電気通信事業特別会計および日本電信電話公社を通じ、昭和27年度中において43億5千8百余万円の利益を生じ、電気通信事業特別会計の26年度の利益に比べると29億5百余万円の増加となっている。このような利益を生じたおもな原因は、26年11月の電信電話料金の値上げおよび市外通話度数、開通加入者数の増加等に因り業務収入等が前年度に比べ、192億4千5百余万円増加し、一方、業務費の給与ベース改訂に因る増加、減価償却費の増加等があったにもかかわらず178億1千余万円の増加にとどまったほか、営業外損益において14億6千9百余万円の利益の増加があったためである。
各事業別の損益状況をみると、国内電話事業は89億3千6百余万円の利益をもたらし、国内電信事業は83億4千8百余万円の損失となり、国際電信電話事業は、電信事業において34億5千余万円、電話事業において3億2千余万円計37億7千余万円の利益となっていて、利益金の大部分は、国際電信電話事業に因るものであることが明らかである。したがって、国際電信電話事業が国際電信電話株式会社に移行した28年度以降の日本電信電話公社の経営においては、電信事業の合理化、特に労務費の著しい節減をもたらす電報中継の機械化はいよいよ切実な問題となるものである。
(1) 27年4月1日から7月31日までを期間とする電気通信事業特別会計の利益金は1,934,871,775円となっているが、本院会計検査の結果、その修正を要すると認められるものが左のとおりあり、これにより修正計算したとすれば右の利益金は3,783,917,260円となる。
決算箇所 | 過誤の内容 | 金額 |
経理局 |
未収金の計上を漏らしたもの |
円 871,197,245 |
同 | 整理品の計上を漏らしたもの | 270,935,975 |
東北電気通信局 | 仮払品の計上を漏らしたもの | 6,673,209 |
同 | 仮払品を過大に計上したもの | △7,009,768 |
経理局 | 固定資産の計上を漏らしたもの | 274,042,852 |
同 | 固定資産を過大に計上したもの | △38,688,875 |
同 | 未払金の計上を漏らしたもの | △86,077,192 |
東北電気通信局 | 減価償却引当金を過大に計上したもの | 17,878,363 |
経理局 | 物品価格調整引当金を過大に計上したもの | 540,093,676 |
差引 | 1,849,045,485 |
(2) 27年8月1日から28年3月31日までを期間とする日本電信電話公社の利益金は、2,423,923,265円となっているが、本院会計検査の結果、その修正を要すると認められるものが左のとおりあり、これにより修正計算したとすれば右利益金は2,824,829,434円(電気通信事業特別会計の損益とすべきものを当期の損益としているものを加減すると1,727,498,885円)となる。
決算箇所 | 過誤の内容 | 金額 |
経理局 |
仮払金を過大に計上したもの |
円 △108,362,369 |
電気通信研究所および関東、四国両電気通信局 | 整理品の計上を漏らしたもの | 16,155,887 |
近畿、四国両電気通信局 | 整理品を過大に計上したもの | △2,726,721 |
四国電気通信局 | 貯蔵品の計上を漏らしたもの | 693,262 |
同 | 貯蔵品を過大に計上したもの | △374,960 |
経理局、近畿電気通信局および東京電信電話管理局 | 固定資産の計上を漏らしたもの | 420,685,669 |
東京電信電話管理局 | 固定資産を過大に計上したもの | △7,314,691 |
九州電気通信局 | 未払金を過大に計上したもの | 67,394,300 |
経理局および関東ほか9電気通信局 | 未払金の計上を漏らしたもの | △15,907,799 |
東京電信電話管理局 | 減価償却引当金を過大に計上した | 122,132 |
同 | 物品価格調整引当金を過大に計上したもの | 30,541,459 |
差引 | 400,906,169 |
電気通信事業特別会計および日本電信電話公社を通じた27年度建設勘定の予算額は417億4千余万円(前年度からの繰越額60億5千9百余万円を含む。)で、支出決定済額は311億6千9百余万円であり、差額105億7千1百余万円のうち102億4千7百余万円を翌年度に繰り越し、3億2千3百余万円を不用額としている。
