(項)食糧買入費
食糧庁で、昭和27年4月、兼松株式会社から購入した高長丸積来の輸入小麦について、その輸入港を当初表日本諸港としていたのに、食糧の需給操作上必要があるとしてことさら裏日本諸港に変更し、割増海上運賃を支払っているが、その変更の結果約620万円不経済となっている。
右は、輸入小麦9,449トンを表日本の横浜、清水、名古屋、大阪、神戸、門司各港に輸入することとして、本船船側渡価格トン当り39,157円総額370,012,729円で同会社と契約を締結したところ、6月に至り食糧管理の円滑な推進を図るため、新潟、富山両県の要望にこたえて両県の港湾および港頭倉庫の利用を図るとともに、両県内の加工原料売渡用に充てる必要があるとして新潟、伏木両港に輸入することに契約を変更し、裏日本割増海上運賃としてトン当り1,062円を加算して本船船側渡価格を40,220円総額380,054,725円とし、新潟港に5,810トン、伏木港に3,611トンを陸揚げしたものである。しかし、食糧管理の円滑な推進を図るためとして、両県の要請にこたえて執られた処置とはいえ、新潟、富山両食糧事務所管内には大型製粉工場もなく、小麦の需要が少ないばかりでなく当時多量の在庫を有していたのであるから、ことさらこのように高価な割増海上運賃まで支払って新潟、伏木両港に輸入する必要があったものとは認められず、現に、本件小麦の処分状況をみると、新潟港に陸揚げした5,810トンは28年3月までにそのうちわずか82トンを県内加工原料用に売り渡しただけで、4,500トンを原麦のまま27年9月から12月までの間に茨城、栃木、群馬、千葉、埼玉各食糧事務所に運送し、その残量1,228トンを港頭倉庫等に保管させており、また、伏木港に陸揚げした3,611トンはそのうち912トンを28年3月までに富山県内加工原料用として売り渡しただけで、2,000トンを原麦のまま同年1月までに群馬、埼玉、石川各食糧事務所に運送し、3月に至るもその残量699トンを港頭倉庫に保管させている状況である。
いま、仮に本件小麦を表日本の港に輸入したとすれば、沿岸荷役料、保管料等を考慮しても約620万円節減することができたものである。