75.1%
成果
目標
デジタル社会の実現-
成果
指標
マイナンバーカード申込件数(令和5年2月末までのもの)成果
指標
デジタル社会の実現
成果
目標
国民がマイナンバーカードの健康保険証としての利用申込みを行う目標年度:2023年度
目標値 :123,952,000人
成果実績:70,510,702人
達成率 :56.9%
成果
目標
デジタル社会の実現-
成果
指標
マイナンバーカードの健康保険証の利用登録者数(令和5年9月末までのもの)成果
指標
デジタル社会の実現
成果
目標
口座登録数の増大目標年度:2023年度
目標値 :95,000,000口座
成果実績:62,551,539口座
達成率 :65.8%
成果
目標
デジタル社会の実現-
成果
指標
口座登録数(令和5年9月末までに申請のあった分)成果
指標
デジタル社会の実現

一方で、マイナポイント事業の残る二つの目的(①消費の活性化及び②キャッシュレス決済の利用拡大)に対応する成果目標は設定されていなかった。この理由について、総務省は、消費の活性化及びキャッシュレス決済の利用拡大という目的は複合的な要素によって達成されるものであって、定量的な指標を設定して施策効果を測定することが困難であると判断したためとしている。

イ マイナポイント事業の目的に係る効果の検証

総務省等による行政事業レビューの取組においては、マイナポイント事業の目的のうちの消費の活性化及びキャッシュレス決済の利用拡大に係る成果目標が設定されておらず、これらの効果について明らかにされていなかった。そこで、会計検査院において、総務省、厚生労働省、デジタル庁、事務局及び各決済事業者から聴取した内容を基に試算するなどして、マイナポイント事業による消費の活性化に係る効果及びキャッシュレス決済の利用拡大に係る効果を検証したところ、それぞれ次のような状況となった。

(ア) 消費の活性化に係る効果の検証

総務省に対して、マイナポイント事業による消費の活性化に係る効果の見込みについて確認したところ、同省は、1(1)アのとおり、マイナポイントの申込者数の目標値を9500万人と設定し、ポイント付与補助事業に係る予算を2兆0225億円計上していた。そして、この予算が全て執行され、マイナポイントの付与を受けるための前払等に係る金額を含めて1人当たり40,000円相当(注40)が消費に回ると仮定して単純計算した場合、図表3-6のとおり、消費の活性化に係る効果額は合計で3兆8000億円となることを想定していた。

一方、2(1)アのとおり、マイナポイント事業終了後の5年10月末時点における最終的な申込者数は、施策1等の申込者数が7556万余人、施策2の申込者数が6818万余人、施策3の申込者数が6174万余人であることから、これらの申込者数の実績値に基づき、総務省の想定した消費の活性化に係る効果額の算出方法に沿って算出することとした場合、消費の活性化に係る効果額は約2兆8635億円となった。

(注40)
第1弾マイナポイント事業及び第2弾マイナポイント事業の施策1から施策3までの申込みを全て行うことで付与される最大20,000円相当のマイナポイントと、5,000円相当のマイナポイントの付与を受けるための前払等に係る20,000円の合計を指す。

図表3-6 総務省の想定したマイナポイント事業による消費の活性化に係る効果額等

総務省がマイナポイントの申込者数の目標値に基づき想定した効果額
施策1等(20,000円+5,000円)×9500万人2兆3750億円
施策27,500円×9500万人7125億円
施策37,500円×9500万人7125億円
3兆8000億円
マイナポイントの申込者数の実績値に基づき総務省の想定した算出方法に沿って算出した場合の効果額
施策1等(20,000円+5,000円)×7556万余人1兆8890億余円
施策27,500円×6818万余人5114億余円
施策37,500円×6174万余人4630億余円
2兆8635億余円
  • (注) 20,000円は前払等に係る金額、5,000円及び7,500円は付与されるマイナポイント(施策1等については付与上限数)に1ポイント当たりの単価を乗じた金額である。

