調達庁関係経費
調達庁関係経費の支出済額は、終戦処理事業費172億9千6百余万円、防衛支出金41億4千8百余万円、特別補償費8億3千9百余万円等計246億8千9百余万円で、32億5千4百余万円を翌年度に繰り越し、14億2千1百余万円を不用額としている。
右支出済額について検査の結果、役務契約の解約に伴う善後処理の当を得ないものがあり、土地、建物等の提供および返還にあたり実態を精査しなかったため高価に購入したり、借料または補償を多額に支払ったものなどが16件(4,6,26,27,29−38,40,41 )あるほか、土地、建物等の返還、提供に伴い生ずる損失の補償、利得金の償還、借料の支払等について処理が遅延しているものが多い。
なお、連合国軍の調達要求に基き契約をし、平和条約の発効後においてアメリカ合衆国駐留軍および英連邦軍に提供した工事、役務、物品の代金等として終戦処理事業費から支出した21億9千7百余万円については、外務省を通じこれが求償方を相手国と折衝中である。
保安庁
昭和27年度の保安庁関係の支出済額は430億3千8百余万円で、289億4千9百余万円を翌年度に繰り越し、32億7千7百余万円を不用額としていて、繰越額が多かったのは、物品の規格の決定、土地の選定および工事の計画、設計等に多大の日時を要したことなどに因るものであり、不用額の多かったのは、主として定員充足遅延に因るものである。
保安庁の経理については、内部監査の機構が逐次整備されてきてはいるが、物品の購入計画が適切でないと認められるものなどが別項に記載したとおり8件(18−25 )あり、また、建設省に委託した工事においても設計が適当でなかったなどのため不経済な支出となったものが別項に記載したとおり3件(1637−1639 )ある。
なお、このほかにも北海道方面諸部隊の部隊本部および隊舎新設工事(工事費19億3百余万円において工事の計画および着工が遅延したため工事促進に関する経費として1億3百余万円を必要とするなどの結果となった事例もあるから、予算の効率的使用についての考慮が望ましい。
北海道開発局
北海道における総理府および農林、運輸、建設各省の直轄工事は、昭和26年7月開設された北海道開発局およびその管下各開発建設部等においてこれを実施してきたが、27年度における支出済額は総理府所管56億2千5百余万円、法務省所管3百余万円、文部省所管2千9百余万円、農林省所管20億8千余万円、運輸省所管9億2千3百余万円、建設省所管49億1千9百余万円となっている。
新機構下の初年度における経理の運営、工事の施行については、昭和26年度決算検査報告に掲記したとおり不当事項が相当件数に上ったので、28年中も引続き同局および管下各開発建設部等の全部にわたって会計実地検査を施行したところ、一般的傾向としては改善の跡が認められたが、なお別項に記載したとおり工事の出来高が不足しているもの、調査が粗漏なため不経済な結果をきたしたものおよび特に経理の著しく不当なものなどが13件(5,7−17,39 )ある。
不当事項
(一般会計)
未収金
(部)雑収入 (款)諸収入 (項)弁償及返納金
東京調達局および東京都で、立川飛行機株式会社に支払った同会社の施設等の借上料のうちボイラー27基ほか3品目に対する昭和21年1月から27年4月28日までの分10,455,972円が誤払となっているのにこれが回収についての処置当を得ないものがある。
右ボイラー等は、20年9月同会社の施設等が連合国軍に接収され、その調達要求書に基き同会社と賃貸借契約を締結したもののうちに含まれており、右ボイラー等の分として20年9月から27年4月28日までの借上料10,499,129円が支払われているが、右ボイラー等は21年1月賠償に指定されたもので、賠償指定物件は連合国軍の指示により調達要求の対象とならないのであるから同月以降の借上料は支払うべきでなかったのに、27年4月28日まで引続き支払を行ったためこの間の借料10,455,972円の誤払をきたしたものである。しかして、右のように賠償に指定された物件で、占領期間中連合国軍に使用されていたものの使用に対する対価については平和条約発効までは支払の方法がなかったが、講和発効後において使用料としてこれを補償することとなり、同会社に対しても連合国軍に使用されたことの確認された23年3月から27年4月28日までの賠償指定機械工具の使用料として28年4月26,765,000円を支払い、このうちには右ボイラー等の分7,169,048円を含めて支払ったものであるから、遅くとも右使用料の支払にあたっては前記借上料の誤払額について回収の処置を講ずべきであったのに、その処置が執られていなかったものである。
予算経理
(建設省) (組織)建設本省 (項)北海道河川等事業費
北海道開発局札幌開発建設部で、昭和27年5月から12月までの間に、架空の人夫賃名義によりねん出した2,720,956円(借入金を含む。)を別途資金として保有し、これを他の工事の費用等に充当していたものがある。
