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  • 昭和25年度|
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解除物件の売渡及び管理当を得ないもの


(26)−(39) 解除物件の売渡及び管理当を得ないもの

 (部)特別収入 (款)解除物件処理収入 (項)解除物件処理収入

 東京外5特別調達局で、解除物件の処理に関し、価格の積算当を得ないため低価に売り渡したもの、現品を引き渡し代金の収納に至らないもの、引取輸送費を過大に支払つたものなどその処置当を得ないと認められるものが次のとおりある。

(1) 連合国軍関係工事用として売り渡した物件の売渡価格低価に失したもの

(26)  東京、仙台両特別調達局で、工事請負人に対し連合国軍関係工事用資材として解除物件を売り渡すに当り、既に精算済の工事請負代金又は工事費見積内訳書中の当該物件の価格よりも著しく低価に売り渡したものが左のとおりある。

特別調達局 品名 数量 売渡価格 工事費中の当該物件の価格 差額 工事精算又は契約年月 売渡年月 売渡先
年 月 年 月
東京 鑄鉄異型管 18,419瓩 57,064 515,754 458,690 25. 1 25. 7 藤原工業株式会社
アスフアルトルーフイング等 505本 120,000 528,300 408,300 〃 3 26. 5 鹿島建設株式会社
各種厚型スレート 21,730枚 100,000 478,907 378,907 24. 12 〃 2 桑島土建運輸株式会社
仙台 鑄鉄管等 693,847 1,602,167 908,319 25. 4 25. 4から
〃 6まで
日本鋪道株式会社外5会社
970,911 3,125,128 2,154,216

(2) 解除物件の売渡価格低価に過ぎたもの

(27)  東京特別調達局で、昭和25年5月関西配電株式会社に随意契約により変電所用機械器具を8,090,071円で売り渡している。
 右の機械器具は、大阪府西茨木及び京都府上賀茂両地区連合国軍用変電所新設工事が中止となつたため不用となり、22年9月以降おおむね同会社に保管させていたもので、予定価格を時価評価額29,390,313円から損耗、変質等による減額25%又は28%、需要度による減額50%(絶縁油は25%)を控除して7,442,646円と決定し、前記価額で売り渡したものである。しかし、本品は新規に購入後搬送されたままで引続き保管させ、24年3月ごろから再三同会社が変電所新設に必要なものとして買受申込を行つていたものであるから著しく損耗、変質があつたものとは認められないし、特に需要度による減額50%までを考慮するの要はなく、現に、同会社も当初は12,774,900円をもつて買受申込を行つた状況で、本件売渡価額は低廉に失したものと認められる。
 なお、本件は同会社が24年3月ごろから25年1月までに再三前記金額で買受を申し込んだのに対し、同局ではその売却を決定せず日を経過したところ、25年3月京都特別調達局で誤つてそのうち変圧器4台(同会社の買受申込価額2,095,000円)を836,000円で他の業者に売り渡すこととしたので、東京特別調達局では直ちにその契約を解除させたが、同会社は京都特別調達局で決定した低価な売渡予定額を知り右申込価額による買受に応じなかつたもので、ひつきよう売渡の決定遅延し、事務連絡の徹底を欠いたため著しく低価に売り渡すのやむなきに至つたものと認められる。

(28)  同局で、昭和25年5月排水鉛管12,147フィート(57,060キログラム)を相模興業株式会社に京都市水道局の用に供するものとして随竟契約により、損耗、変質、需要度による減額及び引取経費を計35%と見て予定価格を2,387,949円(平均屯当り41,849円)とし2,390,000円で売り渡しているが、当時鉛の市場価格は純度99%の古鉛屯当り60,000円程度、鉛地金屯当り68,000円程度であり、これに比べ本件は純度99%99の未使用品であるのにかんがみ、売渡価格は著しく低価に過ぎたものと認められ、前記会社は右物件を京都市の水道工事に使用しないで5月3,134,790円で他に転売している状況である。

