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  • 昭和28年度|
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契約方法および価格の決定当を得ないもの


(24)−(28) 契約方法および価格の決定当を得ないもの

(昭和27年度) (組織)保安庁 (項)警察予備隊費

(組織)保安庁 (項)保安庁

 保安庁の契約の実施は、調達実施担当部局がこれに当り、その契約の方法等については同部局の責任に属することになっているが、調達等の要求を発議する各課の要請に従い指名あるいは随意契約とする場合も少なくなく、特に車両類については、年度初めに年間を通じての購入計画を立て車種ごとに台数、購入先会社まで決定しているためほとんどすべて随意契約によって購入している状況である。
 しかして、契約価額は、あらかじめ予定価格を算定し、その範囲内において決定されるものであり、特に随意契約の場合は、多くの事例が予定価格と同額またはきわめて近似の価額で契約されている実情からみても、予定価格の適否は直ちに契約価額に影響することとなるから、その積算については特に厳密周到な調査を行い、適正価格の適確な算定を十分考慮すべきである。しかるに、保安庁の購入契約の実際についてみるに、比較的大口なものにおいてさえ、業者側の見積をそのまま採用して予定価格を算定し、これに基いて契約を締結しているためその価格が必ずしも妥当とは認められない事例が見受けられる。
 外国製品を購入する場合等は、関係官庁と連絡を密にし、市況と取引の実態についての適確な調査についての格段の研究、工夫が望ましい。

(ジープの購入にあたり予定価格の積算当を得なかったもの)

(24)  保安庁第一幕僚監部で、トラック1/4トン4×4ジープ4,742両を倉敷フレザー・モーター株式会社(以下「倉敷会社」という。)から随意契約により左のとおり4,427,994,000円で購入しているが、価格についての検討等が不十分なため高価に当っていると認められる。

契約年月 数量 購入単価 金額 納期 予定価格単価
年月
28,1

500

864,000

432,000,000
年月
28,3

866,734
〃2 2,136 946,000 2,020,566,000 〃12 946,847
〃11 2,106 938,000 1,975,428,000 29,11 938,505
4,742 4,427,994,000

 右車両は、米国ウイリス・オーヴアランド自動車会社製(以下「ウイリス会社」という。)のジープを組立用完成部品(CKD)として輸入し、これを新三菱重工業株式会社で組み立てたものを購入したものであるが、その予定価格は前記のとおりに作成されていて、各回とも契約価格はこの範囲内となっている。また、この予定価格は、左のとおり第1回契約分は倉敷会社から見積を取り寄せて倉敷会社見積価格の単価888,864円の範囲内の866,734円で決定している。

区分 第1回契約分 第2回契約分 第3回契約分
会社見積 予定価格 実績 会社見積 予定価格 実績 予定価格 実績

工場渡値
ドル
870
ドル
870
ドル
ドル
781
ドル
781
ドル
ドル
920
ドル
仕様追加
 (改装費)
270 248 222 222
こん包費 90 90 85 85 55
陸上運賃 21 21 20 20 20
はしけ賃 15 15 15 15 15
海上運賃 61 61 50 50 40
販売促進費 3 3 3 3
保険料 13 13 11 11 8
計(CIF名古屋) 1,343 1,321 1,288 1,187 1,187 1,004 1,058 958
(円貨換算額)
483,814

475,696

427,478

427,453

381,187
交換手数料 2,048 1,528 1,528
輸入税 145,144 142,709 128,243 128,235 114,356
諸金利その他 55,475 49,050 28,615 22,449 41,637
新三菱製作費 179,430 172,230 346,030 315,955 369,136
倉敷会社手数料 20,000 20,000 41,010 36,225 27,189
倉敷会社サービス費 5,000 5,000 5,000 5,000
累計 888,864 866,734 972,904 946,847 938,505
備考
 新三菱製作費の第2回契約分、第3回契約分が高くなっているのは、輸入部品の一部を国産品をもって充てることとしたことによるものである。

 ところで、この第1回契約分の1台当り予定価格のうちの外貨分1,321ドル余については、当局者は、この種車両の輸入は初めてのことでもあり資料もなかったので、ウイリス会社の極東支配人から説明を受けてこれを了承したというのであるが、一応そのような予定価格設定上の困難はあったとしても、

