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  • 昭和28年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第4節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第2 総理府|
  • (調達庁)

(一般会計)


(一般会計)

 調達庁における昭和28年度収納済歳入額は4億5千2百余万円、支出済歳出額は151億余万円であって、検査は不動産等の提供、返還等および各種補償の経理に重点を置いて、検査を要する部局等39箇所のうち17箇所の実地検査を行い、現場を確認した分の経費は約50億2200万円である。

 その結果、別項に記載したとおり、借料、補償金の算定が適当でないと認められるもの(3−7)、不動産の購入にあたり駐留軍との連絡等が適切でなかったもの(2)がある。

 前記支出済額のうちには、提供の取決めがないまま駐留軍が使用している施設および区域に対し支払った借料3億8千3百余万円(27年7月28日以後5億5千3百余万円)が含まれているが、施設および区域の提供は行政協定により日米合同委員会の決定によって行うものであり、同委員会において決定されていないまま使用している施設等の借料については大蔵省を通じ米国に対し求償方折衝中である。

 なお、本年度において終戦処理事業費で支弁したものは調達物件の補償等1億1千2百余万円で、これをもって終戦処理費の支出は完結したが、20年度において終戦に伴い日本銀行仮勘定立替金で調達業務を開始してから総額5155億2千7百余万円(うち特別調達資金繰入75億円を含む。)となっており、このほか終戦に伴う経費で21年度から26年度までの間に賠償施設処理費等129億6千5百余万円を支出している。

 他方、この調達業務等に伴って歳入として249億5百余万円を収納しているが、このうちには連合国側において負担すべきものまたは円資金勘定に繰り入れた使用残額として連合国側から償還を受けた192億2千5百余万円があるが、これは連合国側で計算したもので、その内容は国内に内訳計算を明らかにする関係資料がないから判明しない。

不当事項

物件

(2) 建物の購入にあたり処置当を得ないもの

(組織)調達庁 (項)安全保障諸費

 仙台調達局で、調達庁の指示に基き、昭和29年3月日本通運株式会社から駐留軍が現在使用中の兵員クラブの代替施設として提供するため仙台市茂市ヶ坂所在土地555.86坪(うち163.15坪は区画整理による換地受分)および木造かわらぶき建物延321.42坪等を18,400,000円で購入しているが、右施設としての適否についての検討、連絡等が不十分であったため、結局、軍においては兵員クラブとしては適当でないとして使用していない。

 右は、軍において兵員クラブとして使用中の仙台市所在安田火災海上保険株式会社所有の土地251.68坪および建物延293.65坪(28年度固定資産評価額土地2,416,800円、建物18,252,300円)を返還する方針のもとに、その代替施設として購入する計画を立て、28年10月外務省から軍に本件建物を代替施設として使用することについて意向をただしたところ、12月日本側の負担において現在使用中の施設と同等のものに改修することを条件として応諾の回答があり、調達庁においては軍と協議が成立したものとして同局に指示して購入させたものである。

 しかし、本件建物を現在提供している施設と同等のものに改装するためには約2,160万円の改修費を要するばかりでなく、使用中の施設に比べて建物周囲は空間地がなく、自動車の進入、駐車等にも不便な事情もあって、周囲の土地を買収しなければならないが、このような環境を整備することは困難なこと、また、この困難を解決するには不均衡に多額の出費を要することは当初から判明していたものであり、ことには、軍の施設を都心から周辺に移そうとする趣旨にも即応しない事態であったのであるから、これらの事情を十分に考慮し、軍側との交渉も慎重に行わなければならなかったのに、これらの点についての処置に欠けるところのあったのは遺憾である。

 軍は、現在使用中の施設と同等の設備がなく代替施設としては不適当であるとして29年9月に至るも使用を開始せず、その後軍と使用に関する交渉も進ちょくしていない。したがって、現在提供中の安田火災海上保険株式会社所有の土地建物については返還も行われず、同会社に対し月額191,903円の借料を支払っている。

その他(3)(4)

(3) 返還財産の損失補償額の算定当を得ないもの

(組織)調達庁 (項)防衛支出金

 東京調達局で、昭和21年6月から27年12月までの間に駐留軍に提供していた平和不動産株式会社所有の東京都中央区所在建物の損失補償金として、29年4月、同会社に71,407,637円を支出したものがあるが、使用可能な昇降機を撤去発生材として利得額を計算したため約510万円多額に補償金を支払ったものと認められる。

 右は、27年12月前記建物の使用を廃止して所有者に返還するにあたり、損失額(使用により建物の所有者の被った損失額)を78,216,013円とし、利得額(国において施設したもので所有者に返還するに際し譲渡する分)を6,808,376円として差引71,407,637円を補償したもので、右利得額のうち2,332,290円は、国の負担により建物に取り付けた三菱電機株式会社昭和21年製昇降機3基の譲渡価額であるが、返還にあたり会社側から撤去して新しく買い入れたい旨の希望もあり、その価額は、3基とも使用に耐えない程度のものになったとみてこれを撤去することとし、返還時の本品評価額9,086,337円(1基当り3,028,779円)を7割引したうえ撤去費を差し引き、その発生材としての価格を算定したものである。

