(部)官業及官有財産収入 (款)官有財産収入 (項)官有財産売払代
全国財務局で、昭和25年度に売渡処分した鉄くず等は総量24万2千余屯価格11億6千2百余万円に達するが、当時鉄鋼類は第1次、第2次製品とも既に統制が解除され、鉄くず類も単に価格だけの統制が残存し、配給の統制はなかつたので業者の買あさりを招来し、実際取引価格は統制額をはるかに上回つている状況で、物価庁は、25年1月から26年2月までの間に前後4回にわたつて統制額を大幅に引き上げたが、ついに4月1日統制が解除されたものである。
この情勢下において、国有の機械器具等の処分はくず化を条件に競争契約によることを原則として発足したが、実施に当つては各財務局の取扱は区区で、非鉄金属類を含め競争に付して最高入札額をそのまま落札価格としたもの、鉄くずの統制額を最高額としこれをこえる入札者について更に抽せんによつて買受人を決定したもの及び統制額から破砕等の処理費を実費により又は名目的な少額を控除して売渡価格を決定したものなどがあつて、同種の物件でその処分価格に著しい開差のある結果となつている。
しかして、これが処分の状況を検査するに、売渡数量の確認が十分でないものがあるばかりでなく、随意契約によつたもののうちには、価格の変動のはなはだしい時期に対処し適時に適量を処分すべきものと認められるのに、契約後6箇月以上を経てようやく搬出を完了したほどの大量を一括して売り渡したもの、統制額の値上げ又は統制解除により有利に処分できる見込があるのにその直前に大量を売り渡したものなどがあり、又、関係職員が関与して契約数量をこえて搬出したと認められるものも多数あり、その事例をあげると次のとおりである。
(1) 統制額の値上げ及び統制解除直前に売り渡したもの
(149) 近畿、中国両財務局で、昭和26年2月から4月までの間に、株式会社神戸製鋼所外26会社及び呉市に鉄くず等34,090屯を左のとおり随意契約により価格357,075,973円で売り渡している。
財務局 | 所在地 (口座名) |
売渡先 | 売渡年月日 | 数量 | 売渡価格 | 単価 | 契約直後の統制額 | 統制解除当時の市場価格 | |||||||
年 | 月 | 日 | 屯 | 円 | 円 | 円 | 円 | ||||||||
近畿 | 大阪市 (元大阪陸軍造兵廠) |
株式会社神戸製鋼所 | 26 | 2 | 7 | 4,000 | 28,160,000 | 銑 | 8,700 | 銑 | 14,000 | ||||
鋼 | 5,800 | 鋼 | 12,000 | ||||||||||||
同 | 同 | 同 | 〃 | 3 | 31 | 5,000 | 55,350,000 | 銑 | 14,000 | 銑 | 24,000 | ||||
鋼 | 12,000 | 鋼 | 23,000 | ||||||||||||
中国 | 呉市、光市 (元呉、光両海軍工廠) |
八幡製鉄株式会社 | 〃 | 2 | 7 | 1,196 | 7,639,616 | 銑 | 8,700 | 銑 | 14,000 | ||||
鋼 | 4,000 | から | 鋼 | 12,000 | |||||||||||
6,380 | まで | ||||||||||||||
中国 | 呉市、光市、徳山市 (元呉、光両海軍工廠及び元第三海軍燃料廠) |
八幡製鉄株式会社外19会社及び呉市 | 26 | 3 | 31 | 3,694 | 39,824,157 | 銑 | 11,500 | から | 銑 | 20,000 | から | ||
14,000 | まで | 24,000 | まで | ||||||||||||
鋼 | 8,200 | から | 鋼 | 21,000 | から | ||||||||||
12,000 | まで | 23,000 | まで | ||||||||||||
同 | 呉市 (元呉海軍工廠、元第十一海軍航空廠) |
八幡製鉄株式会社外5会社 | 〃 | 〃 | 〃 | 14,300 | 157,709,400 | 同 | 同 | ||||||
同 | 同 | 日亜製鋼株式会社外4会社 | 〃 | 4 | 19 | 5,900 | 68,392,800 | 同 | 同 | ||||||