右は、同部で、前年度しゅん功済の整理をしながら実は未しゅん功であった幌加内川改修工事の残工事を施行するため、雨龍川筋河道整理ほか1工事費から架空の人夫賃名義で延4,990人分2,370,956円を支払に立てて現金をねん出したほか、幌加内村農業協同組合ほか3名からつなぎ資金として350,000円を借り入れ、合計2,720,956円を保有し、同年5月から12月までの間に、同工事のための労力費に1,985,167円、前記借入金の返済に350,000円、旅費に195,646円、材料費に78,825円、超過勤務手当に38,000円、その他に63,629円計2,711,267円を使用し、28年8月本院会計実地検査当時その残額9,689円を手元に保有していたものである。
工事(6)−(17)
(昭和26年度) (部)終戦処理費 (款)終戦処理事業費 (項)終戦処理事業費
横浜調達局で、昭和27年3月および4月、株式会社横浜加藤組に横浜センターピアー第E−71−53建物屋根修覆工事の代金として2,708,000円を支払っているが、工事中の設計変更による工事費の減額が少額に失し、なお245,447円減額を要するものである。
右は、当初工事に使用する屋根材は波型亜鉛びき鉄板となっていたのに、工事中設計変更があり、波型黒鉄板を使用して完成したので、更改契約により工事請負代金を70,000円減額して支払ったものであるが、本院会計実地検査の際の調査によると、波型黒鉄板の使用数量等に徴し315,447円の減額更改を要すべき事態であって、これは当事者の調査不十分に因るものと認められたので注意したところ、更に245,447円を減額させることとし、28年10月21日までに145,447円を歳入に納付した。
(農林省) (組織)農林本省 (項)北海道土地改良事業費
(運輸省) (組織)運輸本省 (項)港湾災害復旧事業費
(建設省) (組織)建設本省 (項)北海道道路事業費 ほか1科目
北海道開発局札幌ほか6開発建設部で、昭和27年度に施行した道路改修、災害復旧等の工事のうち、ずい道工事の土質調査および設計が粗漏であったため手もどりをきたしたもの、工事の検収等が不十分なため工事の出来高が不足しているのに設計どおり完成したものとして請負代金の全額を支払ったものが次のとおりあり、いずれも直轄工事の施行にあたり処置当を得ない。
(1) ずい道工事の調査、設計が粗漏なため手もどりをきたしたもの
(7) 北海道開発局小樽開発建設部で、昭和27年度中に、直営により地方費道入舸余市線沖村梅川町間道路改良延長204メートルを19,164,145円で施行しているが、そのうち第2号ずい道110メートルの新設工事11,852,419円は、巻立コンクリートの強度計算が粗漏であったため1,314,005円の手もどりをきたしたばかりでなく、これが補強に約740万円を要するものである。
右は、第2号ずい道のコンクリート巻立厚に対する土圧の計算においては、上置土3,376立米として算定しなければならなかったのに、誤ってそのうち1,116立米分についてだけの土圧応力を算定してコンクリートの巻立構造を決定したため、実際に施行した上置土3,376立米の土圧が巻立コンクリートの荷重をこえることとなり、工事完成後わずか12日にしてずい道中央部にき裂を生じ、これがため応急工事として、右上置土のうち1,375立米を除去し、き裂部分の仮受けをするなどのため1,314,005円が手もどりとなったばかりでなく、き裂部分の補強工事費に約740万円を必要とする状況である。
(8) 北海道開発局函館開発建設部で、昭和27年6月、三井建設株式会社に地方費道江差瀬棚線乙部村熊石村地内道路改良工事を13,379,839円で請け負わせているが、右は、砂利道延長810メートルの新設およびずい道6箇所の出入口コンクリート巻立を施行するもので、そのうち第8号ずい道は、地質の調査を十分することなく当初予定の高さ4.5メートルを1メートル高くしたため、岩盤の落下により巻立部分が工事中崩壊している。
右ずい道は、当初すべて高さ4.5メートルの素掘りで施行する予定であったものを、岩盤にき裂を生じ落下が多いため第3号ずい道から第8号ずい道まで出入口10箇所を厚さ30センチメートルのコンクリート巻立を施行することに変更し、さらに、本件道路が2級国道昇格予定線であるとの理由から高さを5.5メートルに再び変更したものである。しかし、既に高さ4.5メートルで素掘りしたものを高さ5.5メートルとするには、掘さく量および爆破作業による震動回数が著しく増大するため、岩質の悪い箇所は工事の施行に危険を生ずることは明らかで、現に、第3号ずい道工事は、5.5メートルに変更後危険を生じたため作業を中止し、4.5メートルで完成している状況であるから、特に本件第8号ずい道を5.5メートルにする必要はなかったのに、このような事情を考慮することなく第3号ずい道とほぼ同一条件の第8号ずい道の工事を続行したためコンクリート巻立を施行中危険を生じ、施行延長12メートールのうち8.7メートルを施行しただけで28年6月21日工事を中止したところ、23日岩盤の落下によりコンクリート巻立部分が崩壊するに至り、工事費2,444,497円の手もどりを生じたものである。
