会計検査院は、前記要請のマイナポイント事業に関する各事項について、合規性、経済性、効率性、有効性、透明性の確保及び国民への説明責任の向上等の観点から、①マイナポイント事業に係る予算の執行状況はどのようになっているか、マイナポイント事業の実施状況はどのようになっているか、広報の実施状況はどのようになっているか、②マイナポイントの申込みの状況はどのようになっているか、マイナンバーカードの申請、マイナ保険証の利用登録及び公金受取口座の登録の状況はどのようになっているか、マイナポイント事業の実施後におけるマイナンバーカード、マイナ保険証及び公金受取口座の利用等の状況はどのようになっているか、③マイナポイントの利用の状況はどのようになっているか、マイナポイント事業の効果の検証に係る取組の状況はどのようになっているかなどに着眼して検査した。
検査の結果の主な内容は、次のとおりである。
(1) 事業の実施状況、特に広報の実施状況(リンク参照)
ア マイナポイント事業に係る予算の執行状況(リンク参照)
元年度から5年度までのマイナポイント事業に係る予算額は計2兆1422億余円であり、支出済額から翌年度以降の返納額を差し引いた支出額は計1兆3905億余円となっていた(リンク参照)。
予算積算額に対する支出額の割合についてみると、マイナポイントの申込者数が目標値である9500万人に達しなかったことなどから、マイナポイント事業全体は64.9%、ポイント付与補助事業は62.8%となっていた(リンク参照)。
元年度から3年度までの各年度における補助事業の繰越率は72.0%から89.5%まで、5年度における不用率は48.2%といずれも高くなっていた。総務省は、繰越率が高い理由について、ポイント申込期限が翌年度に延長されたためなど、不用率が高い理由について、マイナポイントの申込者数が目標値である9500万人に達しなかったためなどとしている(リンク参照)。
イ マイナポイント事業の実施状況(リンク参照)
マイナポイント事業においては、事務局はポイント付与補助事業等を、決済事業者はマイナポイントを付与するなどの事業を、地方公共団体はマイナポイント利用環境整備事業等を、総務省及びデジタル庁は広報等の事業を、それぞれ実施している(リンク参照)。
事務局であるSII及びPJは、決済事業者の募集、登録及び申請の審査業務、マイナポイント申込支援業務等を実施しており、これに係る事務局事務費はそれぞれ311億余円及び281億余円、このうち、外注経費はそれぞれ308億余円及び266億余円、外注経費率はそれぞれ99.0%及び94.5%となっていた(リンク参照)。
外注の階層については、SIIは最大4次請となっていて、SIIでは、事務局業務における多くの委託先の管理を電通に行わせ、電通から更に業務が外注されている構造となっていた。また、PJは最大3次請となっていて、PJの方がその階層は浅くなっており、その理由について、総務省は、第2弾募集要領において、検討会報告書を参考に、事業全体の企画及び立案並びに根幹に関わる執行管理を委託することはできないことを明記したことなどから、PJでは事務局業務における委託先の管理については外注しなかったなどのためとしている(リンク参照)。
また、SIIが締結した外注経費に係る契約42件のうち随意契約は24件となっており、PJが締結した外注経費に係る契約46件のうち随意契約は44件となっていた。随意契約とした理由について、SII及びPJは、専門性が高く代替が困難な外注先であったこと及び知見を持った人材を公募から事業開始までの短期間に確保する必要があったため一般の競争に付することが困難であったことによるとしている(リンク参照)。
ウ 広報の実施状況(リンク参照)
マイナポイント事業では、総務省及び事務局が全国的に複数の媒体を活用するなどして大規模な広報を展開した全国広報等が実施されていた。広報に要した経費は、SII広報87億余円、総務省第2弾広報及び総務省広報計76億余円等、計211億余円となっていた(リンク参照)。
広報に要した経費全体の過半を占めるSII広報及び総務省第2弾広報では、広報戦略の企画立案、広告素材の制作等を行う企画業務と、企画業務で制作した広告素材を掲載するなどのために新聞等の媒体枠を調達する媒体調達業務が実施されており、随意契約、企画競争又は一般競争入札によりいずれも電通に外注していて、電通は更に他の事業者に外注するなどしていた(リンク参照)。
