(1) 一般会計
昭和27年においては公共事業費に重点をおいて会計検査を実施したが、農林省の直接使用した経費について、統計調査事務所で架空の調査手当等の名義により資金をねん出して食糧費等に使用したもの、農業水利、開墾、干拓の直轄事業所等で経理のびん乱しているもの、工事の計画又は施行が不良で工事費の増大をきたしたもの、地方公共団体に委託した工事費について監督又は検収が不十分のため設計に対し工事の出来高が不足しているものなどが別項に記載したとおり23件になつている。
又、地方公共団体に交付した国庫補助金及び国庫負担金については、別項に記載したとおり全国の工事現場4万2千9百余箇所の約6%を実地に検査したにとどまつたが、なお国庫補助金又は国庫負担金の減額を要するものが367工事1億3千3百余万円の多額に上つたのは遺憾である。
しかして、右のように補助工事につき多数の不当経理があるのは、主として次のような事由によるものと認められるが、なお補助金等を受けた団体等における遵法精神のかん養、道義のこう揚も望ましい。
〔1〕 地方公共団体等の財政がひつ迫している結果、地元負担の軽減を図るため、改良工事を予算の成立が容易な災害復旧に含めて高率の補助を受け、設計を過大に見込み又は粗漏な工事を行つて正当な自己負担を免かれようとする傾向がある。
〔2〕 工事費査定職員の不足により、実地について十分の審査が行われていない。特に災害復旧については工事件数が多いためこの傾向が著しい。
〔3〕 直接工事監督及び検収に当る地方公共団体の職員が不足しているなどのため監督及び検収がとかく名目的となり、粗漏工事、出来高不足の工事が少くなく、特に町村又は各種組合等が施行する工事についてこの事例が多い。
〔4〕請負業者の中には工事の手抜きをするものなどが見受けられ、その選択が十分でないと認められる。
(2) 食糧管理特別会計
昭和27年においては、売渡代金の徴収処置、原材料用及び配給不適食糧の売渡、外国食糧及び包装材料の買入、食糧の集荷、運送、保管等の管理費並びに現品の受払整理等に会計検査の重点をおき、食糧庁及び33食糧事務所についてはその実地を検査した結果、別項に記載したとおり、食糧の買入、売渡、運送及び保管等に関し処置当を得ないと認められるものが21件に上り、そのうち本院の注意により過払代金等の徴収処置をとつたものが5件ある。
なお、右の外、麦製品において26年度中配給不適食糧として売渡価格から平均45%程度値引して売り渡したものが1万3千2百余屯、その値引額4億1千6百余万円あり、年度末でなお1万5千余屯が在庫となつているが、これらは食糧事情の好転による配給辞退の事情があつたとしても、主として実際の需要度を上回つて加工、運送を実施したことに因るもので、今後このような事態の起らないよう一段の留意を要するものと認められる。
(3) 国有林野事業特別会計
本会計における売渡材は、大半を随意契約により処分しているので、本院においては努めて特売の圧縮を図るとともに、その予定価格の算定に当つては、十分に公売価格を参しやくすべきことを要望してきたが、本年もこれらの点を特に留意し、あわせて営林局署が施行する治山及び林道工事の経理に会計検査の重点をおき、林野庁管下の349営林局署中76局署については実地を検査したところ、素材の随意契約による処分は総処分量に対し61%に当り、前年度の77%に対し減少しているが、素材の売渡に当り市場価格の採用が適当でなかつたなどのため、予定価格が低きに過ぎひいて売渡価額が低価になつたものがあり、又、売渡に当り、正規の手続によらないで代金収納前に木材を先渡ししていたもの、売買契約締結前に買受希望者から概算で代金を受領し、一部を歳出金に流用していたものがあり、そのおもなものは別項に記載したとおり4件になつている。
又、各営林局署の施行にかかる治山及び林道工事1,280箇所事業費43億5百余万円(うち公共事業費支弁116箇所9億5千2百余万円)のうち、会計実地検査を施行した78箇所事業費6億5千8百余万円については、工事を直営によつて施行したものとして人夫賃の名義で支払に立てているが、その実、業者に請け負わせ、その代金の支払に充てているものなどが37箇所9千1百余万円に達し、なお、右実地検査施行箇所以外のもので、同様の事態につき林野庁から報告のあつたものが50箇所1億1千余万円あり、これを加えると総額2億2百余万円に及んでいる。このように事実に合致しない経理をすることは、事故を誘発する虞もあるので林野庁に注意したところ、同庁においては直ちに全管下に対しこの経理を改めさせる処置を講じた。