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  • 昭和27年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第4節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第14 建設省|
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  • (一般会計)|
  • 工事

直轄工事の施行にあたり処置当を得ないもの


(1630)−(1636) 直轄工事の施行にあたり処置当を得ないもの

(組織)建設本省 (項)河川等事業費 ほか2科目

 東北ほか3地方建設局で、昭和27年度に施行した河川、道路の改修、災害復旧工事のうち、工事の計画および施行を誤ったため手もどりまたは不経済な結果をきたしたもの、工事の監督および検収不十分なため工事の出来高が不足しているのに設計どおり完成したものとして請負代金の全額を支払ったものが次のとおりあり、いずれも直轄工事の施行にあたり処置当を得ない。

(1630)  東北地方建設局北上川上流工事事務所で、昭和27年度に直営により18,876,586円をもって施行した岩手県稗貫郡花巻町および宮野目村地内北上川支川瀬川付替工事において、護岸の根固工を行うことなく法おおい工を施行したなどのため工事費535,240円の手もどりをきたしたものがある。

 右工事は、瀬川付替のため25年度から新水路掘さくを施行し、27年度において掘さく60,700立米、護岸法おおい9,096平米、床固3箇所538平米を施行するもので、新水路は上流部の河幅が62メートルであるのに対し下流部は18メートル程度で著しく狭くなっていて、200分の1の急こう配であるため流速が急となり、護岸の水衝、河床の洗掘等を生ずることは計画当時十分予想することができたものであるから、護岸には根固を行い、床固には水たたきを設けるべきであるのにこれを施行しなかったため、28年3月右付替水路に通水したところ、わずか数日にしてコンクリートブロック張等護岸延長90メートルが決壊したほか床固1箇所20平米も流失し、他も危険な状態となったものである。これがため28年度直ちに新水路の上流を締め切り、根固工を実施したが、仮締切工事費に144,500円、護岸および床固復旧費に390,740円計535,240円の手もどりをきたしている。

(1631)  東北地方建設局阿賀川工事事務所で、昭和27年度に直営により3,426,595円をもって施行した福島県河沼郡金上村地内宮川新水路掘さく工事において、設計どおりに掘さくしなかったため243,216円の手もどりをきたしたものがある。

 右工事は、阿賀川および支川宮川をその中流部で合流させるため新水路(掘さく土量22,002立米)を掘さくするもので、設計ではドラグラインにより8,090立米だけを掘さくすることとなっているのに、実際は設計断面以上に10,080立米を掘さくしたため1,990立米を埋めもどす必要を生じ、上流部から所要土量を掘さく運搬のうえ埋もどしを行い243,216円の手もどりをきたしている。

(1632)  東北地方建設局江合鳴瀬両川工事事務所で、昭和27年度に直営により2,994,575円をもって施行した宮城県遠田郡涌谷町地内江合川筋右岸桜丁掘さく築堤工事において、土取場の選定を誤ったため工事費217,293円の増大をきたしたものがある。

 右工事は、右岸延長1,010メートルの間に土量40,086立米の築堤を行うもので、そのうち6,654立米は築堤箇所から1,200メートルを隔てた左岸寄りの河川敷からラダーエキスカベーターで掘さくのうえ蒸汽機関車で運搬し、工事費746,952円を要したものであるが、右築堤箇所付近の高水敷は計画上55,574立米の掘さくを必要とし、付近築堤全部に利用してもなお2,346立米を堤内地に捨土する予定の地区であるから、本件築堤土はこの高水敷から採取すれば足りたもので、いま、仮にこの工法によったとすれば工事費において217,293円を節減することができたものである。

(1633)  中部地方建設局三重国道工事事務所で、昭和27年度に直営により2,751,366円をもって施行した鈴鹿市一ノ宮町地内鈴鹿橋右岸取付道路工事において、土取場の選定および施行方法を誤ったため工費約51万円の増大をきたしたものがある。

 右工事は、延長274メートル、土量8,800立米の路床かさ上げを行うものであるが、年度末までに施行した土運搬のうち6,432立米は、巻揚機および4トンガソリン機関車を使用して鈴鹿川左岸寄州から仮橋を渡って採取したもので、その立米当り単価は164円10となっている。

 しかし、本件工事箇所に隣接して同年度に鈴鹿工事事務所で施行した鈴鹿川本川右岸高岡地先改修工事においては、築堤用土を約800メートル上流の右岸寄州から採取のうえ7トンディーゼル機関車により運搬したもので、その立米当り単価は55円03となっており、これに比べると本件工事の単価は著しく高価となっているが、前記取付道路に要する土量6,432立米は、鈴鹿工事事務所が前記築堤用土を採取した上流右岸寄州の土取場から採取することが適当であったばかりでなく、これを7トンディーゼル機関車で運搬する余裕もあったものであるから、このような接続した工事箇所の土運搬工事にあっては両工事事務所において協議のうえ最も有利な方法で施行すべきものと認められ、いま、仮に本件工事用の6,432立米を鈴鹿工事事務所に委託し、前記改修工事と同様の方法で施行したとすれば、単価は84円75となり、約51万円は節減することができたものである。

(1634)  近畿地方建設局で、昭和27年5月、株式会社山形組に福井県坂井郡大石村および木部村地先九頭龍川木部第4護岸工事を3,180,000円で請け負わせているが、検収等が不十分なため266,739円が出来高不足となっている。

 右工事は、延長740メートルの護岸を復旧するもので、法おおい工2,418平米の裏込砂利またはぐり石は厚さ平均25センチメートルで総量605立米を施行したこととしているが、実際は393立米を施行しただけで212立米が不足し、また、法おおい天端延長690メートルは幅60センチメートル、厚さ平均6センチメートルで配合比1:3:6のコンクリート25立米を施行したこととしているが、実際はコンクリートとしての強度をもたない粗悪なもので施行しているため、工事費相当額266,739円が出来高不足となっているのに設計どおり完成したものとして前記請負代金の全額を支払ったものである。

(1635)  近畿地方建設局淀川工事事務所で、昭和27年4月から11月までの間に、直営により5,412,984円をもって施行した寝屋川市仁和寺地先護岸工事において、護岸床掘りの機械施行が可能であったのに人力で施行したため約63万円が不経済な結果となっている。
 右工事は、延長371メートルの間に床掘土砂7,730立米、埋もどし土砂3,660立米、石張3,339平米等を施行するもので、床掘土砂のうち4,150立米はドラグライン掘さくにより立米当り平均13円40で施行し、また、3,580立米は人力掘さくにより立米当り単価189円42で施行しているが、4月から7月下旬まで大阪機械整備事務所において直ちに本工事に使用することができるドラグライン1台を保有していたのであるから、これを利用すれば前記人力掘さくによった土量は機械掘さくにより低価に施行することができたものと認められ、いま、仮にこの工法によったとすれば工事費約63万円を節減することができたものである。

(1636)  中国四国地方建設局で、昭和26、27両年度に、智頭土建株式会社ほか2名に鳥取県八頭郡池田村地内鳥取国道改良工事を18,750,000円で請け負わせているが、検収等が不十分なため1,434,593円が出来高不足となっている。

 右工事は、26年10月から28年7月までの間に、延長921メートルの道路改良を施行するもので、切土22,720立米、擁壁工の練積石垣3,009平米を施行したこととしているが、実際は切土19,097立米、練積石垣2,739平米を施行しただけで切土3,623立米、練積石垣270平米が出来高不足となっているのに、設計どおり完成したものとして検収し、前記請負代金の全額(うち26年度分11,220,000円、28年度分1,018,000円)を支払ったものである。