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  • 昭和25年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第4節 各所管別の不当事項及び是正事項|
  • 第7 農林省|
  • 不当事項|
  • (一般会計)|
  • 工事

補助金の交付に当り処置当を得ないもの


(588)−(594) 補助金の交付に当り処置当を得ないもの

(部)公共事業費 (款)一般公共事業費 (項)土地改良事業費

(588)  農林省で、昭和25年5月から26年2月までの間に、北海道に対し江別町農業協同組合外10組合の施行する軌道客土事業費補助金(補助率6割)として39,041,400円を支出したものがある。
 右工事は、65,069,000円をもつて江別町江別太外15地区66町歩の軌道客土を施行するものであつて、その設計書によると3,674,500円をもつて客土のために敷設する軌道延長16,122間の道床盛土(天端幅6尺、敷幅7尺2、厚さ平均1尺2)を施行することとしているが、26年9月本院において江別太外4地区の実地を検査したところ、土取場からの軌道運搬について特に道床盛土の施行を要するような地形ではなく、又、これを施行した形跡が認められなかつた状況であり、その他の地区についてもほとんどこれを施行しなかつたものと認められるのに、精査もしないで道床盛土工事に対する補助金相当額2,204,700円を全額交付したのは当を得ない

(部)公共事業費 (款)災害復旧公共事業費 (項)農業施設災害復旧事業費

(589)  農林省及び北海道で、昭和23年7月から26年1月までの間に、忠別川水温上昇施設東川第1遊水池災害復旧工事費補助金(補助率6割5分)として、東和土功組合に対し22,442,485円(うち24年度以前の分8,034,354円)を支出したものがある。
 右工事は、22年水害により決壊した同施設を復旧するため、23年度以降総工費34,530,718円をもつて築堤41,395立米及び附帯工事を施行することとし、24年度までに12,363,985円、25年度において22,166,733円をもつて26年3月工事を完成したこととなつており、国は申請設計による前記総工費を基本として補助金を交付したものである。
 本件工事の主体である盛土は、申請設計によると往復2キロメートル1から4キロメートル程度へだたつている土取場で採土の上馬車運搬することとし、馬車賃10,545,525円(立米当り212円50から323円)を積算し、又、採土から仕上までの人夫賃を立米当り歩掛23年度1人、24年度1人又は1人13,25年度1人23として総額10,455,263円(立米当り140円から289円05)を積算しているが、26年9月本院会計実地検査の際調査したところ、実際の土取場は一部往復3キロメートル1程度の距離にあるものの外は0.5キロメートルから1キロメートル2程度の距離にあり、又、各年度の盛土工事はほとんど同様の工程であつて、その間の歩掛に差等を付する理由がなく、申請設計は馬車賃及び人夫賃だけでも相当過大な積算となつているのに、これをそのまま容認して補助金を交付したのは当を得ない。現に、前記土功組合は馬車賃を6,863,227円、人夫賃を8,592,765円、総工費を26,972,096円とした実施設計をたて、株式会社田中組に請け負わせ24,596,500円をもつて工事を完成している状況であるから、これに対する補助金は15,987,725円で足り、6,454,760円が補助超過となつている。

(590)  熊本農地事務局で、昭和24年10月から26年3月までの間に、島原市に対し22年水害復旧事業費補助金(補助率6割5分)として7,520,355円(うち24年度分5,691,335円)を交付したものがある。
 右工事は、22年の水害により長浜堤とう527米が決壊したため、同市が事業主体となり工事費11,570,530円で復旧したものであるが、26年2月本院においてその実地を検査したところ、堤とうの根固護岸復旧などを施行した外、更に堤とうの天端に幅2米50、延長523米のコンクリートほ装工事を施行していて、被災前なかつた堤とうの天端にコンクリートほ装を施工したのは原形復旧の程度をこえたものである、したがつて、右ほ装工事を災害復旧事業とし、その工事費554,380円を補助基本額に算入して補助金を交付したのは当を得ない。