(2) 工事の出来高が不足しているもの
(9) 北海道開発局札幌開発建設部で、昭和27年8月、鉄道工業株式会社に美唄市上美唄幹線排水改良工事を7,862,857円で請け負わせているが、検収等が不十分なため1,099,568円が出来高不足となっている。
右工事は、延長6,914メートルの間に堤外地すき取土および堤内排水路掘さく土をもって築堤するもので、堤外地すき取43,346立米、築堤盛土66,023立米を施行したこととしているが、実際は堤外地すき取34,554立米、築堤盛土57,231立米を施行しただけで、すき取および盛土がそれぞれ8,792立米出来高不足となっているのに、設計どおり完成したものとして前記請負金額の全額を支払ったものである。
(10) 北海道開発局函館開発建設部で、昭和26年8月および27月6月、有限会社星野組に亀田郡椴法華村元椴法華港災害復旧工事を2,882,000円で請け負わせ代金の全額を支出しているが、検収等が不十分なため394,259円が出来高不足となっている。
右工事は、延長120メートルの間に防波堤の根固工を施行するもので、そのうち捨石1,216立米は1個重量500キログラム以上の石を使用したこととしているが、実際は500キログラム以上の石を使用したのは99立米だけで、1,117立米は200キログラムから300キログラム程度の不適格材を使用し、工事費相当額394,259円が出来高不足となっているばかりでなく、右不適格材のうち178立米工事費相当額205,620円は既に流失している状況である。
(11) 北海道開発局室蘭開発建設部で、昭和27年6月、大森土建株式会社に有珠郡壮瞥村地内開拓道路新設工事を4,800,000円で請け負わせているが、検収等が不十分なため695,497円が出来高不足となっている。
右工事は、延長2,820メートル、有効幅員3メートルの砂利道を新設するもので、運搬盛土6,681立米、石混り土切取1,787立米、流用土2,552立米、筋芝16,306メートルを施行したこととしているが、実際は曲線半径を縮小するなどにより運搬盛土4,124立米、流用土2,360立米、筋芝7,227メートルを施行しただけで運搬盛土2,557立米、流用土192立米、筋芝9,079メートルだが不足しているばかりでなく、石混り土切取は全く施行していないなど出来高不足となっているのに、設計どおり完成したものとして検収し、前記請負代金の全額を支払ったものである。
(12) 北海道開発局旭川開発建設部で、昭和27年8月、株式会社広野組に地方費道名寄天塩港線常盤村地内道路災害復旧工事を11,749,285円で請け負わせているが、検収等が不十分なため394,703円が出来高不足となっているばかりでなく練積石垣45平米が崩壊している。
右工事は、道路延長520メートルの間を練積石垣1,966平米をもって復旧するもので、そのうち1,366平米は、裏込ぐり石平米当り0.63立米総量860立米を施行したこととして代金の全額を支払っているが、実際は平米当り0.46立米総量635立米を施行しただけで225立米工事費相当額394,703円が不足しているばかりでなく、盛土のつき固めが不十分であったため練積石垣45平米が崩壊し、これが手直しに127,977円を要する状況であるのに設計どおり完成したものとして検収し、前記請負代金の全額を支払ったものである。
(13) 北海道開発局帯広開発建設部で、昭和27年9月、熊倉建設株式会社に中川郡本別町地先利別川護岸災害復旧工事を3,912,236円で請け負わせているが、検収等が不十分なため401,095円が出来高不足となっている。
右工事は、被災した護岸延長236メートルの鉄線じゃかご工466本、水制工5箇所等を復旧するもので、じゃかごおよび水制工用重かご70本の詰石は径15センチメートル以上のもので683立米を施行したこととしているが、実際は詰石の不足しているものおよび径10センチメートル以下の不適格材を使用したため容易に網目から脱落するものが約4割273立米あり出来高不足となっているのに、設計どおり完成したものとして検収し、前記請負代金の全額を支払ったものである。
(14) 北海道開発局釧路開発建設部で、昭和27年8月、北海道建設工業株式会社に地方費道旭川根室線標津村金山地内道路災害復旧工事を8,352,860円で請け負わせているが、検収等が不十分なため669,942円が出来高不足となっている。
右工事は、被災した延長80メートルの道路を復旧するもので、練積石垣1,609平米は裏込砂利1,276立米を、また、小段の玉石張は360平米を施行したこととしているが、実際は裏込砂利を全く施行せず、小段の玉石張は5割程度を施行しただけで出来高不足となっているのに、設計どおり完成したものとして検収し、前記請負代金の全額を支払ったものである。