計 | 34,090 | 357,075,973 |
右のうち、2月7日に売り渡した5,196屯は25年12月改訂の統制額を適用しているが、本件売渡直後の2月9日に大幅の値上げが行われた状況であり、又、3月31日に売り渡した22,994屯についても既に4月1日から鉄くずの価格統制が解除され市場価格による処分が可能となるのに統制額の値上げ又は解除の前日に急ぎ売渡処分したのはその処置当を得ない。
又、4月19日に売り渡した5,900屯については、当時既に統制額はなかつたのに著しく低価な旧統制額を適用して売り渡したものである。
右に関し、当局者は当時の鉄くずの不足に対処して早急に処分することとし、契約に先だち破砕、集積等の作業を実施させたものもあり、契約内容については早期に交渉を終了していたが正式の事務手続が遅延したものであるというが、たとえそのような事情があつたとしても、統制額の改訂又は統制解除も必至だつたのであるから、本件のように契約締結後解体に着手し、長期間にわたつで搬出するものについては、引渡時期によつて売渡価格を更改することを契約条件とするなど適宜の処置を講ずべきであつたと認められる。
いま、本件を26年2月改訂の統制額及び4月当時の市場価格により売り渡したとすれば6億8050余万円となり、本件売渡価格はこれに比べ3億2千3百余万円低価に当る状況である。
(150)
中国財務局で、昭和25年1月川崎重工業株式会社に呉市所在元呉海軍工廠及び第十一海軍航空廠の鉄くず等7,500屯を随意契約により価格13,472,794円で売り渡している。
右は、1月7日契約を締結したものであるが、搬出作業は3月8日に開始され、売渡代金の納入も同月20日にされている状況であり、統制額の改訂も間近と予想される1月7日に急ぎ売渡契約を締結する必要はなかつたものと認められる。
本件については、関係職員が買受人から収賄し、統制額が25年1月中旬ごろ値上げされることを予想し、その以前に急ぎ売渡契約を締結するよう処置したものとして起訴されている。
いま、本件を25年1月改訂の統制額を適用して売り渡したとすれば2680余万円となり、これに比べ本件売渡価格は1330余万円低価に当る状況である。
(151)
北九州財務局で、昭和25年8月27日及び28日、八幡製鉄株式会社に大村市所在元第二十一海軍航空廠外1箇所の鉄くず等2,795屯を随意契約により価格11,155,438円で売り渡している。
右は、25年1月に改訂された鉄くずの統制額によつて売渡価格を決定しているが、本件売渡の決議は8月31日又は9月15日であるから8月30日に改訂された統制額を適用すべきであるのに、旧統制額により著しく低価に処分したのはその処置当を得ない。
いま、本件を8月30日の改訂統制額により売り渡したとすれば1427万余円となり、これに比べ本件は312万余円低価に当る状況である。
(2) 統制額の適用が妥当でなかつたもの
(152)
中国財務局で、昭和24年9月日本製鉄株式会社に呉市所在元呉海軍工廠外1箇所の鉄くず等19,445屯を随意契約により価格31,733,073円で売り渡し、25年8月に至り数量を24,358屯価格を33,068,005円として契約を更改し、差額1,334,932円を追徴したものがある。
右は、23年6月当時の統制額、鋼くず1級品屯当り2,100円等を適用して売渡価格を決定し、搬出超過数量4,913屯に対し数量についてだけ契約を更改し単価は当初契約のままとしたものである。しかし、本件の搬出は契約後一年余にわたつているものであり、25年1月統制額改訂後に搬出されたものは9,796屯に上つており、少くとも右超過数量4,913屯については搬出当時の統制額を適用して契約価格を更改すべきものと認められ、総額において1173万余円低価に売り渡す結果となつているのはその処置当を得ない。
(153)
同局で、昭和25年8月株式会社播磨造船所呉船渠に鉄くず1,644屯を随意契約により価格2,674,000円で売り渡している。
右は、同会社が施行した元航空母艦阿蘇外5隻の解撤作業から発生した資材のうち放置されていたものを同年7月同会社の買受申込により売り渡したもので、売渡当時の統制額を適用すべきであるのに、著しく低価な23年6月当時の統制額を適用したのはその処置当を得ない。