(591)  宮城県で、昭和26年4月公共団体である県に対し、同県柴田郡槻木町外3町2箇村災害復旧事業費補助金(補助率6割5分)として3,347,500円を交付したものがある。
 右工事は、宮城県が槻木町外3町2箇村大規模かんがい排水事業として23、24両年度に完成した白石川左岸堤防沿いの開きよ用水路のうち延長150米(測点51から59まで)が、25年8月の台風に伴う同川の増水により地下水のゆう水はなはだしく、開きよの石積護岸が倒壊し堤防の法面土砂が崩壊したので、これを工事費5,150,000円をもつて暗きよに復旧するものであるが、開きよ用水路を砂質土の堤防に接近して新設すれば、河川の水位が上昇した場合当然その浸透によるゆう水のおそれがあることは明らかであるから、堤防法尻に平場を設けて裏込を十分にし空石張として施行するかあるいは暗きよとすべきものであるのに、堤防法尻に開きよ用水路を施設したため石積護岸が倒壊するに至つたもので、明らかに設計の不備に基くものと認められ、これを災害復旧事業として補助金を交付したのは当を得ない。

(592)  高知県で、昭和26年4月同県幡多郡小筑紫町耕地事業組合に対し21年震害耕地復旧事業費補助金として648,550円を交付したものがある。
 右は、前記組合が事業主体となり、工事費2,263,000円で南海震災により荒廃した耕地7町3反を復旧する工事に対する補助金(補助率8割5分)1,923,550円のうちであつて、岡山農地事務局が25年11月1,275,000円を交付したものの残額を県が国の委任により交付したものであるが、26年5月本院においてその実地を検査したところ、客土計画量43,031立米に対し約1万8,000立米を施工しているに過ぎなかつたばかりでなく、本件工事は当初計画が過大で、実際は約28,000立米の客土(工事費約150万円、補助全約127万5,000円)を施工すれば足りたものであるのに、これらの事情を考慮することなく前記補助金648,550円を交付したのは当を得ない。

(部)公共事業費 (款)昭和25年発生災害復旧事業費 (項)昭和25年発生災害復旧事業費

(593)  同県で、昭和26年4月同県吾川郡秋山村新川川耕地整理組合に対し25年耕地災害復旧事業費補助金(補助率6割5分)として1,573,000円を交付したものがある。
 右工事は、25年9月の台風、高潮波により甲殿川河口の農業用施設が災害を受けたため、右組合が事業主体となり、工事費2,420,000円で河口導流堤の復旧、汐止樋門門扉の修理、汐止樋門下流のしゆんせつ及び汐止樋門下流左岸護岸の新設等を施行したものであるが、26年5月本院においてその実地を検査したところ、右のうち、護岸工事は従前護岸施設のなかつた樋門下流の左岸230米に土砂流入防止のための護岸を新設したものである。したがつて、右護岸新設工事を災害復旧事業とし、その工事費1,226,732円の全額を補助基本額として補助金を交付したのは当を得ない。

(部)公共事業費 (款)災害復旧公共事業費 (項)漁港災害復旧事業費

(594)  農林省及び愛媛県で、昭和25年8月から26年4月までの間に、同県伊予郡下灘村に対し豊田漁港施設災害復旧事業費補助金(全額補助)として4,400,000円を交付したものがある。
 右工事は、21年南海震災により豊田漁港の舟ひき場が沈下流失し、漁船のけい留出漁に支障をきたしたため、下灘村が事業主体となり総工費12,100,000円で舟ひき場の一部1,080平米を石張で復旧し、沈下した防砂堤の一部をかさ上げする外、新たに延長82米の防波堤を築造するものであるが、26年5月本院においてその実地を検査したところ、本港の原形は延長24米の防砂堤2基が約100米をへだてて存し、この2基により保護されていた砂だまりを舟ひき場として利用していたに過ぎなかつたものであつて、旧防砂堤に接続して防波堤を築造するのは災害にかかつた漁港の施設を原形に復旧するものとは認められず、旧施設を原形に復旧することが著しく困難なためこれに代るべき必要な施設をするものとも認められない。したがつて、前記防波堤築造工事を災害復旧事業とし、その25年度工事費4,381,398円を全額国庫負担としたのは妥当でない。