(15) 北海道開発局釧路開発建設部で、昭和27年6月、池内某に町村道白糠本別線白糠町上茶路地内道路改良工事を7,700,000円で請け負わせているが、検収等が不十分なため612,758円が出来高不足となっている。
右工事は、延長1,480メートル、有効幅員3メートルの砂利道を新設するもので、切土25,308立米、盛土29,043立米を施行したこととしているが、実際は切土22,094立米、盛土28,382立米を施行したにすぎず、これに伴い天芝372メートル、筋芝5,266メートル、敷砂利56立米も不足しているのに、設計どおり完成したものとして検収し、前記請負代金の全額を支払ったものである。
(16) 北海道開発局釧路開発建設部で、昭和27年7月、北拓建設株式会社に町村道昆布森尾幌線昆布森村地内道路改良工事を4,930,000円で請け負わせているが、検収等が不十分なため527,748円が出来高不足となっている。
右工事は、延長4,020メートル、有効幅員4.5メートルの砂利道を新設するもので、切土20,000立米、盛土12,124立米を施行したこととしているが、実際は切土16,995立米、盛土11,095立米を施行したにすぎず、これに伴い側溝1,245メートル、転圧945平米、天芝2,156メートル、筋芝2,001メートル、敷砂利302立米も不足しているのに、設計どおり完成したものとして検収し、前記請負代金の全額を支払ったものである。
(17) 北海道開発局釧路開発建設部で、昭和27年8月、葵建設株式会社に釧路川筋標茶町地先護岸災害復旧工事を1,820,000円で請け負わせているが、検収等が不十分なため231,323円が出来高不足となっている。
右工事は、被災した延長170メートルの護岸を復旧するもので、鉄線じゃかご306本は詰石1本当り1.44立米総量440立米を施行したこととしているが、実際は352立米を施行しただけで88立米が不足しているのに、設計どおり完成したものとして検収し、前記請負代金の全額を支払ったものである。
物件 (18)−(25)
(18)−(24) 物品の購入計画当を得ないもの
(組織)保安庁 (項)警察予備隊費
保安庁第一幕僚監部で、昭和27年度中に購入した物品で不急と認められ、多数を未使用のまま保管されるに至ったものが次のとおりある。
右のような事態を生じたのは、物品購入計画がこれを現実に使用する部隊の人員、施設、機械等の整備の実状と遊離して実施に移されたことに因るものであって、未使用品については保管、移送等の経費を徒費するの不利を生じているものである。
(18)
保安庁第一幕僚監部で、昭和27年8月、高島株式会社から野戦病院患者用として折畳寝台7,388台を18,987,160円で購入しているが、所要数は隊員75,000人を基本とした2,888台であるのに誤って7,388台を発注したもので、その後隊員35,000人の増加があり、その所要数を加えても3,408台にすぎない。
なお、余剰の3,980台は予備品として保有している。
(19) 保安庁第一幕僚監部で、昭和27年11月から28年3月までの間に、株式会社上野高商会ほか12会社から看護婦384名分の被服として冬制服ほか16点を11,912,447円(うち28年度支払分1,831,823円)で購入しているが、27年9月に看護婦の定員が384名と決定され、11月に57名が採用されただけでその後募集の事実もなく、27年度においては残りの327名を配置する病院の建設予算もなかったばかりでなく、28年10月に至るもその敷地が決定していない状況で、384名分の被服全数量を取急ぎ購入する要はなかったものである。
(20) 保安庁第一幕僚監部で、昭和28年1月および3月、東急車両製造株式会社から、幌別駐とん部隊ほか19箇所納めとして、セミトレーラー低床型20トン、134両を3月末および7月末を納期として235,162,500円(うち28年度分148,300,000円)で購入しているが、これをけん引するに必要な6トン6×6トラクタートラック80両については、28年3月に、32両を10月末を納期として三菱ふそう自動車株式会社と購入契約を締結したためは行購入となっている。
(21) 保安庁第一幕僚監部で、昭和27年10月、沼田皮革株式会社から、北海道、関西、九州各地区補給しょう納めとして、くつ補修用の当て皮10,450坪を1,536,150円で購入しているが、当時需品補給しょうおよび右3地区補給しょうに27,275坪の手持があり、右4補給しょうのくつ修理工場での総使用量は月平均約260坪であるから、各部隊の総所要量を勘案してもこのような大量のものは購入の要があったものとは認められず、現に、28年8月現在において24,310坪が各補給しょうに在庫となっている。