企画業務では、広報戦略立案等業務、広告素材制作等業務、PR業務及び調査業務が実施されており、調査業務により把握したマイナポイント事業に関する多岐にわたる課題等に対して、広報で対応できる事項についての対処方針を検討し、広報戦略立案等業務に反映するなどしていた(リンク参照)。
また、媒体調達業務に要した経費を月別に整理し、金額ベースで媒体別投下量の推移をみたところ、第1弾マイナポイント事業におけるマイナポイント付与開始に向けた2年8月及び9月、第2弾マイナポイント事業の開始に伴う施策2及び施策3の申込受付開始に向けた4年3月並びに第2弾マイナポイント事業のカード申請期限の5年2月において、他の時期と比較して特に増加していた(リンク参照)。
SII広報の広報戦略については、電通により企画立案が行われ、広報WG等においてその内容が検討されて、SIIが決定していた。一方、媒体の種類、媒体別投下量等については、電通が行ったシミュレーションを基に、広報WG、総務省との個別の協議等において検討され、SIIが決定したとしていたが、どのように検討して決定したかについては、その経緯が分かる資料は保存されておらず、これらの妥当性を確認できる状況とはなっていなかった(リンク参照)。
総務省第2弾広報の広報戦略については、電通により企画立案が行われ、総務省との協議を踏まえてその内容が検討されて、同省が決定していた。一方、媒体の種類、媒体別投下量等については、同省は、仕様書の作成に当たり、電通を含めた専門性を有する複数の事業者に対して意見を聴取したとしていたが、意見の内容及び意見を踏まえてどのように検討して決定したかについては、その経緯が分かる資料は保存されておらず、これらの妥当性を確認できる状況とはなっていなかった(リンク参照)。
専門性を有する事業者の知見を活用することは、広報戦略の実施に当たって必要であったと考えられる。また、マイナポイント事業においては大規模な広報が展開され、多額の国費が投じられていたことから、広報戦略の実施の妥当性について十分に説明できるようにすることは重要であり、媒体の種類、媒体別投下量等を決定した経緯が分かる資料は、広報戦略の実施の妥当性の事後的な検証に資するものであったと考えられる(リンク参照)。
(2) マイナポイントの申込みの状況及びマイナンバーカードの申請の状況(リンク参照)
ア マイナポイントの申込みの状況(リンク参照)
第1弾マイナポイント事業におけるマイナポイントの申込者数は2533万余人となっていた。マイナポイント事業終了後の最終的な申込者数は、施策1等が7556万余人(目標値9500万人に対する申込者数の割合79.5%)、施策2が6818万余人(同71.7%)、施策3が6174万余人(同64.9%)となっていた。また、5年6月から同年8月までにかけて、申込者数の大幅な落ち込みが見受けられたが、この時期は、国がマイナンバーの紐付け誤り事案があったことを公表するなどしていた時期であった(リンク参照)。
イ マイナンバーカード等の申請等の状況(リンク参照)
第1弾マイナポイント事業の申込受付開始前の2年6月末時点におけるマイナンバーカードの有効申請件数は2528万余件となっていたが、第2弾マイナポイント事業のカード申請期限である5年2月末時点における有効申請件数は6769万余件増えて9298万余件(人口に対する有効申請件数の割合74.1%)となっていた。同年9月末時点におけるマイナンバーカードの保有枚数は9091万余枚(人口に対する保有枚数の割合72.4%)となっていた(リンク参照)。
施策2の申込受付開始前である4年5月末時点におけるマイナ保険証の有効登録件数は880万余件となっていたが、5年9月末時点における有効登録件数は6170万余件増えて7051万余件(人口に対する有効登録件数の割合56.2%)となっていた(リンク参照)。
施策3の申込受付開始前である4年5月末時点における公金受取口座の登録件数は156万余件となっていたが、5年9月末時点における登録件数は6097万余件増えて6253万余件(人口に対する登録件数の割合49.8%)となっていた(リンク参照)。