いま仮に、売渡当時の統制額を基準として価格を計算するときは431万余円となり、これに比べ本件は164万余円低価に当る状況である。
(3) 諸経費を多額に控除したもの
(154)
関東財務局で、昭和26年2月太陽産業株式会社に元東京第一陸軍造兵廠十條工場所在の銅、鉛、鉄のくず等を随意契約により売り渡し、実数量60屯に対し価格664,063円で精算したものがある。
右のうち、銅及び鉛のくず10屯869価格437,250円は地下ケーブルを発掘の上解体して発生するものであるが、その諸経費を見ると屯当り発掘費80,757円、整地費20,160円、解体費7,000円、その他445円計108,362円で経費総額1,177,786円を物件の価格から控除している。しかし、同局で別途に25年8月産業復興公団に売り渡した横須賀海軍軍需部外1箇所所在の同種品の発掘整地等の作業経費(解体費を含まない。)は屯当り9,045円又は9,129円で、この種作業の経費はおおむねこの程度と認められ、本件が解体費を含むとしてもこれを屯当り108,362円とし、ひいて売渡価格を著しく低価としたのはその処置当を得ない。
いま仮に、前記売渡実例の作業経費屯当り16,100円(本件の解体費7,000円を含む。)により計算すれば本件ケーブルの作業経費は174,990円で足り、売渡価格は100万2千余円低価となつている状況である。
(155)
同局横浜財務部で、昭和25年7月東都製鋼株式会社に横浜市所在元海軍艦政本部の鉄くず、砲金くず等492屯を随意契約により価格871,967円で売り渡している。
右のうち、鉄くず類の価格547,422円は売渡当時における統制額屯当り鋼くず1級品3,000円、上銑くず5,600円を適用した総額2,069,179円から切断、破砕等の諸経費として屯当り鋼くず分2,917円、銑くず分3,388円総額1,521,757円を控除したものであるが、当時大蔵省が各財務局に指示した経費は鋼くず分1,320円、銑くず分770円で、買受人の提出した見積も1,900円及び1,719円であるのに、前記のように著しく多額の諸経費を控除し、鋼くずを屯当り82円、銑くずを2,211円で処分したため、大蔵省の経費基準により算定した場合に比べ総額において1,015,270円低価に当つているのはその処置当を得ない。
又、本件のうち砲金くず等非鉄金属9屯326価格324,545円は一律に屯当り35,000円で算定しているが、売渡当時の市場価格は屯当り砲金くず82,000円、銅くず102,000円、青銅くず71,000円程度で、これを基準とし破砕費等を控除して計算すれば総額79万3千余円となり、これに比べ本件は46万8千余円低価に当つている。
(156)
同部で、昭和25年12月東都製鋼株式会社に横浜市所在元第一海軍技術廠支廠の鉄くず等を随意契約により売り渡し、26年3月精算の結果、鉄くず548屯その他をあわせ代価6,145,165円に対し処理費4,746,216円を控除し差額1,398,949円を徴収したものがある。
右は、当初構内の主として屋内に散在する物件について契約し、次いで歳入増加を図るためと称して、鉄くず等が埋没している屋外の灰山くずを追加したものであるが、9月及び11月本院会計実地検査の際調査したところ、右は、灰山くずの処理費を過大に見積り、結局精算額を著しく減少させたもので、破砕、積込、整地等に要する経費を屯当り4.7人1,242円及び1,312円総額3,381,354円としている。しかし、作業工事日報によれば人夫賃は屯当り1.5人507円及び535円で足り、人夫賃の経費総額1,380,625円となり、これに灰山くずを構内に敷きならすため使用した自動車の借料140台分約65万円を加算すると本件処理費は約203万円をもつて足りるものと認められるのに、前記のように多額の経費を見積り約135万円低価に処分したのはその処置当を得ない。
(4) 地下ケーブルの売渡価格低価に失したもの
(157)
東海財務局で、昭和26年2月音羽電機株式会社に元豊川海軍工廠所在の銅くず21屯049、鉛くず19屯239を随意契約により4,398,817円で売り渡している。