(22) 保安庁第一幕僚監部で、昭和27年10月、山田護謨株式会社から、北海道、関西、九州各地区補給しょう納めとして、くつ補修用のゴム本底51,844個を3,084,718円で購入しているが、右ゴム本底は、需品補給しょうおよび右3地区補給しょうのくつ修理工場で行う大修理に使用するものであって、当時各部隊においてはくつ修理の人員、施設とも整備されていないため、本来各部隊において行うべき修理作業を補給しょうのくつ修理工場で行い、この種の大修理を行う作業能力はほとんどなかった状況であるから、このような大修理用材料はさしあたり購入の要はないものと認められ、現に、各補給しょうでは28年8月までにわずかに約1万800個を使用し、残余の約4万1,000個を保管している状況である。
(23) 保安庁第一幕僚監部で、昭和27年9月、プロセス資材株式会社から地図複製車6号カメラセット用として地図用特殊フイルム146ダースを3,398,880円で購入しているが、本品購入当時右6号カメラセットは仕様も決定していなかったのであるから、本品のような有効期間に限度のあるもの(有効期限29年4月)は取急ぎは行購入の要はなかったものである。なお、28年11月末までに34ダースを使用したにすぎない状況である。
(24) 保安庁第一幕僚監部で、昭和28年3月、山王興業株式会社から、北海道地区補給しょうほか15箇所納めとして、有線および無線電話工事用の8メートル木柱1,270本を5,359,400円で購入しているが、本件木柱は、ほとんど部隊等で既存建物の電話工事に布設するものであるのに、その所要数を十分調査することなく一部隊50本から300本として納入させたため、左記部隊では、それぞれ多数の残量を生じ、他日新設の部隊等に保管転換せざるを得ない状況となっている。
〔1〕 千歳ほか5部隊では、300本のうち126本を使用し、60本を訓練用として残置するとしても114本の残量が生じている。
〔2〕 米子ほか1部隊では、工事完成後に100本送付されたため,うち40本を出雲部隊の工業用に保管転換し、残数量はそのまま残置されている。
また、今津ほか5部隊では、まだ工事に着手していないものまたは工事施行時期および設計も判明しないなどのためそのまま保管されている。
(組織)保安庁 (項)警察予備隊費
保安庁第一幕僚監部で、自動車購入について、その納地の指定変更の処置を執らなかったため不経済となっているものがある。
右は、同部で、昭和27年12月17日、日産自動車株式会社およびトヨダ自動車株式会社からトラック(ウェポンキャリヤー4分の3トン)477両を28年3月までに各指定地の部隊納めとして購入契約したが、12月25日に至り、帯広ほか9部隊納めの分のうち38両は旭川ほか8部隊で使用することとなったものであるから直ちに納地の指定変更をすべき事態と認められるのに、このような機宜の処置を執もなかったため、うち24両は各使用部隊に転送のやむなきに至り、新たに運送業者に対し運送費493,670円を支払い、また、14両は自走移動をしてガソリン等を徒費しているが、もし納地変更の処置を執ったとすれば前記両会社に対し約9万円を増額支出すれば足りたのである。
役務 (26)(27)
(組織)調達庁 (項)終戦処理事業費
大阪調達局で、昭和28年4月、セネカランドリー代表者吉田某に対し洗たく機械設備の管理に要した経費等の補償金として1,739,779円を支払っているが、調達要求解除後早期かつ適切な処理を欠き、長期にわたり設備の管理を行わせたため不経済な支出となっている。右洗たく機械設備は、連合国軍の要求に基き21年1月吉田某から借り受け、移設のうえ同人にこれを利用させ連合国軍に洗たく役務を提供させていたもので、24年4月、この設備および役務についての調達要求が解除になったが、同人から設備の撤去運搬費の補償要求があり、これが解決するまでは引取に応ぜられない旨の申入れがあったのに対し、右補償についての部内の処理が解決しないまま、26年9月まで同人に設備の管理を行わせ、この間の借上料相当額、管理費、機械の手入費等として前記のとおり支払ったものであるが、他方、本件設備の撤去運搬費として補償した金額は211,760円にすぎない状況で、処理遅延のため前記のように多額の出費のやむなきに至ったのは当を得ない。
(組織)調達庁 (項)終戦処理事業費 ほか1科目
名古屋調達局で、駐留軍に提供している建物等の昭和27年度分借料として滝兵株式会社ほか5会社に95,285,989円を支出しているが、算定当を得なかったため3,270,292円が過大に支払われている。
