公共事業に対する国庫負担金等の経理当を得ないもの

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（１５２１）−（１５８６）　公共事業に対する国庫負担金等の経理当を得ないもの

（組織）運輸本省　（項）港湾災害復旧事業費　ほか１科目

　地方公共団体が施行した港湾工事費７，１１８，５３０，０８３円に対する国庫負担金（国庫補助金を含む。以下同じ。）４，０２４，０２１，５９０円の経理および工事施行状況について、本院においてその工事現場１，９８０のうち９１８を実地に検査したところ、防波堤の捨石、しゅんせつ等の出来高が不足しているのに設計どおり完成したこととしているもの、設計にあたって在石を考慮すべきであったのにこれをしなかったり、しゅんせつにおいて土質の調査を誤り単価を過大に積算したもの、災害復旧とは認められない改良工事または工事が粗漏で補助の目的を達していないものなどが多数あり、さらに、本年度においては、設計過大あるいは出来高不足等の不当事実を工事費の経理の面からも裏付けることに配意した結果、事業主体として当然負担すべきものを負担しないで国庫負担金相当額あるいはこれを下回る金額で工事を請け負わせ工事の出来高が不足しているものなどが相当あり、そのうちには再度被災のおそれがあると認められるものも見受けられた。

　地方公共団体施行の工事についてこのような事態を生じたのは、連年の災害によって工事量が著しく増加し、運輸省が査定にあたり必ずしもその全部について実地を調査しないで机上でこれを行ったこと、工事監督および検収が徹底を欠いたことなどに因るものであるが、相当大規模な事業であっても町村等が事業主体となる場合もあり、これらのうちには、工事の監督、検査および財政力において十分な能力を備えているとはいえないものもあり、事実上工事の施行を請負人に一任し、その不誠実と相まち更に地元負担の軽減を図ろうとするものもあり不当な結果を誘発しているものと認められる。

　この種事態の発生原因および防止対策については、別項農林省所管 に記述したとおり主務省に意見を表示した。

　しかして、これら不当事項のうち国庫負担金を除外すべきことの判明したものが、青森ほか２２都府県において国庫負担金を除外すべき額１工事１０万円以上のものをあげると１３２工事４５，９６１，１８３円に上る状況で、これを事項別に分類して示すと別表のとおりである。しかして、このうち１工事２０万円以上のものを事業主体および事項別にあげると左表のとおり６６件３９，０１０，３８７円で、そのうち代表的な事例を説明すると次のとおりである。

(別表)

（１） 　愛知県が１，４４５，０００円（国庫補助金５７８，０００円）で施行した師崎港修築工事は、練石積護岸延長７０メートルの積石に約４分の１は規格外のものを使用し、また、護岸の水中部分の胴込コンクリートを全く施行していないなど工事の施行が著しく粗漏であり、完成後わずか５箇月で延長３５メートル倒壊している。（粗漏工事）

（２） 　山口県大津郡日置村が施行した掛淵港災害復旧工事は、５，３２０，０００円（国庫負担金３，６８６，７６０円）で港内のたい積土砂３０，１５０立米をしゅんせつしたこととしているが、実際は１２，３９０立米をしゅんせつしただけで、残余は河水の自然流下による洗掘でしゅんせつの要がなかったため工事費は国庫負担金を下回る２，２７７，５２４円で足り、同村はその負担したとしている１，６３３，２４０円を全く負担していないばかりでなく１，４０９，２３６円の剰余を生じたこととなっていて、同村は１，５４０，０００円をもって査定外の捨石導流堤２６０メートルを構築している。

（３） 　徳島県那賀郡椿町が１３，８６０，０００円（国庫負担金１３，０１４，５４０円）で施行している椿港災害復旧工事は、防波堤の被覆捨石および中詰捨石を工事費相当額２，１４９，６１３円だけ過大に見込んでいて、２７年度施行済の分についてみても５，０００，０００円を要したこととしているが、実際は国庫負担金を下回る４，１６０，２５０円で足り、同町はその負担したとしている３０５，０００円を全く負担していないばかりでなく５３４，７５０円の剰余を生じたこととなっている。

（４） 　大分県南海部郡西中浦村が施行した松浦港災害復旧工事は、４，１３０，０００円（国庫負担金３，２１７，２７０円）で防波堤を復旧したこととしているが、捨石の出来高が不足しているため工事費は国庫負担金と同額の３，２１７，２７０円で足り、同村はその負担したとしている９１２，７３０円を全く負担していない。