上記の効果額は、申込者に付与されたマイナポイントが全て利用されて消費に回ると仮定して算出されたものであり、付与されたマイナポイントの利用の状況を踏まえて算出することで、より実態に即した効果額を把握することができる。

付与されたマイナポイントの利用の状況については、総務省、厚生労働省及びデジタル庁並びに事務局において把握されていないことから、会計検査院において、(2)イ(ア)の46登録サービスに係るマイナポイント利用額等の状況等を踏まえて消費の活性化に係る効果額を試算した。試算においては、マイナポイントが国費を財源として付与されたものであること、及び利用されたマイナポイントの額が消費に回った額であると考えられることを考慮して、利用されたと考えられるマイナポイントの金額を消費の活性化に係る効果額として算出したところ、図表3-7のとおり、効果額は約1兆2239億円となった。

また、前記総務省の想定に沿って、施策1等に係るマイナポイントの付与を受けるための前払等に係る金額も消費の活性化に係る効果額に含めつつ、当該前払等に係る金額の一部が利用されず消費に回らない場合があることも考慮して効果額を算出した場合、効果額は約2兆4604億円となった。

図表3-7 マイナポイント事業による消費の活性化に係る効果額(試算)

区分登録
サービス数
(件)
左の登録サービスにおけるマイナポイント付与額施策1等に係るマイナポイントの付与を受けるための前払等に係る金額
注(3)(b)
左の前払等に係る金額も含めた消費の活性化に係る効果額
(a)+(b)
消費の活性化に係る効果額(利用されたと考えられるマイナポイントの金額)
(a)
マイナポイントの利用の状況の確認対象とした登録サービス(46登録サービス)461兆2338億1552万円1兆1623億7498万円
注(1)
1兆1617億1864万円2兆3240億9362万円
マイナポイントの利用実績が把握できた登録サービス123211億9806万円3033億9545万円3318億6175万円6352億5720万円
ポイント全体の利用実績が把握できた登録サービス349126億1745万円8589億7952万円8298億5689万円1兆6888億3642万円
マイナポイントの利用の状況の確認対象外とした登録サービス108628億1063万円615億5526万円
注(2)
748億4933万円1364億0459万円
1541兆2966億2615万円1兆2239億3024万円1兆2365億6798万円2兆4604億9822万円
  • 注(1) (2)イ(ア)で集計又は試算したマイナポイント利用額を計上している。
  • 注(2) 利用されたと考えられるマイナポイントの金額は、ポイント付与補助事業における補助金額の算定方法(第1の2(2)オ参照)を用いて、次の算定式により算出された金額を計上している。なお、補助金額の算定に当たり、有効期限が設定されていないことなどにより失効率を考慮していない登録サービスについては、マイナポイント付与額を計上している。 利用されたと考えられるマイナポイントの金額=マイナポイント付与額-失効額(マイナポイント付与額×失効率)画像
  • 注(3) マイナポイント事業の施策1等、施策2及び施策3のうち、施策1等については前払等に係る金額の25%に相当するマイナポイントが付与されることから(第1の2(2)イ参照)、施策1等に係るマイナポイント付与額を25%で除した金額を計上している。なお、マイナポイントの付与に当たり残高へのチャージのための前払が行われる登録サービスについては、前払に係る金額の一部が利用されず消費に回らない場合があることを踏まえて、当該金額にマイナポイント利用率を乗じ、又は失効率を乗じた金額を当該金額から減じて算出している。
(イ) キャッシュレス決済の利用拡大に係る効果の検証

我が国全体のキャッシュレス決済の状況については、「成長戦略フォローアップ」(令和元年6月閣議決定)において、達成すべき成果目標(KPI)として「2025年(令和7年)6月までに、キャッシュレス決済比率を倍増し、4割程度とすることを目指す」ことが掲げられている。当該成果目標に対応する2024年(令和6年)のキャッシュレス決済比率(注41)をみると、42.8%となっていて、政府目標である4割を達成している。

