公団は、昭和26年4月1日までに15公団の全部が解散され、現在肥料配給外6公団を除いて清算を結了している。
15公団の設立以来25年度までの損益を通算すると、決算上の剰余金は325億7千9百余万円であるが、国庫交付金242億5千7百余万円を差し引き、純剰余金は83億2千1百余万円である。
右のうち、純剰余金のおもなものは肥料配給公団の25億1千2百余万円、繊維貿易公団の28億2千余万円、食糧配給公団の17億8千8百余万円、価格調整公団の15億7千8百余万円、船舶公団の7億8千余万円、食料品配給公団の7億6千5百余万円であり、又、純損失のおもなものは配炭公団の36億8百余万円、石油配給公団の10億6千9百余万円である。
各公団の解散時における商品手持高は、671億7千4百余万円であつたが、26年3月末現在では油糧砂糖配給外5公団分254億3千1百余万円となつている。
各公団の解散時における売掛金その他債権は582億8千9百余万円であつたが、26年3月末現在では199億44百余万円となつている。
又、公団の経理については、職員の不正行為に因り公団に損害を与えたもの、資金をほしいままに他に流用したもの、正規の手続を経ないで商品を売り渡しその代金回収が著しく遅延しているものなどが次のとおり多い。
価格調整公団で、昭和23年11月無機化学部ソーダ課参事伴某により、価格差補給金の関係書類を不正に作製して、公団資金をほしいままに領得されたものが755,823円ある。
食糧配給公団で、代位配給所が売り渡した商品代金の回収について処置当を得ないものが次のとおりある。
(1056) 秋田県支局横手外4支所の沼館町今宿外10代位配給所が、昭和24年度中に主要食糧の売渡代金の送金に当り、いずれも売上高を少く計理し過少に送金していたのに、各支所はその調査を適確に行わなかつたものであり、又、横手支所及び本荘支所にあつては、沼館町今宿代位配給所又は下川大内村代位配給所が売上代金を流用している事実を承知しながら支局に報告しなかつたため、支局も早期にこれを発見することができず、結局25年1月から8月までの間において各配給所の未送金額が合計7,846,935円に上り、うち5,448,343円は26年8月末現在まだ回収されていない。
(1057) 茨城県支局行方支所の立花委託配給所井野場某が、同配給所の主要食糧の売渡代金の送金に当り、売上高を少く計理し過少に送金していたのに、その調査を適確に行わなかつたため、昭和24年1月ごろから26年3月までの間に商品代金1,061,276円を同人の生活費等に流用されるに至り、うち1,010,000円は26年10月末現在まだ回収されていない。
(1058) 栃木県支局上都賀支所の代位配給所栗山村農業協同組合が、主要食糧の売渡代金の送金に当り、売上高を少く計理し過少に送金していたのに、その調査が適確でなかつたため、昭和25年6月5日現在において3,536,729円に達する商品代金を同組合のために流用され、結局回収不能となつた979,045円を25事業年度の雑損に計上したものがある。
(1059) 高知県支局芸東外11支所の下川口外37委託配給所が、主要食糧の売渡代金の送金に当り提出する配給旬報について、当該支所が送金額の適否を調査することなく各配給所の送金額をそのまま受入計理していたため、前記各配給所が売渡代金の一部を農業協同組合の事業資金に流用などしていたことを発見することができず、結局昭和26年3月末現在において配給所の未送金額が34,782,869円に上り、うち15,196,144円は26年10月10日現在まだ回収されていない。
(1060) 熊本県支局小島支所の上松尾、無田口両代位配給所が、主要食糧について虚偽の売上報告をし、昭和25年1月以降おおむね1箇月分の売上高をこえる未送金があつたのに同支局では早期にこれを発見することができず、25年8月末現在において未送金額が上松尾分650,445円、無田口分605,747円となり、うち前者602,000円、後者562,999円が26年10月末現在まだ回収されていない。
(1061) 商品の販売処置当を得ないため代金の回収に至らないもの
食糧配給公団藷類澱粉近畿支局澱粉部で、宇治化学工業株式会社に対し商品を販売するに当り、代金を受領することなく商品を荷渡ししたため、昭和25年7月までの売掛金10,547,140円が回収困難となつたものがある。