右は、27年4月1日以降7月27日までの分については25年度固定資産税額がおり込まれている従来の借料月額に25年度固定資産税額と27年度固定資産税額の差額相当額を加算して16,522,802円を支払い、また、7月28日以降の分については27年度固定資産評価額を基礎として78,763,187円を支払ったものであるが、28年5月本院会計実地検査の際の調査によると、本件建物については27年度固定資産評価額は各所有者の異議申請によって1,239,278,857円が1,178,175,707円に、したがってその税額は19,828,462円が18,850,811円にそれぞれ減額されているものであるから、当然この減額された評価額および税額を基礎として借料を算定すべきであるのに修正前のものを基礎として借料を支払ったもので処置当を得ない。
いま、仮に修正減額された固定資産評価額を基礎として計算すると、前記支払額と3,270,292円の開差を生ずるものであるが、2,331,766円は当局において28年9月までにこれを回収した。
補助金
(組織)自治庁 (項)地方財政平衡交付金
自治庁で、昭和27年度地方財政平衡交付金のうち普通交付金として交付した44道府県分92,062,233,000円について、各道府県に配分する基準の算定方法等を誤ったため交付額に不均衡をきたしたものがある。
右交付金は、各地方団体における基準財政需要額および基準財政収入額を算定し、それから求められる財源不足額を基準として算出するものであるが、本院会計実地検査の結果によると、前記44道府県のうち、右算定に用いた数値の算定方法および計算の誤りなどがあり、ひいて財源不足額が過大に計上されているもの19府県分117,829,000円、過少に計上されているもの9道県分58,226,000円であって、その内訳は左のとおりである。
道府県名 | 過大に計上された財源不足額 | 過少に計上された財源不足額 | |
北海道 |
千円 | 千円 27,468 |
|
青森県 | 10,749 | ||
宮城〃 | 7,067 | ||
福島〃 | 474 | ||
茨城〃 | 1,463 | ||
栃木〃 | 2,921 | ||
群馬〃 | 1,929 | ||
千葉〃 | 5,455 | ||
神奈川〃 | 1,164 | ||
山梨〃 | 25,236 | ||
静岡〃 | 2,312 | ||
愛知〃 | 793 | ||
京都府 | 50,984 | ||
兵庫県 | 1,875 | ||
鳥取〃 | 476 | ||
島根〃 | 660 | ||
岡山〃 | 715 | ||
広島〃 | 644 | ||
山口〃 | 2,127 | ||
徳島〃 | 1,374 | ||
香川〃 | 1,009 | ||
愛媛〃 | 2,735 | ||
高知〃 | 705 | ||
福岡〃 | 857 | ||
長崎〃 | 4 | ||
熊本〃 | 21,595 | ||
宮崎〃 | 7 | ||
鹿児島〃 | 3,257 | ||
計 | 117,829 | 58,226 |
このほか、27年度市町村分について、本院の会計実地検査を施行した61市町についてみても、財源不足額の算定に過誤を生じているものが59市町に及び、過大に計上されているもの29市町分17,884,000円、過少に計上されているもの30市町分14,604,000円ある。
このように、各地方団体がその財源不足額の計算を誤り、ひいて交付額に不均衡を生じているのは、
(ア) 基準財政需要額において、経費の種類別に測定単位の数値を算出する際、正規に定められた台帳が不整備なため適正数値の算出を誤り、または地方団体内部における相互の連絡不十分なため算出資料に対する検討を欠いていたこと、
(イ) 基準財政収入額において、地方税の基準税額を算出する際、その基礎となった数値の採り方を誤っていたこと、
(ウ) 自治庁または県において、各地方団体に対する数値算定方法の指示が十分徹底しなかったことおよび各地方団体から提出された算出資料に対する審査が不十分であったことなどに基くものである。
右について、本院は過去3箇年度にわたり会計検査を施行し、地方財政平衡交付金制度の適正な運用を期したところであるが、いまだに同様の過誤が繰り返されている状況であるから、自治庁に対し、算出資料の審査を厳にするとともに本制度の実施に関する適切な指導を徹底するよう注意を与えておいた。
不正行為
福岡県八幡渉外労務管理事務所で、昭和27年5月から10月までの間に、給与課主事補柴田某ほか8名により、労務者に対する賃金の支払にあたり支給金額を付掛けする方法によって特別調達資金をほしいままに領得されたものが1,865,209円(うち28年9月末現在補てんされた額1,026,324円)ある。
その他(30)−(37)
(組織)調達庁 (項)終戦処理事業費 ほか1科目
仙台、呉、福岡各調達局で、田、畑、山林等の土地を所有者その他の権利者から借り上げて軍の使用に提供したものについてみると、提供後においても所有者等が提供前とほとんど同様な使用方法を継続して田畑を耕作し、または山林等としての収益をあげているのに、軍の使用方法が耕作の継続を不可能とする場合に支払うべき借料等と同額を支払ったものが左のとおりある。
