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  • 昭和27年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第4節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第9 農林省|
  • 不当事項|
  • (国有林野事業特別会計)|
  • 物件

(国有林野事業特別会計)


(1507)−(1509) 国有林野整備にあたり処置当を得ないもの

 (款)国有林野事業収入 (項)林野売払代

 東京、名古屋両営林局で、国有林野整備臨時措置法(昭和26年法律第247号)により国有林野を随意契約で売り渡すにあたり、同法所定の整備事由に該当しないものを処分したり、地上立木のうち用材として利用することができるものを薪材としたため売渡価額が低きに失したものなどが次のとおりある。

1507 ) 東京営林局で、昭和27年10月、茨城県西茨城郡北那珂村に同村所在国有林23町1反を地上立木(用薪材9,914石および幼令林)とともに6,872,796円で売り渡しているが、用材として価格を算定すべきものを薪材としたため約60万円が低価となっている。

 右は、売渡予定価格を土地252,998円、地上立木用材および薪材5,600,884円、幼令林1,018,914円計6,872,796円とし、これと同額で売り渡したもので、立木のうち林令45年、胸高直径12センチメートルから20センチメートルまでの赤松1,474石を薪材として石当り220円総額324,280円としているが、これは用材として利用することができるものと認められ、現に、本件国有林を管理している笠間営林署における近傍地域のこれと同種の立木を処分する場合は用材として評価するのを例としているのに本件においてこれを薪材と評価の内申をし、これによる価格決定をみたのは当を得ない。

 いま、仮に前記1,474石を用材として評価したとすれば7,491,546円となり、本件売渡価額はこれに比べ約60万円低価となっている。

1508 ) 東京営林局で、昭和27年6月から28年3月までの間に、神奈川県足柄下郡真鶴町ほか4箇町村に左のとおり保安林である国有林野52町9反を地上立木56,243石とともに11,507,745円で売り渡しているが、売渡後における伐採制限に対する値引率が過大であったため約750万円低価となっている。

 右は、魚つきおよび水源かん養等のため地上立木の伐期を120年程度として択伐するよう伐採制限を受けた保安林であるため、通常の森林に比べ経営上不利であるとして、普通林野価額26,771,538円から施業制限林地に対する減額率最高の6割を適用して控除した額11,323,689円を予定価格とし、前記価額で売り渡したものであるが、林野庁の通ちょうにおいては、前記6割の減額率は全林が禁伐林となっている場合に適用するのを例とし、施業制限の程度に従って適宜これを低率にすることとなっているもので、現に、他局においては、本件と同様の択伐を認める保安林の処分にあたっては3割の減額率を用いているものであるから、本件についても3割程度とするのが適切と認められる。

 いま、仮に3割の減額率によったとすれば予定価格は19,047,622円となり、前記売渡価額に比べ約750万円高価に売り渡すことができたものである。

処分年月 所在地 買受人 種別 面積立木材積 売渡価額 普通林野とした場合の価額 3割の減額率による価額
年月
27、6 神奈川県足柄下郡真鶴町官林 真鶴町 魚つき 32町4反
45,671石
6,330,097 15,825,244 11,077,671
〃11 茨城県東茨城郡大場村下入野 大場村 水源かん養 1町1反
1,131石
298,930 747,325 523,128
28、1 〃多賀郡多賀町大字金沢 多賀町 潮害防備その他 4町9反
1,571石
678,718 1,123,132 892,394
〃3 千葉県市原郡鶴舞町大字鶴舞 鶴舞〃 防風 4町7反
2,944石
950,000 2,068,336 1,447,835
〃〃 茨城県東茨城郡磯浜町磐船山 磯浜〃 土砂流出防備、防風その他 9町6反
4,926石
3,250,000 7,007,501 5,106,594
52町9反
56,243石
11,507,745 26,771,538 19,047,622

1509 ) 名古屋営林局で、昭和27年11月、愛知県北設楽郡三輪村に同村所在国有林606町1反のうち139町4反を地上立木94,681石とともに19,200,000円で売り渡しているが、整備事由に該当しない林地であるばかりでなく同地域の立木の集材、搬出が実際よりも不便なものとして、その地価を低く評定したため約60万円低価となっている。

 右は、国有林と民有林との境界が入り組んでいるため経営に支障があるとして、国有林野整備臨時措置法第1条第1項第3号により売り渡したものであるが、同法所定の整備事由のいずれにも該当しないばかりでなく、右国有林地は606町余の一団の国有林で特に経営上支障があったものとは認められない。

 しかして、本件林地は農業水利用宇連川ダム建設に伴い、たん水地域となるため失われる三輪村の一部山林の代替として売り渡したが、水没地のうち山林103町は蓄積34,000石程度であるのに対し、本件売渡地は139町余の樹令28年以上の最も成績良好な人工造林地で、蓄積も94,000石をこえるものであり、また、地価も本件林地は集材地点まで1.4キロメートル、集材地点から発駅まで12キロメートルで、その地利級は少なくとも標準地(地利級3級指数100%、林地から集材地までおおむね2キロメ−トル、集材地点から発駅までおおむね20キロメートル)で評定すべきものと認められるのに、これを4級の低位に評定したため約60万円低価となっている。