(注41)
キャッシュレス決済比率  クレジットカード支払額、デビットカード支払額、電子マネー支払額及びコード決済支払額の合計を民間最終消費支出で除して算出される割合

会計検査院が、マイナポイント事業によるキャッシュレス決済の利用拡大に係る効果を把握するため、マイナポイント事業の実施前後におけるキャッシュレス決済サービスの利用者数及び取引額の状況について、マイナポイントの利用の状況を確認した40決済事業者から46登録サービスの状況を聴取したところ、図表3-8のとおり、マイナポイント事業の実施前後で比較して、利用者数又は取引額が増加したとの回答があった登録サービス39件のうちの38件(46登録サービスの82.6%)については、これらの増加にマイナポイント事業の影響があったと認識されていた。

利用者数の増加にマイナポイント事業の影響があったと認識されていた34件のうち、利用者数が1割以上増加したと回答があったのは33件(同71.7%)となっていた。また、取引額の増加にマイナポイント事業の影響があったと認識されていた36件(同78.2%)全てにおいて、取引額が1割以上増加したと回答があった。

図表3-8 マイナポイント事業の実施前後におけるキャッシュレス決済の利用拡大の状況

(単位:件)

マイナポイントの
利用の状況の
確認対象とした
登録サービス
(46登録サービス)
利用者数又は
取引額が増加した
登録サービス
利用者数又は
取引額の増加に
マイナポイント
事業の影響あり
利用者数の増加に
マイナポイント
事業の影響あり
1割以上増加取引額の増加に
マイナポイント
事業の影響あり
1割以上増加
46
(100.0%)
39
(84.7%)
38
(82.6%)
34
(73.9%)
33
(71.7%)
36
(78.2%)
36
(78.2%)

(1)のとおり、マイナポイントの利用の状況を把握するためには、各決済事業者に対し、マイナポイントの利用実績を他のポイントと区分して管理させることとなり、そのために既存システムの大規模な改修が必要になるなどの場合があることから、決済事業者の参画が困難になるとして、総務省、厚生労働省及びデジタル庁並びに事務局において、マイナポイントの利用実績は把握されていなかった。

しかし、(2)のとおり、決済事業者におけるポイントの管理状況を確認して、マイナポイントの利用実績を他のポイントと区分して管理している決済事業者については利用実績を聴取し、マイナポイントの利用実績を他のポイントと一体的に管理している決済事業者についてはポイント全体の利用実績を聴取し、一定の仮定を置いて試算することで、マイナポイント利用額等の状況を把握することが可能であると考えられる。

また、(3)のとおり、マイナポイント事業の目的のうちの消費の活性化及びキャッシュレス決済の利用拡大に係る目的については、複合的な要素によって達成されるものであり、定量的な指標を設定して施策効果を測定することが困難であるとのことから、成果目標が設定されておらず、これらに係る効果は明らかにされていなかった。

しかし、マイナポイントの申込者数の実績及び各決済事業者におけるマイナポイント利用額の状況を踏まえ、一定の仮定を置いて試算する、キャッシュレス決済サービスの利用者数及び取引額の状況を確認するなどの方法により、マイナポイント事業の目的ごとに、その効果を一定程度把握することは可能であると考えられる。

マイナポイント事業のようにキャッシュレス決済サービスを活用してポイントを付与する事業を多額の国費を投じて実施する場合には、事業の効果を可能な限り把握した上で検証するなどして、同種の事業の実施に備えて知見を蓄積することが重要である。

したがって、総務省は、今後、多額の国費を投じてキャッシュレス決済サービスを活用してポイントを付与する事業を実施する場合には、事業を共同で所管する省庁等と連携して、決済事業者の実態を踏まえた上で、ポイントの利用実績について決済事業者から聴取するなどしてポイントの利用の状況等の把握に努めるとともに、事業の目的に沿って、事業の効果を検証する必要がある。