右商品の販売に当つては、24年12月以降は法律の規定により代金受領後荷渡しすべきであり、もし代金延納の特約をしようとするときは確実な担保を提供させるべきであつたにもかかわらず、24事業年度の11月以降毎月末最低400万円程度の売掛金を存しているのに、25年5月十分な調査もしないで担保価値に乏しい物件(精通者の評価約400万円で、先順位の抵当権が設定されている。)に対し10,000,000円の根抵当を設定し、25事業年度においても依然として掛売を続行したため、前記のように売掛金を増大させたもので、前記売掛金残高は26年10月末に至るもまだ回収されていない。
食糧配給公団藷類澱粉東海支局澱粉部で、北陸通商株式会社に保管させていたでん粉を、同局石川県事務所澱粉課長樫本某がほしいままに同会社に売渡を一任し、同会社が昭和25年4月から9月までの間に105,344貫、19,873,973円を掛売したため滞貸となり、うち16,182,929円は26年10月末に至るもまだ回収されていない。
食糧配給公団包装資材神戸支局で、計算係長橘川某が、昭和24年12月神戸信用組合主計課長金崎某の請託をいれ、第一銀行兵庫支店に預金していた公団資金2,378,689円をほしいままに同組合に一時預入し、金崎某に預金通帳等を保管させたため、同人によりこれを不正に使用されるに至つたものがある。
なお、右のうち1,966,444円は26年10月末現在まだ回収されていない。
食糧配給公団で、昭和23年4月から26年4月までの間に、関係職員により商品代金等をほしいままに領得されたものが、左のとおり19件計41,666,660円(うち26年10月末現在補てんされた額10,937,410円)ある。
所名 | 関係職員 | 不正行為期間 | 不正行為金額 | |
年 月 | 円 | |||
(1064) | 食糧配給公団 北海道支局 |
石狩支所 支所長 細野某外3名 |
23、 6から 26、 3まで |
6,142,820 |
(1065) | 〃 福島県支局 |
勿来支所 主事 平山某外3名 |
25、 9から 26、 3まで |
4,371,179 |
(1066) | 〃 群馬県支局 |
安中支所 参事 須藤某 |
26、 1から 〃 3まで |
1,750,006 |
(1067) | 〃 千葉県支局 |
成田支所遠山村配給所 主事 早川某 |
23、12から 25、 6まで |
462,731 |
(1068) | 〃 東京都支局 |
向島支所隅田4丁目配給所 主事 鈴木某外1名 |
25、 5から 〃 9まで |
875,993 |
(1069) | 〃 新潟県支局 |
高田支所矢代配給所 主事補 小島某 |
24、12から 25、 4まで |
850,000 |
(1070) | 〃 三重県支局 |
鵜方支所 主事 柴原某外1名 |
25、10から 26、 3まで |
1,248,227 |
(1071) | 〃 大阪府支局 |
東支所 主事 高橋某外2名 |
23、 6から 26、 3まで |
4,885,110 |
(1072) | 〃 兵庫県支局 |
伊丹市所森西配給所 主事補 池永某 |
25、 6から 〃 9まで |
569,222 |
(1073) | 〃 和歌山県支局 |
海草支所 主事 鳴神某 |
24、10から 26、 4まで |
657,142 |
(1074) | 〃 山口県支局 |
宇部支所 参事 末富某外6名 |
23、10から 25、11まで |
4,524,026 |
(1075) | 〃 香川県支局 |
平井支所十河配給所 主事補 黒川某 |
24、12から 25、 6まで |
146,337 |
(1076) | 〃 愛媛県支局 |
業務部加工課 主事 末広某外1名 |
24、 9から 25、10まで |
662,377 |
(1077) | 〃 高知県支局 |
芸西支所井ノ口配給所 主事補 松本某 |
25、 1から 〃 10まで |
559,000 |
(1078) | 〃 福岡県支局 |
経理部会計課 参事 田中某外2名 |
24、12から 25、12まで |
9,314,413 |
(1079) | 〃 長崎県支局 |