ウ マイナンバーカード等の利用等の状況(リンク参照)
マイナンバーカードの主な用途であるマイナポータルを活用した各種の手続等を行うに当たっては、マイナンバーカードを利用してマイナポータルにログインする必要がある。マイナポータルの利用登録者数は、7年7月末時点において7958万余人となっていて、ログイン数は、施策2及び施策3の申込受付が開始された4年6月とその翌月の7月に増加した後、特定の月の実績が多くなっていた。また、マイナンバーカードの交付が開始された平成28年1月から令和7年7月までの間において「本人希望・その他」として分類されたマイナンバーカードの廃止枚数は93万余枚となっていた。5年5月頃から同年8月までにかけて、廃止枚数が多くなっていて、自主返納が発生していた可能性があると思料される(リンク参照)。
マイナ保険証の利用件数は、4年6月末時点において25万余件(利用率0.5%)となっており、7年7月末時点において7809万余件(同31.4%)まで増加していた。また、マイナ保険証の解除申請の受付が開始された6年10月28日から7年7月までの間における利用登録解除申請件数は計15万余件となっていた(リンク参照)。
デジタル庁が公金受取口座の利用実績として取り扱っている情報連携における照会件数を確認したところ、公金受取口座の情報に係る情報連携が開始された4年10月から7年7月までの間に、計2980万余件の照会が行われており、特定の月の照会件数が多くなっていた。また、公金受取口座の登録が開始された4年3月から7年7月までの間における公金受取口座の登録者による登録抹消件数は、単純合計すると計28万余件となっていた(リンク参照)。
マイナポイント事業は、マイナンバーカードの普及並びにマイナ保険証の利用申込み及び公金受取口座の登録の促進によるデジタル社会の実現等の目的のために、多額の国費を投じて実施され、マイナンバーカード、マイナ保険証及び公金受取口座について普及の水準の引上げが図られた。これを踏まえると、総務省、厚生労働省及びデジタル庁において、デジタル社会の実現に向けて、マイナポイント事業の実施後も引き続きこれらの普及の水準の維持及び利用の一層の促進のための取組が求められる(リンク参照)。
(3) マイナポイントの利用の状況(リンク参照)
ア 総務省等におけるマイナポイントの利用の把握状況(リンク参照)
総務省は、マイナポイント事業の目的のうち消費の活性化について、申込者がマイナポイントの付与を受けるための前払等を行うことに加えて、付与されたマイナポイントを利用することも消費の活性化として想定していた(リンク参照)。
そこで、付与されたマイナポイントの利用の状況について、総務省及び事務局においてどのように把握されているのか確認したところ、決済事業者ごとのマイナポイントの利用実績は把握されていなかった。また、施策2を所管する厚生労働省及び施策3を所管するデジタル庁においても把握されていなかった(リンク参照)。
総務省は、その理由について、既存システムの大規模な改修が必要になるなどの場合があることから、決済事業者の参画が困難になるとして、第1弾マイナポイント事業と第2弾マイナポイント事業を通じて、マイナポイントの利用実績を他のポイントと区分して管理することを求めていなかったためとしている(リンク参照)。
イ 決済事業者において管理されているマイナポイントの利用実績等の状況(リンク参照)
40決済事業者の46登録サービスのうち、マイナポイントの利用実績が把握できた12件については、登録サービスごとにマイナポイント利用額を集計し、マイナポイントを含むポイント全体の利用実績が把握できた34件については、付与されたマイナポイントが他のポイントと一体となって利用されると仮定して、ポイント全体の利用実績を基にマイナポイント利用額を試算したところ、マイナポイント付与額計1兆2338億余円に対して、マイナポイント利用額は計1兆1623億余円となり、マイナポイント利用率は94.2%となっていた(リンク参照)。
46登録サービスにおけるマイナポイントの利用方法は、主に「店舗等での決済」「ICカードへのチャージ」「商品等との交換」及び「請求金額との相殺」となっていた。利用方法が単一の登録サービスのうち、利用方法が「店舗等での決済」となっていた26件に係るマイナポイント利用額は計1664億余円(マイナポイント利用率98.5%)等となっていた(リンク参照)。
