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  • 昭和26年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第4節 各所管別の不当事項及び是正事項|
  • 第7 農林省|
  • 不当事項|
  • (一般会計)|
  • 工事

直轄工事の計画又は施行当を得ないもの


(514)−(518) 直轄工事の計画又は施行当を得ないもの

 (部)公共事業費 (款)一般公共事業費 (項)開拓事業費 外2科目

 仙台農地事務局外4箇所で、昭和26年度中に、農業土木直轄工事の施行に当り、工事の計画又は施行、検収当を得ないため工事の目的を達していないもの及び不経済な工事を実施したものが次のとおりある。

(514)  仙台農地事務局で、昭和26年7月から27年2月までの間に、鹿島建設株式会社外5会社に請け負わせた新安積開拓建設事業土橋幹線水路工事の代金として60,959,900円を支出したものがある。
 右工事は、水路延長5,958米の掘さく及びコンクリート巻立工事を施行するもので、設計によれば水路側壁コンクリートの巻立は全線にわたり表裏両面に型わくを使用することとして、その使用量22,610平米、これに対する工費支払分は10,305,086円となつているが、27年7月本院会計実地検査の際の調査によると、右開きよコンクリート巻立のうち5,443平米は表面型わくだけで施行したものであつて、当局者も実施に当り地盤の良好な箇所については裏型わくを使用する必要がない旨を指示しているのであるから、これによりすみやかに設計変更をして、不必要分についての工事費約250万円を減額させるべきであつたと認められる。

(515)  京都農地事務局で、昭和26年9月及び11月、大成建設株式会社に請け負わせた明治用水農業水利事業頭首工橋脚基礎井筒製作及び埋設工事の代金として10,473,400円を支出し、別に鉄筋、セメント等の材料8,032,132円のものを官給したものがある。
 右工事は、井筒四個を製作埋設するものであるが、そのうち第2号及び策3号井筒(高さ10米4)は、設計に当り河床の岩盤位置を標高10米9(最高水位以下21米)と想定し製作埋設したところ、岩盤位置が当初の想定より2米2又は2米85だけ高かつたため予定の深度まで沈下するに至らず、その後の工事の続行に支障をきたしている状況である。右は、結局当初設計に当り地盤の調査が十分でなかつたことによるもので、支給材料代を含め工事費1,038,738円を徒費する結果となつたばかりでなく、27年度において工費464,490円をもつて不要部分の取除き工事を実施するのやむなきに至つている。

(516)  岡山農地事務局で、昭和26年10月及び27年1月、株式会社大本組に請け負わせた阿知須干拓建設事業甲堤とう盛土工事の代金として6,470,000円を支出したものがある。
 右工事は、山口県阿知須町地先海面に干拓用潮受護岸堤とう延1,188米を築造するため盛土12,382立米を施行するもので、27年3月までに工事が設計どおり完成したものとして請負代金の全額を支払つたものであるが、27年5月本院会計実地検査の際の調査によると、本件工事のうち堤とう法留板柵工の杭打を計画線より平均30センチメートル内側に施行したため、設計の盛土量に比べ713立米工費139,521円相当分が出来高不足となつている。

(517)  熊本農地事務局で、昭和26年2月から27年2月までの間に、随意契約により別子建設株式会社に請け負わせた金剛干拓潮受堤とう盛土工事の代金として45,651,915円(うち25年度分4,151,507円)を支出したものがある。
 右工事は、1,000馬力ポンプ式しゆんせつ船を使用して、潮受堤とう延長6,000米の内側に374,858立米の腹付盛土を施行するもので、しゆんせつ船の消費電力料金を立米当り4KWHの計算で7,082,448円と積算しているが、その実働1時間当りの所要電力量は800KWH、しゆんせつ能力は毎時300立米であつて、立米当りの消費電力量は2.7KWH程度で足り、現に、請負人の使用実績も立米当り2.6KWHとなつているもので、いま本件電力料金を立米当り2.7KWHの割合で計算したとすれば、約172万円高価となつている。

(518)  農林省大浦潟干拓建設事業所で、昭和27年1月から3月までの間に、直営により大浦潟干拓建設事業幹線排水路及び潮遊池の災害復旧工事を工事費3,717,000円をもつて施行したものがある。
 右工事は、25年度に完成した第一工区の道路堤とう、水路等の施設が26年7月の水害により被災したためこれを復旧するものであるが、本件第一工区の排水路及びひ門の施設は、外側の第二工区が完成した場合を目途として設計されており、第二工区の完成に相当長期間を要する現状においては、第一工区の内水を排除するためにはひ門が狭少で、降雨後は必ずたん水を免かれないものであるから、災害復旧に当つては排水能力を十分にするようひ門の設計変更を実施するか、あるいは排水ポンプをすえ付けるなど現地の状況に応じ効果的に工事を施行すべきであるのに、これらの事情を考慮することなく原形に復旧したため、27年6月本院会計実地検査当時既に降雨によつてたん水し、各施設物は再び崩壊し災害復旧の効果が全く認められない状況である。