佐世保北部支所 参事 御厨某 |
24、 6から 25、 8まで |
225,000 |
(1080) | 〃 熊本県支局 |
八代支所宮地配給所 主事補 要名本某 |
25、 6から 〃 7まで |
253,964 |
(1081) | 〃 宮崎県支局 |
本庄支所綾町第一配給所 主事補 坂元某 |
25、 6から 〃 10まで |
1,219,279 |
(1082) | 〃 藷類澱粉九州支局 |
藷類宮崎県事務所 所長 中村某外3名 |
24、 8から 25、 6まで |
2,949,830 |
計 | 41,666,660 |
肥料配給公団名古屋支部で、石川県支所金沢出張所職員山本某が富樫農業協同組合外7組合から容器保証金名義で詐取した139,987円を、昭和25年7月公団資金をもつて被害者に弁済し、同額を雑損として決算したものがある。
肥料配給公団で、昭和23年8月から26年4月までの間に、関係職員により商品代金等をほしいままに領得されたものが、左のとおり5件計21,142,153円(うち26年10月末現在補てんされた額7,121,259円)ある。
所名 | 関係職員 | 不正行為期間 | 不正行為金額 | |
年 月 | 円 | |||
(1084) | 肥料配給公団 札幌支部 |
旭川支所留萌出張所 所長 相内某 |
23、 8から 25、6ごろまで |
740,733 |
(1085) | 〃 東京支部 |
埼玉県支所羽生出張所 主事補 柿沼某外1名 |
23、11から 26、 4まで |
3,898,677 |
(1086) | 〃 名古屋支部 |
岐阜県支所 主事 尾関某外1名 |
24、1から 26、3まで |
10,752,125 |
(1087) | 〃 |
高知県支所西佐川出張所 所長 刈谷某 |
24、 7から 25、 7まで |
783,097 |
(1088) | 〃 門司支部 |
熊本県支所 支所長 内田某外1名 |
24、10から 25、 7まで |
4,967,520 |
計
|
21,142,153 |
食料品配給公団清算事務所で、昭和25年4月から8月までの間に、関係職員により商品代金等をほしいままに領得されたものが、左のとおり2件計1,066,636円ある。
所名 | 関係職員 | 不正行為期間 | 不正行為金額 | |
年 月 | 円 | |||
(1089) | 食料品配給公団清算事務所 北海道支部 |
計算課長 新舎某 |
25、 4から 〃 8まで |
176,715 |
(1090) | 〃 福岡支部 |
味噌部経理課長 行武某 |
25、5 | 889,920 |
計 | 1,066,636 |
油糧砂糖配給公団砂糖西部支部で、昭和26年3月福岡県砂糖卸協同組合外3組合に対し、砂糖の売渡に当り所定の担保もとらないで470,855,145円を荷渡ししたものがあり、右代金のうち133,415,753円は8月本院会計実地検査当時なお未回収となつていたので、すみやかに回収するよう注意したところ、10月末までに53,250,524円回収されたが、なお80,165,229円は未回収である。
油糧砂糖配給公団油糧関西支部で、昭和26年10月末現在13,543,748円を未収金として計上しているものがある。
右は、同支部高知県事務所長森田某が、土佐倉庫株式会社に寄託中の落花生油57,431瓩488外3点を、同支部の出荷指図書もないのに、ほしいままに土佐油糧商業協同組合外6名に25年4月から7月までの間に、13,814,704円で売り渡し、その代金を受領しながら、これを同支部に送金せず逃亡したため生じたものである。
(1093)
油糧砂糖配給公団油糧関西支部で、昭和24年4月株式会社前田製油所に対し、架空の精製魚油新旧価格差金の名義により、1,726,613円を支払つたこととし、うち700,000円を5月から25年3月までの間に決算事務の残業諸費用等に使用し、残りの1,026,613円は同会社に保管させていたものである。
なお、右1,026,613円は本院の注意により26年6月回収された。
(1094)
同油糧九州支部で、昭和24年1月から25年4月までの間に、同支部長崎県支所長鈴木某により商品代金等合計1,277,913円を不正に使用されたものがある。
