(部)公共事業費(款)一般公共事業費(項)港湾事業費外1科目
運輸省が、地方公共団体の施行する港湾の災害復旧工事又は修築工事に対する国庫負担金あるいは国庫補助金の交付について、工事の査定に当り審査不十分であつたもの、又、運輸省の査定後事情変更により工事効果が達せられなくなつたことを知りながら、県が国の機関としての処置に不十分であつた事例が次のとおりある。
(658)
岩手県田老町が、国の機関としての同県から昭和25年度中に、事業費3,328,000円の全額国庫負担金の交付を受けて、田老港23年災害復旧工事を施行したものがある。
右工事は、総工費16,341,500円をもつて同港のしゆんせつをする計画のもとに運輸省の査定により25年度分として21,520平米の水域について水深マイナス1米、土量14,361立米分を実施したもので、25年4月着工、26年3月しゆん功したものとされている。
しかるに、8月本院会計実地検査の際においては、右のしゆんせつ区域はその大半は埋没しているばかりでなく、25年4月ごろ立案され10月から施行された農林省所管の田老漁港修築による導流堤の構築のため、その漁港の外側となり使用されておらず、しゆんせつの効果を達成していない状況である。
右は、同一区域内において運輸省所管の災害復旧工事と農林省所管の修築工事とがそれぞれ無関係に実施されたことに因るもので、このような場合国の機関としての県は運輸省所管の災害復旧工事についてはすみやかに中止の処置をとるべきものであつたと認められる。
(659)
公共団体である徳島県が、昭和25年度中に、事業費8,638,000円の全額国庫負担金の交付を受け、24年災害小松島港防砂導流堤及びしゆんせつ工事を施行したものがある。
右工事は、総工費27,693,500円をもつて赤石航路の防砂堤の復旧と同航路筋600米について航路幅25米水深マイナス2米、土量31,130立米のしゆんせつをする計画のもとに運輸省の査定によりその一部の工事を25年度分として実施したものである。
しかし、しゆんせつ区域は既に24年12月から第三港湾建設部において、国費をもつて維持補修工事として、同航路を港口から500米にわたり航路幅20米、水深マイナス2米、土量10,000立米を直営でしゆんせつし、更に25年度においても、前年度に引き続き航路及び物揚場前面延長810米にわたり、土量13,000立米のしゆんせつを実施し、これにより当面の需要を満たすことができるものとしているのであるから、県の計画したしゆんせつ工事については、たとえ航路の拡幅の部分はあつたとしても運輸省は本件を災害復旧工事の対象とする必要はなかつたものである。
なお、本件災害復旧計画のうち航路しゆんせつ工事は26年度以降本院の注意によりこれを中止することとなつた。
(660)
公共団体である徳島県が、昭和25年度中に、事業費6,000,000円に対し国庫補助金1,200,000円の交付を受け橘港維持補修工事を施行したものがある。
右工事は、同港東中浜地先を水深マイナス3米、土量25,000立米をしゆんせつする計画で運輸省の査定を受け実施したものである。
しかし、同港における船舶の港湾利用状況を見ると、本件しゆんせつは必要がないもので、結局右しゆんせつ目的はその土量をもつて東中浜地先の廃塩田地域の一部を埋め立てることが主眼となつているもので、このような工事を補助の対象とするのは当を得ない。