そのうち福岡調達局の分は、軍に提供後借料を支払ってきたものであり、その他は、軍から国有財産と誤認されたなどのため当時は借料を支払うことができず借上契約を結ばないまま提供し、平和条約発効後において借料相当額を補償したものである。この場合支払われている借料は使用収益権の全部の対価として計算されているが、たとえ軍が恩恵的に使用させているとしても所有者等が自ら利用することができる場合には、軍に提供した当初はやむを得ないとしても適時利用の状況に応じ借料の改定減額を考慮すべきであり、また、軍に提供した期間を過ぎて借料相当額を補償するにあたっても同様利用の実情を考慮すべきであるのに、土地の使用収益権の全部を喪失した場合と同額の借料全額を支払ったのは著しく均衡を失するものと認められる。
調達局 | 提供地 | 数量 | 借料または補償金(うち28年度分) | 借上また補償期間 | 利用することができた数量 | 利用することができた期間 | 同上に対する借料または補償金 | |
(30) |
仙台 |
新潟県佐度相川町無線局用地 |
坪 53,629 |
円 575,518 |
年 月 22.12から 27.7まで |
坪 53,629 |
年 月 22.12以降 |
円 575,518 |
(31) | 呉 | 鳥取県美保飛行場A地区 | 68,858 | 426,124 (53,703) |
25.5から 27.7まで |
68,858 | 26.6〃 | 234,455 |
(32) | 同 | 〃P地区 | 407,552 | 1,126,907 (103,278) |
26.7から 27.7まで |
407,552 | 〃7〃 | 1,126,907 |
(33) | 福岡 | 福岡県板付飛行場 | 590,807 | 581,461 | 27.4から 〃7まで |
590,807 | 27.4〃 | 581,461 |
(組織)調達庁 (項)終戦処理事業費
仙台、東京両調達局で、連合国軍の使用に供した土地で、提供後においても所有者等が提供前とほとんど異なるところなく耕作を継続し、収穫をあげているのに、その事実の経過した後において、全く耕作を禁止された場合と同様の計算で立毛補償、離作補償、使用料を支払ったものが次のとおりある。
(34) 仙台調達局で、昭和25年7月、新潟飛行場用地として、連合国軍の使用に供した田13,147坪について、水稲に対する立毛補償498,017円、離作補償378,662円,25年7月から27年4月までの使用料相当額の補償として84,989円計961,668円を28年1月および4月にその所有者または権利者今井某ほか56名に支払っているが、土地の提供に際し現に生育中の作物を除去した事実はなく、耕作者は従前とほとんど異なることなく耕作を継続し、収穫していたのであるから、土地の提供に伴い生育中の作物を収穫することができないための損失補償である立毛補償および耕作の継続をすることができないために生ずる損失の補償である離作料は支払う要がなく、また、使用収益権の全部の対価に相当する使用料を補償する要はないものである。
(35) 東京調達局で、昭和26年6月連合国軍の使用に供するため中央工業株式会社から借り上げた埼玉県北足立郡大和田町所在の土地のうち、15,104.28坪について、陸稲、かんしの立毛補償として27年6月に耕作者堀埼某ほか39名に対し377,607円を支払っているが、本件土地については軍からその耕作を禁ぜられないまま右耕作者において従前とほとんど異なることなく耕作を継続し、収穫していたものと認められ、特に立毛補償を支払う要はなかったものと認められる。
なお、国が賃借した土地について第三者がほしいままに耕作していたようなものについては、使用料に相当するものを求償するなど適当な処置を執るべきものと認められる。
(組織)調達庁 (項)終戦処理事業費ほか1科目
連合国軍の使用に提供した地域内の立木が、演習または施設建設のため砲爆撃、障害除却等で受けた被害に対する補償にあたり、調査不十分なためその被災本数および石数を過大に算定したため補償金の支払が著しく多額に失したと認められるものが次のとおりある。
(36) 仙台調達局で、昭和27年8月および28年4月、窪田某ほか2名に高館地区周辺の土地使用に伴う離作、立毛、立木および果樹に対する補償金として34,091,085円を支出しているが、右支払の一部分である350,246坪の地域に対し施設建設のため伐採した被害立木71,047本に対する立木補償11,578,365円のうち、八太郎山、桔梗の上および浜名谷地地区236,963坪に対する53,041本分9,916,628円について、28年6月本院会計実地検査の際の調査によると、住宅地、自動車道路等の施設建設のため立木を80%程度除却された地域は67,503坪で、この被害立木についてはその大部分を22年に青森県で補償済であり、残余の地域においては、ところどころわずかに立木を伐採されたのを散見する程度であって、実際の被害立木を各地区ごとに算出して前記補償済被害立木を差し引くと、本件補償を要する被害立木は6,014本程度にすぎない状況(当局者と立会のうえ現地を調査した結果による。)で、同局で認めた立木価格でその補償金額を算出すると約160万円をこえないもので、支払額に比べ約830万円の開差を生じている。