(ア) CKDの仕様追加として計上した改装費(ウイリス会社の一般販売品の電装が6ボルト電圧規格であるのを、保安庁納入品は12ボルトの規格にするための経費)は、電装部品の6ボルト用のものを12ボルト用のものに入れ替えるだけのことで取付仕様の若干の変更程度であるから、その部品の価格差が重要な経費で、一般の例をみても約3万円から4万円程度であって、本件のようにCKD1両当り870ドルに対しその20%余の248ドル(円貨換算額89,280円)を見積るのは、きわめて多額で妥当でない。

(イ) 契約の相手方である倉敷会社から見積を取り寄せてこれによって予定価格を設定しており、また、高額な注文であり、かつ、将来も相次いで多量の注文を発しょうとする事態であったから、倉敷会社提出の見積と当局者の予定価格がはたして実情に適合して妥当な価格となるものであるかどうかについては、事後(できれば事前に自らの責任で調査して資料を整備することが望ましいところであるが)においても周到な関心が払われなければならないもので、もし第1回契約分について妥当でない要素があれば、第2回契約分の予定価格設定において修正するなどの用意がなければならない。
 少なくとも外貨支払分については、倉敷会社が割当を受けた外貨額を通商産業省で、輸入申告価格を税関で、また、運賃計算の基礎となった荷姿および海上運賃を税関および船会社で調査するなどは容易な手数であるし、一歩進んでは、事前に在外公館から参考資料の通報を受けることも考えられるところである。
 しかるに、第1回契約分については、その前後を通じて部外に対してこのような調査が行われたとも認められず、第2回契約分についても、倉敷会社がウイリス会社から受け取ったFOB価格についての電報および書簡によって予定価格を算定し、第3回契約分においてようやくインボイス価格を基礎としたというのである。
 本院において、これら3回の輸入分について、倉敷会社が通商産業省から割当を受けで実際に使用した外貨額を調査すると左のとおりで、予定額に対する使用額の差額は円貨換算で2億2300万円の多額に上っているし、これに輸入税の差額相当を加算すると2億8千9百余万円の高額に達するものである。

区分 予定価格 実績 差額 同上円貨換算 摘要
ドル ドル ドル
第1回契約分 { CKD1両当り単価
総額
1,321.38
660,690.00
1,288.77
644,386.31
 
16,303.69
 
5,890,523
第2回契約分 { CKD1両当り単価
総額
1,187.25
2,535,966.00
1,004.50
2,145,704.46

390,261.54

141,001,494
実績は5%工廃部品分を加算計上した。
第3回契約分 { CKD1両当り単価 1,058.85 958.78 1 実績は5%の工廃部品分を加算計上した。
総額 2,229,938.10 2,019,207.53 210,730.57 76,136,954 2 実績は1,296両分の輸入実績により計算した。
差額計(輸入税とも) 289,779,108

 この開差を生じた原因の一半は、契約後における米国内のCKDの値下りにあることももちろんではあるが、当局の見積価格設定についての過誤と不熱心によるものと認めざるを得ない。
 すなわち、見積においては、第一に、第1回契約分について前述したような改装費を多額に計上した誤りを第2回契約分についても繰り返しており、第2に、海上運賃は倉敷会社見積のとおり1両当り第1回契約分61ドル、第2回契約分50ドル、第3回契約分40ドルとしているが、ニューヨーク定期航路のFIOについてはキュ−ビックトン当り名古屋港着31ドル75の定めであるから、そのこん包才数を調査すれば少なくとも第1回契約分の船荷証券、検量検才証明書等船積についての関係書類は28年1月末には到着していたのであるから、第2回契約分以降は十分適正な計算を行うことができたものと認められる。実績によれば、第2回、第3回両契約分いずれも0.94トンで30ドル03にすぎないものである。
 なお、右の事態に対し本院が注意したところ、輸入部品価格が予定より8%以上下回ったものについては超過分を減額することとし、第2回契約分について29年3月88,000,000円を減額し、第3回契約分については11月55,387,300円を減額する旨の報告に接した。

(2 トン系車両の購入にあたり予定価格の積算当を得ないもの)

(25)  保安庁第一幕僚監部で、昭和28年2月から11月までの間に、いすゞ自動車株式会社から随意契約により2 トン系車両603両を1,562,383,200円で購入契約しているが、予定価格の算定必ずしも適正と認められない事例が次のとおりある。