右は、工廠構内から発掘した地下ケーブルの構成素材であつて、契約前の25年11月既に会社が撤去したものであるとして、同月の市場価格屯当り銅くず180,000円、故鉛110,000円により総額5,905,110円と評定し、これから撤去費、素材回収費等として508,146円、運賃、利益等として998,147円計1,506,293円を控除して前記価格で売り渡したものである。しかし、大蔵省ではこの種の埋設工作物については運賃は買受人の負担とする方針でこれを各財務局に指示し、現に、同財務局で同年7月本件と同一構内に埋設されていた地下ケーブルを他の業者に売り渡したものを見ると撤去費、素材回収費等を控除したに過ぎず、その他の財務局においても同一の取扱によつているのに、本件に限り更に運賃、利益等と称して前記多額を控除し、結局99万余円低価に売り渡したのはその処置当を得ない。
本件については、関係職員が買受人から収賄し、売渡に関し便宜を供したものとして起訴されている。
(5) 契約数量超過分の代金徴収を怠つたもの
(158)
同局で、昭和26年2月から4月までの間に、中日本興業株式会社外6会社に元名古屋陸軍造兵廠高蔵製造所外3箇所の銅線くず、鉄くず等推定数量182屯を随意契約により5,066,700円で売り渡している。
本件売渡物件は、広大な地域に散在し正確な数量をあらかじめ調査することが困難なため、一応推定数量により契約し、搬出実数量がこれを超過する場合はこれに相当する代金を追徴することとしたものであるが、4月本院会計実地検査の際調査するに、搬出数量は正規の記帳がなく確認もできない状況で、作業現場の手控などによつて集計すると、推定数量に比べ261屯余超過するので注意したところ、6月右超過数量に対する代金5,066,415円を追加徴収した。
(6) 契約数量をこえて鉄くず等を搬出したもの
(159) 近畿、東海両財務局で、昭和25年12月ごろから26年5月ごろまでの間に、鉄くず等売渡物件の搬出に当り関係職員が買受人から収賄し共謀の上契約数量を超過して引き渡したものとして起訴されたものが、左のとおり計17,479,976円ある。
財務局 | 所在地 (口座名) |
区分 | 数量 | 価格 | 搬出期間 | 関係職員 | 買受人 | ||
屯 | 円 | 年 | 月 | ||||||
近畿 | 枚方市 (元大阪陸軍造兵廠枚方製造所) |
鉄くず | 43.510 | 870,200 | 26 | 4 | から | 雇 山田某 | 株式会社豊田鋼管製造所 |
〃 | 5 | まで | |||||||
東海 | 名古屋市 (元名古屋陸軍造兵廠千種製造所) |
鋳鉄管等 | 40.134 | 2,119,075 | 26 | 4 | ごろから | 同 小島某 | 太陽工業株式会社 |
〃 | 5 | ごろまで | |||||||
同 | 同 | ケーブルくず | 27.820 | 5,146,700 | 26 | 4 | ごろから | 大蔵事務官 奥村某外1名 |
丸繁産業株式会社 |
〃 | 5 | まで | |||||||
同 | 同 | 鉄くず | 291.800 | 3,945,136 | 26 | 3 | から | 大蔵事務官 竹内某外2名 |
中京金属株式会社 |
〃 | 4 | まで | |||||||
同 | 同 | ケーブルくず | 9.808 | 1,505,171 | 26 | 2 | から | 同 奥村某外1名 |
日豊冶金工業株式会社 |
鉄くず | 88.418 | 2,106,194 | 〃 | 5 | まで | ||||
同 | 春日井市 (元名古屋陸軍造兵廠鷹来製造所) |
鉄くず | 50.000 | 617,500 | 26 | 2 | ごろ | 大蔵技官 鬼頭某外2名 |
中京金属株式会社 |
同 | 豊川市 (元豊川海軍工廠) |
ケーブルくず | 11.000 | 1,170,000 | 25 | 12 | ごろから | 大蔵事務官 船川某外4名 |
音羽電機株式会社 |
26 | 3 | まで | |||||||
計 | 562.490 | 17,479,976 |