 しかし、同会社は返還後本件3基を1,649,200円で補修し、引続き運転使用しているものであり、この事実は29年3月本件補償契約締結当時調査すれば明らかであったことであるのに、これを前記のように使用に耐えないものとして撤去することとして評価したのは適当な処置とは認められない。

 いま、仮に返還時の現状で引き渡したものとして返還時の本品評価額9,086,337円から前記補修費1,649,200円を差し引いて利得金を計算すれば約510万円の開差が生ずるものである。

(4) 補償すべき林野雑産物を過大に見積ったもの

(組織)調達庁 (項)平和回復善後処理費

 横浜調達局で、昭和28年9月、山梨県天野某ほか262名に林野雑産物の補償として3,688,663円を支払っているが、飼料用およびたい肥用牧草の計算が過大に失したため約100万円が過大に支払われている。

 右は、従前から飼料用およびたい肥用牧草等を収穫していた者が、北富士演習場に立入を制限されたため、これらの収穫物が減少したので、これに対し26年4月から平和条約の効力発生日までの補償金として支払ったものであるが、そのうち2,891,851円は飼料用およびたい肥用牧草に対する補償金で、

(ア) 飼料用牧草は、馬1頭当り年間給飼量は5,000貫、178頭分の所要量890,000貫を平年の収穫高とし、前記期間中に連合国軍の許可を得て立ち入り573,930貫を収穫しているからこの差316,070貫を収穫することができなかったものとしてこれを乾草に換算した79,017.5貫に対し1,066,736円を、

(イ) また、たい肥用牧草は、反当り所要量400貫(青草として約308貫)で耕作面積338町9反5畝に対し1,042,923貫を要するとし、この全量を同演習場から採取する立前のもとに前記期間中においては全く収穫しなかったものとして1,825,115円を補償したものである。

 しかし、飼料用牧草は、農林省種畜牧場調査の馬糧年間所要標準によると、農家が冬期間の粗飼料としている稲わら等を全然給飼することなく全く乾草によったものとしても1頭当り給飼量は2,920貫であり、一般の給飼量もまたこの程度で足りるものであるのに、本件給飼量を5,000貫としたのは著しく過大に失するものと認められる。

 いま、馬1頭について年間給飼量を2,920貫として被害者別に頭数および実際収穫量によって計算すると、93頭分89名だけに対して乾草に換算し22,057.5貫297,777円を補償すれば足りたものである。

 また、たい肥用牧草は、収穫皆無であるとしているが、実際の収穫量をみると、馬を飼育しない農業経営者89名が89,970貫を収穫しており、馬を飼育している農業経営者のうち馬1頭当り年間給飼量を2,920貫として計算すれば、その必要量を上回るもの85頭85名分55,340貫があり、これらはいずれもたい肥用に充当することができたものと認められるので、この分と前記89,970貫との計145,310貫254,293円はたい肥用としいて補償の要がなく、したがって897,613貫1,570,822円を補償すれば足りたものである。

是正させた事項

役務

(5)−(7) 土地、建物の借料が過大に支払われたもの

(組織)調達庁 (項)防衛支出金

 東京調達局で、駐留軍に提供するため立川飛行機株式会社ほか2会社から借り上げた建物および土地の借料として、昭和26年10月から29年8月までの間に支払った641,229,854円について本院で検査したところ、戦災を受けた建物を借り上げて国費で補修したものを戦災を受けていない建物と同様に評価して借料を算定したり、建物の火災保険料の料率を誤って高額な借料を算定したり、または同一の土地に重複して借料を支払っていたものが左のとおり計5,508,689円あったので注意したところ、29年12月までに返納の処理を了した。

 右のような事態を生じたのは、土地、建物の実態のは握に欠けるところがある結果と認められるから調査の徹底を期する要がある。

提供者 種別 坪数 期間 同上期間に対する借料支払額 返納額 摘要
(うち26,27,29年度分)

(5)

立川飛行機株式会社

土地
建物

45,132.35
23,437.17
年月
27,7から
29,9まで

168,359,093
(90,929,957)

4,447,252

戦災建物の評価額が過大なもの
(6) 明治生命保険相互会社 土地
建物
1,464.64
9,150.39
27,7から
29,9まで
469,361,143
(252,839,899)
770,599 保険料を高額に算定したもの
(7) 中央工業株式会社 土地 51,111.79 26,6から
29,9まで
3,509,618
(2,413,994)
290,838 同一の土地に重複して借料を支払ったもの
641,229,854
(346,183,850)
5,508,689