(1) 28年2月から3月までの間に、いすゞ自動車株式会社から随意契約により総額1,083,202,500円(予定価格総額1,083,458,083円)で購入した6輪駆動修理車、工作車およびシャシー等413両については、これが単価は予定価格とほとんど差がない価格で決定しているが、本件車両にはウインチの動力伝導用パワーテイクオフ類の装置がないのにその装置のあるものと同じ予定価格を作成したため約1300万円高額に積算されているものと認められる。
 本件1両当りの裸シャシーの予定価格は1,679,614円と積算してあるが、この算出内訳がないのでその当否については正確な論議は困難としても、さきに同会社から随意契約により購入したいすゞ6輪駆動ダンプトラック416両のシャシーに比較してみると、この分についてはエンジン動力を切換伝導し、ウインチを運転するパワーテイクオフ類を装置しているのに、その予定価格はその装置のない本件と同額の1,679,614円となっている。したがって、本件各車両のシャシーの予定価格は、この部分相当額約3万2000円を減額して積算すべきであったのにそのまま同額の予定価格を算定し、その範囲内であるとして随意契約により購入したものである。その後11月、同種車両の購入にあたっては、ウインチ付でないものは1両当り32,000円低価に契約している事実に徴しても、特に本件購入分についてだけ右のような積算を妥当とする事由はないものと認められる。

(2) 28年3月および11月、いすゞ自動車株式会社から随意契約によりいすゞ6輪駆動修理車、工作車等190両を479,180,700円(予定価格総額480,977,286円)で購入契約しているが、その予定価格に仕様書にない電動力入力コードの価格が含まれているから約240万円が高額に積算されているものと認められる。
 右予定価格には、入力コード25メートル分として13,000円が積算してあるが、仕様書をみると、このようなコードは見当らないばかりでなく28年度契約分67両にあっては、本品は納入された事実もないから、これを予定価格に積算する必要は認められない。また、27年度繰越分123両については、当局者は仕様書には明記されていなかったが、車両の特質上必要と判断して予定価格に計上し、取付けのうえ納入されているとしているが、各修理車、工作車には別に搭載工具の中にコードが含まれており、特に仕様書にもない本件コードの価格を積算して購入する必要はなかったものと認められる。

(トラック・トラクターの購入にあたり価格の算定当を得ないもの)

(26)  保安庁第一幕僚監部で、昭和28年2月、三菱ふそう自動車株式会社から随意契約により三菱日本重工業株式会社製4−5トントラック・トラクター63両を154,495,600円で購入しているが、正当の理由もないのに前回競争入札に付した際の予定価格よりもこれを引き上げて算定し、購入したため約370万円が高価となる計算となっている。

 右は、予定価格を1両当り2,466,335円とし、その範囲内であるとして随意契約により2,465,000円で購入したものであるが、本件車両については、先に27年12月同種車両を三菱ふそう自動車、日野ディーゼル工業、池貝自動車各株式会社の指名入札により三菱ふそう自動車株式会社から12両を購入した事例があり、その際の予定価格は1両当り車両代2,406,730円、運賃78,970円として入札に付した結果2,260,000円(運賃78,970円を含む。)で前記三菱ふそう自動車株式会社に落札したものであって、本件購入分は、仕様には格別変動がなく、また、市場価格の変動もなかったのであるから、前回の予定価格を基準にし、入札価格を参しやくすベきである。しかるに、前回の予定価格より約6万円引き上げたのは妥当でない。その後28年11月日野ディーゼル工業株式会社から購入した同種車両9両の価格は1両当り2,400,000円となっている。

 いま、仮に前回の予定価格で購入することができたとしても、本件購入金額に比べて約370万円を節減することができた計算となる。

 なお、本件車両は、仕様書をみるといずれも登坂能力は、けん引状態(全備状態の車両で10トンの積荷を積載した10トンセミ・トレーラーをけん引した状態)で2%こう配を毎時32キロメートル以上の速度をもって登坂することができるものでなければならないとしているが、納入車両について走行抵抗、駆動力、速度を計算してその登坂能力を検討してみると、本件車両は、第3速においてはもちろん、第4速において副変速機低速を作動させるとしても、本件車両に塔載したDJIW型ディーゼル機関の標準状態における最高回転速度毎分2,200回転以内では32キロメートルの速度に達しない。このような結果となっているのは、会社側の設計、製作上の不手ぎわにもよるのであるが、車両の製作購入にあたっては、請負会社から設計図を提出させ審査のうえ承認を与えるもので、製作中も常時指揮監督することができることとなっているのであるから、保安庁側の処置にも欠けるところがあったことは否定することができないところである。

