郵政事業特別会計
(事業損益について )
郵政事業特別会計は、昭和24年6月設置以来独立採算制を立前としながら、毎年度収支の均衡がとれず欠損を続け、26年度末繰越欠損金は76億余万円に上っていた状況であったが、27年度決算の結果初めて8億9千3百余万円の利益を生じ、本年度末繰越欠損金は67億6百余万円に減少した。
このように本会計が本年度において利益をみるに至ったのは、26年11月の郵便料金の値上げおよび郵便貯金、簡易生命保険、電気通信各事業の業務受託収入の増加等のため、事業収入が前年度に比べ144億4千4百余万円を増加しているのに、一方事業支出においては給与べースの改訂等に因る支出の増加が前年度に比べ112億9千1百余万円にとどまったことに因るものと認められ、毎年度一般会計から歳入不足補てんのための繰入を受けていた従来の業態からみて著しい好転であるが、事業支出における人件費の占める割合は25年度63.5%、26年度64.8%に対し、27年度は67.8%と漸増していて、このうち超過勤務手当および特殊勤務手当は71億4千3百余万円で人件費の15.4%を占めている状況であり、一層諸経費の節約が必要であると認められる。
(財務諸表について )
27年度決算は、前記のとおり893,969,435円の利益となっているが、本院会計検査の結果、その修正を要すると認められるものが左のとおりあり、これにより修正計算しだとすれば27年度の利益金は655,407,564円となる。
決算箇所 | 過誤の内容 | 金額 |
簡易保険局および東京郵政局 | 固定資産の計上を漏らしたもの | 円 499,162 |
経理局および東京郵政局 | 固定資産を過大に計上したもの | △933,292 |
経理局および東京ほか8郵政局 | 未払金の計上を漏らしたもの | △238,558,411 |
東京郵政局 | 減価償却引当金を過大に計上したもの | 430,669 |
差引 | △238,561,871 |
(渡切費の経理について )
27年度の渡切費の決算額は21億3千2百余万円であって、予算額15億6千6百余万円に対する超過額5億6千5百余万円は物件費から流用されているが、このように超過しているのは、27年7月、従来渡切費でなかった通信費、貯金奨励維持費(奨励施設経費)、保険年金募集維持奨励費、切手類売さばき手数料を渡切費に切り替えたことおよび27年度中に渡切費全般にわたり支給率を改訂したためであって、26年度決算額が15億1千5百余万円であったのに比べ27年度決算額は著しく増大している。
渡切費は、年度末に残額を生じても返納させず、翌年度において郵政局長の承認を得てこれを事務の研究、事業上有益な図書の購入、見学、当該局に勤務する職員全部のための訓育、福利厚生施設等に使用することができるとしているものであるから、その支給については特に慎重を期すべきであるが、27年度末においては1億1千4百余万円に上る残額を生じている状況で、支給にあたっては各特定郵便局から各郵政局へ四半期ごとに提出される渡切経費経理報告書等によってその使用実績を勘案して支給するなど一層の考慮が望まれるものがある。
(物品の経理について )
27年度における貯蔵品の購入額は33億7千1百余万円、使用額は35億7千余万円で、翌年度繰越額は9億8千余万円となっていて、この繰越額は前年度に比べると1億9百余万円の減少となっている。しかし、このうち消耗品の繰越額は3億4千3百余万円で、これに事業品として保有している額4億8千2百余万円を加え8億2千5百余万円のものを在庫としているが、この在庫量は年間使用実績5億3千6百余万円の約1年6箇月分に相当していて、なお規制の余地があるものと認められる。
(郵便物運送料について )
27年度中の専用自動車による郵便物運送料は14億6百余万円に達しているが、本件請負はきわめて特殊な請負で、競争入札に付してもごく限られた少数の業者だけが参加したにすぎない実状であり、一度契約が成立すれば郵便物運送委託法(昭和24年法律第284号)第7条の規定により4年以内は継続することができるものであるから、その予定価格の算出にあたっては特に慎重を期する必要がある。
しかして、この予定価格算出の基礎は、郵政省の内規で定められているが、その基礎である車種の選定標準として、たとえば、郵袋積載量14個から35個の場合は中型車とし、これに対し道路運送法(昭和26年法律第183号)第8条の規定によって一般に認可されている2トン車相当料金3,120円を積算することとしているが、現行専用自動車の荷台容積平均からみても1トン車(認可料金2,730円)で郵袋30個まで積載することができるものであるから1トン車で足りる場合があり、前記車種の選定はその部分だけ高価に予定価格を積算する結果となっている。同様の事例は、他の車種の選定にも見受けられるから全面的に再検討の必要がある。
なお、前記内規で定めている予定価格算出基礎のうち深夜および悪路区間の作業に対する割増運賃の計算方法が適切を欠いていると認められるものなどがあったので注意したところ、28年10月以降改善することとなった。