(37) 横浜調達局で、昭和27年8月、山梨県に富士吉田市所在の軍で使用している山林29町9反1畝の被害立木24,825本22,492.32石に対する補償金として14,192,653円を支出しているが、この補償金は、26年5月から27年3月までの砲爆撃に因る被害に対するもので、被害の調査は該地について容易に行うことが困難であるとして被害地から遠隔の完全植林地35年生反当り83本75.2石を評価の標準とし、26年当時の石当り単価631円により積算したものである。
しかし、28年5月本院会計実地検査の際の調査によると、該地は自然林地帯あるいは補植をしたもので標準地の林相とは著しく異なっており、実測の結果は同局で補償の対象とした立木は焼失、枯死、倒壊したものに限られているが、仮に被弾立木約30%についても補償を認めるとしても、被害立木は30年生反当り48.61石総石数14,539.25石程度にすぎない状況(当局者と立会のうえ基準地10箇所を選定して調査した結果による。)であり、これに対し同局で算出した30年生立木の石当り単価511円により(被弾立木については残材価格は100円程度あるものとしてこれを控除して単価411円)補償金額を算出すると約700万円で足りる計算となり、支払額に比べ約700万円の開差を生じている。
是正させた事項
未収金
(一般会計) (部)雑収入 (款)諸収入 (項)雑入
福岡調達局で、別府市に委託した昭和26年度別府市鮎返連合国軍専用水道施設の維持管理および給水業務について、終戦処理費から水道料金5,039,207円を支払っているが、右支払額は委託経営実費を1,442,211円だけ超過していた。
このような実費を超過した支払額があるときは、委託契約によれば27年4月末までに国に回収すベきであったのに、事務処理が遅延したため28年4月本院会計実地検査当時まだ回収の手続を執っていなかったので注意したところ,6月国の歳入に納付した。
工事
(運輸省) (一般会計) (組織)運輸本省 (項)港湾災害復旧事業費
北海道開発局網走開発建設部で、昭和27年7月、随意契約により柏土建株式会社に斜里河口港右岸導流堤災害復旧工事を2,709,647円で請け負わせているが、水中掘さく量の積算を誤ったため、1,146,149円が不経済な結果となっている。
右工事は、場所詰コンクリート153立米、方塊コンクリートすえ付80個を施行するもので、1,256,000円で延長60メートルの間に800立米の水中砂掘さくを実施したこととして請負代金の全額を支払っているが、28年7月本院会計実地検査の際の調査によると、実際に必要とした水中砂掘さく量は80立米であったのにこれを800立米と誤算したまま支払ったものであり、請負人も80立米を掘さくし、これにより工事を完成したものである。したがって、支払代金は諸経費を含め1,146,149円を減額させる必要があると認め注意したところ、28年10月同額を回収した。
物件
(一般会計) (組織)調達庁 (項)防衛支出金
名古屋調達局で、昭和28年3月、愛知起業株式会社から名古屋市旧国際飛行場所在の格納庫等建物12むね延919坪を13,334,397円で購入しているが、建物の現況調査が不十分であったため1,075,908円高価に当っている。
右購入価格の決定にあたり、その実態を精査することなく、前記会社の説明に基き、格納庫の大出入口引込とびらの実際は鉄骨わく亜鉛びき波型鉄板張りであるのにスチールドアーとしたり、鉄骨主柱のI型鉄鋼は300m/m×150m/m×8m/mであるのに350m/m×150m/m×12m/mとしたり、あるいは天じょうホイストレールの長さは6メートルであるのに24メートールとして誤って評価したことなどのため前記金額が高価となっていたので注意したところ、当局者は同会社と協定し前記1,075,908円を回収することとし、12月その全額を国の歳入に納付した。
役務
(一般会計) (組織)調達庁 (項)防衛支出金
大阪調達局で、関係部課における事務連絡不十分なため借料についての非債弁済をしていたものがある。
右は、同局で、大神中央土地株式会社ほか11名から借り受けて駐留軍の使用に提供していた家屋、動産等について、昭和27年10月から28年1月までの間の借料として27年11月から28年1月までの間に646,194円を支払っているが、当該施設等の使用の必要がなくなり、軍から返還され、賃貸借が既に終了しているにかかわらず、同局関係者間の連絡不十分なため、その後においてなお借料の支払をしたため483,011円の過払をきたしたものである。
なお、過払額は、本院の注意により28年10月までに全額回収した。