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  • 昭和27年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第4節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第9 農林省|
  • 不当事項|
  • (農林漁業資金融通特別会計)|
  • その他

農林漁業資金の貸付けにあたり審査または管理不十分なもの


(1513) 農林漁業資金の貸付けにあたり審査または管理不十分なもの

 農林省で、業務委託金融機関を通じて貸し付けた農林漁業資金のうちで、貸付けにあたり審査不十分と認められるもの、または貸付け後の管理不十分と認められるものが次のとおりある。

(1) 昭和27年8月から10月までの間に、農林中央金庫扱いで、愛知県海部郡富田町農業協同組合ほか2箇所にかんがい排水工事ほか2件の資金として計69,600,000円を貸し付けているが、右は、いずれも審査不十分なため、工事計画が過大であり、または実情にそわないものに貸し付けたものと認められ、28年5月から9月までの本院会計実地検査当時において、工事の一部に着手したにすぎないかまたは未着手のため貸付金のうち67,300,000円が前記金庫に預金として留め置かれている。

(2) 27年4月から9月までの間に、農林中央金庫扱いで、福島県岩瀬郡白方村農業協同組合ほか3箇所に耕地災害復旧工事ほか3件の資金として計18,500,000円を貸し付けているが、右は、いずれも審査不十分なため、既に国庫補助指令を受けているものを国庫補助金を受けない事業として貸し付けたもので、国庫補助金を受ける事業として貸し付けることのできる限度を5,806,040円超過している。

(3) 27年4月から12月までの間に農林中央金庫扱いで、岩手県江刺郡羽田農業協同組合ほか7箇所に、井ぜき農道等災害復旧工事ほか8件の資金として計43,860,000円を貸し付けているが、右は、補助金の交付を受けたときはこの補助金相当額を期日前に償還することを条件として貸し付けているのに、管理不十分なため、27年度中に既に補助金8,295,800円が交付済となってもその償還の処理を執らないままとなっている。

(4) 26年8月から28年3月までの間に、農林中央金庫ほか4箇所扱いで、宮城県登米郡石越村南部土地改良区ほか38箇所にかんがい排水工事ほか69件の資金として計273,740,000円を貸し付けているが、管理不十分なため、このうち農林漁業資金融通法(昭和26年法律第105号)第4条第1項の規定に違反して貸付けの目的以外の工事の資金、運転資金等に使用されたものが181,510,088円ある。

(5) 26年7月から28年3月までの間に、農林中央金庫ほか3箇所扱いで、岩手県江刺郡黒石村農業協同組合ほか35箇所に水路災害復旧工事ほか38件の資金として計165,156,000円を貸し付けているが、このうち、管理不十分なため借受人が当初申請どおりの工事を施行しなかったりまたは実際の工事費が申請額より少額で完成したなどのため、同法第3条第2項に規定する貸付けの限度をこえる結果となったものが41,547,066円ある。

 右のように審査または管理が不十分と認められるものが多数あるのは、主として次のような事由に因るものと認められる。

(ア) 農林省での部内連絡が不十分と認められ、このため既に国庫補助指令を受けているものを国庫補助金を受けない事業として貸付決定をしたり、貸付後に補助事業となって、国庫補助金の交付を受けたものを償還させないままとなっている傾向がある。

(イ) 監査機構が整備されていないため、受託金融機関に対する指導監査が十分でない傾向がある。

(ウ) 受託金融機関は、農林漁業資金の受託業務に関する準則を定める省令(昭和26年大蔵、農林省令第2号)第2条第2項の規定に「必要があると認めたときは関係都道府県知事の意見を求めることができる。」とあることによって意見書を徴すれば責任を果したものとしていて、確認についての積極性に欠ける傾向がある。