支出決定済額は予算額に対し74.6%となっていて、前年度が83.0%であったのに比べ低率であり、計画に対する工事の進ちょく状況は比較的良好でなかったことを示している。また、支出決定済額のうち未完成工事の工事費は85億8千7百余万円に上り27.5%を占め、前年度の未完成工事が97億6千1百余万円で、支出決定済額に対し32.4%であったのに比べやや減少しているが、なお相当の巨額であり、完成工事が低率であるのは留意を要するところである。
このように工事の進ちょくが良好でなかった原因は、工事命令の遅延、設計の不適切、関連工事のは行、資材の現場到着の遅延等従来工事遅延の原因であった事態がなお十分に改善されていないことに因るもののほか、本年度の特殊な原因として、27年8月における同公社への移行および11月における機構改革に起因する部内事務の全般的停滞に因るものと認められる。
なお、このような原因による工事遅延のおもな事例は別項に記載したとおり5件(1804−1808)である。
(1) 27年度建設勘定工事命令発送状況は、通信局計画工事については、年間計画の大部分を第1・四半期に発送しているが、本省(本社)計画の新規工事については、前半期95億6千余万円、後半期92億9千9百余万円であって、後半期になって発送されたものが著しく多額である。
このように命令が遅れたのは、42億8千1百余万円の補正予算の成立が遅れて27年12月24日となったことも1つの原因であるが、この補正予算をおもな財源として計画した60億7千2百余万円の修正3次計画の具体的設計が12月中に出来ていたものであり、かつ、これらの工事用資材についても10月末に物品準備要求の手配をするよう特別の処置を講じたものであるから、補正予算成立後直ちに全工事の発令をすることができる事態にあったと思われるのに、28年1月以降に工事命令を発送したものが1月2億5千3百余万円、2月9億3千余万円、3月11億2千余万円、4月13億5千8百余万円ある状況で、このように発令が長期にまたがったのは資金の見とおしについて疑義があったためであるというが、10月末には当初予算による借入金135億円は全額借入未済であったのであるから、その借入れ手配をすれば補正予算成立後直ちに全工事の命令を発令することができたものと認められる。
(2) 27年度工事費全額の約3分の1に当る139億1千4百余万円に相当する工事を担当した本省(本社)建設部、近畿電気通信局および東京電信電話管理局の3部局の未完成工事または繰越工事となったもののうち1工事300万円以上のもの(予算額63億8千9百余万円)についてその原因を検討すると左のとおりである。
原因 | 工事数 | 予算額 | 支出決定済額 | 繰越額 |
本省(本社)の認証の遅延によるもの |
19 |
千円 1,056,173 |
千円 625,563 |
千円 430,610 |
本省(本社)の設計の不適切によるもの | 6 | 124,911 | 63,843 | 61,068 |
本省(本社)の資材調達の不適切によるもの | 3 | 52,296 | 40,507 | 11,789 |
関連工事のは行によるもの | 42 | 1,558,405 | 966,752 | 591,653 |
建築工事の遅延によるもの | 9 | 436,946 | 312,992 | 123,954 |
通信局の工事計画票の不適切によるもの | 1 | 9,784 | 0 | 9,784 |
通信局の物品準備要求の遅延によるもの | 2 | 76,290 | 56,769 | 19,521 |
通信局の認証の遅延によるもの | 2 | 25,975 | 3,257 | 22,718 |
通信局および管理局の実施指令の遅延によるもの | 17 | 656,397 | 406,413 | 249,984 |
道路復旧費の支払未済によるもの | 1 | 17,081 | 14,727 | 2,354 |
部内事務の渋滞によるもの | 14 | 331,145 | 202,957 | 128,188 |
やむを得ないと認められるもの | 37 | 2,043,871 | 1,029,260 | 1,014,611 |
