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  • 昭和26年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第4節 各所管別の不当事項及び是正事項|
  • 第7 農林省|
  • 不当事項|
  • (一般会計)|
  • 工事

直轄工事の経理がびん乱しているもの


(508)−(513) 直轄工事の経理がびん乱しているもの

 (部)公共事業費 (款)一般公共事業費 (項)開拓事業費

 農林省印旛沼手賀沼干拓建設事業所で施行した印旛沼及び手賀沼干拓事業の経理をみるに、直営工事において正規の経理をすることなく架空の人夫賃、材料購入費等の名義により支払に立て、又、離作補償金等を債権者に支払うことなく保留するなどの方法により6780余万円に上る多額の資金を保有してこれを工事請負代、労力費、材料費、用地補償費、雑工事費、接待費、諸手当等に使用し、又、請負工事において実際は必要のないしゆんせつ船の運搬費等を積算したり、機械しゆんせつが可能な箇所を人力掘さくで設計するなど工事の設計が放漫に流れているばかりでなく、その積算が過大に失するものなどがあり、又、ほしいままに工事請負人から寄附会を受領し、一方、工事用材料についても使用見込のないセメントを購入し硬化させたり、実在する物品の数量と帳簿残高との間に著しい過不足を生じているなど、その経理が著しくびん乱している。

(1) 架空の名義により支払つたもの

(508)  農林省印旛沼手賀沼干拓建設事業所で、昭和24年2月から26年10月までの間に、海面干拓仮土留柵外25工事の工事費から架空の人夫賃又は材料購入費等の名義により65,172,096円を支払に立て、これに東京農地事務局で26年3月から7月までの間に千葉県印旛郡阿蘇村風間某外177名に対する離作及び樹木伐採等の補償金として支出した2,414,517円及び工事請負人から寄附を受けた220,000円を合わせ67,806,613円を保有し、印旛承水路第5工区外14工事の請負代金に51,380,241円、直営工事の労力及び材料費に9,140,300円、用地補償費の補足として2,213,565円、雑工事費に1,920,422円、接待費に1,312,143円、職員諸手当に1,105,089円その他雑費に734,852円を使用している。
 なお、正当債権者に支払わなかつた前記補償金2,414,517円については、27年4月1,019,709円を、9月残額1,394,808円をそれぞれ再度支出し支払に充てている。

(2) 請負工事費に実際には必要のない運搬費等を積算したもの

(509)  農林省印旛沼手賀沼干拓建設事業所で、昭和26年12月、随意契約により三幸建設株式会社に5,534,000円で請け負わせた印旛疏水路幕張工区その二掘さく工事は、水路延長344米、土量19,365立米の掘さくを行うもので、当初これを全部人力によることとし、同会社は穂積建設株式会社に下請させて実施したところ、その後うち8,720立米に対してはサンドポンプを使用することに変更し、その実施設計にサンドポンプの東京、幕張間の運搬費及び現場組立試運転費として830,000円を積算したものであるが、本件工事は、25年度に穂積建設株式会社がサンドポンプにより施行した印旛疏水路幕張工区第1開さく上流部の継続工事であつて、引続き同会社が三幸建設株式会社の下請人として施行し、前年度に使用したサンドポンプをそのまま使用するものであるから、特に運搬費及び現場組立試運転費を積算する必要があつたと認められない。

(3) 機械掘さくで施行が可能な部分を高価な人力掘さくで設計したもの

(510)  農林省印旛沼手賀沼干拓建設事業所で、昭和26年12月及び27年1月、随意契約により三幸建設株式会社に9,774,000円で請け負わせた幕張及び犢橋工区疏水路掘さく工事は、水路延長746米、土量33,131立米のうち、14,991立米(3割の浮遊土量を含む。)をサンドポンプにより立米当り84円から95円で、又、残量21,599立米を人力掘さくにより立米当り221円から226円で施行することとして積算されているものであるが、本件工事に使用したサンドポンプのきつ水は0.6米から0.9米であるので、人力による予定水路敷の掘さく深度は1米程度を標準として13,539立米の上土排除を行えば足りるものであるのに、前記21,599立米に上る多量の人力掘さくを見込む必要はなかつたものであり、現に、請負人の実績をみても人力掘さく予定量のうち6,804立米はサンドポンプで施行している状況である。
 いま、右実績により本件工事費を算出すれば総額約915万円で足りたものである。

(4) 使用見込のない工事用機械の修理費を支払つたもの

(511)  農林省印旛沼手賀沼干拓建設事業所で、昭和26年6月道益産業株式会社に請け負わせたプリストマン型しゆんせつ船整備工事の代金として404,920円を支払つたものがある。
 右しゆんせつ船は、印旛沼干拓工事用として農林本省から保管転換を受けたものであるが、平戸中央排水路掘さく工事その他に使用するものとして26年1月137,940円で修理を行い、かろうじて14,000立米(約40日間のか働量)をしゆんせつしたに過ぎず、6月故障修理のためとして契約を結び前記404,920円を支払つているが、その後か働の実績なく、結局26年12月使用不能品として農林本省に保管転換方申請している状況である。

(5) 支給する必要のない重油を無償で払い出したもの

(512)  農林省印旛沼手賀沼干拓建設事業所で、昭和25年12月穂積建設株式会社に請け負わせて施行した印旛疏水路大和田支区疏水路堀さく工事は、当初サンドポンプの必要とする電力を同ポンプ船に附随するデイーゼル発電船から供給するためデイーゼル機関に使用する重油を無償で支給する契約であつたが、工事に着手前同事業所専用の変電所が完成したので、実際施行に当つては電力の全量を右変電所から配電し、又、デイーゼル発電船は全くか働していないのに、他方、同事業所における物品経理をみるに、26年1月20日までに施行した掘さく22,950立米に要した発電用重油として、3月同会社に39,900立価額442,890円のものを無償で交付したこととしその領収証を徴し払出整理している。

(6) 工事用材料等物品の出納保管当を得ないもの

(513)  農林省印旛沼手賀沼干拓建設事業所で、工事用材料及び消耗品等の物品について、昭和26年度末における在庫数量と帳簿残高を対査すると、重油29,055立外38品目帳簿価額1,362,353円が帳簿外の過剰品となつており、シート8枚外30品目帳簿価額595,282円が不足している状況で、物品の出納保管がずさんであり、又、26年6月株式会社興材社からセメント30屯を252,000円で購入したこととなつているが、右セメントは25年度において納入されたものであるばかりでなく、そのうち17屯余は27年9月本院会計実地検査当時なお未使用のまま放置されて硬化し、残量12屯余もその使途が不明となつている。