本会計は、昭和26年度において14億5千3百余万円の利益を生じた。
事業活動のうち国内電話事業は、その収入475億5千6百余万円に対し事業費は193億4千8百余万円であつて、これに共通的経費を考慮してもその収益性は大であり、国際通信事業も収入39億5千5百余万円に対し事業費8億9千3百余万円で、これまた共通的経費を考慮してもその収益性ははなはだ大きなものと認められる。
これに反し、国内電信事業は、その収入71億8千7百余万円に対し事業費は60億4千5百余万円であつて、これに共通的経費を考慮すると欠損を示すものと認められるが、その理由は、国内電話事業が、近来設備の改良新設等によつてその能率増進及び人件費の節約が図られたのに反し、国内電信事業は、現在の設備では中継はすべて「人」によつて行われているため人件費の占める割合が大となつている点にあると認められ、目下、電気通信研究所で研究中の電報中継の機械化が完成されたあかつきには相当事業費の節減を期待することができるものと認められる。
本会計の26年度の決算は前記のとおり1,453,647,912円の利益となつているが、本院会計検査の結果、その修正を要すると認められるものが左のとおりあり、これにより修正計算したとすれば26年度の利益金は3,378,738,564円(25年度の損益とすべきものを26年度の損益としているものを控除すると1,353,891,002円)となる。
決算箇所 | 過誤の内容 | 金額 |
経理局外1箇所 |
未収金の計上をもらしたもの |
円 814,972,937 |
九州電気通信局 | 未収金を過大に計上したもの | △5,085,986 |
関東外3電気通信局 | 整理品の計上をもらしたもの | 87,889,514 |
近畿電気通信局 | 固定資産の計上をもらしたもの | 22,823,471 |
関東外1電気通信局 | 固定資産を過大に計上したもの | △19,891,808 |
経理局 | 未払金の計上をもらしたもの | △220,949,780 |
同 | 雑益に計上すべきものを物品価格調整引当金に計上したもの | 1,246,336,204 |
九州電気通信局 | 収入金を過大に計上したもの | △1,003,900 |
差引 | 1,925,090,652 |
なお、減価償却費の計上額88億4千7百余万円をみるに、実際の償却率を勘案せずその予算額全額をそのまま計上している。これは、減価償却費算定の基礎となる再評価価額がまだ正確に算出されていないためのやむを得ない一時的処理とは認められるが、できるだけすみやかに正確な資産の再評価を行い、これに基いて適正な減価償却費を計上することが望ましい。
又、借入建物に対し、自己資産に対しての工事であるならば固定資産の増として計理すべき程度の大改修工事をした際、その工事費全額を当期の損費として計理しているものがあるが、こうした経費は適当な資産科目を設け費用の繰延計理を行うことが望ましい。
建設改良費の翌年度繰越額は60億5千9百余万円で、予算額361億9千余万円に対し17%を占める。又、同費の支出決定済額300億4千2百余万円のうち、未完成工事の工事費は97億6千1百余万円の巨額に上り、完成工事の工事費は202億8千1百余万円で、支出決定済額に対し67.5%、予算額に対し56%となり、完成工事が低率であるのは留意を要するところである。
このように工事の施行が遅れ、工事が非能率となつたおもな原因は、(1)予算示達の後半期集中の傾向は前年度以来相当改善されたが、なお示達時期が適切であるとは認め難いこと。(2)工事実施認証が示達され、工事実施指令が到達しても当初本省へ提出した工事計画票が適切でなかつたため、それに基いて作成された実施指令の内容も適切でなく、そのままでは工事を施行することができず、改めて現場調査をしなければならないことにより相当期間を空費する場合が多いこと。(3)総合的に進ちよくすべき関連工事施行につき、各部局間の連絡不十分のため局舎の建築と局舎内に設備すべき機器類の取付工事、局舎外のケーブル工事等が各は行するなど一方の遅延のため全体の完成が妨げられていること。(4)工事用資材については、年度末貯蔵品の在庫77億2千8百余万円、仮払品46億8千1百余万円計124億9百余万円であつて、年間払出額178億4千4百余万円からみてぼう大なストツクを持ちながら、なお工事現場では資材の到着遅延のため工事が手待ちとなつている事例が少くないことなどであつて、これについては、電気通信省でもその克服に努力していることは、前年度の完成工事、未完成工事、繰越工事の工事費総額に対する比率が36%、36%、28%であつたのが、26年度においてはそれぞれ56%、27%、17%となつたことによつてもうかがわれるが、なお一層の努力が望ましい。
26年10月から電気通信管理所及び特定の取扱局につき実施した仮払品制度は、未使用の事業品を資産に受け入れ、資産表示の明確化、原価計算の的確化及び物品利活用の向上を目的とするものであるが、当初、これら局所の事業品で仮払品に組み替えられたものは31億4千5百余万円で、その後現場における材料のかかえ込み主義に災されて次第に増加し、年度末には46億8千1百余万円となり、仮払品制度実施局所における使用実績からみると、必要見込額の5箇月分余に相当する巨額なものとなるに至つた。仮払品としては1箇月分程度の必要量を保有すれば足りるものと認められるから、これをこえる仮払品はできるだけ貯蔵品に繰もとしの上利活用の向上を図るべきである。