右は、同支部の売り渡した脱脂大豆外4点の代金1,161,713円及び出荷指図書もないのにほしいままに販売した大豆油の代金等116,200円を同人がほしいままに菜種増産奨励関係経費として約60万円、個人に対する立替金として約30万円などに使用したものである。
なお、右金額のうち1,237,913円は26年10月末現在まだ回収されていない。
油糧砂糖配給公団で、昭和24年8月から26年6月までの間に、関係職員により商品代金等をほしいままに領得されたものが、左のとおり2件計8,088,496円(うち26年10月末現在補てんされた額26,036円)ある。
所名 | 関係職員 | 不正行為期間 | 不正行為金額 | |
年 月 | 円 | |||
(1095) | 油糧砂糖配給公団(本部) | 総務部人事課 主事 杉山某 |
25、12から 26、 6まで |
149,887 |
(1096) | 〃 油糧関西支部 |
経理課長代理 主事 谷崎某外1名 |
24、 8から 25、10まで |
7,938,609 |
計 | 8,088,496 |
産業復興公団で、昭和23年1月野村鉱業株式会社から水銀787本を買い取り同会社に保管を委託中、同会社により276本がほしいままに処分され、その損害額10,626,000円のうち6,911,450円は26年10月末現在まだ回収されていない。
配炭公団清算事務所で、昭和25年1月から26年2月までの間に、関係職員により商品代金等をほしいままに領得されたものが、左のとおり2件計901,199円(うち26年10月末現在補てんされた額106,949円)ある。
所名 | 関係職員 | 不正行為期間 | 不正行為金額 | |
年 月 | 円 | |||
(1098) | 配炭公団精算事務所 小樽支部 |
室蘭支所経理課 鍵谷某 |
25、 1から 〃 5まで |
747,240 |
(1099) | 〃 四国支部 |
回収課 山本某 |
25、12から 26、 2まで |
153,959 |
計 | 901,199 |
食糧配給公団の昭和25事業年度決算の整理について本院会計実地検査の結果不当と認め、これを是正させたものが次のとおりある。
(1) 宮城県支局で、26年1月に仕入れた玄小麦902俵を角田支所管内の館矢間農業協同組合製粉工場で製粉加工させ、1,826袋の製品ができたものであるのに、同支所がこれを1,526袋として報告したため、差引300袋価格262,800円が決算外となつていたのでこれを商品勘定に計上させた。
(2) 愛媛県支局で、翌事業年度である26年5月愛媛食糧株式会社外4名に対し主要食糧等を売り渡したものについて、25事業年度の売掛金に127,233,605円を計上していたのでこれを商品勘定に計上させた。
(3) 同支局で、未払経費に計上した退職手当3,831,873円は、26年3月31日現在在職中の職員全員に対する分であるからこれを取り消させた。
(4) 同支局で、諸経費に計上した170,000円は、仮差押に伴う供託金であるから差入保証金に計上させた。
鉱工品貿易公団機械鉱産部で、輸入物資の売渡に当り処置当を得ないものにつき、昭和26年2月本院会計実地検査の際注意して是正させたものが次のとおりある。
(1) 24年6月から25年3月までの間に輸入し日本軽金属株式会社外2会社に保管させていたボーキサイト鉱石115,867屯価額633,889,066円のうち、74,636屯価額464,732,386円は25年5月までに前記3会社に売り渡しながら7,336屯分38,007,206円については売渡代金の請求を怠つており、又、41,230屯価額169,156,679円は既に会社に使用されているのに売買契約も締結されていなかつたので注意したところ、26年9月までに右売渡代金207,163,885円及び延滞利息30,341,254円を徴収した。
(2) 24年11月に輸入し日本鋼管株式会社に保管させていた螢石482屯価額7,519,200円のうち、432屯価額6,739,200円は26年1月までに同会社に売り渡し、残量の50屯を欠減として処理していたが、右欠減相当量は会社が使用したものであつたので注意したところ、8月売買契約を結び粉末の混入量を考慮の上、価格を624,000円と定め9月右代金を徴収した。