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  • 昭和24年度|
  • 第5章 不当事項

概要


第1節 概要

 国及び政府関係機関の歳入、歳出等検査の結果、ここに不当事項として掲記するものを所管別、機関別にあげると

所管又は機関 租税 未収金 予算経理 工事 物件 資金管理 財務諸表 不正行為 その他

裁判所








2


2
総理府






2
2
法務府 2 1 5 1


15
24
大蔵省
(うち終戦処理関係の分)
266
6 25
(23)
81
(23)


39
(7)
6
(6)
423
(59)
文部省
1 11



2
14
厚生省
2 1 1


8 1 13
農林省
3 14 1 1

2 4 25
通商産業省

2
1

2
5
運輸省

1





1
郵政省



20
2 19 5 46
電気通信省

2 8 5
5 1 3 24
労働省
20




14
34
建設省
1 3 8




12





日本専売公社
1 1
2

6 1 11
日本国有鉄道
10
5 9
4 1 5 34

価格調整

2
1 2
1
6
酒類配給






1
1
食糧配給

1
1 1
15
18
肥料配給

3

2
2
7
飼料配給
1 1

3
5
10
食料品配給
2 2

5
1
10
油糧配給
1 3



1 1 6
産業復興

1





1
配炭

3
1

4
8
鉱工品貿易



5

1
6
繊維貿易



1



1
船舶






1
1
船舶運営会
1 1


1 1
4
持株会社整理委員会






1
1
268 44 63 49 128 13 12 147 26 750
備考 (1) 件数は決算検査報告の番号の数による。
(2) 専売局特別会計及び国有鉄道事業特別会計の分は便宜日本専売公社及び日本国有鉄道に含めた。

であつて、合計750件に上り、国民の租税をおもな財源とする国及び政府関係機関の会計において、このように不当な経理の多いことは、はなはだしく遺憾にたえないところで、これらは主として法令若しくは予算の軽視又は責任観念の低下に因るものと認められる。
 右750件のうち、特に注意を要する事項を概括して記述すると左のとおりである。

第1 収納未済

 一般会計における収納未済が多額に上ることについては、第1章で記述したとおりであるが、収納未済額1109億6千6百余万円のうちのおもなものは、租税収入1035億3千4百余万円、価格差益納付金33億7千8百余万円、公共団体工事費分担金17億7千余万円、官有財産売払代7億8百余万円、病院収入3億9千2百余万円、官有財産貸付料2億9千5百余万円であつて、国の財政の現状にかんがみ、その徴収の促進についてはなお一段の努力の要あるものと認める。
 特別会計の収納未済額は258億2千5百余万円で、そのおもなものは、食糧管理の食糧売払代127億7千7百余万円、厚生保険の保険料収入28億7千7百余万円、専売局の塩事業収入27億6千6百余万円、薪炭需給調節の薪炭売払代12億8千7百余万円、財産税等収入金の租税及び財産収入10億6千6百余万円、アルコール専売事業の事業収入8億3千8百余万円、失業保険の保険料収入7億4千9百余万円であるが、一般会計及び特別会計を合計すれば、その収納未済額は1367億9千1百余万円となり、更に、貿易特別会計の繊維、鉱工品両貿易公団に対する149億余万円、外国為替特別会計に対する224億余万円など、徴収決定をしていないものを考慮すれば、事実上の収納未済額はなお巨額に上るものと認められる。

第2 契約の締結

 予算の配賦が遅れるため仮契約を結び工事を施行して、予算の配賦をまつて本契約を締結するもの、又は競争入札により契約する結果予算に余剰が生ずるので、認証の手続を経ない工事を契約して施行するなどの事例があるが、右は会計法規に違反し、認証制度をみだすものである。
 又、工事を指名競争に付し契約するに当り、予定価格に対する最低制限価格を設けて入札の結果、これに達しない入札を排除し契約を結んだ事例が見受けられるが、右は会計法規の趣旨に反するばかりでなく競争契約の実を失したものである。
 なお、一般競争又は指名競争により工事等の契約を結んだもののうち、設計変更又は労務、物価事情等の変化に応じ契約額を変更する場合、ややもすれば不当な増額となる傾向が見受けられる。
 現行会計制度の下では、随意契約により工事の施行、物件の購入、売渡等をなし得る場合が多いが、広く一般の競争に付し、国に有利な契約を結ぶことが望ましい。