(29)  仙台特別調達局で、昭和26年5月よろい戸式窓日よけ1,189個外182品目を、予定価格589,089円として一般競争に付し、仙台市高橋某に598,000円で売り渡しているが、右は、同年2月同日よけだけを予定価格773,343円として一般競争により1,080,000円で落札したところ、5月解約されたので、改めてこれに木製卓上ランプ外181品目を加え、予定価格を右日よけについては406,495円、卓上ランプ等については182,594円として入札に付したものである。しかし、右406,495円は2月入札の際における10番札452,000円よりも下回るばかりでなく、日よけはアルミニユーム製でくず化しても約5屯7その価格90万円を下らないものであり、これに他の多数品目を加え予定価格を前記589,089円としたのは著しく低価と認められる。

(30)  横浜特別調達局で、昭和25年5月日本塗工及び川田鉱業両株式会社に各種板ガラス99,129枚を随意契約により5,351,404円で売り渡しているが、そのうち日本塗工の分は予定価格(統制額の29%4)1,701,027円とし1,871,283円で売り渡したものであり、又、川田鉱業の分は予定価格(統制額の25%7)3,233,475円とし買受申込価格3,480,121円で売り渡したものである。しかし、本件契約当時板ガラスの市場価格は統制額を上回つていたばかりでなく、本品は新品であるからこのように高率の減額をする必要はなかつたものと認められる。

(31)  京都特別調達局で、昭和25年5月福井県機械金属工業協同組合に随意契約によりラジエーターバルブ等22,187個及び排水金物60本を770,000円で売り渡しているが、右は、同組合が請け負つた福井県下の水道及び下水工事用資材として買受申込があつたのに対し予定価格を769,700円として前記価格で売り渡したものである。しかし、予定価格の積算を見ると、時価に対し需要度、損耗、変質等による減額を95又は96%としてきわめて低価に算定しているが、本件は新品同様のものであり、且つ、買受人において使用する目的も定まつているのであるから、特にこのように高率の減額をして売り渡したのは処置当を得ない。

(32)  呉特別調達局で、昭和25年7月高知市小川某に随意契約により各種ケーブル類19,035米を1,170,000円で売り渡しているが、右は、同年3月予定価格を23年7月当時のケーブル販売価格の統制額を基礎とし、価値減平均69%4を減額して1,164,096円と算定し、競争入札に付したところ落札者がなく、その後3箇月余を経過した7月に至り当初の入札に参加しなかつた前記小川某に当初の予定価格とほぼ同価格で売り渡したものである。しかし、この間ケーブル類の主要部分を占める非鉄金属類の市場価格は値上りを続け、本件予定価格作成当時に比べ40%程度の値上りをきたしていたばかりでなく、4月及び6月減価率を平均83%5又は73%7として競争に付し売り渡したケーブル類は、それぞれ予定価格の2.4倍又は2.9倍で落札している状況にかんがみ、これより品質程度がはるかに良好な本件は予定価格の算定著しく低価に失したものと認められる。

(33)  同局で、昭和25年9月呉市灘田某に鋼板製貯水タンク383個を予定価格861,183円とし随意契約により865,000円で売り渡しているが、右は、同年3月主材料である鋼板の価格を24年9月の統制額屯当り16,430円ないし17,070円により計算し、これに加工費等を加えた新品価格から品質の低下等を考慮の上85%値引して予定価格を決定したものである。しかし、鋼板価格の統制額は25年1月21,300円ないし22,300円に改訂されたにかかわらず、旧統制額により、且つ、著しく高率の値引をしたため本件は屯当り3,000円程度となり、当時の鉄くずの統制額屯当り4,500円を下回る結果となつている状況である。

(34)  福岡特別調達局で、昭和25年6月広島市宮本某に建築金具及び管工事部品木ねじ外11品目を予定価格172,185円とし随意契約により同額で売り渡しているが、右は、24年12月予定価格を時価評価額4,811,984円から需要度、損耗度等による減額を行い1,302,349円とし一般競争に付したところ入札希望がなかつたので、25年6月に至り更に多額を減額し、その予定価格を前記のように13%程度に引き下げて売り渡したものである。しかし、当初の入札時から6箇月を経た本件契約時においては右物品の主材料である非鉄金属二次製品は約30%値上りしている状況であり、又、この間本件物品の損耗が増大したものとは認められないばかりでなく、本件物品はこれをそのままくずとして売つても21屯余時価46万円を下らないものと認められ、本件売渡価格は著しく低価に失するものである。