また、全国で利用可能な24件に係るマイナポイント利用額は計1兆0425億余円(同93.7%)、一部の都道府県で利用可能な22件に係るマイナポイント利用額は計1198億余円(同98.6%)となっていた(リンク参照)。
ウ マイナポイント事業の効果の検証に係る取組状況(リンク参照)
6年度の行政事業レビューシートにおいて、マイナポイント事業の目的のうちの消費の活性化及びキャッシュレス決済の利用拡大に係る成果目標が設定されておらず、これらの効果について明らかにされていなかった。そこで、会計検査院において、これらの効果を検証した(リンク参照)。
46登録サービスに係るマイナポイント利用額等の状況等を踏まえて、利用されたと考えられるマイナポイントの金額を消費の活性化に係る効果額として算出したところ、効果額は約1兆2239億円となった。また、施策1等に係るマイナポイントの付与を受けるための前払等に係る金額も効果額に含めるなどして算出した場合、効果額は約2兆4604億円となった(リンク参照)。
キャッシュレス決済の利用拡大に係る効果を把握するため、前記の40決済事業者から46登録サービスの状況を聴取したところ、38件(46登録サービスの82.6%)について、マイナポイント事業の実施前後で比較して、キャッシュレス決済サービスの利用者数又は取引額の増加にマイナポイント事業の影響があったと認識されるなどしていた(リンク参照)。
マイナポイント事業のようにキャッシュレス決済サービスを活用してポイントを付与する事業を多額の国費を投じて実施する場合には、事業の効果を可能な限り把握した上で検証するなどして、同種の事業の実施に備えて知見を蓄積することが重要である(リンク参照)。
総務省、厚生労働省及びデジタル庁は、消費の活性化、キャッシュレス決済の利用拡大及びデジタル社会の実現に係る目的を掲げ、元年度から5年度までの間に、1兆3905億余円を投じて、施策1等としてマイナンバーカードを取得した上でキャッシュレス決済を利用する者に対して、施策2としてマイナ保険証の利用申込みを行った者に対して、施策3として公金受取口座の登録を行った者に対して、それぞれマイナポイントを付与するマイナポイント事業を実施した。その結果、施策1等の申込者数は7556万余人、施策2の申込者数は6818万余人、施策3の申込者数は6174万余人となった。そして、第2弾マイナポイント事業終了時の5年9月末時点において、マイナンバーカードの保有枚数は9091万余枚、マイナ保険証の有効登録件数は7051万余件、公金受取口座の登録件数は6253万余件となった。
総務省、厚生労働省及びデジタル庁は、デジタル社会の実現に向けて、今後、これらの利用等に係る各種の施策を実施していくこととしている。また、総務省は、今後も多額の国費を投じて、大規模な広報業務が必要となる事業及びキャッシュレス決済サービスを活用してポイントを付与する事業を実施する可能性がある。
ついては、総務省、厚生労働省及びデジタル庁は、次の点に留意して、マイナンバーカード、マイナ保険証及び公金受取口座の利用等に係る施策を実施するとともに、所管する事業を適切に実施する必要がある。
ア 総務省は、今後、大規模な広報を実施する場合には、媒体の種類、媒体別投下量等を決定した経緯が分かる資料について、事後的な検証のために、補助事業においては補助事業者に適切に保存させ、直轄事業においては同省が適切に保存して、広報戦略の実施の妥当性を十分に説明できるようにすること
イ 総務省、厚生労働省及びデジタル庁は、マイナポイント事業が多額の国費を投じて実施されたものであることを踏まえて、マイナンバーカード、マイナ保険証及び公金受取口座について、利用等の状況を適時適切に把握して、一層の利活用を図るための方策を検討すること
ウ 総務省は、今後、多額の国費を投じてキャッシュレス決済サービスを活用してポイントを付与する事業を実施する場合には、事業を共同で所管する省庁等と連携して、決済事業者の実態を踏まえた上で、ポイントの利用実績について決済事業者から聴取するなどしてポイントの利用の状況等の把握に努めるとともに、事業の目的に沿って、事業の効果を検証すること
以上のとおり報告する。