第3 法令に基かない特別資金の経理

 歳入の徴収に関し国有物件の売渡の際正規の手続をとらないで仮受領金名義で買受希望者から現金を受領し、あるいは国に納付すべき歳入金を納付しないで出納職員でないものが保管し、又は法令に基かないで資金の借入を行い、これらを予算外に使用して歳出金などの立替使用に充て、他方経費の使用に関し事実がないのに事実があつたように関係書類を作製して運搬費、印刷費などを支出したこととし、又は正当支出額に付掛を行い支出し、その金額を別途に経理している事例が見受けられる。このような経理は予算又は会計法規に違反するばかりでなく、不正行為の誘因ともなるもので厳に戒める必要がある。

第4 公共事業費

 公共事業費の昭和24年度支出済額は604億1千9百余万円で、2億2千1百余万円を翌年度に繰り越し3千4百余万円を不用額としている。
 本事業の実施状況を見ると、予算を重点的に使用せず、各地方にわたる多数の同種事業にこれを分散的に使用し、予算の十分な効果を期し得なかつたり、後年度継続施行の見込が十分でない工事を行つたり、又は国が施行する工事に関連し施行されるべき国以外のものの工事の施行完成と相まつて、初めて工事の効果を発揮するものがあるが、その関連工事の計画及び実施時期等についての検討が十分でなかつたため、工事を実施しても結局は行的施設となり、事業実施の効率が十分でないと認められる事例がある。
 他方、事業実施についての予算及び支出負担行為計画額の示達は、適期に行う必要があるが、1件の工事予算を四半期ごとに分割して示達するため、工事実施部局で、年度の当初に一括して契約を結ぶことができず、やむを得ず分割して契約することとなり、又、寒地で第3、四半期以降に予算の示達を受けたような場合、年度内の工事の遂行が困難なため、経費の年度区分をみだつた事例が見受けられる。
 又、事業の実施には、所定の認証の手続を必要とするのに、認証外の工事を実施しているもの、災害復旧事業の実施に関する経費を補助するに当つて、原型復旧の程度を越えて改良が行われたものをその対象とした事例などが少くない。
 なお、本事業の実施について、予算の示達前に法令に認められない資金の借入を行い、又、実工事費に付掛を行うなどの方法により、認証の手続を経ない工事の経費などに資金を充てたりしている事例もあるが、これは厳に戒めねばならない。

第5 終戦処理費

 終戦処理事業費の昭和24年度支出済額は963億7千7百余万円で、136億3千7百余万円を翌年度に繰り越し、125億8千5百余万円を不用額としている。
 右支出済額のうちおもなものは労務費331億5千6百余万円、維持管理工事費50億7千8百余万円、役務関係経費413億2千9百余万円であつて、労務費の支給に当り、給与方針の不徹底、経理職員の不注意などにより過払又は誤払を生じたものがあり、又、工事の施行及び役務の提供に関し契約又は経費の精算処置等が適切でなかつたため諸経費の積算が過大であつたり、物品の調達に当り材料の使用数量又は納入経費を過大に積算した事例が多い。
 なお、工事費等の支払については従来遅延がはなはだしく、検査に際しその処理の迅速化を注意してきたところであるが、24年度においては終戦処理既定調達費145億8千余万円を支出し、23年度以前に施行済の工事等に対する支払を了し改善されたが、なお処理が緩漫のため翌年度に繰り越されたものが12億3千余万円ある。