 このほか27年12月、指名競争契約により前記会社から購入した同種車両12両(価額27,120,000円)についても同様の事態である。

(タイヤ取はずし器の購入にあたり処置当を得ないもの)

(27)  保安庁第一幕僚監部で、昭和28年3月、一般競争契約により万歳自動車株式会社から第二種工具No.8(タイヤ取はずし器2型)28台を単価295,000円総額8,260,000円で購入しているが、価格決定当を得ないなどのため約140万円高価な購入となっていると認められるものがある。

 本件工具は、米国レー・エンヂニヤリング会社製のものを指定して一般競争の方法によってはいるが、本邦における同会社の特約店は前記万歳自動車株式会社だけであって他に入札者なく、前記価格で落札契約したもので、その予定価格1台当り301,052円の内訳をみると、本品の横浜着価格を製作会社の価格表に基いた万歳自動車株式会社の見積をそのまま採用して590ドル(213,167円)とし、同会社の販売手数料14,868円その他輸入税、諸金利等を73,017円として算出している。

 しかし、この種自動車用工具類の価格表は、小売販売価格を表示しており、製造業者からの卸値がこれより値引があることは常識であり、その幅は同会社からさきにブレーキドクターを27年12月に購入した事例もあり、これについて調査していたならば、同会社見積から、更に低価に予定価格を設定することができたものと認められる。当局者は、価格表には通常値引があることを承知していたが、同会社は特にこのような取引条件がないことを主張し、当時国内においては前例価格がなかったので同会社の申出を確認する方法がないまま万一にも申出の事実と相違したときはれい入の処置を講ずる旨口約し、横浜渡し価格を590ドルと算定したとのことであるが、もしこのような口約があったのであれば、契約直後同会社が通商産業省に提出した外貨資金割当申請書を調査しても予定と実績との間に相当な開差があることは容易に判明したはず(現に、同会社から通商産業省への外貨割当申請をみると、1台当り横浜着価格450ドルであって、右予定価格の横浜着価格590ドルと著しく開差がある。)であるのにその調査も行われず、また、同会社から精算書を提出させて審査する方法もあったと認められるが、なんらの処置も講じていなかったのは遺憾である。

 なお、本院の注意により初めてこれが差額1,445,640円のれい入処置を講ずることとした。

(鉄帽の購入にあたり予定価格の積算が当を得ないもの)

(28)  保安庁第一幕僚監部で、昭和28年3月、株式会社神戸製鋼所ほか2会社から随意契約により鉄帽65,000個を、納地の関係でその単価を2,385円または2,390円(予定価格1個当り2,388円)と決定し総額155,175,000円で製作させて購入したものがあるが、予定価格の積算にあたり材料所要量の計算を誤ったなど予定価格は適正とは認められない。

 本件予定価格は、鉄帽1個当りの主材料費としてマンガン鋼板の素材料費をスクラップ141円34、フェロマンガン211円15、フェロシルコン66円66計419円15、これに成型加工費等1,616円85、一般管理費(10%)および利益(5%)316円、こん包輸送費36円を加えて計2,388円とし算定しているものである。

 しかし、右素材料費の内訳について検討すると、フェロシルコンについては、仕様書にその含有量が最大0.55%と規定しているのに5.5%と誤認し66円66としたものであって、したがって、実際の所要量を計算すれば6円66にすぎず、フェロシルコンの減量に対応するスクラップの増量をみるものとしてもスクラップは162円76、フェロマンガンは211円15計380円57となり、開差38円58が過大に計上されており、その積算は適正なものとは認められない。

 また、スクラップ価格、本仕上製品の素材料に対する総合歩留り、成型加工費、一般管理費および業者利益等の諸要素を点検してみた結果少なくとも前記の誤算分は高価な積算と思料される。

 いま、仮に本件予定価格について前記フェロシルコンの誤算分およびこれに対する一般管理費、利益率等を考慮して修正計算を行うとすれば、予定価格は2,338円程度が適正と認められ、したがって本件予定価格総額155,228,750円は3,200,000円程度が超過した計算となる。