(3) 代金徴収前に現品を引き渡し代金の収納に至らないもの

(35)  東京特別調達局で、昭和25年10月から26年3月までの間に、東京都下村某にガスよう接棒外24品目を随意契約により3,800,000円で売り渡したが、右は、契約保証金として1,515,000円を受領しただけで物件を引き渡したもので、その後わずかに335,000円を収納したにとどまり、残額は収納が困難となつている。
 又、23年9月株式会社小島電機製作所外6会社から購入した変圧器66台をそのままそれぞれ会社に保管させていたところ不用となり購入価格で売り渡したが、26年7月本院会計実地検査の際調査するに、代金の徴収決定に至らないものが株式会社城東電機製作所外2会社26台分356,679円、代金の収納に至らないものが株式会社小島電機製作所外3会社40台分484,857円あつたので注意したが、その後10月現在66,122円を収納したにとどまつている。

(4) 引取輸送に当り過大な空車回送料を支払つたもの

(36)  東京特別調達局で、昭和25年5月から26年6月までの間に、随意契約により共和物産株式会社に請け負わせた解除物件引取輸送の代金13,310,184円(うち26年度分386,726円)のうち、空車回送料として2,370,026円(うち26年度分116,887円)を支出しているが、右は、25年2月から26年3月までの間に、横浜市内及び神奈川県渕野辺の倉庫で調達解除になつたボイラー等13,358屯を引き取り、横浜及び川崎市内の倉庫まで輸送した際の空車回送料で、東京に営業所を有する同会社から前記倉庫までの回送距離42キロメートルないし72キロメートルにつき精算により全使用台数に対し空車回送料を支払つたものである。しかし、本件役務については、もよりの自動車を使用するものとして回送料を計算すれば足り、いま仮に、回送距離を横浜特別調達局契約の例にならい11キロメートルないし35キロメートルとし空車回送料を支払つたとすれば、145万余円を節減することができたものである。

(37)  仙台特別調達局で、日本通運株式会社仙台支社外2会社に右と同種の役務を請け負わせ、昭和25年度中引取輸送代金2,500,198円を支出しているが、そのうち空車回送料436,188円は回送距離から3キロメートルを控除して支払う取扱であるのにこれを控除しなかつたり、実際に使用した台数に対してだけ支払うべきであるのに輸送回数によつて支払つたため、199,293円が過払となつているので注意したところ、これを回収することとした。

(38)  横浜特別調達局で、昭和25年4月及び10月東海産業株式会社に右と同種の役務を請け負わせ、引取輸送代金として932,768円を支出しているが、そのうち空車回送料263,110円は回送距離を往路又は復路のいずれかによるべきであるのにこれを併算し、又は実際に使用した台数に対してだけ支払うべきであるのに輸送回数によつて支払つたため、166,444円が過払となつているので注意したところ、これを回収することとした。

(5) 解除された零細物件の処理当を得ないもの

(39)  東京特別調達局で、昭和25年1月から26年3月までの間に、都商事株式会社外12会社に保管寄託した解除物件のうち最低料金である保管料1口1期(半月)3円、入庫荷役料1口10円に満たない価格僅少の零細物件に対し最低料金に切り上げ支払つたものが保管料424,319円、荷役料210,760円ある。
 右は、中古のスプーン、ナイフ、なべ類、くずかご、衣類掛等の小雑品及び破損した小家具類等延約2万1000口に対するもので、これを1個ずつ又は少量を1口として保管寄託し、前記最低料金を支払つたものであるが、これらを売り渡しても寄託経費に相当する収入を期待できないことは明らかであるばかりでなく、この種の物品は寄託の処置をとらず直ちに売り渡すなど経費の節減を図るべきものと認められる。