計 | 153 | 6,389,274 | 3,723,040 | 2,666,234 |
(3) このような工事遅延の結果は建設勘定工事費の支出状況に如実に現われ、これを四半期別に示すと、第1・四半期29億7百余万円(11.1%)、第2・四半期51億2千9百余万円(19.7%)、第3・四半期75億6千3百余万円(29.0%)、第4・四半期104億1千5百余万円(40.0%)となっていて、年度末の3月における1箇月分の支出決定済額は63億9千余万円に上り、年間支出決定済額の24.5%を占めている。
(4) 前述のとおり、工事の進ちょくが予定に対し不良であった結果、次のような弊害を生じている。
(ア) 関東ほか7電気通信局(注) について調査した工事隊のか働状況は、年間の可働延人員1,000,815人に対し実働延人員839,355人で161,460人は遊休延人員であって、遊休延人員は可働延人員に対し16.1%であるが、工事命令が遅延して工事が年度の後半期に集中したため、前半期における遊休延人員は可働延人員に対し21.3%であるのに後半期においては9.7%となっている状況であり、ことに北陸電気通信局工事隊では、可働延人員49,712人に対し遊休延人員は20,400人で41.0%であり、前半期69.6%、後半期12.0%を示している。
さらに、右実働延人員のうち建設工事に直接従事した延人員は537,572人、建設共通工事に従事した延人員は228,721人で、建設工事に直接従事した延人員に対し42.5%を示していて、建設共通工事に従事した延人員の比率が高率であるのは、工事命令の遅延に因り工事隊の要員が効率的にか働していないことを示すもので留意を要するところである。
(注) 関東、信越、東海、北陸、中国、四国、九州、北海道各電気通信局
(イ) 納入済になった工事用資材を相当期間工事に使用しないで手持ちとなったものが多く、信越、東海、四国、九州各電気通信局および東京電信電話管理局における繰越工事の一部について調査しただけでも、現場で非常備物品を3箇月から11箇月までにわたる期間手持ちしたものが253件4億7千2百余万円あり、このほか常備物品も長期にわたって手持ちされている。また、物品調達時期と物品の工事上の所要時期とのずれを調整するため納入させないで、共同倉庫株式会社ほか1会社に保管させた物品は年間17億5千8百余万円あり、保管料相当額は1千7百余万円に達しているが、このうちの大部分は工事の遅延に因るものである。
27年度末の在庫量は貯蔵品118億2百余万円、仮払品8千余万円、計118億8千3百余万円で、前年度末の在庫量貯蔵品77億2千8百余万円、仮払品46億8千1百余万円計124億9百余万円に比べ5億2千6百余万円の減少となり、年間の購入額は264億9千2百余万円であるのに物品の使用局所における決算額は286億1千余万円であって、差引21億1千7百余万円のものは新規に購入することなく在庫品を充当したもので、年度末における貯蔵品、仮払品の在庫の対前年度減少額との差額15億9千1百余万円のものは在来の整理品または事業品を工事用物品として活用したこととなる。27年度においては在庫量の減少についてかなりの努力が払われたにもかかわらず、その在庫量がなお相当巨額であるのは、受入れについては貯蔵品の標準在庫量が過大であること、払出しについては工事の遅延に因り計画量をはるかに下回ったことがおもな原因であるが、標準在庫量の決定方式を実状に合うものとすることおよび工事の遅延状況とにらみ合わせて購入の買控え、納入時期の調整を更に強度に実施することが望ましい。
また、東海、四国および九州各電気通信局資材部において、27年度中に管外へ保管転換した本省(本社)準備品は総額3億1千9百余万円あるが、このうち1億8千6百余万円のものは同年度中に受入れをし、更に管外へ保管転換したもので、このうちには使用見込数を過大に見積ったため過剰となったもの、前期要求の未入庫分を次期要求の際誤って再要求し、その後前期要求のものが入庫したため過剰となったもの、補充要求数の算定誤算に因り過剰となったもの、被服類で号型、文数を見込によって要求したため過不足を生じたものなど関係部門間の連絡粗漏あるいは各部門の取扱者の不注意に因り当初から受入れを要しなかったものを受け入れたことに因る保管転換があり、不経済となっている。