直轄工事に関しては、近年その実施機関である各地方建設局管下の工事事務所において、正規の経理をすることなく、工事費から架空の人夫賃、材料購入費等の名義により支払に立て、多額の資金をねん出してこれを手元に保有し、ほしいままに工事請負代金、労力費、材料購入費、給料諸手当等に使用する傾向が広範囲に認められたので、本院においては、このようにびん乱した経理を正常な状態に立ち直らせることが直轄工事を正しく施行するための前提であると認め、前年に引続きこれに重点をおいて検査したところ、別項に記載したとおり前年に比べ相当に改善はされたがなおその跡を断つていない。又、建設省においては、直轄工事を能率的、且つ、経済的に施行するため、河川、道路等の事業費及び建設機械整備費をもつて多数の重建設機械を購入し、各工事現場に配置しているが、これら諸機械の購入及び管理につきあわせて重点的に検査したところ、別項に記載したとおりその管理等に関し処置当を得ないと認められる事例が見受けられた。
又、地方公共団体に交付した国庫負担金及び国庫補助金については、総額の51%余に当る災害復旧事業費に重点をおき別項に記載したとおり全国の工事現場3万4百余箇所の約15%を実地に検査したところ、国庫負担金の減額を要するものが293件1億13百余万円の多額に上つたのは遺憾である。
しかして、地方公共団体のうちには、当局者が事態の改善に努めているものもあるが、なお、検査報告掲記事項が多数に上つているのは、先に農林省所管に記載したとおり、地方公共団体の財政事情による国庫負担金の過大取得の傾向、工事費査定職員の不足、工事の監督や検収の不十分及び一部請負業者の施行粗漏等がおもな原因となつているものと認められる。