第6 旧軍用物件の処理てん末

1 廃兵器の処理

 廃兵器の処理について、兵器処理委員会は、同委員会の兵器処理業務に要した経費として、収支差引損失64,414,889円に清算事務費その他をあわせ173,948,295円を政府に請求したのに対し、建設省において、兵器処理委員会清算人に昭和24年3月90,000,000円を概算払したことは昭和23年度決算検査報告に掲記したとおりであるが、その後建設省は右経費を146,222,790円とし、25年3月残額56,222,790円を支出したので、これらの支出を検査した結果、133,822,342円を限度として支出するのはやむを得ないものと認め検査を了した。

2 特殊物件

 建設省及び各都道府県で取り扱つた特殊物件は、生活困窮者等に無償譲渡したもの、又は他官庁に無償保管転換したものを除き、昭和24年度末までの売渡済額は69億6千7百余万円と推算され、そのうち24年度までの徴収決定済額は61億8千1百余万円、収納済額は59億5千余万円で、収納未済額は2億3千1百余万円に上つている。
 右売渡済額のうちには、徴収決定すべきものがなお建設省主管中央収納扱等のもので4億4千3百余万円(旧軍に納付した代金1億7千9百余万円及び公共団体における取扱経費1億6千2百余万円を差し引く。)あり、本院においても収入の促進につき注意を促している。
 なお、今後の売渡見込額は、25年度以降に返還されるものを除き、1億9千3百余万円ある見込である。
 右の外、運輸省、逓信省及び電気通信省で処分し徴収決定した特殊物件は、24年度末までにそれぞれ6億6千7百余万円及び1億4千6百余万円に上つたが、その代金として一般会計に納付したのは、それぞれ6億3千6百余万円及び1億3千3百余万円である。

3 艦艇解撤

 旧海軍艦艇468隻、排水量67万7千余屯の解撤工事については、昭和23年度予算に8億2千6百余万円の経費を計上したが、23年度内にはその大部分が精算に至らず、24年度中に7億6千9百余万円をもつて精算支払を完了した。
 右解撤により発生した諸資材は26万8千余屯に上つたが、うち26万1千余屯を6億1千5百余万円で解撤業者などに売り渡し、25年8月までに5億8千2百余万円を収納している。
 本院は、株式会社播磨造船所外34会社につき349隻、排水量65万7千余屯の解撤工事に関する会計の検査を行い、工事費については原価計算を基準とした適正な経費により、又、発生諸資材の評価については、統制額又は処分時の適正時価によるを相当と認め注意したところ、当局者はおおむね本院の見解に従い、工事費については解撤業者の請求額8億2千余万円のうちから1億1千9百余万円を減額して精算し、又、処分済発生諸資材の評価については5億9千2百余万円に対し2千2百余万円を増額している。

第7 職員の不正行為

 会計事務を処理する職員等が不正行為に因り国又は政府関係機関に損害を与える事例は累年増加の傾向にある。
 不正行為の態様としては、出納職員又はその補助者である関係職員が債権者に対する支払金額に付掛してその差額を領得し、小切手用紙及び官印を盗用して偽造小切手を振り出し、あるいは出納職員、その補助者等が収納した所得税、物品売渡代金等の収入金又は現品を領得したものが多いが、会計帳簿等の整備及び記帳整理の迅速適確を期し、会計職員の責任観念を引き締め、会計経理の監督を厳にし、内部けん制組織と監査組織の充実徹底を図ることが特に必要であると認められる。

第8 既往年度決算検査報告に対する処理状況

 既往年度決算検査報告において不当と認めた事項のその後の処理状況につき、特に記載を必要と認める事項は、第4節に記述するとおりであるが、検査報告掲記事項に対する当該関係庁のその後の是正処置は十分とは認められず、はなはだしいものは昭和22年度決算検査報告に掲記した事項でまだ是正に至らないものがある。